大灯台 1


「ここが大灯台ですよ。
 よく目立つでしょう。だから船乗りの良い目印になるんです。」

今アレンたち3人は大灯台まで来ていた。


聖なるほこらでは結局ロトの兜を手に入れることは出来なかった。

ロトの兜を手に入れるために必要だと言うロトの印は
ローレシアにあるだろうという目測は立ったのだが、
そこへ行くには大陸を一つ越えねばならないし、
まずは当初の予定通りの行程であった大灯台へと向かうこととしたのだ。

「おー。サンキューな。」

アレンは航海士ミゲルに礼を告げると
先頭を切って船を下りた。

「いってきまーす。」

「後をお願いいたします。」

カインもマリアも、そう告げるとアレンに続いた。





海で遠くから見たときから良く目立つ灯台だと思ったが、
真下に来てみると本当に大きな塔であった。

「で・・・・っか・・・・。最上階が見えないぞ。」

横にも縦にも非常に大きい。空までかかってるんじゃないかと
思うほどの高さである。

「一説によると、この塔はロトの住む世界へ行く為に作られたとか・・。」

「あー聞いたことある。でも駄目だったんだよね。」

「落雷や嵐で建築工事は止まってしまったらしいわね。」

カインとマリアはどこかでこの大灯台のことを聞いたことがあるようだった。

「ロトって空から来たのか?」

ロトが別世界から来た人間だとは伝説で詠われているが
実際にどこの世界なのかは解明されていないし、
所詮伝説上の話であろうとも言われている。

「うーん。どうなんだろうね。実際に見た人はもう生きていないからね。」

「俺たち生きてるじゃん。俺たちどこの世界の人間だったんだ?」

「わかんないよー。でもロトの血を引くって事は、
 ずーっと前は別の世界の人間だったのかもしれないね。」

「じゃあ。このロトの剣も別の世界からやってきたのか!?」

アレンはロトの剣を指し示した。

「さぁ・・・そうかもしれないけど・・。
 ロトはこの世界で大魔王を倒したと言うから
 ここの世界で手に入れてものかもしれないね。」

「結局わかんねーことばっかりだな。
 まぁ良いか。行くぜ。」

「うん。」



3人がダンジョンの中に足を踏み入れようとしたとき、
声をかける者があった。

「ここに何の用だ?」

見張りの兵であろうか?

「ここに紋章があると聞いて来た者だ。」

「紋章を探しに来たのか!?」

見張り兵は驚いた様子だ。

「そうだ、何がおかしい?」

アレンは見張り兵に尋ねた。

「紋章は物ではない。道具でもない。」

「???」

「紋章は己の心に刻まれると言う・・。
 良いな?」

いや、良いな?と言われても、何も良くない。
さっぱり分からない。
紋章は物でも道具でもなく、心に刻まれる・・・・。

どういうことだ?

「スイマセン、どういう意味ですか?」

カインも分からなかったらしい。見張り兵に問いただしていた。

「言い伝えである。私にはその意味は分からない。」

おい、分かってないことを
重要機密事項のように言うな。

「そうですか・・ありがとうございます。」




結局そのまま見張り兵に目礼して大灯台の中に踏みこんだ。

「お前どういう意味か分かったのか?」

「いや、ぜんっぜん?」

なんだよ、分かってなかったのかよ。
神妙に一礼したから何か気づいたのかと思った。

「でも十分じゃない?
 どうやらここに紋章があるらしいってのは事実みたいだから。
 それが分かれば十分だよ。」

「そうね。紋章を見つけたら、きっとその意味も分かるはずよ。
 探しましょう。」

なるほど。行き当たりばったりだが、そうするしかないだろう。




しかし、数分後俺たちは後悔した。
大灯台の内部はまるで迷路のように入り組んでいた。

「確か、この灯台、上にも高かったよなあ。」

「そうだね。5階以上は少なくともあるだろうね。」

「たけえなあ・・・。あ、そうだ。俺良いこと思いついた!」

「良いこと?」

アレンはそういうと道具袋の中をあさり始めた。

「何探してるの?」

カインが尋ねるとアレンは道具袋から見慣れたマントを取り出した。

「風のマント!」

「これ着けとけば、紋章見つけ次第すぐ脱出できるだろ?」

風のマントの効力はドラゴンの角で確認済みである。
アレンはそういうとマントを身にまとった。

「まさか飛び降りるって事なの?アレン。」

「そんなことしなくても僕リレミトできるよ。」

口々に批判されてしまった。

「リレミトって洞窟から脱出する魔法じゃないのか?」

「塔でも大丈夫だよ。使えるよ。」

言われてみれば、飛び降りなんてリスクを犯さなくても
魔法のほうが安全だろう。
万一魔法力が尽きてしまったとき取り出して使えば良い。

しかし一度出してしまったものは引っ込みがつかない。

「・・・・・・」

アレンが黙り込んでしまった。

「ま、まあ墜落の危険があるから着けておくのは良いんじゃない?」

結局アレンは風のマントをつけたまま、大灯台の探索に入った。




一行は複雑な迷路に悩まされながらも、
ようやく2階に上がる階段を見つけた。
しかし、階段はその左右前後で合計4つもある。

「ひえーーー。どれだよ。」

「どれだか分かんないけど、とりあえずアレン!!
 後ろから!敵!!」

どうやら後ろからつけられていたらしい。
蛇を何重にも体中に巻きつけたような魔物ゴーゴンヘッドと、
ミイラ男が現れた。

「倒すぞ。俺とカインであの蛇野郎を。
 マリアはバギでミイラ男を殲滅しろ!」

「オッケー」

「分かったわ!」

言うなりアレンは蛇野郎に斬りかかった。
一撃で仕留められると思ったが、意外にも装甲が硬く
ロトの剣を持ってしても、致命傷が与えられない。

と、なると腕力に劣るカインはさらにダメージが
与えられないだろう。

「か、堅ーーっ」

案の定無理やり槍で斬りつけたようだが、
ダメージを与えられていない。

そもそも槍は剣と比べて刃が短い。
剣と同じように斬りかかってもダメージは与えられないのは必定であった。

ゴーゴンヘッドはその大きな目で睨み付けてきた。
斬りつけたはずの鉄の槍を蛇が巻きつけてあっさりと奪ってしまった。

「うわ!取られた!」

「あ、あのバカ。」

追撃を仕掛けてくるものと思ったが、
ゴーゴンヘッドはスクルトの魔法を唱えてただでさえ高い防御力を
さらにあげてしまった。

「これは・・やばいぞ・・・。」

マリアを見るとミイラ男はバギを食らっても体力があるためか
まだ息があった。

そして剣を持つアレンを狙ってきたようだ。
身体に巻きついている包帯を投げ飛ばし
アレンの腕を固定しようとする。狙う獲物は剣のようだ。

「ちぇ。あのバカと同じ手が俺に通用すると思うな!」

しかしその攻撃をかわし、アレンはカウンターでミイラ男を脳天から斬りつけた。
ミイラ男は成す術もなく崩れ落ちた。

うん、やはりロトの剣の攻撃力は優れている。

ならば、やはりあのゴーゴンヘッドの守備力が
異常に高いのだろう。
そうなると攻撃する手段は変わってくる。

先は長そうなので魔法は温存したかったが・・・

「カイン、魔法!」

「うん・・・・!
 ベギラマー!!!」

カインの手のひらから生まれた大きな炎がゴーゴンヘッドを包んだ。
さらに追撃をしようとしたが、
体力は余り無かったようで、そのまま息絶えた。

何とか魔物を殲滅したが、
やはりこの大灯台の魔物も一癖ありそうな奴らばかりのようだった。



一番奥手にあった階段よりアレンたちは2階にあがった。
そのフロアにも上りの階段が手前とかなり奥の方に二つ見えた。

「今度はどっちだろう・・?」

「そもそもさっきの階段があってるかもわからねえけどな。
 今度は近いほうの階段に行ってみるか。」

マッピングをしていても迷いそうなダンジョンであった。

「わかったー。じゃあここの階段覚えておこうね。」



次の階段を上った先はあまり見晴らしがよくないフロアであった。

「先が見えないわね。。」

「ずっとこんなんかよ・・。」

アレンたちは壁伝いに歩きしらみつぶしにダンジョン内を探索した。

たまにいかにも怪しそうな細いわき道を発見して、宝箱を発見するものの
中に入っているのはいくらかのお金のみであった。

「ねえなーー。紋章。」

「まだフロアを全部調べた訳じゃないわ。」

「さっきの道戻ってみようよ。」

結局一度来た道を行きつ戻りつ、最早どの道を通って、どの道を通ってないのか
分からなくなってきた。

「僕達迷ってない?」

その疑問を否定する声が聞こえてこない。
やっぱり一行は道に迷っていた・・・。



「ねえ、あの壁の奥の細道は行ってないんじゃない?」

マリアが指差した先は、視界が悪く見えていなかった壁の奥であり、
そこに道があった。
行ってみると、反対側は壁がなく、吹き抜けになっていて、強い風が吹いていた。

「気をつけろよ。落ちんなよ。」

「うん。」

「ええ。」

そういえば以前別の塔でマリアが落下しそうになったことがあったっけ・・と思い出した。

「マリア気をつけてね。」

「わ、分かってるわ。」

三人はなるべく壁に沿いながら進んだ。
角を曲がりきったところに階段を発見した。

「お、これじゃね?この階段は来たこと無いよな。」

アレンは後ろの2人に話しかけた。
正しいルートを見つけられたのだろうか・・と階段を上った。




階段を上りきったそのとき、
目の前で炎が吹き荒れた。

「なんだ!?」

先頭を歩いていたアレンは身構えることもできず、
一瞬その炎による攻撃を受けた。

「アレン!!」

どうやら待ち受けていた魔物のようだ。
見るとドラゴンフライが5匹もいる。

マリアは駆け寄るとアレンに回復魔法をかけた。

「大丈夫だ。しかし、いきなり先制攻撃かよー。」

アレンは愚痴ながらも、敵に斬りかかった。
一匹を仕留めることができたが、まだあと四匹残っている。

ドラゴンフライは再び炎を吐き出した。

今度の炎は3人への全体攻撃であった。

「あっつ!!」

「うう・・・」

何とかそれを耐えたところでアレンが指示を出した。

「敵の数が多い。カイン・マリア魔法だ!」

「よーし、ベギラマー!」

頷いてカインがベギラマの魔法を唱えた。
大きな炎が吹き荒れたが、どうも敵にダメージが無い。

「あれ・・・?」

「カイン、相手は炎を使うモンスターよ。
 炎に耐性があるに違いないわ。」

マリアはそう言うとバギの魔法を唱えた。
バギは4匹にダメージを与えるものの、致命傷には至らない。

「そ、そっか。炎が効かない魔物もいるのか・・・。」

そうなるとカインの使える攻撃魔法は炎のみなので、
仕方なく武器で攻撃することとなる。

鉄の槍を手にして敵に斬りかかった。

しかし・・・・獲物が剣から槍に変わったせいか
今ひとつカインの攻撃が要領を得ない。

槍の切っ先が空を切る。

「当たらないなあ・・・」

カインはそうぼやきながらも槍を振り回す。
今度は敵に当たったが、当たったのが柄の部分で、
大きなダメージにならない。

そんなカインを見ていたアレンがイラついてきて叫んだ。

「ちがーう!槍でそんなに敵の間合いに近づいてどうすんだ!!」

「え?え??」

「だから!剣と槍じゃ間合いが違うだろ!」

「あ・・・ああ、そうか・・・。」

トヘロスを使っていて、槍を手にしてから実戦の機会がなかったのは
まずかっただろうか。

そうこう喋っているうちに、ドラゴンフライは三度炎を吐き出した。

「ま・・・またかよ・・・・・!」

これだけ炎を受けると、さすがにダメージが大きい。
特に体力の無いマリアが心配だ。

「カイン!お前は回復に専念しろ!」

「う・・・うん。分かった。」

言うなりカインはマリアにべホイミをかけた。

「マリア!カインが役に立たない。もう一回バギだ。
 残った奴は俺が斬る。」

マリアが回復したのを見て、
身も蓋も無い言い方をしながら、アレンはマリアの魔法を要求した。

その言葉を聞いて、マリアも再びバギを唱えた。
まだ息絶えず残っている1匹は、アレンが宣言通り斬り捨てた。




無事に魔物を倒したのを確認して、
カインはアレンに近づき、べホイミをかけた。

「おー、サンキュー。」

「・・・・・・いや・・・・・・・ごめん。足引っ張って。」

回復魔法の礼を言ったアレンであったが、
カインの方は言葉少なである。

「俺がさっき言った事分かるよな?」

「う・・・うん。僕槍を剣と同じように使っていた。
 これから気をつけるよ。」

落ち込んだ様子でそういうカイン。
アレンはその様子を見て、しばし考えてから言った。

「いや、無理だろ。」

「え?」

「いきなり、槍使えってのも慣れてなかったら無理だろ。」

「え・・・?でも・・・しょうがないでしょ。銅の剣はないんだから。」

折れた銅の剣に手に入れたのが鉄の槍だったのだ。

「ん。だから・・・しょうがない。」

そういうアレンは確かに苦渋の決断を下したような顔をしている。

「???」

「ほれ、とりあえず、交換。」

「は・・?何を?」

「それとこれ、交換。」

アレンは手持ちの剣と、カインの槍を指差して言った。
すなわちロトの剣と、鉄の槍を交換しようと言うのだ。

「え・・・・!?え!?は!?」

「ほら、貸せそれ。んで、これ持て。」

アレンは槍をカインから奪い取った。
そしてロトの剣を手渡そうとした。

「なんで!?ロトの剣はアレンのでしょ!?」

「だから、しょーがないだろ。お前が槍を使えてないんだから。
 別にお前にやる訳じゃないよ。後で返してもらう。」

アレンは無理やりロトの剣を手渡して、ニヤリと笑った。

「これ良い剣だぜ。すげえ切れ味なんだ。」

カインは剣の柄を握った。
そしてごくりと息を飲んだ。

「持てるだろう?お前も装備できるだろう?」

「・・・・・・うん・・・・・・。」

「だろう?大丈夫だったろ?じゃあ、行こうぜ。」

アレンはカインとマリアを促して先へ進もうとした。
カインはまだ複雑な顔をして沈黙していた。
マリアもどうしたものかと伺っている様子だ。

はーっとアレンはため息をつきながら、最後にもう一度
カインに声をかけた。



「遠慮なんだか、謙遜なんだか、単なるへっぴり腰なのか
 何なんだか俺はしらねえけど。 
 逃げるなよ。お前も同じロトの子孫なんだから。
 お前だってこれを持って戦わなきゃなんねえんだ。」



それだけ言うとアレンは背を向けて歩き出した。




- 続く -

2010/11/22
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また続いちゃいましたね。
次で終わると思いますが。

武器に関しては百戦錬磨のアレン。
なんと武器交換を持ち出してきました。

どう出るでしょうか。

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