「おおお!!よくぞこのラダトームを
尋ねて下さった。
ロトの英雄たちよ・・・!」
ラダトームのラルス王は、
3人の来訪を心より嬉しそうに迎えた。
「ラダトーム王、カインを連れてきました。」
アレンは一礼して、王にそう告げた。
「と、突然の来訪をお許し下さい。
すぐに帰ろうと思ったのですが・・・。」
カインは、ラダトーム王にそう言った。
アレンもマリアもどうやら、既に一度ラルス王と
対面していたようだ。
「いやいや、時間が許すのであれば、
どうぞゆるりと過ごしていって下され。」
「ありがとうございます・・・。」
「時に、カイン殿、アレン王から聞き申した。
何と、奇病に罹られたとか・・。」
アレンはラルス王に何と伝えたのだろうか。
こんな他国の王にまで心配をかけるなんて、
本当に申し訳なくて、カインは穴に入りたい気分だった。
「話は聞いた。
何やらパデキアを探して、このラダトームを尋ねて下さったと言う事だが、
相申し訳ない。先の戦いでの負傷者の治療で、思いのほか
消費されてしまっておってな・・・。」
「お伺いしました。どうぞ、お気にになさらないで下さい。
私は大丈夫ですので。」
王に謝られては、大丈夫だと問題ないと言う他無かった。
「種にも薬効や栄養は詰まっておると言う。
あまり数はないが、服用されるのが良いじゃろう。」
「そうなんですか、ありがとうございます。」
それは知らなかった。後で試してみようかと思った。
「うむ、間違いない。カイン殿何も案ずる事はない。」
ラルス王のその言葉は心強かった。
「ありがとうございます。
それより、王様、何か話があると
お聞きしたのですが・・・・。」
「うむ、そうなのだ。
一度、話をしなければならないと思っていたことがある。」
そう言うとラルス王は緊張した表情になった。
そして、王は人払いをした。
王室に残ったのは、ラルス王と、
アレン、カイン、マリアの4人だけとなった。
何の話だろうか?
アレンもマリアも、王への挨拶だけかと思っていたので、
少し緊張した面持ちになった。
「どうか楽にして聞いて欲しい。
そう、そのソファにでもどうぞ掛けて下され。」
促されるままに、アレンたちは
ソファに座ってみる事にした。
「王様、どうかなさいましたか?」
「私がカイン殿に案ずる事はないと伝えたのには
理由があってな・・・。」
「・・・??」
「話は聞いておるよ。
サマルトリアの王妃を失う事となった憎きその病。」
「・・・・・・。」
カインは少し眉間に皺を寄せた。
王は何を言い出すのだろうか?
さっぱり想像が出来なかった。
「カイン殿だけでない、アレン殿、マリア殿も同じだ。
大いなる祝福と、歓喜の中で生まれてきたのだ。」
「え・・・・?」
大いなる祝福・・・?何だそれは。
「少し昔話をしてもいいだろうか?
あの日は本当に暑い日だった。」
18年前・・もうすぐ19年となる、その太陽の月、太陽の日、これが3人の誕生日だった。
「ラダトームでは、次々に届く吉報に、国中が歓喜の声をあげたものだよ。」
ラダトーム王は少し懐かしそうに、遠い目をした。
「おぬし達は、同じ日に生まれたが、
元々はそんな予定でなくてな。
・・・そんな話は、父君たちから聞いておるか?」
アレンたちは互いに顔を見合わせた。
誕生日が同じだと言う事以外は、特段何も聞いていることなどなかった。
ラダトームは勇者アレフの妻、ローラ姫の出身国だ。
すなわちアレンたちと同じ血脈を継ぐ国といえる。
同じロトの親戚国の吉報の知らせが、
次々に伝えられたとしてもおかしい事ではない。
「ふふふ、懐かしい話じゃよ。
最初に生まれたのはアレン殿だ。
元気なお子で、待望の男児だと言う事で、
ローレシア王の歓喜はすごかったらしい。」
ローレシア王は少し他の二国の王よりも高齢だった。
ようやく授かった跡継ぎに喜んだと言う話は聞いている。
その後、魔法力が一切ないことが判明し、
国内ではその事で、物議を呈していたが、
父や母はそれにも変わらずアレンを愛していた・・だろう。
「アレン殿は、しかも予定ちょうどだったらしいな。
しかも安産で。
親にも何一つ心配をかけることなく、出来た赤子だと
かの王は喜んでおったよ。」
アレンは少し顔を赤らめた。出来た子なんかじゃない。
魔法力がないことで、きっと心配もいっぱいかけただろう。
だけど、それだけ喜んでもらえてたと言うのは嬉しかった。
「次に生まれたのがマリア殿じゃ。
少し話をさせてもらっても良いかな?」
「は、はいっ。」
マリアは既に両親もいない。
当時の事を知る同郷の人間は誰もいない。
こんな話を聞かせてもらえるなんて、貴重なことだった。
「マリア殿が生まれたのが、
昼頃じゃっただろう。一番暑い刻限じゃ。」
太陽の月、太陽の日とは一年でも一番暑い日といえる。
その中で昼となれば一番暑い時間帯だろう。
「マリア殿は相当に早産だったと聞く。
想定外のことで、ムーンブルク城内は俄かに浮き足立ったらしいな。
1ヶ月ほども早く産気づいたそうな。」
「そ、そうだったんですか・・・?」
「何もこんな一番暑くて大変な時期に、
慌てて生まれてこなくても大丈夫なのにと、
用意が出来ておらんで大変だったと、
かつてムーンブルク王が言っておったわ。」
ラダトーム王はそう言って懐かしそうに笑った。
「そのせっかちさんな赤子は、生まれたときは
本当に小さかったそうでな。最初は泣く声も小さくてな。
こんなに小さく生んでしまって、
可哀想な事をしたと王妃は悩んだらしいが、
いやいや、マリア殿はしっかりした赤子で。」
しっかりした赤子とは言いえて妙な表現であった。
「小さくても、しっかりと泣いて、しっかりと乳を飲んで、
疲れて乳房を咥えたままそのまま眠ってしまったり、
頑張り屋さんで、ほんに愛くるしい、かわいい赤子だったそうだよ。
おっと、あんまり女性に言う事じゃなかったかな。」
「い、いいえいいえ・・・。」
生まれた頃から、小さかったマリアは
きっと両親にも心配をかけていただろう。
今はこれだけ大きく成長できた事に改めて感謝していた。
そして、今は聞くことが出来ない話を聞けて、マリアは嬉しかった。
同時に、子供を生み育てるとは、
命を繋いでいくと言うのは、本当に大変な事なんだと気づかされた。
「そうして、最後がカイン殿じゃ。」
カインは、ここまでの話に色々な思いを馳せながら聞いていたが、
事自分に話が向かって、緊張した面持ちになった。
「サマルトリアの王も嘆いておった。
カイン殿はどうやら予定日をとう〜に過ぎてたらしくてな。
本来ならば一番に報告をするはずと思っていたのが、
ローレシアとムーンブルクに先を越されて、いつになっても生まれんと。」
その話を聞いて、そんな赤子の頃からのんびり屋だったのだろうと
背中に嫌な汗が流れた。
「サマルトリアの王は、当時まだ若かったからな。
それに優秀な王と名高かった。」
そうなのだ、父は若くして王となり、
敏腕な腕を振るっていたという。
それなのに、子供は予定通りに生まれてこずで
きっとあの性格の父だ、相当いらいらしていたに違いない。
「父は相当怒っていたでしょうか?」
「怒る?何を怒る事があろうか・・・。
サマルトリアの王はいつも言っておったよ。
待ち遠しくて待ち遠しくて堪らないと。」
「・・・・・えっ」
「それに対して、王妃殿が
何一つ慌てることなく、この子のペースで
いつまででも待てば良いのだと、王をなだめていたそうな。」
亡き母の話を聞いて、
少し涙が出そうになった。昔から本当に優しい母だった。
「だが、結局日が変わるという直前に、
夜になって、急に産気づかれた王妃は
カイン殿を生んだそうじゃな。まるで他の2人を追いかけるように。
のんびりやだか、あわてんぼうだか、良く分からんと
王は生まれた子を抱いて、笑っておったそうじゃよ。」
今も父には心配を沢山かけているだろう。
そして、いつも怒られているばかりだが、
昔から自分は父に心配をかけていたんだと思った。
「じゃあ・・・どっちかと言うと、
カインが一番、俺たちの中で、弟分・・な訳か?」
「まぁ双子などでも、後に生まれた子が弟になるから、
そうかもしれんな。」
「ははっ。で、俺が一番兄な訳だな。」
アレンは何か嬉しそうにそう言った。
3人は貴重な話を聞かせてもらえて嬉しかった。
が、何故そんな話を唐突にラダトーム王がするのか?
「ラルス王、何故今そんな話を・・・?」
マリアがラダトーム王に問いかけた。
何か今の状況と、関係がある話なのだろうか?
「うむ、3人が歓喜の中で生まれてきた状況は
今の通りだが・・・
実はその時ラダトームでも一つの変化があったのじゃ。」
「ラダトームで・・・?」
そう言うとラダトーム王は立ち上がって、
玉座の奥に何重にも隠された、古びた宝箱を取り出した。
「なんですか、それは?」
3人は少し身を乗り出した。
宝箱は古い年代を感じさせるものであった。
おそらくラダトームで代々大事に伝えられたものなのであろう。
「これは、このラダトームで代々守り続けてきた
至宝じゃよ。」
「至宝・・・?」
ロトの各国で守ってきた至宝と言えば、
旅の間にアレンたちは出会っている。
ロトの印に始まり、剣や盾に兜、鎧といったロトの所有物だ。
ラダトームでは、兜のことを聞いた覚えがある。
とすると、これはロトの装備品ではない。
「紛れもなく、これはロトが持ち帰った代物じゃよ。」
「ロトが・・・!?」
アレンはロト伝説を振り返って思考をめぐらせた。
そうして、一つの結論に至った。
「お分かりになるかな?
光の玉じゃよ。」
「光の玉・・・!!!」
3人はその言葉を聞いて、言葉を失った。
かつて勇者ロトが魔王の闇を払い、
世界に光を取り戻したと言う光の玉。
伝説で聞いたことがあった。
今それが目の前にある・・・・。
が、やはり話が見えない。
何故それをラダトーム王は見せようとしているのか?
「ふふ、光の玉は世界を明るく照らす希望と言われておるがな。
この事は、各国の王たちには伝えておらなんだが、
それが、おぬしたちの誕生したあの日、
一層明るく輝いたのだ。」
「・・・・・・!」
「こんな事は無かったこと。
我が城内は色めきたったものだ。
もしかして魔王出現の兆しなのかも悪く取ったものもおる・・・。」
ラダトーム王は在りし日を思い出した。
あの頃は、自分も若かった。
「まぁ、それは私なのだがな。」
少し申し訳なさそうにラダトーム王は3人につげた。
勇者の再来、それはそれに対する悪しき存在の再来をも意味する。
ラダトーム王はそれを恐れ、ついには、逃げてしまったのだ。
アレンたちはラダトーム王が頭を下げている理由を思い至った。
しかし、こうやって光の玉として、形として、
それを見せられれば確かに恐怖も感じるのかもしれない。
何といっても自分たちは当時、赤子だったのだから。
「そんな事、もう終わったことじゃないですか。」
アレンはそうラダトーム王に言った。
もうそんな事アレンたち3人は何も気にしていなかった。
実際、世界は平和になったのだから。
「そう・・・言って貰えると、勇者殿達には頭が上がらんよ。」
自分よりよっぽど年若い英雄たちを
ラダトーム王は少し眩しそうに見つめた。
「そして、本題なのじゃ。
結局光の玉の輝きは、魔の再来を意味したものではなった。
世界を照らす明るい光なのじゃ。」
そう言って、ラダトーム王は少しだけ、宝箱をあけて見せた。
ほんの少しの隙間から、眩しいほどの光が漏れ出た。
「わっ、眩しいっ!!」
眩しさに思わず3人は目を細めた。
明るい、こんなに明るく力強い光は初めて見た。
その様子を見て、すぐにラダトーム王は宝箱を閉じた。
そしていったのだ。
「その光はな、今も全く衰えてはおらんのだよ。
じゃからな、3人の勇者殿たちに不幸などある訳がない。
絶対にな。私はそう確信しておるのじゃよ。」
その言葉は3人を強く勇気付けた。
- 続く -
2013/09/30
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