68.毒


カインが新しく覚えたベギラマはかなり強力な魔法だった。

「おお〜〜。
 すげえ、なんだよお前1人で全滅じゃないか。」

アレンたちは、今短い船旅を終えて、
ラダトームへと向かっていた。

だが、この懐かしきアレフガルドまでも
魔物たちが巣食っていたのだ。

道中は中々心休まらなかったが、しかし悪い事ばかりでもない。

ルプガナでカインが覚えたベギラマは
相当強力で、ここら辺の魔物に効果覿面だった。

「マリアのバギより強いんじゃねえか?」

「そうね。本当にすごいわ。
 私のバギはあそこまでの破壊力はないもの。」

二人のその言葉にあわてたようにカインは首を振った。

「全然、そんな事ないよ!
 魔法唱えるのにも時間が掛かるし、
 それに・・・っ!」

「お前な〜、せっかく珍しく褒められてんだから、
 素直に、褒められとけよ。」

アレンは、カインの言葉を遮りその頭にポンと手を置いた。
こいつは何かにつけて自分を卑下する癖があるのだ。
どうせマリアがどれだけすごいかなどと力説しようとしたのだろう。

カインはまだなお何かを言いたげな顔をして、
アレンの方を見上げたが、大人しく口を噤んだ。

「さあ、先へ進むぜ。」



ラダトームまではさほど遠くはないはずだった。

だが、魔物が出てきてその相手をしていると
中々前に進めない。

徐々に、陽も落ちてきて、辺りが薄暗くなってきた。
魔物の影にも気付きにくい。

「アレン、カイン!
 気をつけて!!スモークよ!!」

一番後ろにいたマリアが、2人に向かって叫んだ。
どうやら、魔物が夜の闇に紛れていたらしい。

さっと戦闘態勢を整えた3人であったが、
魔物はアレンたちが身構える前にマヌーサを唱えてきた。

「くっ・・・!」

アレンたちは幻に包まれてしまった。
振るう剣が面白いくらい空を切る。

見るとスモークだけではなく、
見知らぬ魔物の群れに囲まれていた。
猪のような外見の魔物の名前は、確かオークと言ったか。
そして、怪しい植物のような魔物はポイズンキッスと言う名前だと
図鑑で見た覚えがあった。

どうも、このアレフガルドと言う土地は、不思議な土地だった。
スライムやドラキーと言う低レベルな魔物から、
初めて見る強力な魔物までもが共存しているのだ。

などと冷静に分析している場合ではなかった、
スモークだけなら、
マヌーサが掛かっていても何とか倒せただろうが、
オークの攻撃はかなり強力だった。

「カイン、マリア!ここは、魔法だ!!」

アレンの合図にマリアはすぐにまどうしの杖を構えた。

「ええっ、分かったわ!
 いくわよ!バギ!!」

マリアの唱えた真空の刃が、魔物たちを切り刻んでいく。
アレンたちにマヌーサを仕掛けたスモークは
バギの刃に真っ二つになり崩れ落ちていく。

だが、オークは傷は負ったものの、まだ戦意を失わず、
こちらに襲い掛かってきた。

「させるか!!」

アレンはその攻撃を何とか剣で受け止めた。
太い腕の激しい攻撃に、ズリズリと後ずさる。
受け止めるだけで精一杯で、反撃ができなかった。

一方でポイズンキッスは、マリアに襲い掛かっていた。
怪しい触手の攻撃を、杖で受け止めたが、
触手はその杖を、ものともせずに、マリアの腕に絡みつく。
その力は恐ろしく強かった。

「あっ、いやあっ・・・!!」

その触手がマリアの体に纏わりつこうとした時、
カインがその触手の一本を銅の剣で斬り捨てた。

「マリアを離せ!魔物め・・・!」

「カイン・・・!」

カインの一撃が効いたのか、
ポイズンキッスはマリアに絡み付いていた
触手の締め付けを緩めた。

カインはマリアの手を引いて、
ポイズンキッスから離れさせようとした。

直後、ポイズンキッスはその斬られた触手から
怪しい液体を吐き出した。

「きゃあ!!」

「・・・!?」

それが何なのか分からなかったが、
カインは思わず左腕を差し出して、マリアを庇った。

「このぉ!!」

そして、銅の剣で再度攻撃を仕掛けた。
だが、やはり触手を何本か斬ったところで
止めを刺すには至らない。

その様子を見て、アレンはその場で叫んだ。

「カイン、やれ!やっちまえ!!
 ベギラマだ!!」

「う、うん!!」

何故か魔法を躊躇していたカインだったが
アレンのその言葉に従い、
魔物の群れにベギラマを唱えた。

ポイズンキッスとオークは炎に包まれ燃え上がり、
ともにその場に倒れた。
ベギラマの利点は複数の魔物に対して効果があることだ。

「よし、やっぱりすげえじゃねえか!
 やったな!」

魔物を倒したことを確認して、
アレンが振り返ると、
カインは少し困ったような顔をしていた。

「・・・・?
 どうかしたか?」

「いや、何でも。
 無事に倒せたね。さぁ、先へ進もう、アレン。」

先を指差すカインだったが、
マリアも少し心配そうに声を掛けていた。
だが、やはり何ともないとカインは首を振った。



その後はしばらく魔物も出ず順調に歩みを進めていたのだが、
急にマリアが、先を歩くアレンを呼びとめた。

「アレン、ちょっと待って!
 少し止まって!」

振り返ると、仲間達がいたのは思ったよりもはるか後だった。

「どうしたんだよ?」

アレンが仲間のもとに駆けつけると、
カインが先ほどより蒼白な顔をしていた。

「なんだ!?どうしたんだ・・・!?」

良く見ると、左腕を押さえている。

「カイン、さっきの魔物、ポイズンキッスの触手から
 毒を受けたんじゃない!?」

「毒・・・!?」

それで、さっきから少し調子悪そうな
表情をしていたのだと気付いた。

「大丈夫か!?確か、今毒消し草はなかったんだ・・・。」

アレンは慌てて道具袋をあさってみたが、
毒消し草なんてここ最近所持していない。
それは理由があった。

「でも、お前キアリー出来ただろう?」

カインがキアリーを使えるから、
道具屋で毒消し草を買わなくなったのだ。

「うん、そうなんだけど・・・。」

カインだって勿論それは分かってるし、
分かってる上で、キアリーを使っていないというのは・・・

「お前、魔法力足りないのか?」

「・・・・・・。
 そう、みたい・・・。」

カインが情けなさそうな顔をして、答えた。

だが、実はこれは当然想定される状況だった。

ベギラマは確かに強力な魔法だが、
今のレベル的にやや背伸びしたその魔法は、
消費する魔法力も多いはずなのだ。

こんな事、少し考えれば分かるはずなのに、
あの時何か言いたげだったカインを遮ったのは自分だし、
さらにベギラマの指示を出したのも自分だった。

アレンは、この状況は自分のせいだと思った。

「マリア、お前は!?
 お前はキアリーくらい使えるんだろう!?」

数多くの魔法を使いこなすマリアは
当然キアリーくらい使えるのかと思ったのだ。
だが、マリアは唇をかみ締めて、頭を振った。

「まだ・・・使えないの・・・。」

確かに毒の時はカインのキアリーばかりを使っていて、
マリアがこの魔法を覚えるのは見た事がなかった。
そのマリアの言葉に、アレンはなお一層絶望的な気分になる。
どうすれば良いのか?

だが、そんな2人に、逆に明るく声を掛けたのはカインだ。

「大丈夫だよ。
 少し休めば魔法力回復するから。
 そしたら自分でキアリーするから。
 ごめんね、心配かけちゃって。」

「そ、そうか・・・。
 じゃあ、もう空も暗くなったし、
 今日はここらで野宿するするか。」

その言葉にマリアも頷いた。

「分かったわ。そうしましょう。」

そして手際よく、まどうしの杖で火を起こすと、
火を囲って休む事にした。

「火の番は私がするわ、2人とも休んで。」

寝ずの番をすると言い出したのはマリアだ。
アレンとカインは驚いて、顔を見合わせた。
いつも野宿の夜の見張り番は、アレンかカインの仕事だ。

「マリア、何を言ってるの。
 まだ明日も旅は続くんだから休まないと。」

カインがそう言って諭したが、
マリアはがんと譲らなかった。

「あなたが毒を受けたのは私のせいよ!
 これくらいは私も出来るわよ!」

そんな事を言うマリアを、
落ち着けというように、アレンが肩に手を置いた。

「お前のせいじゃないよ。俺の戦略ミスのせいだって。
 だから、マリア、気にせずお前も寝てろ。」

「で、でも・・・!」

「でもじゃねえ。
 お前だって魔法力回復させなきゃ駄目だろ。
 お前まで、魔法力尽きたとか言い出したら、
 俺の負担が増すじゃねえか。」

アレンはそう言って、笑ってみせた。
あえてそんな風に言ってくれたのだろうが、マリアには分かっている。
実際、確かに魔法使いが魔法力が尽きた時こそ
足を引っ張るものはない。

「わ、分かったわ・・・。」

マリアはアレンのその言葉に従う事にした。
そしてカインにも声を掛けた。

「お前もとっとと寝やがれ。」

「うん、ありがとう。アレン。」

アレンに礼を言って、カインはその場に横になった。

これで、明日の朝には魔法力も回復し、
毒も癒せるようになるはず・・だった。



「う・・・、うう・・・。はぁ・・・はぁ。」

「カイン、どうした?」

苦しげな声を漏らしたカインの顔を
アレンが覗き込んだ。

「アレン・・・まだ・・・夜??」

「何言ってんだよ。
 もうすぐ朝だぜ。大丈夫か、お前。」

脂汗を流しているカインは
夜見た表情よりも苦しそうだった。

「朝・・・もう・・・?本当に?」

「本当だよ。お前、魔法力回復したのかよ?」

「アレン・・・ごめん。
 ずっと眠ろうと思って目を瞑ってたんだけど、
 腕が痛くって、全然眠れなかったんだ。」

「ええっ・・・!?マジかよ!
 それって・・・。」

アレンはカインの毒を受けてないほうの、
右手を引っ張ってその場に座らせた。
カインは少し目を瞑っていたが、
しばらくして目を開けて首を振った。

「やっぱり、魔法力回復してないみたい・・・。」

「えええーーーー。マジかよ。」

蒼白な顔をして、苦しそうに息をしているカインの様子からも
とても嘘を言ってる様子ではなかった。
むしろ、状況は夜より悪くなっているのだ。

その騒ぎにマリアも気付いて、
目を覚ましたようで起き出した。

「カイン、どうしたの?
 大丈夫?」

かくかくしかじかで、アレンがカインの状況を説明すると
マリアはカインに負けないほど真っ青な顔になった。

「お前、その腕見せてみろよ!」

アレンは、カインの左手の状況を確認しようとした。
長袖の服を腕めくりしてめくりあげると、
その皮膚は毒々しい紫色に染まっており、
まるで人のものとは思えないような色をしていた。

「おまっ・・・これ・・・!!」

一刻も早い解毒が必要だと感じた。
下手をしたら腕が使い物にならなくなるかもしれない。

「だ、大丈夫だよ。2人とも。
 左手は動かないけど、右手は動くから、大丈夫。戦えるよ。
 こうなったら早くラダトームに行っちゃおうよ。」

心配そうな顔をする仲間達に、
明るくカインはそう言った。

戦えるなどと言っているが、
痛みで一睡も出来なかったくらいだ。
全然大丈夫ではない。戦えるはずなどない。

「ベ、ベホイミ・・・!」

ずっと案じげな表情をしていたマリアが
カインにベホイミを唱えた。
解毒は出来ないが、せめてもの体力の回復に・・・と言う事だろう。

「マリア、ありがとう。
 ほら、アレン行こうよ。」

「けど、お前・・・。」

ベホイミを唱えたから、これでもう大丈夫なのか。
アレンには判断が出来なかった。
だが、マリアも慌てた様子でアレンに言った。

「アレン、行きましょう。
 解毒は時間との勝負なのよ。
 毒が全身に回る前に。
 ここで止まっていても仕方ないわ。」

「・・・・!
 分かった。おい、カイン荷物全部よこせ。」

アレンはカインが持っている荷物を、
装備している銅の剣以外全て預かった。
少しでも負担を減らそうと思ったのだ。

「ご、ごめん・・・ありがとう。」

火を消して、
3人はラダトームへの道を急ぐ事にした。

が、急ぎたいのだが、
全然スピードが上がらない。

毒を受けた体は、
動けば動くほど、毒が体中を巡ってしまうのだ。
一歩歩くごとに、急激なスピードで体力が奪われていく。

何度か、マリアがベホイミを試みたが、
焼け石に水状態だった。

「は・・・、はぁ・・・・っ。」

そして、ずるずると足を引きずるように歩いていたカインが、
その場にガクッと膝を着いて倒れてしまった。

「カイン!!」

「カイン、しっかりして・・・!」

その額からこぼれる汗が
地面にポタポタと滴り落ちる。
その苦しげな様子に、アレンは思わず
カインの服の袖を首袖まで切り裂いた。

「アレン、何を!」

マリアは非難するような声を出したが、
その体を見て、言葉を失った。
腕だけではない。
もはや、左半身一体にまでもが紫色になっていて、
先ほどみたより、はるかに広い範囲に毒が広がっていた。

「・・・・こ、こんな・・・!」

下手をすれば、解毒も間に合わず、
命に関わるかもしれない。
それに、尋常じゃないペースで毒が体を回っているのだ。

「なんだ・・・これ・・・気持ち悪い色だなあ・・・。」

カインも自分の体を見て、やや他人事のように呟いた。
だが、アレンもマリアも事態の深刻さを感じていた。
時は一刻を争う。

「おい、もう四の五の言ってられねえ!
 つかまれ!」

アレンはカインを背負っていこうとした。
カインの右手を引いて、抱えようとしたのだが、
今のカインにはその衝撃すら、辛いようだった。

「ううっ・・・!」

「アレン、ちょっと待って!乱暴にしないで!」

マリアはアレンの行動を制止した。

ほんの少し体を動かすだけで、カインは激しい痛みが走った。
そしてさらに体を動かせばそれだけ毒が全身に回るのだ。

アレンもそれを悟って、カインをもう一度下ろした。

「ご、ごめんね。
 2人とも。僕のせいで、足を止めさせて。
 気にしないで、先へ行って。
 少し休んだら、追いかけるから。
 あとで、ラダトームで会おうよ。」

カインは申し訳なさそうにそう言った。

自分で治せるはずの毒なのだ。
それが、自分のせいで治せないのだ。
仲間達にも迷惑を掛けている。
本当に自分が情けなく思えた。

「馬鹿!カイン、何を言ってるのよ!
 あなたを置いていけるわけないじゃない!!」

マリアは泣きそうな声で頭を振ってカインに叫んだ。
だって、昨夜も眠れなかったくらい痛かったのに、
休んで追いかけてくるなんて絶対無理なのだ。

それなのに、そんな事を言うなんて、
自殺行為だとしか考えられなかった。

「くっ・・・。こうやってても仕方ねえ。」

アレンは毅然と立ち上がった。

「カイン、悪いけどここに置いていくぞ。」

アレンの声が聞こえる。

「・・・!?何を馬鹿な!
 アレンあなた何を言ってるの!??」

続けて、思わず非難めいた声で、
アレンを咎めようとしたマリアの声が
カインの耳に届いた。

だけど、そこまでだった。

意識が薄れてきたのだ。
2人が何かを言い争っているが、カインにはもう聞こえなかった。

だけど、アレンのその選択は正しいと思われた。
自分を置いていけば良い。

もし次に自分が目を覚ますことがあれば、
そのときは多少なり魔法力が回復しているだろう。
その際はアレンたちを追いかけていけば良いのだ。

それが出来ないのなら、それまで。
自分はここで死ぬ運命だったのだろう。

そう思いつつ、カインは深遠の闇の奥へと意識を手放した。



+++

あれからどれだけ時間が経っただろうか。
何かが聞こえる。
最初は誰の声か分からなかった。

もしかして、もう自分は死んでしまったのだろうかと思った。

だけど、少しずつ意識が鮮明になってきた。
この声は仲間達の声だ。
なんだろうか?何を話しているのだろうか?

何故だか、二人の声を聞くのがとても久しぶりな気がして、
それがとても嬉しい気がして、
カインはゆっくりと目を開けた。

「・・・・!!!起きた!!
 カインが目を覚ましたぞ、マリア!!」

自分を覗き込んでいたのはアレンだった。
あれ、何故アレンがここにいるのだろうか?
自分を置いていったはずなのに。

見渡すと、この場所は先ほどと同じ場所だった。
足元にはマリアも座り込んでいた。
見ると目を真っ赤にして手で口を覆っていた。

「・・・・?ど、どうしたの?」

そう言いながら、カインは体を起こした。
と、簡単に起き上がることが出来て、初めて気付いた。
あの毒の苦しさが消えているのだ。

見ると、アレンはその手に毒消し草を持っていた。
どこかから毒消し草を手に入れて
自分を助けてくれたのだろうか?

「アレン、それ、どうしたの?」

尋ねられて、アレンは自分が手にする毒消し草を見た。

「お前がぶっ倒れるから、俺あわててラダトームまで
 猛ダッシュで買いに行ったんだよ!」

「えっ!?」

倒れる寸前、アレンがカインを置いてどこかへ行こうとしていたが、
もしかして1人で道具屋まで往復して、
買ってきてくれたのだろうか?

「本当に・・・!?買ってきてくれたの!?
 ごめん、アレン迷惑かけて!
 でも、ありがとう。見て、おかげですっかり元気になったよ!!」

そう言って、カインは拳を作って見せた。

アレンもほっと喜んでくれるかと思いきや、
何故か、むしょうに苦い顔をしている。

あんまり嬉しそうな顔じゃない。

「・・・アレン・・・?
 ど、どうしたの・・・?怒ってるの?あの・・・本当にごめん。」

やっぱり、迷惑をかけて怒っているのだろうか。
自分のせいで、余計な心配もかけて、
余計な労力もかかって、余計なお金まで使わせてしまったのだ。

反省して、思わずうなだれるカインに、
アレンはぶんぶんと頭を振った。

「違うんだよ!
 だから、俺はこの毒消し草を使ってねえんだよ!
 せっかく買ってきたのに・・・!」

なんと、このせっかく買ってきてくれた毒消し草を使った訳ではないらしい。

「へ?で、でも、毒はすっかり消えて・・・。」

こんなに自由に体が動くようになったのに・・・
そう思って顔をあげると、マリアと目が合った。

マリアはカインの顔を見ると、
安堵したように、笑みを浮かべた。

「カイン、元気になって良かったわ。」

「え、・・・マリア・・・?
 もしかして君が治してくれたの・・・?
 キアリーをしてくれたの?」

マリアはこくりと頷いた。
昨夜までマリアはキアリーを使えないといっていた。
つまり、このほんの数時間の間に、
新たに魔法を覚えたというのだ。

「本当はもっと早く覚えておくべきだった。
 ごめんなさい。キアリーはあなたが使えるから
 慌てて覚える必要がないって思ってしまったの。
 苦しい思いをさせてごめんなさい。もう大丈夫?」

「あ、ありがとう!
 う、うん。もうすっかり元気だよ。」

カインはうなずいたが、何だか逆に少し情けない気分になる。
せっかくマリアが、自分に頼ってくれていたのに・・・。
自分はアレンと違って、『この分野なら任せて』と言えるものが
全然ない気がする。

「私、これからはもっと必死に魔法を覚えるわ。
 もう少しで完全回復魔法のベホマも覚えられそうよ。
 そうすれば、私達の旅ももっと楽になると思うの。」

完全回復魔法なんて、使えたらすごい事だ。
死に瀕していても、たちどころに復活するだろう。

マリアの魔法は、完全に自分を追い抜いて行っている。
いや・・・最初からマリアの方がすごいと思っていたが。

「いや、マリアのせいじゃなくて、俺の戦略ミスだよ。
 カイン、悪かったな。これからもちゃんとお前らの状況を見極めて
 指示を出していくぜ。」

アレンまでそんな事を言う。
違う違う、アレンのせいでもマリアのせいでもない。
どう考えても自分の責任なだけだ。
魔法力の計算も体力の計算も出来ず、
果ては動けなくなって2人に迷惑を掛けたのだ。

「違うよ、2人とも。全部僕のせいだよ。
 迷惑かけてごめん!」

そう言うと、アレンはふっと笑った。

3人とも、今回の事で心を引き締め、
さらに成長したいと思うようにもなった。

「まぁ、なんだ・・・。
 誰が悪いって言うか、まだまだ俺たちはひよっこだな。
 でも、とにかく、無事で良かった。
 これからは足元巣食われないように気をつけようぜ。」

その言葉に2人は頷いた。
アレンはそして親指で背後の城を指差した。

もう、目的の城は、ここからでも見える距離だった。


「さあ、今度こそラダトームへ行くぜ。
 3人でな!」




- 終 -

2014/09/04

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 冒険中3人小説です。「船旅」と「ラダトーム」の間らへんかなあ〜。
 リクエストで「3人でピンチな話」と頂いて、そういえば毒がらみやってなかった気がしたので、やってみました!
 サマルとムーンでレベル差で覚える魔法ってあるじゃないですか。そんな感じ。
 
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