【簡単で安全!】トランスを使ってニキシー管の電源を作る
ニキシー管の電源はコンセントから
この記事では12Vからニキシー管の電源を生成していました。
……けどよく考えると、12Vの元になっているのは商用電源のAC100Vなわけで、
AC100V →[ACアダプタ]→ DC12V →[昇圧回路]→ DC高電圧
という流れで作られています。
AC100Vが元なら、いっそ
AC100V →[昇圧・整流回路]→ DC高電圧
でもいいわけです。実際、ニキシー管が現役で使われていた時代ではこの方式が主流だったようで。
というわけで、昔ながらの回路を再現してニキシー管の電源を生成してみました。12Vから昇圧するよりもずっと簡単です。
簡単であぶない回路
AC100VからDC200V以上の高電圧を生成するには下記の回路が一番簡単です。いわゆる倍波整流回路(倍電圧整流回路)ですね。ACで入力された電圧が倍になり、さらに整流すると電圧は√2倍になるので約280Vが出力されます。(ダイオードの順方向電圧分が差し引かれるので、実際は約270Vになります。)
ダイオード・コンデンサの耐圧は300V以上(入力電圧の約3倍以上)必要です。

ただ、この回路はコンセントのAC電源をそのまま整流しているだけなので 触ると感電します。 触らなければどうということはないですが。
知らずに触ると感電して危ないためか、当時でもあまり使われていなかったようです。また、電圧が倍になると言ってもコンデンサに溜めて倍にしているだけなので、数mA程度の軽い負荷でも数十V電圧が下がります。
1MΩの抵抗の意味は?
負荷側に付けている1MΩの抵抗は電源OFF後のディスチャージ(放電)用です。
この抵抗が無い場合はコンセントのプラグを抜いた後、感電しない電圧に下がるまで半日〜1日ほど掛かります。メンテナンス性を考慮して、とくに理由がない限りは付けた方が良いでしょう。
トランスで絶縁した回路
次に挙げるのは、トランスを使ってAC100VをAC100Vに変換してから倍波整流します。
100V → 100Vの変換は電圧だけ見ると意味のない変換ですが、もとのAC電源とは電気的に絶縁されるので片方だけなら触っても感電しなくなります。(もちろん両方触ると感電しますが。)
真空管の時代にはよく使われていた回路のようです。

ただ、この回路の欠点はトランスがそこそこ大きい物しかないということです。
100Vを入力して100Vが出力されるトランス(いわゆる巻線比1:1のトランス)の一般的な目的は絶縁かノイズ除去か、といったところ。
大は小を兼ねるということで、小さいものでも10W(0.1A)くらいからしかラインナップされていません。ニキシー管は定格電力で計算しても1本0.8W程度ですから、完全にオーバースペックです。
まあ大きくても良いならべつにこれでも支障はありません。
トランスで絶縁しつつ昇圧する回路
先ほどまでの回路はAC100Vを倍波整流回路(倍電圧整流回路)で倍にしていましたが、トランスは電圧を上げることができます。100Vから200Vに昇圧するトランスも一般的に市販されているので、部品の入手性も問題ありません。

ただし100V→200Vの昇圧トランスはやはり大きいものしかありません。ニキシー管を駆動する電源を得る目的としてはこれもオーバースペックです。
トランスを2つ組み合わせる
トランスを2つ組み合わせる方法です。普通の電源トランスを2つ使います。
たとえばAC100V→AC6Vのトランスを2つ組み合わせて下記のように使うと、100V→100Vの絶縁トランスを使った場合と同じような結果を得ることができます。
- 1個目のトランスで AC100V→AC6V 変換
- そのAC6Vを2個目のトランスの、もと2次側(もともと6Vが出力される側)に入力する
- 2個目のトランスの、もと1次側(もともと100Vを入力していた側)からAC100Vくらいが出力される
ここで注意しないといけないのが、出力はAC100Vより少し低くなるということです。実際やってみるとAC95Vくらいが出力されます。
これは、トランスの2次側は損失を考慮して少し余分に巻かれているため。こういう使い方をする限りは仕方ないです。
これを倍波整流すれば約270Vの電圧が得られます。

ちなみに、トランスの組み合わせを色々変えることで出力電圧を変えることもできます。
上記回路でトランスを変えて色々試してみた結果は下記です。Voutで得られる電圧は整流用ダイオードや負荷電流によってかなり変動するので、下記は目安としてください。
| X端子(V) | T1出力の実測電圧(V) | Y端子(V) | T2出力の実測電圧(V) | Vout(V) |
|---|---|---|---|---|
| 6 | 7.0 | 9 | 64.6 | 172 |
| 8 | 9.5 | 9 | 86.9 | 235 |
| 6 | 6.9 | 6 | 95.5 | 260 |
この回路の利点は、1つ目のトランスを電源トランスとして使えるということです。たとえば下記の回路で、ロジック系電源の5Vも同時に得ることができます。

トランスをそんな使い方して大丈夫?
この方法では、2個目のトランスは本来の1次側と2次側が逆、つまり本来電源を取り出す側(2次側)から電源を供給し、本来電源を入力する側(1次側)から出力を得る、という使い方になります。そんな使い方をして大丈夫なのか気になりますね。
結論から言うと、とくに問題ありません。
もちろんメーカーが想定していない使い方なので既述の通りスペック通りにはなりませんが、きちんと定格を考えて使う限りはトランスが焼けたりはしませんし、メーカーの保証がきかなくなる、ということもありません。
昔ながらのデバイスは寛容ですね。
気をつけるべきこと
先ほど きちんと定格を考えて使う限りは と書きました。間違った使い方をするといかに寛容なデバイスといえど壊れてしまうので、少なくとも下記には留意する必要があります。
- 出力電圧は若干低くなる
これは既述の通りですが、もう少し詳しく説明しましょう。
AC100V→AC6Vのトランスの巻線比は、計算上は 16.67:1 です。しかし実際はコアや巻線の損失・定格負荷時の電圧降下を考慮して、少しだけ2次側の巻線を多くしています。
たとえば巻線比が 15:1 くらいになっていたとすると、このトランスの2次側に定格通りAC6Vを入力すると1次側からは90Vになります。
- 定格電力に注意
トランスの仕様書を見ると「○○VA」と書いてあります。これはそのトランスで扱える電力を示したもので、たとえばAC100V→AC6V 定格0.5Aのトランスの場合、3VA(=6V×0.5A)と書いてあるはずです。(内部損失も含めて記載されている場合は、もう少し大きな値が書いてあるかもしれません。)
逆に言うと、この電力を超える場合は1次側・2次側ともトランスの巻線が負荷に耐えられないことを示します。
AC100V→AC6V 3VAのトランスの2次側にAC6Vを入力した場合、1次側から取り出せる電流は0.03A(=3VA÷100V)です。
ただし実際はその90%、つまり0.027A程度に留めた方が良いでしょう。
- 2次側に本来の出力電圧を超える電圧は加えない
たとえばAC100V→AC6Vのトランスの2次側にAC100Vを入力した場合、1次側には1.6kVくらいが出力される…はずです。
実際そんなことをすると一瞬でトランスから煙が出ます。無負荷時に流れる損失分の電流に耐えられないためです。
2次側に印加できる許容範囲はわからない(メーカーも評価してない)ので、基本的にもとの出力電圧を超える電圧は加えないようにしてください。
トランスの定格を超えて使うとどうなる?
トランスは寛容なデバイス、と書きましたが、壊れる時はどんな風に壊れるのでしょうか。
基本的には内部の巻線が発熱し、一部が焼き切れるという形で破損します。要するに直接の原因は発熱による破損ですが、よほどのことが無い限り焼き切れるまで行くことはありません。
たいてい「なんか焦げ臭いな…」と思ってトランスに触ったら「熱っ!!」というパターンで救済されます(笑)。
もし気づかずに使うとそのまま発熱が続いて焼き切れるか、巻線が溶けて1次側がショートした場合は電源ケーブルが焼損してそのまま火事になる…かもしれません。最低限、下記に気をつけましょう。
- ヒューズなどの保護回路を設ける
- 定格を超える条件では使わない
まとめ
昔ながらのトランスを使った回路でニキシー管の電源を生成する方法を紹介しました。
トランスは大きく重いので一長一短ですが、回路が単純で故障しにくいメリットもあります。選択肢として検討してみるのも良いでしょう。