「おらおらおらおらーーー!!
刺されたくなかったら、ひっこんでろー!!!」
アレンが鉄の槍をグルグル振り回しながらフロアを駆け巡っている。
大灯台は一フロアの広さも膨大だが、
出てくる魔物もひっきりなしに大量に出てくるのだ。
そこでアレンは威嚇も兼ねて、
槍を振り回し、魔物の群れを駆け抜けていった。
その後ろをカインとマリアも着いてゆく。
槍は剣と比べて射程距離が長いので
こういう使い方も有効なのかと、
カインは勉強になるなと思った。
「カイン、そっち!
ドラゴンフライ行ったぞ!!」
アレンのその声にふと横を見ると、鉄の槍の攻撃を潜り抜けて
襲い掛かってくるドラゴンフライの姿が見える。
カインは手にするロトの剣に力をこめて
襲い掛かられるよりも先に、ドラゴンフライを頭上から
斬りつけた。
「ええーい!!」
確かな手ごたえを感じて、
敵のダメージを確認すると、
ドラゴンフライは一撃で息絶えていた。
「よっしゃ!」
少し前を走っていたアレンもその様子を見て喜んでいる。
カインは改めてロトの剣の殺傷能力の高さを思い知った。
ここで以前の銅の剣を使っても、
敵には多少ダメージは与えられたとしても、
一撃では息絶えるほどではないだろう。
自分程度の腕力でもこれだけの攻撃力になるのなら、
アレンが持てば、どれだけ強力な武器となるだろうか。
そうは思うが、アレンは鉄の槍でも、
今までと遜色の無いダメージを敵に与えている。
いや、それどころか槍の利点を生かした攻撃をしている。
「アレンはすごいなあ。」
カインがそう呟くと、その呟きがマリアに聞こえていたようだ。
マリアは解せない表情で話しかけてきた。
「どうして、そうなるのよ?
今のはカインの攻撃だったじゃない。
どうして『アレンがすごい』になるの??」
呟きが聞かれていたことに若干気まずさを感じながら、
カインは頭をかきながら答えた。
「・・・だって、アレンがこれ持ったほうが、絶対攻撃力は高いのに・・・。
とっても似合うのに。
惜しげもなく僕にこれを渡したりするんだよ?
でもアレンは槍だって十分使えるんだ。
ホント万能だよね。すごいよね、アレンって。
・・・そう思わない?」
「万能?アレンが??」
カインの一語一句を咀嚼するように考えるマリア。
「私はそうは思わないけど・・。」
「マリア?」
「アレンはパーティーとしての攻撃力を考えたのよ。
あなたがロトの剣を使えると信頼してるからこそ渡したのよ。
一度も触ろうともしなかったあなたにね。」
「・・・・・・。」
「多少でもアレンに・・・そう思うのなら、
あなたは十分に戦うべきじゃないの?
変な迷いは捨てて、全力で。」
マリアは少し怒っているのかもしれない。
その表情を伺い知るのが忍びない。
「私は・・・私にはその剣は重すぎたのだから。」
ロトの剣は誰でもが装備できるものではない。
普通の人間ならまず無理だし、
ロトの子孫でも誰でもが可能なわけではないのだ。
ロトの剣はアレンにこそ似合うと思っていた。
アレンは敵を一匹でも多く打ち倒し、
そしてハーゴンを打ち倒さすべき人物なのだ。
だからこそ、ロトの剣はアレンが持つべきだと思っていた。
カインは自分はそれを持つのにふさわしくないと思っていた。
だけど、自分達3人が、このパーティーが一番強くあるために、
アレンは考えて、この武器を自分に手渡したのだ。
ならば、もうやるしかない。
カインは頷いた。
「はい。・・・頑張ります、全力で。」
カインとマリアが話をしている間に
魔物たちがさらに現れたようだ。
「お前ら、何をミーティングしてんだ!?」
アレンの大声でふと周りを見ると
巨大な魔物が自分達3人を囲んでいた。
ゴールドオークだ。
「一気に行くからな。ついて来いよ!」
カインとマリアは武器を手に頷いた。
「分かった!」
「あそこに階段が見える。突っ切るぞー!」
駆け出したアレン。
「マリア、先に行って。」
カインは先にマリアに行くように促した。
一気に魔物の群れに突入する場合は、
先頭の者が一番危険であるが、
最後尾の者もまた狙われやすく危険なのである。
カインはしんがりを務めるつもりだった。
アレンは鉄の槍を器用に使い、
遠方の敵をも射程圏内に捕らえて斬り捨てる。
そしてマリアは敵の群れを抜けるたびに増える
アレンの傷をすぐさま回復し、
全力でサポートした。
最後尾のカインはそんな2人を頼もしく見ながら
ロトの剣を手に、残った敵を斬り捨てていった。
「・・??なんかいるぞ。」
敵の群れを抜け、
階段を駆け下り、3人が一息ついたとき、
奥の部屋に人がいるのが見えた。
「ご老人・・・だね。」
その姿を見ると、魔物ではなく老人のようであった。
「もしかして、紋章の門番・・かしら?」
こんな魔物だらけの所で、無事でいると言うことが
まず驚くべきことだ。
紋章の不思議なご加護が守っている・・のだろうか?
老人もこの3人に気がついたらしく、
顔をあげてこちらを見た。
マリアには一瞬、その顔が急にぶれたかのように
二つに分かれて見えた。
「今のは・・・?」
前のアレンの様子を伺ったが、
アレンは何もおかしく感じていないようだった。
老人に歩み寄っていって話しかけた。
「すまないが、物を尋ねたい。ここに・・・。」
「なるほどなるほど。分かっております。
爺には全て分かっております。」
「まだ何も聞いていないのだが?」
何も聞く前から老人は、全てを了解しているのだと言う。
「あなた方はロトの勇者でしょう?」
「え・・・?あ・・・まぁ・・。」
ロトの子孫や末裔とは言われるが、
そのまま『ロトの勇者』と言われたのは初めてである。
だが、そう言われるのもあながち間違ってないのかと思い
否定もしなかったアレン。
その様子を見て、老人はさらに頷いた。
「では、探し物はこちらです。ついて来なされ。」
老人はおもむろに立ち上がると、
歩き始めた。それに従いアレンも進んだ。
「アレン!ちょっと待って!」
マリアが声をかけると老人はマリアの方を見て
一言告げた。
「お仲間も皆さん、こちらへどうぞ。」
それだけ言うと老人は足早に走りすぎた。
「はえーよ、爺さん待てよ!」
アレンもそれを追いかけて走っていった。
カインもそれに続こうとするが、
マリアはどうしたものかと動かない。
「マ、マリア!行かないと!
アレンもお爺さんも行っちゃったよ!」
「だって・・カイン、見えなかった!?
あの老人の顔の下にもう一つの顔が・・!」
「うん。見えた。」
「見えたの!?
アレンは何も気がついてなかったみたいだけど。」
「きっとあのお爺さんは魔法で化けているんだと思う。
だけどアレンには魔力がないから見えなかったんじゃないかな。
でも、どっちにしてもアレンは行っちゃったんだから、
早く追いかけないと!」
「そ・・・そうね!!」
老人が向かう先に何があるのか分からないが、
アレンを一人にはできない。
あわててマリアも走って追いかけた。
だが、2人がいくら走れども
老人の姿もアレンの姿も見えない。
もうずっと先へ行ってしまったのだろうか。
「階段が二つあるわ!どちらかしら!?」
「え〜〜!?
分かんないよ!とりあえず奥へ!」
がむしゃらに走った先には
アレンも老人もいなかった。
そこにいたのは小さな魔物たち。
カインとマリアは気づかれないように
隠れながらも、魔物たちの様子を伺った。
魔物たちは口々に叫びだした。
「ロトの勇者が現れたらしい。」
「現れた!」
「八つ裂きにしてやれ!」
「八つ裂きにしてやれ!」
「心配はいらないさ。」
「いらないさ!」
「魔界からあの神々が復活した!」
「復活した!!」
カインはその言葉を聞いて、驚いてマリアと目を見合わせた。
『神々が・・復活した・・?』
『竜王の言っていた邪神が復活したと言うこと・・?』
ハーゴンの狙いは破壊神を復活させることだと、
竜王はそう言っていた。
それには多くの生贄がいるのだとも。
ハーゴンは、それを成し得たというのだろうか?
だが、魔物たちの話を聞いていると
少し違うと言うことが分かってきた。
「これで、心配はいらない!」
「いらない!」
「間もなく、神々は残った王国へと降り立つ。」
「降り立つ!」
「そしてハーゴン様は本懐を遂げるであろう!」
「だろう!」
本懐とは、破壊神の復活だろうか。
まだ破壊神は復活していないと言うことだろうか。
しかし、残った王国に復活したと言う魔界の神が
降り立つと言う。
どういうことか・・・・などは考えるまでも無い。
あのムーンブルクと同様に、
今も残るローレシアやサマルトリアと言った王国が
襲われると言うことであろう。
カインはもう黙っていられなかった。
その様子を見たマリアは、カインの手を引こうとしたが、
手を振り払い、ロトの剣を手にして、その場を飛び出した。
「どういうことなんだ!?」
「カイン!ちょっと待って」
魔物たちは一斉にこちらを見て、ニィと邪悪に笑った。
「見つけたぞ、ロトの子孫。」
「見つけた!ロトの子孫!」
一歩歩みでた魔物のその顔は、
先ほど老人とだぶって見えたあの顔に間違いない。
「やはりな。のこのこと現れてくれたわ。」
どうやら魔物たちが自分達を呼び出す為に
あえて、あのように会話していたようだった。
全ては罠だったのだ。
「さぁ、グレムリン達よ、奴らを八つ裂きにするんだ!!」
そう指示を受けたグレムリン達は立ち上がり、
2人の周りを取り囲んだ。
「ちょっと待って!アレンはどうしたの!?」
マリアは左右を見渡して魔物たちに向かって叫んだ。
そういえば先に言ったはずのアレンがいない。
魔物はそ知らぬ様子で答えた。
「知るものか。」
アレンは先に罠にかけられてしまったのだろうか。
「許さないわ・・・!」
グレムリンなら、ルプガナでも戦ったことがある。
「マリア、グレムリンの炎に気をつけて!」
「分かってるわ!」
言うなりグレムリンは炎を吹き出した。
マリアは炎をよけて、バギを唱えた。
グレムリンにダメージを与えるが、
それだけでは倒すには至らない。
カインはロトの剣を手に斬りかかった。
ロトの剣は確実に一匹をしとめたが、
まだまだグレムリンの数が多い。
「・・・!・・・何匹いるんだ!?」
どうやらこの場所は敵の基地でもあったのか
次から次へとグレムリンが増えている気がする。
「くそ!」
また一匹を斬り捨てたが、すぐにまた仲間を呼ぶ。
剣では埒が明かない。
カインはベギラマの魔法で一気に殲滅を図った。
しかしベギラマはダメージはある様子だが、
全滅させるには至らなかった。
「・・・・こいつらも炎には強いんだろうか。」
ルプガナで唱えたギラはグレムリンを倒したが、
口中に唱えたものだった。
そんなものを、この大量のグレムリン相手にやる訳にも
いかない。
2人がひるんだ様子を見て
グレムリンは次々と炎を吐き出した。
剣を持つカインを近づけさせないグレムリンの作戦だろう。
炎を受け、カインもマリアも
すぐさま回復魔法でダメージを癒すが、
これではいつまで経っても魔物が全滅させられない。
「ほら、やってしまえ!!グレムリン!!」
指揮をする魔物がグレムリンの士気を高めようと
叫んだ。
グレムリンはそれを受けて、さらに意気揚々と
炎を吐き出した。
その時だった。
大きな風が起こった。
そして何かが、カイン達の前に立ちはだかり、
一息の元に、グレムリンの炎を真っ二つに切り裂いた。
こんな芸当ができるのは一人しか知らない。
【 挿絵を見る 】
「ア、アレン!!!」
炎が晴れていくと、思ったとおり
自分達がよく見知った後姿が見えた。
風のマントをつけたアレンであった。
「よお。無事か、お前ら!」
後姿のまま、アレンは右手を上げて二人に声をかけた。
「アレン!どこに行ってたのよ!?」
「俺はお前らがどこに行ってたのか探したんだけど・・・?」
「無事で良かった!アレン!!」
カインは立ち上がり、アレンの横に並んだ。
アレンがどこから現れたのか不思議であったが、
どうやら風のマントを使って、上階から飛び降りてきたらしい。
「再会を喜んでる場合じゃないぜ。
なんだよ、こいつら?」
不自然に多いグレムリンの数を見て、アレンはいぶかしんだ。
「あのお爺さんの罠だったんだよ。」
「そういうことか。」
それだけで全てを理解して、
アレンは2人に声をかけた。
「じゃあ、行くぜ。
マリア、ラリホーだ。
万一効かなくても炎なら俺がぶった切る。
カイン一気に斬りこむぞ。」
「分かった!」
「ええ!」
アレンの指示通り、2人は動いた。
マリアのラリホーは面白いように決まり、
アレンは炎ごとグレムリンを斬り捨てる。
カインも続いてグレムリンを斬りつけた。
「な、なんなのだ!先ほどまであれほど苦戦してたのに!」
魔物は息を吹き返したような様子の3人の勢いに
舌をまいた。
驚いている様子の魔物を見て、
カインはふっと笑った。やっぱりアレンが一人いるだけで
これだけ自分達の戦いは変わる。
アレンがいれば、負ける気がしなかった。
苦し紛れにグレムリンが炎を吐き出したのを見て、
アレンはそれを切り裂こうと槍を構えた。
しかし、そのアレンを追い抜いて
カインが一気にグレムリンに近づいた。
「おい!そんな近づかなくても・・・!」
あわてて声をかけたアレンを無視して、
カインは大きく手を振り上げた。
「ベギラマー!!」
グレムリンの炎に対してベギラマの炎をかぶせた。
「ぐあああーーー!」
威力に勝るベギラマは敵の炎を飲み込み、
火力を増してさらに大きく燃え上がり、周りの魔物ごと焼き尽くした。
「・・・・・・・・・・。やるじゃん!」
アレンは自分と違うやり方で炎を無効化した
カインの様子を見て驚いた。
「ううん。アレンが後ろにいたからうまくいったんだ。」
驚いた様子のアレンに、カインは満面の笑みで答えた。
残る魔物は、
自分達をだまし老人に化けていた魔物一人。
アレンは魔物に槍を突きつけた。
「よくも騙してくれたな。」
「待って、アレン。」
一突きに刺し殺そうとするアレンを、
カインとマリアが呼び止めた。
「何だよ?」
「聞きたいことがあるんだ。
先ほど言っていた話のこと・・・。」
「魔界の神が復活という話は本当なの?」
「??何の話だ?」
話を聞いていなかったアレンには目配せで
『後で話すから』と合図した。
「本当に三巨神が復活したのだ。」
「さん・・・?三巨神?」
3人の神がいると言うことだろうか。
「残った王国に降り立つと言う話は?」
「三巨神は復活したばかり・・。
だが・・・・・・いずれ・・・・
・・・・ぐ・・・・ぐううううう!!」
ゆっくり語りだした魔物であったが、急に、苦しみだした。
「なんだ、どうしたんだ!?」
「ぐああああーーーーー!!!」
魔物は急に叫びだすと、そのまま総毛立ち倒れた。
「なんで!? し、死んでる・・・!!」
「何故急に死ぬんだ!?何もしてないぞ、こいつには・・・!?」
一瞬のことで3人には訳が分からなかった。
考えられることがあるとすれば・・・
「もしかして・・・この話を僕らにしたから
だから、殺されたんだろうか・・・?」
「誰にって・・・一人しかいないか・・・」
「ハーゴン・・・・ね・・・・」
3人はごくりと息を飲んだ。
そして魔物は結局消滅してしまった。
「・・あら?何かしら、これは・・・。」
マリアはふと魔物が倒れた場所に残る
小さなカケラに気がついた。
「何かの形・・?星・・・?」
マリアが手を伸ばすと、そのカケラは急に光だした。
手を触れたマリアも光っている。
「え!?何これ!?」
「なんだ!?」
また何かの罠かと思い、アレンが槍でついてみると
槍ごとアレンも光りだした。
「ええ!?俺もかよ!」
「ど、どうしたの!?2人とも!?」
何かの呪いの類だったらどうしようかと
思って様子を見たが変化は無い。
しかし、カケラは相変わらず光っている。
「アレン・・マリア・・、痛みとかある?」
「ない。」
「ないわ。でも、これどうやったら光が止まるの?」
カインも恐る恐るカケラに手を出すと、
一瞬さらにまぶしくカケラは光り、
そして次の瞬間、床に落ちていたはずのカケラが消えた。
「え・・?消えた・・の?」
「あんまり消えた感じがしないぜ。俺カケラ食った気分。」
「食った・・は変だけど、そうだね。カケラが吸収された感じ?」
3人は顔を見合わせた。
そして大灯台に入るときに、見張り兵に言われたことを思い出した。
見張り兵が言っていたこと・・
『紋章は己の心に刻まれると言う・・。』
意味が分からなかったが今なら分かる。
そして納得した。
「間違いない。きっと・・・これが・・・星の紋章だ。」
- 次章へ続く -
2010/11/29
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