44−1.危機


「王よ、いきなり王子に手をあげるとは少しやりすぎではないですか?」

「ふん。」

長い間、この親子関係を見守っていた二人の師であるオリーブは
たしなめるように、サマルトリア王に釘を刺した。
自他共に厳しい態度である王だが、手を出すのは珍しい事だ。

「あいつが悪い。
 『王位継承権を含めて、自分の地位や居場所を含めて
 持っている全てをマイに譲渡する』と言った。
 一体この国を何だと思っているのだ、あいつは。」

カリカリしている王にオリーブは声を掛けた。

「ようは、王はカイン王子が可愛いんですな?
 次期王はカイン王子だと考えていたんですな?」

「・・オリーブよ。・・・・・そこは、そう言う訳ではない。
 あれは、ローレシアのアレン王子とは違う。
 私はあいつが王に、人の上に立つのに向いているとは思わない。」

「と言うのは・・・?」

同じロトの血を引き、大きすぎる使命を成し遂げた2人の仲間達と違って
カインは何が違うと言うのか?オリーブは興味深そうに聞いた。

頑迷な王は、このオリーブにだけは心のうちを明かすことが出来る。

「不安定すぎる。」

「不安定?」

「そうだ。
 アレン殿を見てみろ。皆アレン殿を見て、引っ張られるように
 普段以上の力を発揮するだろう。
 カインの場合は逆だ。不安定で、道を誤って、迷惑をかける。
 本人もそれを自覚して、民衆に謝罪をするだろう。
 あいつが素直なのは良いが、頭を下げてはいかん。
 これでは皆が不安になるだけだ。」

それを聞いて、確かにそれはそうかもしれないとオリーブは考えた。
だが、それなら、それで・・・

「皆が王を支えようとする、そんな国の形になるのではないでしょうか?」

「今までは、不安ながらも、それも無くないと思っていた。
 だが、それはカインが民衆と同じ方向を向いている場合のみだ。
 あいつが見ているものは、もう・・・そうではないのだ。」

王は深くため息をついた。
カインが向いている方は、サマルトリアではなく、
ムーンブルク王族の唯一の生き残りのマリアなのであろう。

「それを腹立たしく思っているのですか?」

「・・・・・・。」

ムーンブルクには王族が女性のマリア一人しか残っていない。
勿論何とかしてやりたいと、同じロト同盟国の王としては考えている。

思案に暮れている王の思考を遮るように
オリーブは再度問い重ねた。

「では、王よ。マイ様はどうでしょうか?」

次にオリーブは王に、王女の適正を尋ねた。

「マイか。あいつは、確かに・・・・・」

王が、口を開きかけたとき、
唐突に無作法に、王の間の扉が開かれた。

「と、父さま!!!」

入ってきたのは、先ほど殴られて追い出されたはずのカインだった。

王は不機嫌そうに立ち上がると、
カインに詰め寄った。

「無礼者!
 声も掛けずに扉を開けるとは、何のつもりだ!
 先ほどの話の続きのつもりか!?」

「え・・・あ、申し訳ありません。
 そうではなく、マイはここに来ていませんか?
 どこにもいなくなってしまったのです・・・!」

見るとカインは城中駆け回ったのか、息を切らしていた。
王は思わずオリーブと顔を見合わせた。
先ほど話題に上げようとしたところだが、顔は見ていない。

「王子よ、どうしました?大方その辺にいるでしょう。
 マイ様も、子供でもありませんし・・・・。」

助け舟を出すように、オリーブがそう言った。
それでもまだカインは不安そうだった。

「でも部屋にもいないし、城中探しても見つからなかった。
 もしかして外に出て行ってしまったのかもしれない・・・。」

「何故、そう思うんですか?」

「喧嘩を・・したんです。
 マイを傷つけたかもしれない。」

しかし、あれは喧嘩と言うのだろうか?
先ほどまで機嫌よく笑っていたマイが急に声を荒げて走り去ってしまった。

「あとは城内にいるとすれば・・・宝物庫かなあ。」

この王の間でもないとすれば、後行ってないのは宝物庫だ。
ロトの盾がずっと保管されていた場所で、
盾自体は今もアレンが持っている。

「宝物庫・・・。」

「宝物庫・・・は、あまり宜しくないですな・・。」

カインの呟きに、
王とオリーブが何かを確認しあった。

「何がですか?」

「宝物庫は、この国でも闇の深い場所ともいえる。
 それをロトの盾の力で長年封じていたのだが・・・。」

「えっ!?そんなの初めて聞いたんですけど!?」

そういえば、カインがハーゴンの呪いを受けたのも
宝物庫だった記憶がある。

・・・でも以後は、普通に入ったり出たりしていたが?

「ま、まぁ普通なら何事も起きませんからな。
 わざわざ闇を背負いたいだとか、
 闇を呼び起こしたいとか考えない限りは大丈夫です。
 あっはっは。」

オリーブがカラカラと笑っているが、笑い事ではない。

闇を背負いたい・・?
なんか、身に覚えがない事もないが、
今はそれより後者のほうだ。

まさか、マイのやつ、変なこと考えてはいないだろうか・・・?

「とりあえず、宝物庫ですね!
 行ってみます!!」

そう言って、部屋を出ようとしたカインだったが、
何だか廊下がくすんで見える。

「なんだ・・・?これ?」

まるで国中にガスでも振りまかれているようだ。

「わあああ!カイン様!
 ま、魔物です!魔物の襲撃です!!」

そういう兵の後ろにガストが見えた。
おおよそ、こいつのマヌーサだろう。
兵が剣を振るっても面白いくらい空振りしている。

「ほ、本当に、魔物が・・!?」

王室から王とオリーブも身を乗り出した。

「どけい!」

そうして兵がマヌーサに掛かっているのを見て、
カインを押しのけて、王が一歩足を踏み出した。

「おのれ、このサマルトリアに魔物が現われるなどと、
 決して生かしては返さん!!」

そういうと王が印を結んで魔法の詠唱を始めた。

「聖なる力よ、我が手に集い、
 全てを燃やし尽くせ・・・!!!
 ギラーー!!!!」

王の手から生まれたギラの炎は
ガストを覆い包んで燃やし尽くした。

「おお!さすが我が王!!」

マヌーサに掛かっている兵が王に感謝して頭を下げた。

「愚か者!!
 しゃきっとして戦わんか!他に被害はないのか!?
 ここは良いから、見てこんか!」

そう言って背中を叩くと、兵は慌てたように
走っていった。

「父さま・・・・・。」

父が戦っている所なんてカインは初めて見た。
きっと自分を押しのけたのは、
魔法が使えない自分の代わりにギラを使ってくれたのだ。

「な、何だ。
 いつも偉そうに言って、あの程度の魔法か・・・とでも思っているか?」

王はカインの視線を感じると、いやそうに顔を背けた。
この息子はギラどころか、一時は最上位のベギラゴンまで使ったと言う。
だが、カインは敬意を示して答えた。

「いいえ。あんなカッコ良いギラは初めて見ました。」

「ふんっ。馬鹿を言うな。魔物が出ておる。
 お前は隠れておれ。まともに戦えんだろう。
 兵の指揮も私が取る。」

つい先日まで重病人だったカインをその気遣うような言葉だった。
だがカインは王に上申するように、別の事を依頼した。

「じゃあ父さま。
 まだ、分からない事だけど、この事がマイがやったことだとしたら、
 僕ら家族と、あとは城の兵だけで、この件は収めよう。
 決して、城下に魔物が逃げないように、皆に指示を出して下さい。」

「!」

すぐにそこまで頭を巡らせたカインに父は少し驚いた。

「先生、父さまのことをお願いしますね。」

「カイン王子はどこに!?
 病み上がりの身だし、魔法も使えないのでは戦えないでしょう!?」

そう言うとカインは、首を振った。

「やだなあ。
 あんまり僕を甘く、見ないで下さいね。」

そう言って笑うカインには今まで感じたことのないような
鋭さと言うか、凄みを感じた。 

その視線に、
一国を滅ぼしたような魔物の軍勢や巨大な邪神を相手にして、
勝利を手にしたのは、たった3人の人間だったのだと、
この穏やかそうな王子もそのうちの一人だったのだと思い出させた。

「そこまで言うならば、とっとと行け!」

「はい。じゃあ、ちょっと行ってきます。」

気負いなくそういうカインは、大物なのかもしれないと
残された二人は思った。




***



一旦、自分の武器を取りに部屋に戻ったカインは、
少しだけ考えて、そこに残されていた世界樹の葉を手にした。

それから・・・。

「・・・餌でも食べる?」

ちょうど頃良く、部屋の窓辺にやってきた小鳥に細工をした。

「保険、保険・・・と。」

誰とも無くそう呟くと、今度こそ宝物庫へと向かった。




***




「・・・・・今の・・・何・・・?」

マイはしゃがみこんだまま、何が起きたのか、分からないでいた。

宝物庫の奥には、こんな赤く輝く渦が存在しただろうか?
何かが自分の頭上を越えていった。

いまだに赤く怪しく輝いている。

「やだ・・・気持ち悪い・・・。何これ。
 こんなの無かったよ・・・・?」

宝物庫に飛び込んで見張りの兵に口止めしておけば、
誰も自分を見つけられないだろうと言う
マイは、少しの悪戯心でここに飛び込んだのだ。

赤く輝く渦をマイが再度覗き込んだとき、
再びその渦から何かが飛び出してきた。

「・・・!!」

さっきのは、目にも留まらぬ勢いだったが、
今度は飛び出したそれは、飛んでいかずに、その場に羽ばたいて
マイを見下ろしていた。

「ま・・・・魔物・・・!?なんで!?」

確かに、宝物庫に閉じこんで、
魔物がいた過去の方が良いとか考えたりはした。

だが実際は魔物たちは今はアレンたちによってほぼ駆逐されて、
残った魔物も人を襲うことは無い。

こうも敵意をむき出しにするとは確かに昔の魔物のようだが・・・?
いや・・・だけど、そんな事はあるはずがない。

などと考えてるうちに、魔物は炎を吐き出した。

「ええっ!!?
 やだやだ!!」

その場で、マイが逃げ惑っている間にも、
赤い渦からどんどん魔物が飛び出してくる。

待て待て、これってまずいのではないか?
どうやら、幻の類ではなく、本物らしい。
この小さな宝物庫のどこにこれだけの魔物がいたのかと不思議に思う。

そしてその隙に、魔物たちが宝物庫の扉を無理やり開けて、
飛び出していく。

サマルトリアの城内を、魔物たちが襲うということだ。

「待て!!魔物め・・・・!!
 きゃあっ」

慌てて、出て行こうとする魔物を呼び止めようとするが、
背後から別の魔物に襲われる。

ふわふわと空を飛び小悪魔のようである。
大体なんなんだ、こいつは。初めて見る魔物ばかりだ。

「くっ・・・・ギラア!!!」

背後の魔物に、ギラを仕掛けてマイは少し距離を取った。

だが、魔物は意にも介さず、ケタケタと笑うと
すーっと息を吸って、大きく吐き出した。

そして、その息が巨大な炎に変わった。

「・・・・・・・!!!」

自分のギラより、大きな炎だった。
ベギラマを唱えようかと思ったが、ベギラマは一度しか唱えられない。
魔物の数が多いのに、今使ってしまっていいのか・・??

などと考えているうちに、
炎はあっという間に襲い掛かってきた。

「キャアァァ!!」

思わずマイは身を縮めて、防御して、
その熱さを覚悟したのだが、炎はいつまで経ってもやってこない。

「・・・・・?」

恐る恐る目を開けると、そこには兄が立っていた。

「お・・・・お兄様・・・・?」

「マイ。大丈夫だった?」

ホッとしたように安堵する兄を見て、思わず笑ったが、
あれ?炎はどこへ行ったか?

「ぼうっとしてるけど、本当に大丈夫?
 どこか怪我した?」

「え。ううん?」

「ねぇ。マイ一体何が起きているか、どういうことか分かる?
 今サマルトリア城内に魔物が飛び出してきてるんだけど。」

「た・・・多分、あれ・・・・。」

マイは赤い渦を指差した。
渦は再度怪しく輝き始めている。
あそこから、また魔物が飛び出してくるんだろうか?

「何あれ。あんなのあったっけ?」

マイは兄も不思議そうにしているので驚いた。
ロトの盾はここにあったというし、
初めて入室した訳でもないのに。

「・・・・・・。
 マイはここに来た時に、
 本気で魔物がいたって、昔の方が良いんだって考えた・・?」

「え・・・・あ・・・うん・・・。」

正直にマイは頷いた。

「僕も、よくは分からないんだけど、
 あの赤いのって、過去にいける旅の扉だった・・と思う。
 やっぱり、この宝物庫、なんか変な力があるのかな・・。」

一度アレンたちとラダトームの近くの赤い旅の扉に飛び込んだことがある。
逆に言うと、過去から何かがやってきてもおかしくないということか。

「わ、私が変なことを考えたせい!?
 ご・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい!!
 どうしよう、どうしたら・・・」

マイが心配そうにしているが、カインは気にするなと言った。

「大丈夫だよ。
 それより、まだ城に出ている魔物の数はそんなに多くないから、
 扉の鍵を閉めてしまおう。外の魔物は父様たちに任せて、
 魔物もあの旅の扉も、ここで全部倒してしまおう。」

「え・・・ええ!?」

そう言うなりカインは宝物庫の扉を中から閉めてしまった。
鍵を閉めてしまうと、金の鍵が無ければ外からは開けられない。

「まぁ、確かにマイが・・変なこと考えて、
 魔物と戦いたがったりしたせいかもね?
 ちゃんと責任取るように!」

そう言って持ってきていた銅の剣をマイに差し出した。
不安げなマイにカインが笑った。

「冗談だよ。
 僕も責任取って、ちゃーんと付き合うから。隼の剣を持ってきたんだ。
 実戦なんて久しぶりー・・・でもないか。」

笑っているカインの袖をマイが引いた。

「待ってよ!お兄様戦えないでしょう!?
 さっき魔法が使えないって・・・!」

「なんで僕皆からそう言う風に思われてるんだろう。
 別に、もう大丈夫だよ。
 それにさっき、試して分かったんだけど、
 完全に魔法使えないわけじゃないみたいなんだ。」

なんだか、カインが少し嬉しそうに見えた。

「でも、あんまり喋ってる時間がないみたいだ。
 グレムリンがイライラしている。」

どうやらあの小悪魔はグレムリンと言う名前らしい。
グレムリンは再び炎を吐き出した。
避けないと!とマイがその場から逃げるが、カインが動かない。

「お兄様・・?!」

そして襲い掛かってくる炎に向かって、
手を差し伸べた。

ちょうど炎がその指先に触れたかと思った瞬間、
炎は熱気だけを残してふわっと消えた。

「・・・・消えた!?」

そして、そのままカインは隼の剣を二度振るって、
グレムリンを倒した。

「やっぱり。出来た。」

戻ってきて、満足げに頷くカインの手をマイが奪い取って見つめた。

「すごい!何なに!?今の何!?
 お兄様魔法使えないんだよね!?」

「正確にはそう言う訳ではないみたい。
 押さえられてるけど、ほんのちょっとだけ、
 炎の精霊は僕に応えてくれてるみたいなんだ。
 全部使えなくなった訳じゃないんだよ。」

だから、ギラを唱えようとして、
空気が舞い上がったり、手が熱くなったのだ。
これはギラが使えなかった頃に経験した頃がある。

炎の精霊が答えてさえくれたら、
かつてやっていた炎を消す事も出来るだろう。

「・・・???じゃ、じゃあ前みたいに
 すごい魔法が使えるの!?」

「うーん、魔法としてはやっぱりギラも使えないんだよねー。」

「??」

やっぱり、駄目じゃないかと思ったけど、
カインにとってはそうでもないらしい。

「ほら、喋ってる間に魔物が飛んでくるよ。」

マイが視線を向けると、
骸骨男が襲い掛かってくるのが見える。

「うわっ。気持ち悪い!!」

「そいつは、魔法が効くから!」

カインのアドバイスを聞いて、マイはギラを唱えた。
本当に、ギラが効いたらしい。骸骨男が崩れ落ちた。

「本当だ〜。」

兄はどうやら、出てくる魔物全ての特徴が分かるらしい。
やれラリホーに注意だの、マホトーンに注意だの、マヌーサに注意だの
色々と助言をしてくれる。

これが兄が旅で詰んできた経験なんだろうか。

それに剣はさほど得意でもないといっていたが、
目にも見えない剣さばきで、魔物を倒している。

これなら・・・大丈夫かも・・・!

そう思ったとき、
背後から素早い動きで、マイに襲い掛かる魔物がいた。
魔物と言うか、獣と言うか。
マイに牙が届く前に、何とかカインがそれを阻止した。

「キラータイガー・・!!こんなのまでいるのか・・・。」

「な、何この虎・・・!?
 お兄様、こいつの弱点はなに!?」

戦う気満々のマイであったが、
カインは首を振った。

「下がってて!危ないから。」

「ええっ。何でよ、急に。
 私も戦えるんだから!!」

そう反論してみても、確かにキラータイガーの動きは素早かった。
カインの攻撃もかわして、鋭い爪と牙で攻撃を仕掛けてくる。

「でも・・・・でも、お兄様一人じゃあ・・・。」

隼の剣を使っても、あまり決定的なダメージが与えられず、
徐々に深い爪あとが体に刻まれていく。

「お兄様!!」

最初はマイには防御でもさせていようと思ったが、
何か思いついたように、カインはマイに指示した。

「じゃあ、マイ。
 僕に向かってギラを打って。」

「は・・・はぁ・・・!?
 いくら喧嘩したって言ったって、お兄様にそんな事出来ないよ!」

ぶんぶんと首を振るマイに、カインが笑った。

「そう言うことじゃなくて。
 一緒にあいつを倒そう。
 だからマイ、ギラを打ってくれる?」

「一緒に・・・・倒す?
 わ、分かんないけど・・・分かったよ!」

走り回るキラータイガーが狙いを定めて
飛び掛ってくるのを見て、
マイが慌てて、ギラを唱えた。

すると、カインはギラの炎に剣を差し出した。
何をしているのかと思いきや、
炎は一層大きく、剣にまとわり付いて燃え始めた。

「よい・・しょっと・・・・」

そこに、ちょうどキラータイガーが飛び込んできた。

「やああ!」

そしてその喉元に躊躇無く、炎の剣を突き刺した。
キラータイガーはうめき声を上げると、
そのまま崩れ落ちた。

「す・・・すごい!!お兄様すごい!
 これがお兄様の戦い方なのね!?」

「うーん、正確に言うと「だった」だけどねー。」

過去形で言ったのは、自力ではギラも使えないからという意味だろう。

「また来た!!
 お兄様行くよーーーー!!!」

別のキラータイガーが襲い掛かってくるのを見て、
マイは再度ギラを唱えた。

あまり大きな炎ではないから、
きっとギラ単体では倒せる魔物ではないのだろう。
兄も剣だけでは少し手にあまるかもしれないが、
ちょうど、炎と剣を使えば、2人で力を合わせれば
倒せない魔物ではなかった。

「やった!やった!!
 お兄様、見て!私たち息ぴったりだったよ!!」

マイは大喜びでカインに手を差し出した。
兄はそれを見ると笑って、一緒に手を差し出した。

「うん、マイ、僕ら息ぴったりだったね!
 この調子で行こっか。」

そう言って、カインはマイと手を合わせた。

「うん、うん!やろう!」

正確には息を合わせてもらっただけかもしれないが、
でもマイは嬉しかった。

カインは一人で全部戦う訳でもなく、十分マイの事を理解して、
アドバイスをしてくれるのだ。
これは魔物の知識もさることながら、
マイの事を理解していなければ出来ない事だろう。

「私まだまだやれるからね!
 ベホイミだって出来るから!任せて!」

「うん。頼んだよ。」

マイの言葉に頷きながら、
カインは、だが、少し別のことを考えていた。

魔物はどんどん出てくるばっかりで、キリがない。
あの旅の扉ごと破壊しなければ、
マリアのイオナズンほど強力な魔法をマイが使えるわけでもない。

「・・・・マイの事は絶対に僕が守るから。」

そう言うと、カインは少しポケットに手をやって、
先ほど自分が持ってきたアイテムを確認した。

出来る事なら、もう一つあるかもしれない。

自分は完全に魔法力が0になった訳ではないらしい。
なら、ギラを使うよりも少ない魔法力で使える魔法が、一つだけある。

禁じ手の魔法ではあるが、
世界樹の葉があるなら・・・使えないことも無い。



- 続く -

2013/10/31

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 「39.悪夢」の続きになります。
 ようはサマルトリアのマイちゃんとカインの話の続きです。
 今回は少し王様も出しつつ・・・とか、言ってる場合じゃない話の展開ですが、なんかピンチです。
 よろしければ続きへどうぞ。

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