私はあまりルーラに自信がない。
そのため行き帰りはキメラの翼を使ってサマルトリアへ行く事にした。
その準備に少々手こずり、サマルトリアに着いたころには、
夜も深い時間帯だった。
「・・・・・・。」
こんな時間にやってきても、
当然城門も固く閉ざされている。
マイには話をしているから、起きているかもしれないが、
こんな夜更けに門兵を叩き起こして城門を
開けさせるのも非常識な話だ。
私は城に入るのを諦めて、
城下町に行ったというカインを探しに行く事にした。
フードを深く被っているので、
自分が何者かはばれていないだろう。
だが、こんなに遅い時間に
ムーンブルクやムーンペタ以外の町を歩くなんて
初めてだった。
その薄暗さに少々心細さや不安もあったが、
サマルトリアは元々治安の良い国だ。
それに、緑に囲まれた町は空気も澄んでいる。
心地よい夜の風に吹かれながら、城下町を歩いていた。
カインはどこへ行ったのだろうか?
何の目的があって、夜の町へ不調をおしてまで繰り出したのだろうか。
当てもなく歩いていると、
静まり返った夜更けの町に、俄かに騒がしい集まりを見つけて足を止めた。
「・・・?」
何かあったのだろうかと思って、様子を伺ってみた。
行きかう人々の話によると、
どうやらこの店に住む老人が不幸にも突然倒れ亡くなられたらしい。
あまりに急なことで家族も驚いているのだそうだ。
「ああ・・・良い人だったんだけどねえ。」
そんな沈痛な声からも亡くなられた人の人柄が偲ばれた。
私も静かに手を合わせ、何の巡り会わせか
こんな場に立ち会った縁で、故人の冥福を静かに祈った。
そして、しばらくしてその場を立ち去ろうとした時、
思いがけずマイに出会った。
「あら?マイさん、ここに来ていたの?」
「あ、マリア様!!
本当にサマルトリアに来ていらしたのですね!」
マイは私の姿を見て、驚いた顔をしている。
どうやら本当に来るとは思っていなかったようだ。
「ごめんなさい、ちょっと私も急用で城を飛び出してしまってて。
もしかして、マリア様お城に入れなくて困ってしまってました?」
「ああ・・・そうだったのね。
いいえ、城門は固く閉ざされてたので、
カインを探しに城下のほうへ回ってみたのよ。」
そう言っておきながら、マイの言い回しに少し引っかかるものがあった。
『急用で城を飛び出す』と言うのは、カインと同様の言い方だ。
「あれ?お兄さまに、まだお会いしてないんですか?
さっきまでここにいて、一足先に城に戻ったんですよ。」
「え?お城から歩いてきたけど、私は会ってないわよ。」
どうやらカインとは入れ違ってしまったらしい。
でもおかしい、
私だって城からここまでまっすぐやってきたのに、会えなかった。
だが、この分なら、城にマイと一緒に戻れば
今度こそカインと会えるだろうと思った。
「じゃあ、マリア様一緒に帰りましょうか。」
マイの言葉に頷いて、私は一緒に城に戻る事にした。
そして道中気になることを聞いてみた。
「マイさん、急用って言うのは・・・?」
カインも使った『急用』と言う言葉。
私も先ほどの場面に直面した事で、ある程度想像はついた。
「あのね、あそこの宿屋のおじいちゃん、
私達がいつも城を抜け出した時とか城下でお世話になったおじいちゃんなの。
さっき、マリア様と水晶玉で話をしていた直後に
連絡が来て、私も城を飛び出しちゃった。」
「それじゃあ、カインが行ってた先・・・っていうのは・・・。」
「うん、おじいちゃんの所。
でも・・・変だよね。おじいちゃん昨日まで元気で、
さっき急に倒れて亡くなっちゃったんだって。
なのに、お兄さまなんで朝からバタバタしてたんだろう。
って言うか、朝からって言うか数日前からよ?」
マイはそう言って首を傾げているが、
私は話の合点がいった。
カインはこの老人が間もなく亡くなると言うことが
分かってしまったのだろう。それはザオリクを習得したカインの
特殊な能力だった。
だから今朝もマリアに急用が出来ていけなくなったと伝えたのだ。
老人が亡くなる事が分かったから。
「・・・・・・。」
私は少し深く息を吐いた。
一体誰に会いに行っているのか、等と思ってしまった自分の考えを改めた。
人の命には代えられない事ではない。
だけど、そしたらカインは今頃どれだけ悲しんでいるだろうか。
薄ぼんやりと考えをめぐらせながら歩いていると、
マイが驚いたように声をあげた。
「お兄さま・・・!?どうしたの?そこで、何してるの!?」
マイの声に私も弾かれたように顔を上げた。
そこは城へのメインストリートではなかった。
少し外れた細い路地で、壁にもたれかかるようにカインが
座り込んでいた。
「お兄さまってば!!」
マイは慌てて駆け寄って、カインのその肩を揺さぶった。
「こんな所で寝てないでよ!何してんのってば!」
カインは目を瞑っていた。
思わぬ事態にマイは少し焦ったようだった。
「・・・マイ?・・・寝てないよ。
少し、休んでるだけ。」
やがて、少し遅れてカインが返事をした。
その様子に若干だけ安心したが、やはり変だった。
「休むんだったら、お城に帰ってからで良いじゃない!
何でこんな所に座り込んでるの。
んもう、お兄さま、変な人みたいだよ!?」
「変って何さ。
ちょっと・・・疲れただけだよ。」
私はカインのその様子が心配で目が離せなかった。
暗くて遠目ではよく分からなかったが、
近づいてみるとうつむいているカインの顔色は
どう見ても真っ青だった。
そしてうつむいたまま肩で荒い息をしていて、
そばに私がいることにも気付いてないようだった。
「ちょっとしっかりしてよ!んもう、だらしないよ!?
お兄さま、マリア様来てるんだよ。」
マイの言葉に、初めてカインがこちらを向いた。
「・・・え・・・?」
「カイン、大丈夫?熱があるようね・・・?」
きっと不調を押して城下町へやってきていたが、
さらに体調が悪化して、城にも戻れずこんな所で座り込んでいたのだろう。
ここに通りかかって、本当に良かったと思った。
「マリ・・・ア・・・?」
私がカインの額に触れると、
確かにそこは燃えるように熱かった。
「カイン、マイさんの言うとおりよ。
休むならお城で休みましょう。こんな所でいたら
ますます悪くなるわよ。」
そう言ったが、カインは聞こえているのかいないのか、
未だボーっとした様子で、こちらを見ていた。
「マリアの・・・手は・・・
冷たくて、気持ち・・・いい・・・ねえ・・・・。」
そう言うと、カインは私の手に触れた。
その手もやはり熱かった。どれだけ熱が高いのか心配だった。
早く城に戻って、医師に診てもらい、休ませたかった。
「ねえカイン、そんな事より、早く・・・っ・・・」
だが、私が最後まで言うよりも先に、
カインは何とそのままずるずると私に倒れこんできた。
「え・・・っ、カイン・・・!?」
「お兄さま!!」
そして、私やマイがいくら声を掛けても、
最早瞳は固く閉ざされて、もう答える声はなかった。
****
城下町では住人が急死するニュースが入り、
王子は高熱で倒れるわで、城内は深夜にも関わらず
慌しく人が出入りしていた。
その慌しいどさくさが良かったのか悪かったのか、
知らせもなくやってきてしまった私が紛れているのは
どうやら騒ぎにはならなかった。
マイの口ぞえがあったからかもしれないが。
城に戻ってから、まだ一度もカインの意識は戻っていない。
勿論医師の診察も受けたが、医師は沈痛な面持ちで退室して、
何がどうなのかさっぱり分からなかった。
私もそうだが、気になってしまったのか、
マイも夜遅い時間なのに、カインの部屋に残っていた。
「本当に馬鹿なお兄さま。
結局色んな人に心配かけてるんだから。」
「マイさん、そんな風に言わないで。
お世話になった方の一大事だったんでしょう?
カインの性格なら、確かに飛び出しててもおかしくないわ。」
「それって、どういう・・・ことですか?」
私はマイにカインの能力について説明した。
カインは近く亡くなってしまう人が分かるらしいと言う事。
それが世話になった人であれば、きっと心配で仕方が無いだろう。
今思いかえせば、旅の間、アレンが死ぬかもしれないとなった時に、
カインの心配している様子は、確かに目に余るほどで印象に深い。
「本当なんですか・・・?
でも・・・それって・・・。」
「?」
「お兄さまに一体何が出来るって言うんですか?
それで、亡くなる人を助けられるんですか?」
マイの言葉に私は一瞬返す言葉を失った。
そう、助けられないのだ。
魔法を使っても、無理なのだ。
病気はホイミやベホイミなどの回復魔法で助けられるものではないし、
禁忌のザオリクを使えば生き返ることは可能かもしれないが、
カインが以前言っていた。
寿命で死んだものは、生き返ってもすぐにまた死ぬんだと。
だから、今回のような急病で倒れた人はきっとザオリクでも
助けられないだろう。
そもそも実際の所ザオリクは禁忌だった。
そんな事、マイに言われなくても
カインはきっと分かっていただろう。
それでも、
それでも行ってしまうのがカインの性格なのだろう。
「そんなの変だわ。」
だが、マイは納得できず釈然としない様子だった。
そうこうしていると、部屋の扉を誰かがノックし静かに開けられた。
振り返ると、そこにいたのはカインの父、
サマルトリア王だった。
「あ、お父様!」
私は慌てて立ち上がって、その場で深く会釈をした。
どうやら、私が来ていることは耳に入っているのか、
王は私を見ても、驚いた様子は無かった。
「王様、ご挨拶もなく失礼しております。」
「マリア殿、こんな時だ。挨拶など無用だ。
それより、夜も深い。
今夜はもうムーンブルクへ戻られてはどうか。」
「い、いいえ・・・。
どうか朝までこの場にいさせてください。
マイさんも、王様も、ここは私に任せてどうかお休みくださいませ。」
結婚もしていない男女が同じ部屋で一夜を過ごすなどと、
自分の立場を弁えない非常識で出過ぎた行動であることは重々承知している。
だが、このまま、カインとまともな会話一つないまま帰るなんて嫌だった。
王はしばらく黙っていたが、私の真剣な瞳を見て
説得するのを諦めたのか、息をついた。
「ならマリア殿、今夜一日だけ、この場を頼もう。
朝になったら、国へ帰りなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
私はその言葉にほっと感謝し頷いた。
「それから、マイ。」
「はい?なんですか、私も今夜はここにいますよ。
気になって私だって眠れないんだから。」
「駄目だ、お前には話がある。」
「そんなの今度で良いじゃないー。」
「駄目だ!!大事な話だ!
今すぐ王室へ来るように!」
「・・・な、なによー?大きな声で・・・。」
何故か口調を荒げて、厳しく厳命する王に
マイは思わず首をすくめた。
父に厳しく叱られる事は今までもあったが、
こんな夜更けに大事な話があるなんて、
そんな事を言われるのは初めてなのだろう。
その勢いに驚いた。
一体何事だろうか。
訳が分からないが、逆らえない雰囲気に
しぶしぶマイは立ち上がった。
「マリア様、そしたら、どうかお兄さまの事お願いしますね。
何かおかしな事があったら、呼んでくださいね。」
「ええ、大丈夫よ。」
私はそうして退室した二人を見送った。
部屋にはカインと二人になった。
静かになった部屋には、
先ほどより、カインの苦しげな息遣いが耳に残った。
マイは、風邪が治らずこじらせているのだと言っていたが、
本当だろうか。悪い病気だったらどうしたらいいのか。
心配な思いは尽きなかった。
「う・・・ん・・・。うう・・・。」
しばらくすると、カインが何か苦しげな声を上げた。
どうやらまた熱が上がってきたようだ。
額に乗せたタオルが熱くなっていたので、
私は変えようと思った。
水で固く絞って冷やしたタオルを額に乗せると、
一瞬その冷たさに驚いたのか、カインがうっすらと目を開けた。
「カイン、気が付いたの?
大丈夫?気分はどう?」
ぼんやりとしたカインの顔を覗き込んで私が
そう尋ねると、カインは私に向かって手を伸ばしながら、驚く事を口にした。
「・・・か、・・・・さま?」
「え?」
小さい声なので、聞き間違えかもしれない。
だが、今彼は私に向かって母様と言った。
そんな風に間違えられるのは初めてだ。
よっぽど、意識が朦朧としているのかもしれない。
私は何と答えたら良いのか分からず、
カインのその手を取った。
「私は・・・。」
後で思えば、あの時彼を安心させてあげれば良かったかもしれない。
だが、そのときの私はどこか遠くにいるようなカインを
呼び戻したいと思った。
「私は、マリアよ。カイン。」
笑ってそう呼びかけると、急にカインは目を見開いて、
今度はしっかりと私の顔を見た・・・気がした。
「マリ・・・ア・・・?マリア・・・ッ。
なん・・・、なんでっ・・、ここに・・・!?」
驚いて正気に戻ったらしいカインは、
急に大きく息を吸ってしまったようで、
その勢いで思わず激しく咳き込んでしまった。
「だ、大丈夫?カイン、落ち着いて。」
私は慌ててその背をさすった。
胸を抑えるように咳き込むカインは苦しげだったが、
それでも本当に正気には戻ったらしく、
私に対して、心配するなと言う風に手を振った。
そして、しばらくすると、咳が落ち着いたカインは
少し恥ずかしそうに、体を起こした。
「ご・・・めん・・・。
今の、忘れて。」
熱のせいかもしれないが、カインの顔は真っ赤だった。
「ええ・・・。私は気にしないわ。
きっと夢と間違えたのでしょう?」
「夢・・・。そう・・・だね・・・。
今のは現実で、ええっと・・・じゃあさっきマリアに会ったのは
夢じゃ・・・なかった?」
「ええ、会ってるわよ。城下町で。
急に倒れるからびっくりしたんだから。」
どうやら、現実と夢が少々ごっちゃになっているようだ。
先ほど私に出会ったことの方を夢と思っていたらしい。
「そっか・・・。ごめん・・・。
マリアが来てくれたんだ。」
少し俯きがちなカインは小さな声で言った。
「最近ね、母様の・・・夢・・・を良く見るんだよ。
それで、変なことを言ってごめん。」
「そうなのね、きっとカインのお母様、
カインの事を心配して、いっぱい夢に出ていらっしゃるのね。」
私がそう言うと、
カインは肯定とも否定ともつかない表情で黙ってしまった。
だから、私は努めて明るく話しかけた。
「それより、カイン。体調はどうなの?
私何も聞いてなくて少し怒ってるんだから。
そういうの黙ってるのはなしって言ったじゃない?」
「あ・・・っ・・・。ごめん。
あの、えっと・・・風邪をこじらせて、
マイにも心配かけて・・・。すぐ治ると思ったんだけど!」
あわててそう答えたカインだったが、
大きな声を出すと、また少し咳き込んだ。
「今朝、私との約束を断った理由は
体調が悪かったから?
それなのに外にいたのはどういう事なの?」
私はカインの背をさすりながら、
少し意地悪そうに、それを尋ねた。
「えっと・・・それは、それも・・・ごめん・・。
あの・・・マリアには怒られても仕方ないと思うんだけど・・・」
カインは言いにくそうに、申し訳無さそうに、
その理由を説明してくれた。
やはり先ほど私が感じた理由の通りだった。
世話になった老人を助けられないものかと思ったのだそうだ。
「残り少ない日を少しでも楽しく過ごしてもらいたかった。
助け・・・られないのは分かってたのに。
いや、助けられないのが分かってるから・・・。」
だから、亡くなるその日じゃなくて、
何日も前から、老人の家を訪ねていってたらしい。
「久しぶりに会ったおじいちゃんは喜んでくれたけど、
でも、本当に何も出来なかった。」
震えるような声でそう口にしたカインは
良く見ると、その表情は汗だくになっていた。
そしてそれを拭う事もせずに、俯いていた。
「そんな事ないわ。あなたは、優しすぎるのよ。
きっとご老人はあなたに会えて喜んでいたわよ。」
私はそう言ったが、カインの耳には届かないかのようで、
両手で顔を覆って、さらに心情を吐露した。
「マリアもごめん。約束を守れなくて、ごめん!
心配をかけてごめん!僕が、こんなんだから・・・だから、
余計な心配かけたくないのに・・・・なのに・・・っ!!」
「カイン?カイン、大丈夫だから、落ち着いて!」
珍しく喋れば喋るほど、カインは感情が高ぶっているようだった。
高熱のせいだろう。
これ以上、無理に話をさせない方が良いと思った。
「もう眠った方が良いわ。
明日になれば、元気になったら、全て元通りだから。」
私はそう言うと、少し強引だと思ったが、
カインにラリホーの魔法をかけた。
一瞬驚いた様子で目を見開いたが、
魔法が効いたのかそのままカインは眠ってしまった。
こんな風に余裕のないカインを見るのは珍しかった。
カインもそんな姿を私に見せたくなかっただろう。
無理に来ないほうが良かったかもしれない・・・と思った。
結局私が来たところで何も変わりはしなかったのだし。
額の汗をタオルでふき取ってやりながら、
私はそんな風なことを考えていた。
翌朝。
どうやらラリホーの魔法が効いているのか、
カインはその後一度も目を覚まさず、
朝になっても目を覚まさなかった。
だが、厳格なサマルトリア王は
これ以上の滞在は許可できないという風に、
私に国に帰るよう告げた。
目を覚ましたら、少しでもカインと話をしたかったが、
昨夜のことを考えると、あまり急いて話しこむのは今は時期尚早かもしれない。
「分かりました。あとは、よろしくお願いいたします。」
「言われずとも大丈夫だ。
カインが世話になった。
マリア殿も、昨夜の疲れが堪らないように気をつけるように。」
「はい。」
私は王に会釈をした。
「マイ、門までお送りしなさい。」
「はい。」
王は、傍にいたマイに、
見送りをするよう指示をした。
マイは素直に頷くと、私を城門のほうまで見送ってくれた。
「本当だったら、お兄さまがお見送りするべきなのに、
スイマセンね。どうもお兄さま寝ぼすけで。」
「いいえ、マイさん違うのよ。
私がラリホーで眠らせてしまったせいで・・・。
・・あら?」
ふと近くでマイの顔を見ると、その瞳の辺りが腫れぼったくなっていた。
まるで、泣きはらしたかのような表情だった。
「マイさん、あの・・・・。」
「え?ああ、そうだ、マリア様。
これから何かお兄さまの事で変わったことがあれば
私の方からも連絡しますね。
お兄さまどうも抜け作だから大事な事が抜けてたりするし!」
今のは、私の気のせいだったのだろうか。
明るく笑ってマイがそう言った。
「そうね、お願いしたいわ。
今度は熱があるのにお城を飛び出したりしないように
注意しないとね。」
「ええ、そうですとも!」
マイはうんうんと頷いた。
そんな事を言っていると、城門まではすぐ着いた。
そうだ、別れる前に一つだけマイに聞いてみたいことがあった。
きっとカインはもう先ほどの事は聞かれたくないだろうから・・・。
「私って、あなた方のお母様と似ているのかしら?」
何気なく聞いた質問だった。
だが、マイはその言葉に一瞬足を止めると、
顔を上げた。
そして、その瞳からツーっと涙を流したのだ。
「マイさん・・・!?どうしたの??」
「似て・・・ません。
あいにく、全然っ、似てませんよ。」
涙を拭うと、マイは無理やり笑いながらそう答えた。
そして、唇を少し震わせて何か言いたそうだった。
そして、小さくぽつりと、何かを呟くと
マイは私に会釈すると、その場を立ち去っていった。
そんなに変なことを聞いただろうか?
私には、その時、マイの涙の理由が分からなかった。
- 続く -
2014/07/18
▲