58.港町


アレンたちが旅を終えてから、近海の海は平穏を取り戻した。
おかげで、今まで危険だからと避けられていた航海が
逆に今少しブームとなっていた。

そのため、港町のルプガナは昨今ないほど人々でにぎわっていた。

ミゲルは勇者を船に乗せた『勇者の船乗り』として名を馳せ、
日々航海に忙殺されていた。
海が好きなミゲルにとっては、それ自体は苦ではなかった。

今日の航海も順調無事だった。
まぁ、航海と言うほどの距離でもない。
ルプガナから、アレフガルドへも行っていない。
近海をぐるっと回っただけだ。

船の魅力と言えば、
自力で、世界の果ての果てまで移動できる事だろう。
そこには身分の違いも何もない。

どうせ船に乗るのならば、もっと遠くまで航海したいものだが、
今まで海の恐怖に脅かされていた人たちにとっては、
少しの間海に出るだけでも十分大冒険らしい。

まぁ、それは仕方のない事か。
海や船の魅力が真に伝われば、遠海の航海も
必要とされるに違いない。

船を港につけて、今日の航海も終わり。
ぐぐっと両手を上空に延ばして一息ついていると、
なにやら若いものから手紙を受け取った。

「ミゲルさん、手紙が来てますよ。」

「手紙?どこから?」

「差出人は書かれていません。
 『ローレシア』とだけ・・・。
 怪しいですね、捨てちゃいますか?」

「何、ローレシア・・・!?」

そう言うと手紙をゴミ箱に捨てようとする。
遠国ローレシアに知り合いなんて、ミゲルには一人しかいない。
そして、その一人とは・・・。

信じられないが、もしそうだとすると、
差出人名が書かれてないのも致し方の無いこと。

「それを捨てるなんてとんでもない!」

「は?いつも怪しい勧誘はすぐ断れって言ってるくせにー」

『勇者の船乗り』と言う名前だけが先走って、
いろんな所から引く手数多なミゲルであった。
いちいちかまうなと若い者には教えてある。おそらくそれと思ったようだ。
が、今はそれどこではない。

ミゲルは手紙を分捕った。

「おい、手紙の事は誰にも言うな!
 分かったな!」

「わ、分かりましたよお。」

憮然とした顔で頷くと、若い者は去っていった。

ミゲルは手紙を隠して、自室に戻ると
誰もいないのを確認して、おもむろに手紙を開けた。

中には、しっかり名前が書かれていた。
「アレン」と。

「っおおおおおーーー!!!兄ちゃん!!元気だったか!?」

思わずミゲルは手紙に話しかけてしまった。
勿論返事はない。
そもそも最早、兄ちゃんなどと呼べる間柄ではない。
相手はローレシア王だ。

実際には王になった所を見たわけでも知らせがあったわけでもないが、
「ローレシアのアレン王子が、凱旋したその日に王に即位した」と言うニュースは
一時期世間を席巻していた。

ミゲル自身は船からアレンが下りてから以降、もう彼らには会っていない。
だが、そのニュースは非常に感慨深く受け止めていた。

彼らが英雄である事は分かっていたが、
いよいよこうやって全世界で認められたのだ。
すごい事だ。喜ばしい事だ。
それは同じ船に乗ったミゲルにも非常に嬉しい事だった。

アレンは、ミゲルの船にしか乗らないといっていたが、
それは社交辞令だっただろう。

正直彼らにはもう二度と会う事は無い、その可能性が高いと思っていた。
何故なら船も船乗りもローレシアにもいるからだ。
わざわざ遠方のルプガナに指令を出す必要も無いのだ。

実際、先日も世界が平和になってはじめてのロト祭がラダトームで行われていたが、
ローレシアもサマルトリアも、各国の船乗り艦隊で、ラダトームに出向いたという。

田舎のルプガナにいる自分にお声など掛かりはしなかった。
少しそれが寂しくもあったが、それはそれ、アレンたちが立派になったという事だ。

で、そう納得してたのに、急に届いたこの手紙はなんだ?
何事だ?もしかして何かあったのだろうか?

『前略。唐突な手紙で申し訳ないが、
 お前に頼みたい事がある。』

アレンらしいというか、いきなり唐突な文章が始まっていた。

『頼みたい事とは、他でもない。
 船を出してもらいたい。お前じゃないと行けないし、頼めない。
 何箇所か回ってもらう事になると思うのだが、至急で願いたい。』

「・・・!?ど、どうしたってんだ・・・?」

『理由は簡潔にしか書けないが、今度会ったときにでも話す。
 行ってほしい場所は・・・・・。』

アレンの手紙は全編を通して簡潔に書かれていた。
ひとしきり目を通して、ミゲルは目をむいて驚いた。

「こ・・・これは・・・・本当か・・・?」

そうして、手紙の末尾も唐突に終わっていた。

『多忙な所、急で申し訳ないのだが、
 きっと聞いてもらえると思っている。
 取り急ぎ、ローレシアまで来てもらえると助かる。
 以上。』

「こ、これは行くしかないだろう!
 え、えらいこっちゃ・・・!」

確か明日も船を出す予定が入っていた。
だが、そんなものは全てキャンセルだ。
・・・キャンセルと言うか、若い者に任せれば良い。

自分はアレンの指示に従う。
最優先で。それがあの時の約束だ。

アレンが船に乗りたいといったら、
予約をあけて、駆けつけるのだ。
それが自分の役割だと思っている。

「おーい!!今から、船を出すぞ!」

ミゲルは立ち上がると、自室を飛び出した。





***





ルプガナを飛び出したミゲルは
船をこっそりとローレシア近くに停泊させた。

「さてはて、どうしたものか・・・。」

そしてしばし思案にくれた。悩ましい事があった。

ミゲルは旅の道中も船を下りていくことはしなかった。
なので、全世界を回りはしたが、
その門番兵などとは顔を合わせてはいない。

顔が割れているのは、アレン、カイン、マリアの3人のみである。

アレンの指示なのだから、堂々と会いに行けば良いのかも知れないが、
もしお忍びの旅だったりしたら、兵たちに取り次いでもらうのは、
都合が悪い・・・。

そんな事を考えていると、暗闇に乗じて、
何者かが船の近くまでやってきていた。

「ミゲルさんですか?」

暗闇のため、相手の姿が良く見えない。
アレンではない。

だが、自分の名前を知っているところをみると、
きっとアレンの使いのものだろう。

「そうだ。兄ちゃんはいるかい?」

「にいちゃん・・・?」

何気なく尋ねておいて、ミゲルはハッと口を押さえた。
この国の王をつかまえて、「兄ちゃん」はないだろう。
不敬罪に問われるのではないか。

「も、申し訳ありません!!
 あの・・・ア、アレン様はいらっしゃいますか・・・・?」

必死に慣れない敬語を使って、言い方を変えて、
ミゲルは再度使いの者に尋ねた。

「ふふ。本当に船乗りのミゲルさんに間違いないようですね。
 アレン様が仰っていたとおりだ。
 少々お待ちくださいませ。」

素早い身のこなしで、その使いのものは城の方へと去って行った。
アレンの側近のものなのだろう。
怪しまれなくて良かった。

ほどなくして、使いのものが戻ってきた。
アレンを連れて。

一国の王であるアレンはきっと変装でもしてくるのかと思いきや
思いのほかラフな格好だった。

「おお、ミゲル!本当に来てくれたんだな。
 早かったな。来てくれてありがとう。
 元気だったか?」

「そりゃあ、兄ちゃんの願いとあれば・・・!
 ・・じゃなくて・・・。アレン様の願いとあれば・・
 いくらでも駆けつけますです。」

変な敬語のミゲルにアレンが笑った。

「気にするな。昔のままで・・
 いや、昔のままが良い。」

アレンはそう、少し懐かしそうに目を細めた。
少しの間に大人びた気がする。
きっと旅の間になかった苦労をアレンはしてきたのだろう。

「じゃあ、早速だが、船を出してもらおうか。」

そう言ってアレンは船に乗り込もうとする。

「え、兄ちゃん自ら?良いんですかい。
 ローレシアの国は王様不在になるのでは?」

「大丈夫だよ。
 うちにはディアンとか言う案外優秀な奴がいるから、
 俺が数日・数ヶ月いなくっても大丈夫だ。」

ミゲルはその名前は知らないが、
アレンがそう言うのなら間違いはないだろう。

「アレン様、どうかお気をつけて・・・・!」

先ほどミゲルの名前を確認していたアレンの側近が
祈るようにアレンに声をかけた。
それは、そうだろう。心配だろう。

大事な王を預かるのだから、安全に航海し、無事返さないいけない。
ミゲルはそう心に誓った・・・・・が・・。

「ん?なんだ、お前は付いて来ないのか?」

「え・・・・?」

アレンはそう言って、戸惑う側近に手を伸ばした。
・・・まさか連れて行くというのか?ミゲルは驚いていた。
アレンは旅に、ミゲル以外の一般人を連れて行くことはしなかった。

「私もご一緒して良いのですか?」

「嫌じゃなかったら。って言うか、付いて来ないのか?」

「い、嫌な事はありません!!
 では私もご一緒させてください!」

「ん。」

なんだなんだーー??
ミゲルは少々驚いてこの展開を見守っていた。
別に船に一人一般人が増えても何も航海に影響はないのだが・・。

アレンが妙に親しげに側近を連れて行こうとしている。

たたたっと足早に船に乗り込むその側近は、
ミゲルの前でぺこりと一礼した。

「ミゲルさん、私はクレハと申します。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。」

「あ・・・ああ。」

暗闇と遠めで良く分からなかったが、
至近距離で見ると、中々どうして美人な女性だった。
側近兵などではなかった。彼女は何者だ?

「なんだなんだ、姉ちゃんは、兄ちゃんの良い人かい?」

「良い人?」

「アレンの王様の恋人っちゃあ、王妃様って所かい?
 さながら、新婚旅行みたいだなー。」

そこまで言っておいて、
ミゲルは、またこの軽すぎる口を呪った。
目の前のクレハが顔を赤くしたり青くしたりしながら、
とんでもないと手を振った。

いくらなんでも初対面の女性に言う言葉じゃないだろう。

「まぁ、確かに言われれば、そう言う面もあるかもしれないなー。
 つーか、クレハそんなとこで止まってねえで行くぞ。」

しかし、アレンは赤くなるでもなく
クレハの手を引いて、奥の船室へと向かっていった。

ほええ〜〜〜。

驚いた。これは驚いた。
旅の道中アレンから特定の女性の話など
あがった事は無かったのに。

時が経てば、人は大人になるものである。

「おーい!!ミゲル!船、出すなら出そうぜ。
 暗いうちにいっちまおうぜ!」

驚いているミゲルに向かって、アレンが叫んだ。
どうやら、本気で急いでいるようだ。
その様子はとても幸せな新婚旅行と言う雰囲気ではない。

手紙に書いてあった内容を考えると
確かにそんな心境ではないだろう。

「ああ!すぐに出航だ!!」

ミゲルは帆を張り、船を走らせた。




***



アレンたちの航海は順調だった。
海の魔物たちはすっかり落ち着いているらしい。

多少嵐で海が荒れることはあったが、
それくらいは物の数ではない。

アレンたちは、『最初の目的地の小島』を経由してから、
次にムーンブルクへと向かった。

「こちらに、マリア様がいらっしゃるのですね・・・。」

クレハはムーンブルク城を見つめながら、ごくりと呟いた。

以前話をしたときは大人しい女性のような印象だったが、
ローレシアに来たときのマリアの迫力はすごかった。
やはりアレンの旅の仲間であるマリアも普通の女性ではないのだろう。

「さて、じゃあマリアに会って、
 ちょいと八つ裂きにされてくるか〜。」

「ええっ・・!?アレン様、だ、だ、大丈夫なのですか・・?」

クレハは心配そうに、船を下りようとするアレンを見つめた。

先日、喧嘩・・と言うか激しく言い争いになり、
マリアには顔も見たくないといわれたアレンだ。
その後、マリアに会うのはこれが初めてだ。
手紙を出して、会いに行くとの連絡も出していない。

「まだ、マリア様怒っていらっしゃるかもしれませんよ。」

おそらくカインが倒れてしまった事の原因をアレンにぶつけたものと思うが、
マリアの怒りたるは、すさまじかった。
マリアにとって、カインの存在は相当大事なものなのだろう。

「まぁ、それはそれでだな。
 だから八つ裂きにされてくるって。死なない程度に。」

「ア、アレン様・・・。」

「でも、大丈夫だ。あいつに会わないと始まらないんだ。」

「・・!」

そう言うアレンの顔は、迷いは無かった。

ミゲルは2人のやり取りをおろおろしながら聞いていた。
マリアがアレンと喧嘩をした?
しかも顔も見たくないといわれた?
八つ裂き覚悟でアレンはマリアに会いに行くという・・。

なんだ、それは。

もちろんここに出てこないもう一人の仲間が
またキーになっているのは分かる。

アレンたちがとても彼を心配しているのは
手紙の文面からも分かる。

それはミゲルも十分理解できる。
だから、必死になって船を走らせたのだ。

そして、いつかと同じように
アレンは『あれ』を手に入れた。

これで磐石、と思いきや、
アレンはまだそれを保険だと言った。
まだ考えている事があるらしい。

だから、ムーンブルクまでやってきたのだ。

「じゃあ、すぐ戻るから。
 ちょっと行ってくる!」

そう言って、アレンは一人船を下りて行った。




***


「よう、マリア。」

唐突にアポイントも取らずにやってきた
旧友の姿に、マリアは半ば呆れたように言った。

「よく、根も葉も乾かないうちに顔を出せたものね。」

つい先日に、マリアは反省しないようであれば
アレンとは二度と会いたくないと言ったのだ。
面と向かって。
だが、アレンはそれを真正面から受けて答えた。

「急いでいたからな。お前に確認したい事があった。」

マリアは少しその勢いに飲まれた。
でもアレンは急いでいたから、来たのだ。直接マリアに会いに。

「その様子だと、少しは反省したの?」

「どうだろうな・・・。
 とりあえず俺は色々考えたんだ。」

「何を?」

「なあ、カインどうしてるんだ?」

質問に対して、アレンも質問を返した。
考えうる最速で動いたつもりだが、
カインの現状はアレンの耳に入っていない。
今どうしているのか心配だった。それはマリアに聞くのが早いだろうと思った。

「サマルトリアにいるわよ。大丈夫よ、良くなっているって言ってたわ。
 私も・・・ここ数日は少し考える事があって、
 会ってはいないわ。」

「そっか・・・。
 でもあいつ、結構やばい状態なんだろう?
 もし、その原因の一つが俺のせいなんだとしたら・・・・」

そこまで言ってアレンは首をぶんぶん振って言い直した。

「いや、そうでなかったとしても、絶対俺はカインを助ける。
 そんな事は昔から決めてるんだ。」

そのまっすぐな言葉に嘘はないだろう。
アレンはそう言う人間だ。
昔から仲間を助けるとなったらいつも全力だ。
ただし、その方法があれば・・・だが。

「でも、どうやって?」

「とりあえずミゲルに声掛けて、
 これを取ってきた。」

アレンはそう言って道具袋から、それを取り出した。
マリアはそれを見て驚いた。
これは、簡単に手に入るものではないからだ。

「これは・・・世界樹の葉・・!?」

「まぁ、カインが倒れたとなれば、
 とりあえずこれかなーって思ってさ。」

一度は呪いに倒れて生死の境をさまよったカインを助けた
世界樹の葉だった。

「気持ちは分かるわよ。
 でも・・・ちょっと・・それって・・・。」

「分かってるよ。
 あいつ別に死んだわけでもないし、
 これは保険みたいなもんだ。
 とりあえず絶対最悪の事態は回避するんだ・・・。」

アレンは自分に言い聞かせるようにそう言った。

「これだけじゃなくて、
 あとさ、俺、少ない頭をフル回転させて考えたんだ!」

「・・・・何を?」

「俺、俺・・・覚えている事を全部ひっくり返して考えた。
 なあ、俺の記憶が正しかったら・・・・
 ずっとずっと前のことだ、俺、お前と喋った気がするんだ。」

アレンの必死の様子にマリアは驚いた。
しかし自分がアレンと喋った事?何の事か検討もつかなかった。

「6歳のときのロト祭でだ。
 なんかさ、お前が教えてくれたじゃないか!?
 病気にすっごいよく聞く葉っぱだか根だかあるって・・・」

あの時はアレンは小さかった事もあり、
そんなもの不要だと一蹴してしまったのだ。

「6歳のときって・・・・。」

ラダトームでのロト祭。
そこで初めてアレンは同じロトの血を引く仲間たちに会ったのだ。
まだ仲間でも友達でも、なんでもなかったその頃。

幼いアレンが、幼いマリアとたまたま喋っていた事。

「確か、お前の国にも同じものがあるって
 マリア言ってたじゃないか!?」

古い古い記憶をマリアも辿って思い出した。
あの時の会話を。

『でも何か、これ変なの。花じゃなくて、人参みたいだ。』

そうやってつまらなそうにするアレンに、
マリアが教えてあげたのだ。

『とっても栄養があって病気のときに飲むのよ。
 皆大事に育ててるんだわ。ムーンブルクにもあるわ。』

と。マリアもそれを思い出した。

「パデキアの芽のこと・・・?」

「そう!!それだ!!なあ、あっただろう?
 お前教えてくれたじゃないか・・・!!」

アレンは半ば何かにすがるように、マリアに訴えた。

本当に懐かしい小さい頃の思い出だ。
確かにマリアはアレンとそんな会話をした。
あの時は全く興味を示さなかったのに、
10年以上経ってアレンはよく思い出した。

本気でアレンは考えて考えて、知恵を絞って思い出したのだろう。

「そうね・・・。確かにパデキアの芽は、万能だというわ。
 病気にも効くかもしれないわ。
 アレン・・・よくそんな事思い出したわね。」

マリアも驚いていた。
そういわれて、アレンもぱっと表情を変えた。
自分の記憶違いではなかったと分かり、嬉しかったようだ。

「だろ!?ムーンブルクにもあるんだろ!?」

「残念ながら・・・ムーンブルクには無いわ。」

「え・・・?」

「城が崩壊したときに、全て駄目になってしまったわ。」

今ムーンブルクに植えられている植物や花は全て、
復興の際に新たに植えられたものだ。
かつての面影はほとんどと言って無くなってしまっているのだ。

「でも、・・・おそらくラダトームには今もあるんじゃないかしら。
 行ってみる価値はあると思う。」

「本当か!!じゃあ、ミゲルの船でラダトームへ行こう!
 カインも乗せていく。マリア、お前も!!」

アレンはマリアにそう言って手を差しのばした。
まるで喧嘩した事なんて、もう忘れているかのようだ。

だが、それもマリアのあの時の気迫がアレンのこの行動力を
生み出したのだろう。

そう思うと、マリアはふっと思わず笑みを浮かべた。

「マリア・・・?」

「ああ・・・ごめんなさい。なんでもないわ。
 でも、そうね・・・。私はまだ少し行けないの。」

「ムーンブルクのことが大変なのか?」

確かに、復興を半ばにムーンブルクを離れるのは気がかりだ。
だが、別に数日離れるくらいは大丈夫だろう。

マリアが考えているのは違う事だった。

「言わなかったかしら。私は私で考えている事があるの。
 それが、もう少しでまとまるの。」

「え・・・・。何だそれは?」

「・・・それは・・・・って・・・あなたカインに言いそうだから、
 今は言わないでおくわ。」

「・・・・??な、なんだよ・・。」

どうやらアレンの行動とは別にマリアも考えている事があるらしい。
しかもそれはカインに秘密らしい。

「でも、どっち道、アレンの件とは別に、ラダトームにも私は用があるの。
 だから、少ししたら私も行くわ。」

「一体・・お前は何を考えているんだ?」

マリアの考えている事も少しは教えてくれても良いだろうと
アレンは再度問いかけた。

「これは・・・私じゃなければきっと出来ない事よ。
 カインには少し嫌われるかもしれないけどね。」

「・・・・・?」

マリアがカインに嫌われる事をする?
何のことやら、アレンには到底見当がつかない。

盛大に首を傾げているアレンにマリアは少し笑って言った。



「ラダトームで会いましょう。アレン。」 
 
 
 




- 終 -

2013/09/21

▲



 リクエスト小説「冒険後のミゲル」とあわせまして、「29.疑問・解決」の続編となります。
 さぁ、いよいよ第4の仲間(若干過言)のミゲルさんも登場です。
 どうでしょうか?少しは話がいい方向に動きましたかね。当事者のカイン不在で進んでいますけれど。
 パデキアの芽がどうのこうのっていうのは、アレンたちの初対面の小説「2.出会い」での話です。
 そーんな大昔の話が少々の伏線だったらしいですよ(驚)。
 そして、マリアはマリアで何かを考えているようです〜。

 続き⇒「40−1.薬・ドラッグ」

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