アレンたち3人は久しぶりに船に戻った。
「おーおかえりなせえ。随分遅かったですな。」
船に戻ると航海士ミゲルは笑顔で迎えてくれた。
「ああ、色々あってな。船を守っていてくれてありがとう。」
帰ってきたアレンの様子を見て、ミゲルは目を見張った。
ほんの数日見ない内に、逞しくなっているように見える。
アレンだけではなく、カインやマリアもそうだった。
「いえいえ。そんなこたあ。そちらこそご無事で良かった。
しかも兄ちゃん達は何やら逞しくなった様子だ。」
「へ?そうかあ?武器が変わったからじゃねえか?」
アレンはロトの剣、カインは鉄のやり、マリアはみかわしの服を
新たに装備していた。
「いやあ。それだけじゃないと思うんだけどなあ。」
ミゲルはまだ不思議そうに3人を見つめている。
「それより、船を出して欲しいんだ。」
「承知しました。どこへ船を出しましょう?」
「ああ、えっと・・・・・カイン。説明しろ。」
アレンは会話の矛先をカインに向けた。
やっぱりまた忘れてるんだと思い、くすっと笑った。
「えっと・・。この船でアレフガルドの南東にある
聖なるほこらの近くにつけてもらいたいんですが。
その後はメルキドの街からはるか南にある大灯台へと向かう予定です。」
「大灯台なら分かります。船乗り達の目印ですから。
しかし聖なるほこら・・と言うと?」
熟練の航海士であるミゲルも首をかしげている。
あまり聖なるほこらは有名ではないらしい。
カインは竜王からもらった世界地図を開いた。
「へーー、これまた精巧な地図ですな。」
思わずミゲルは目をむいた。
ルプガナからアレフガルドへの地図くらいなら
よくあるが、これほど広範囲で、緻密な地図は見たことが無い。
「どこでこんな地図を手に入れたのです?」
どこかで売ってるのなら、自分も欲しいくらいであった。
「どこって・・・、えーっと竜王からもらいましたけど?」
ちょっと困った様子で、カインは正直に答えた。
「は・・・・?りゅお?」
「はい。竜王から。」
ミゲルは大きな目をこれでもかと言うくらい見開いている。
どうやら驚いて声も出ないらしい。
しばらくしてミゲルは声をあげた。
「竜王はやっぱり生きていたんですかい!??」
「あーいやー・・・・」
「そして兄ちゃんたちが、因縁の竜王を打ち倒し、その地図を奪い取って
来たと言う訳ですね!?すげえぜ!!」
まぁ、普通はそうなるよね・・・と思いつつ・・
何と答えようかと思っていると、アレンが口を挟んできた。
「いや、わりーけど、そういう訳じゃないんだ。
それより船は回せんのか?」
「あ・・ああ・・・そうでしたね。
それで、聖なるほこらと言うのは?」
カインはもう一度地図に目を落とした。
確かアレフガルドの南東の離れ島にあるとラダトーム王は言っていた。
「この辺かな?」
カインはマリアに聞きながら、大雑把に島の辺りを指でなぞった。
「そうね、その辺りだと思うわ。あと、大灯台と言うのは
ここでしょうね。」
メルキドからはるか南の大灯台。
少しここからは距離があるが、真南に島が見えるので
それのことだろう。
「なるほど。わっかりました。
その辺までは船を走らせたことが無いので、何が出るか分かりやせんが、
竜王を倒した兄ちゃん方なら大丈夫でしょう。」
ミゲルはすっかり自分たちが竜王を倒して戻ってきたのだと
思っているようだった。
「悪いけど、違うから。俺たちこってんぱんに負けたの!
だから、古傷えぐらないでくれない?」
アレンの中で、完敗した竜王戦はちょっとしたトラウマになっているらしい。
「え・・・ええ!?って事は・・・・えええ!?」
驚いた様子で3人を見渡すミゲル。しきりに下の方を見ている。
「何?別に怪我とかしてないけど?」
「足がある・・・。新手の幽霊っすか?」
「いや、死んでねーーーし!!!」
アレンは激しくミゲルにツッコミを入れた。
どうも話が進まない。
アレンは仕方なく、ラダトーム上陸後の顛末を話した。
「は〜〜。なるほど。竜王ってやつぁ、それほど悪い奴じゃないってことですか。」
ミゲルがそう呟くとアレンたちは竜王を振り返って口々に言った。
「つかみ所の無い奴だけどなあ。」
「そうだったねえ。」
「あまりお会いしたくはないですわ。」
「もう一回リベンジに行くけどな。
とりあえずはまず俺たちは聖なるほこらへ行ってロトの兜をもらって、
戦力アップするという予定だ。」
力強く宣言するアレン。
「聖なるほこらと言うところにはロトの兜が眠っているんですか?」
「そう、そうらしいんだ。ロトの剣はここで手に入れてきたんだけどな。」
アレンは腰に指した剣を指差した。ロト印のマークが刻まれている。
「ほえーー。それはすげえなあーー。
ロトの剣を見れる一般人なんてそうはいねえよ。」
眼福と言わんばかりにミゲルは頭を下げた。
「心配しなくても一般人じゃなくてもロトの剣なんてそうそう見れねえぜー」
アレンは嬉しそうに答えた。
「よおし、兄ちゃん達の言うことよく分かりました。これからの旅の流れも。
だが、ここから先は俺も知らない海域だ。どんな魔物が出るか
分からないから気をつけてくれ。」
ミゲルは3人に注意を促した。
海の魔物は徒党を組んで現れるし、もちろん昼夜関係なく現れたりする。
油断は禁物であった。
「そのことだけど、アレン、カイン、試してみて良いかしら?」
マリアはアレンとカインの方を見て尋ねた。
例の魔法を試してみるのだろう。
「おお、やってみろ。」
「お願いしまーす。」
「ん?姉ちゃん何をするんだ?」
「魔物封じよ。少しでも旅が安全になるように・・・。」
マリアは魔道師の杖をかかげて、あの魔法を唱えた。
「トヘロス !」
一見何も変わらない様子だったが、
海が穏やかになっていた。
「どうかしらね?」
「まぁ、これで少しでも魔物の出現が減ったら楽だよなあ。」
船は進行を続けていたが、
魔物が出てくる気配はなかった。
「はぁーー・・・姉ちゃんもすげえな。」
この3人についていけば、すごい体験ばかりだと
ミゲルは心底そう思った。
そして一行は平和な船旅を続けた。
****
しばらくして・・・アレフガルド南東の離れ島へとやってきて、
船を停泊した。
再びアレン達はアレフガルドの地へ降り立った。
島は木々が生い茂って、見通しがあまりよくない。
「どこにあるのかなあ?聖なるほこらって。」
「ここからだと見えねえけど・・・森の中を進んでみるしか無いんじゃないか?」
薄暗い森の中を、アレンたちは何かに導かれるように進んだ先には
古びた小さなほこらが見えてきた。
「あ、あれかな!?」
その小さなほこらは年代を感じさせる古い作りである。
しかしその歴史のせいかあちこちが破損しており
いつ崩れ落ちてもおかしくない有様である。
「ここって人がいるのかな?」
カインは思わず入るのを躊躇してしまうほどだった。
あまりの古びた施設であった。
しかし、こういう施設を見た覚えがある。
「ロトの時代から続くんだとすれば・・ここは相当古い建物であっておかしくないわ。
竜王の城と同じくらい築年数が経ってるんじゃないかしら?」
確かに竜王の城も完全に廃墟となっていた。
竜王自身がすぐ崩れ落ちると愚痴ていたほどだ。
「逆に言うと、だからこそ、ここが聖なるほこらで間違いないんじゃないか?
入ろうぜ。」
マリアの言葉を聞いて、アレンは確信を持ったようだ。
「うん。」
アレンを先頭にして、3人はほこらの内部へと入っていった。
中は最初真っ暗闇と言えるほどであったが、
しばらく進むと奥からの光が漏れ、道に迷うことは無かった。
「やっぱり人はいるみたいだね。」
カインが呟く。奥の光は明らかに人がいる証拠だろう。
慎重に歩みを進めて3人は奥へと進んだ。
進んだ先には一人の老人がいた。
先ほどから見えていた光は老人がつけた松明の明かりのようである。
「おぬしらは?用が無ければ帰るが良い。」
老人はこちらを見もしない。ロトの兜の門番のようなものだろうか?
「俺たちはロトの血を引きし者。
ラダトームの王より、この聖なるほこらのことを聞いてきたのだ。
こちらにロトの兜があると聞いた。譲ってもらえないか?」
アレンは素直に自分達のことや、来訪の目的を老人に伝えた。
「ロトの子孫じゃと?」
「そうだ。」
「ではその証拠を見せてもらおう。」
老人はただではロトの兜を渡すつもりは無いらしい。
確かに、どこの馬の骨かも分からない者に
大事なロトの兜を渡す訳にはいかないのは道理。
アレンはロトの子孫である証拠は、このロトの剣しかないだろうと思い、
取り出した。
「これだ。俺は既にロトの剣を持っている。これが証明だ。」
アレンは老人の前にロトの剣を差し出した。
「違う。これではない。」
しかし老人はそれを認めなかった。
「な、なぜだ!!これは本物のロトの剣だ。
証拠に竜王が重くて持てないと言ってたのに、俺は軽く装備できたんだ。
偽物ではない!」
ロトの剣が偽者であるはずがなかったが、老人は違うものを求めてきた。
「本当のロトの子孫であれば、ロトの印を持っているはず。」
ロトの印・・・
それは竜王も言っていた。ロトの子孫なら持っているはずということなのだが、
自分達3人はそれを持っていない。どこにあるのかも分からない。
「それは・・・・ない・・・。」
「ならば立ち去れ!!」
ないと告げると老人は、偽者に用はないと言わんばかりに
自分達を追い出そうとした。
「な。なんでだよ!!偽者じゃねえよ!」
しかし老人は聞く耳を持たない。このままでは追い出されてしまう。
カインとマリアは顔を見合わせた。
そして、この案ではどうかと尋ねた。
「待ってください!!なら、あのロトの兜をこのアレンに装備させてください。
装備できたらロトの子孫に間違いないのではないですか!?」
あわてて出した代替案は確かに妙案であった。
例えこの剣が精巧に作られた偽物だったとしても、
大事に保管されているあの兜が装備できれば
ロトの子孫である証明にはなるだろう。
アレンも手を叩いて、頷いた。
「そうだ!それなら良いだろう?」
しかし老人は首を振った。
「駄目だ。」
「何故だ!?」
納得がいかなかった。
ロトの血筋の証明は出来るというのに老人は駄目だと言ってきかない。
「あの兜は単にロトの子孫なら誰でも渡せると言うものではない。
認められて、ロトの印を継承したもののみに渡すことができる。
私は長年その日が来るのを待ち、ロトの兜を守ってきているのだ。」
そういうと老人はアレンたち3人を追い出してしまった。
「ちぇーー!なーんだ、あの頑固な爺さん!」
アレンはほこらの外に出るなり、大きな声で文句を言った。
ラダトーム王は、兜を代々伝えているとは言っていたが、
あのような条件は言っていなかったのに。
とぼとぼと歩きながらアレン達は諦めの境地であった。
「仕方ないわね。
本当にロトの印を持たないような未熟者には渡せないんだわ。」
「だーれが未熟者だ!」
「そんな所が未熟なんじゃないかしら?」
いきり立つアレンにマリアは呆れたように言った。
「で、どこにあるんだよ、それ!
誰が認めてくれたらそれをくれるってんだよ!?」
思わず叫んだアレンのその言葉。カインは何か引っかかりを感じた。
「今、アレンなんて言った?」
「え?どこの誰が認めたらそれをくれるんだよって・・。
またどっかのクエストをクリアしないともらえないとか、
そういうアレなんかねえ。」
ため息をつきながらアレンはぼやく。
しかしその言葉を聞いて、カインは嬉しそうに手を叩いた。
「わーかった!僕分かった!」
「あ?何?」
「どうしたの?カイン?」
カインは嬉しそうにしているが、またアレンもマリアも訳が分からない。
「僕達大事な人に認めてもらって無かったよ!」
「あん?誰?また竜王とか?」
「違う違う!アレン思い出してよ。
僕たちがどうやって旅に出たか。」
「あ?どうって、最初はマリアの生存を調査する為にだなあ。
それで俺はまずサマルトリアへ行って・・・・」
アレンは記憶を遡りながら答えた。
しかしカインが何を求めているのか分からないので、
何を答えるべきなのかが分からない。
「でしょ!?」
カインは納得した様子だが、アレンは「でしょ?」と言われても
何の事だか分からない。
「何がだよ?何言いたいんだ?」
「カイン、私も良く分からないんだけど?」
マリアもカインに尋ねた。カインは説明を続けた。
「ほら、前にアレンも分からないって言ってたじゃない!」
「ああ?だから、何の話だって!主語を付けろ、お前は!」
一人で納得した様子のカインにいらついたアレンは
軽くカインを一殴りした。
「あいた!んもー。やめてよ。
だからさ、ロト3国に伝わっているはずのロトの道具のうち、
ローレシアに伝わるものが何かが分からないって
アレンそう言ってたでしょ?」
「ああ、なるほど!そういうことね!それなら分かったわ。」
マリアもようやく気づいた様子だった。
だがアレンはまだ首をかしげている。
【 挿絵を見る 】
「だから、僕達の旅は本来はマリアの無事を確かめられたら
終了してるはずだったんだよ。」
「そうだな。」
「だから、王様も知らないはずだよ。」
「どこの王様の話だよ。」
「も〜〜。アレンのお父上だよ!」
「あ?父上?関係あるのか?」
「大有りでしょ。サマルトリアには盾が伝わっている。ムーンブルクにも
大きな武具が伝わっていたとしたら残るのはロトの鎧しかない。
これでロトの装備品は終了。
でも、ローレシアにも必ず何か伝わっていないとおかしいでしょ。
きっとローレシア王はこんなに旅が長くなると思ってないから
その話なんてしてなかったんだ。」
「・・・・・ああ。そっか・・・。そういうことか!」
ようやくアレンは頷いた。
「つまり、ロトの印はローレシアにあるんだよ!」
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2010/11/15
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