「・・・なんて言った?ハーゴンを倒して来い?」
アレンは自分の耳が疑わしく
竜王に聞き返した。
「いかにも。」
竜王は深く頷いた。
「いかにも?じゃあやっぱりハーゴンを倒して来いって?」
さっきから同じ言葉を繰り返しているアレン。
「だから、そうだと言っておるだろ。しつこいな。」
同じ言葉の繰り返しに竜王は少々飽きてきた。
「なんでそんな事を竜王に言われなきゃならんのだ。」
今の今まで死闘を繰り広げていた相手に
ムーンブルクの敵を倒して来いと言われることが
アレンには解せなかった。
「ハーゴンが邪神を崇拝しているのは知っているだろう?」
「ジャシンをスウハイ?ジャシンて何だ。」
「何も知らんのだな。仕方ない、こちらへついて来い。」
そういうと竜王は変化を解いて
元の小さな人型サイズに戻った。
そういうと背を向けて歩き始めた。
「つ、ついて行って良いのか・・・?」
アレンはカインとマリアの方を見て聞いてみた。
「悪い人じゃないのかな。行ってみようよ。」
カインは両手を負傷しているものの、足には問題が無いので
立ち上がって、ついて行こうとした。
「いや、アレはヒトじゃないだろ。お前なんか両手を食われたじゃないか。」
「それは僕も火傷させちゃったんだし、良いよ。」
意外とあっさりとカインは竜王の言うことを信じているようだ。
「行きましょう。ハーゴンの事が何か分かりそうよ。」
マリアはハーゴンの手がかりが攫めるのならば
竜王であろうが、そのチャンスを逃す手は無いと思っているようだ。
二人ともすっかり気持ちを切り替えているようだ。
殺されかけたのに・・と若干釈然としない気持ちであったが
アレンも二人に従い、竜王のあとを追った。
竜王はどんどん階段を下っていく。おそらく最下層へと
向かっているのだろう。
道中にはモンスターもいるにはいるが、さすがに竜王の姿を見ると
襲い掛かってこない。たまに勢いあまって自分達に
襲い掛かろうとするモンスターもいるが、
竜王が間に入って、追い払ってくれた。
最下層へと降り立つと、立派な玉座が見えてきた。
そこに普段は竜王が座っているのだろう。
もしかすると勇者アレフとかつての竜王との死闘の
舞台であったかもしれない。
が、玉座に向かうのかと思いきや、
竜王は少し寄り道をしようと言った。
そして連れて行ったのは小さな部屋であった。
地面には青いような紫のような不思議な色の
液体が一面に広がっていた。
「なんだこれ?」
竜王は気にせず液体の上をびしゃびしゃと
歩いていった。どうやら液体の向こうに何かがあるらしい。
アレンたちも普通について行こうとして
液体に足を踏み入れたときだった。
全身に雷が落ちたような衝撃があった。
「あいだだだだ!!!なんなんだこれ!!!」
アレンはあわてて一歩下がった。
「どうしたの?アレン?」
自分もついて行こうとしたカインが、不思議そうにアレンに聞いた。
「これ、やばいぞ。罠じゃないか?毒がかかっているみたいだ。」
アレンがそういうとマリアが後ろから様子を伺って
液体を観察した。
「これはバリア床ね。一歩歩くごとにダメージを受けるのよ。
こんな所歩いてるだけで死んじゃうわよ。」
「えーどうする?僕達もうホイミも出来ないよ?」
顔を見合わせて歩みを止めている3人に、
竜王は「そこで待っておれ」と声をかけた。
しばらく待つと竜王が何やら巻物を持って帰ってきた。
「人間とは不便なもんだ。こんなもので死なれては
話にもならん。」
「うるせえ。じゃあこんなもん敷いとくなよ。」
「この向こうには我の宝物がいくつかあるのだ。
侵入者が勝手に入って行かれては困る。」
「なんだよ。宝物って。」
竜王が隠す宝物とは何なのかアレンは興味がわいた。
「良いからついて来い。」
竜王はそういうと、再び歩き始めた。
今度こそ玉座に向かうらしい。
「あ〜〜〜疲れた。」
だるそうにどっさりと玉座に座る竜王。どうやら自分達へは
全く警戒心というものはないらしい。
どうしたものかと立ち尽くすアレンたち3人に対して
竜王は毅然と言い放った。
「よく来たな、ロトの子孫よ。
我と手を組むのなら世界の半分をお前達にやろう。」
「は〜〜〜??????」
唐突な言葉に目を丸くするアレンたち。
「お前、そんなつもりで俺たちをここまで連れてきたのか!?」
いきり立つアレンに、竜王は悪戯小僧のように言った。
「 ウ・ソ ♪
・・・・・これ一度言ってみたくてな。」
悪びれずに言う竜王。
「〜〜〜〜〜っ!俺、もう、こいついやだ!」
だまされてアレンはふてくされてしまった。
仕方なくカインが竜王に聞いた。
「・・教えてください。あなたは本当にあの・・竜王なのですか?」
「あの竜王と言うのがどの竜王なのかは知らんが、
我は確かに竜王だ。」
「竜王は勇者アレフが倒したはずなんですが。」
「ああ、その竜王は我のひいじいさんだな。」
「ひい・・・じいさん・・・・?」
「その竜王がお前らの言う竜王なのだとしたら、
我は竜王のひ孫だ。だが、竜王の子は竜王なんで、
竜王のひ孫もまた竜王だ。」
何やら理屈っぽく竜王の定義を語っている。
「ひ孫!竜王のひ孫かよ!」
ふてくされていたアレンが復活して話しに入ってきた。
「そしてお前も世界征服をもくろんでいる訳だな。」
「誰がそんなことを言った。我はこの城を出るつもりは無い。
こう見えて平和主義者だ。」
竜王はそう言って自嘲気味に笑った。
「では、先ほどハーゴンを倒して来いと言ったのは何なんだ?」
「ハーゴンは私の国ムーンブルクの敵です。
ハーゴンのことで何か手がかりがあるのなら教えてください。」
マリアも竜王に質問をした。
「そうか。ハーゴンは既に一国を滅ぼしたのだな。」
竜王はその事は知らなかったらしい。
「ハーゴンの狙いこそが世界の征服と言うことだな?」
「それは少し違う。ハーゴンの狙いは神々の復活。
邪神の復活だ。」
「なんだそれ。。」
神を復活させて何がしたいのか、何故ムーンブルクが
滅ぼされることになるのか話が見えない。
「その復活の儀式には多くの生贄がいると聞く。
ムーンブルクが滅ぼされたのはそのためだろう。」
「そんな!そんなことのために!?」
マリアは納得がいかないようだ。もちろんアレンもカインも
理解できる話ではない。
「それでだな・・・・。」
竜王は先ほどバリア床の奥から見つけてきた巻物を
開いた。
「これが世界地図だ。そしてここを見ろ。」
竜王が指差したのは中央の大陸の内部の
岩で囲まれているエリアだ。
「この岩で囲まれた地域はロンダルキアという。ここにハーゴンはいるだろう。」
「本当か!?」
ハーゴンの居場所がとうとう分かった。
アレンはカインとマリアの方と目を見合わせた。
「よし。目的地が分かった。目指すはこのロンダルキアだ。」
「おい待て。先ほども言うただろう。ロンダルキアは岩で囲まれている。
入れはしない。」
決意に満ちたアレンを竜王は制した。
「え・・本当か?ハーゴンはどこかから出入りしてるんじゃないのか?」
「恐らくそれはルーラで出入りしてるんじゃない?」
一度行った地域ならルーラで出入りできる。
邪神を呼び出そうとするものなのだから、魔法は堪能であろうと
カインは考えた。
「その辺が正解だろう。」
竜王もそこには同意した。
「じゃあ俺たちはどうする?どうやって岩山を超えれば良いんだ?」
「まぁ・・・落ち着け。」
「落ち着け?だと」
「今のお前達が何らかの手段でロンダルキアに行ったとしても
ハーゴンを倒せやしない。
さきほど我との戦いで、それは思い知っただろう。」
「お前達は弱いのだ。」
竜王に完敗したアレンたちは、返す言葉が無かった。
自分達は世界の期待に応えられるほど強くは無い・・・と思い知った。
「そこでだ。弱いお前達はこの世界に広がる5つの紋章を集めるがいい。」
「紋章・・・?」
「そうすれば精霊ルビスの力が得られると言う。弱いお前達には
ちょうど良いんじゃないか?」
精霊ルビスはこの世界を作ったとも言われる。
勇者ロトにも力を与えたのだという伝説が残る。
伝説の精霊ルビスが自分達に力を与えてくれるなら
それは心強いことであろう。
「やりましょうよ。アレン。やれることがあるなら、
あきらめずにやるべきだわ。」
「うん。きっと世界中を旅しているうちに、僕達もっと強くもなれるよ。」
マリアもカインも精霊ルビスの力を得られるとなれば
100万の味方を得たも同じと、士気が高まった。
だがアレンは釈然としない様子だった。
「どうしたの。アレンは納得できないの?」
「俺が納得できないのは何で竜王がそんなことを俺たちに
アドバイスするのかってことだ。
俺たちが弱いって言うなら、お前がハーゴンでも
邪神でも倒せば良いじゃないか。」
確かに、弱い自分達に託さなくても
強い竜王自らが行けば良いのだ。
「ロンダルキアに行く方法が見つかっていない。
しかし、それ以上に・・・。」
竜王はため息をついた。
「それ以上に?何だ?」
「力を持つと言うのはむなしいことだ。
大きな力を鼓舞する者は、必ずさらに大きな力を持つものに
滅ぼされるのだ。かつての我の先祖のように。
我はそうなりたくないのだ・・・。」
「竜王・・・・。」
「って言うか、我は負けず嫌いなんでな。やられるのは嫌だ。」
一瞬感動しかけたアレンに竜王はべーっと舌を出した。
さっきからアレンが真に受けるとだまされてばかりだ。
「こんの野郎!むかついた!
俺だって負けず嫌いだよ。
良いか、世界中を旅して強くなったらハーゴンの前に
お前をぐうの音も出ないほどに倒してやる!首を洗って待ってろ!」
アレンはリベンジを宣言した。
「ふふ。ひよこ3人組がどれほど強くなるのか楽しみにしていよう。」
竜王はどこか嬉しそうだった。
「竜王さん色々ありがとう。じゃあ僕達紋章探しに行ってきます。」
カインは色々アドバイスをしてくれた竜王を、もう「さん」付けで呼んでいた。
「行って来い。確か一つはメルキドをさらに下った島の塔にあったはずだ。」
「そうか。ありがとう。じゃあそこへ行くとしようか。」
アレンとカインが竜王に別れを告げて帰ろうとしている。
何か忘れてなかったか?とマリアは思った。
「あの・・・・ロトの剣を返してもらえるとか言ってませんでした?」
その冷静な言葉に二人と一人は「ああ!」と顔を見合わせた。
「忘れておったわ。」
竜王はぽんと手をついた。
「忘れんなよ!!」
「アレンだって、忘れてたじゃない!」
「お前だって、実は忘れてたんだろう!」
剣を持つのは自分達なのにすっかり忘れていたようだ。
この子達、大丈夫なのだろうかとマリアは思わずにはいられなかった。
「はいはい。こちらがロトの剣です。」
竜王は一度奥に引っ込んで、ずりずりと剣を引きずってきた。
「引きずるなよ!由緒正しい伝説の名剣だぞ!!」
ロトの剣がぞんざいな扱いをされているのを見て
アレンは目くじらを立てて注意した。
「こんなクソ重い剣普通に持てるか。」
そう言うと竜王はやれやれと剣をその場にポイと投げ捨てた。
「なんだよ。ロトの剣って重いのか?」
アレンがロトの剣に手を伸ばす。
すると自分がその柄を触れるよりも先に、剣の方が
自ら自分の手に吸い込むような不思議な感触があった。
そのまま柄を握り締めた。
この剣をロトもアレフも手にしたのだろう。
「アレン、重いの?」
握り締めたまま動かないアレンに、カインが横から興味深そうに覗いている。
「いや・・・・重さなんて感じないぜ。」
軽く剣を持ち上げる。重さは感じないが、
重厚な歴史を感じた。
しかし切っ先は錆もせず美しく研ぎ澄まされたいた。
「ほう・・さすがにロトの子孫は伊達ではないようだな。
剣の方がお前を認めたのだろう。」
竜王も面白そうに眺めている。
「すごいね!アレン、ロトの剣に認められたんだね!」
「アレン似合っているわよ。」
カインもマリアも嬉しそうだ。
「よし。良い物もらった。ありがとう竜王!」
「礼には及ばん。いずれ必ずこういうときが来ると思っておった。
これで余計な荷が下りた。」
竜王がこの剣を守っていたのだろうか?
「何故ここにロトの剣があるんだ?」
アレンは改めて聞いた。
「さきほども言ったとおり、力によって滅ぼされた世界は
更なる強力な力がいずれ現れるというのは世界の常だ。
そこでアレフは次代を担う世代がここを訪れることを
予見して剣を竜王の子孫に託したのだ。」
「へーーー。」
「へーーではない。お前達子孫の元には他のロトの道具が
伝わっているはずだが?」
「え?そうなのか?」
初耳であった。初耳であったが、鍵のかかった宝物庫の奥などに
何か眠っているのかもしれない。
いずれ一度戻って探してみようと思うアレンたちであった。
「ああ、そっちの炎の魔法を使う王子も、手が治ったら
ロトの剣を持ってみるが良い。」
「え!?」
竜王はふいにカインに話を振った。
「何を驚くことがある。お前もロトの子孫なのだろう?」
「え・・・?でも僕・・・・が・・・?」
ロトの剣はアレンにとても似合っていた。
アレンが持つものだと当然思った。
「ああ、そうだな。銅の剣折っちまったもんな。
試してみようぜ。」
アレンは別段カインがロトの剣を持とうとすることに
抵抗は感じてないらしい。
「駄目だよ。僕じゃなくてアレンが持たないと!!」
しかしカインは首を振っている。
カインの方に抵抗があるらしい。
「まぁ・・・我はどうでも良いがな。
じゃあ今度こそ渡すものは全部渡した。」
竜王はもう興味を失ったように、玉座に座りなおした。
「ああ、さっきも言ったとおり、いつかリベンジに来るから
精々腕を磨いて待ってろよ。」
「ふふふ、楽しみに待っているぞ。」
そうして、アレンたちは竜王に別れを告げたのであった。
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2010/10/27
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