ラダトーム城 1


一行はキメラの翼を使って、
ひとまずラダトームへ戻ってきていた。

アレンは軽く伸びした。
時刻は夕刻である。

「とりあえず今日のところは宿で休むか。
 明日は船を出して、その・・なんだ・・の所へ行ってみるか。」

「どこって?」

「なんか竜王が言ってただろ。メ・・何とかの・・・南の・・・何だ?」

マリアは首を左右にふって、呆れていた。

「やだわ。アレンすっかり忘れてるのね・・。」

「あはは。アレン放っておいたらどこに行くのか
 ちょっと楽しみだね。」

「お前らが聞いてるんだから、良いだろがー。」

アレンはふくれている。
細かい記憶なんてのは自分の役目ではないのだ。

「メルキドの南の塔ね。」

「おお、それそれ。行こう。明日にでも船乗っていこう。」

「そうね。」

調子の良いアレンに二人はくすくす笑いながらついて行った。





そして一行は旅の宿へと到着した。
素朴な雰囲気の、昔ながらの宿である。

「ようこそ。旅のお方。一部屋2ゴールドです。」

「安いな!一人じゃなくて一部屋2ゴールド!?」

「ええ、そうですよ。ここは昔からこの料金なのです。
 3名様ですね。
 お一人様一部屋でゆったり休んで頂いても
 6ゴールドです。いかがされますか?」

一人6ゴールドでも安いくらいだった。

「どうするよ?今日は竜王の城で魔物倒して結構金もあるだろ。」

「そうねー・・・・」

長旅の後というわけではないが、
アレンは激しい戦いの後なのでゆっくり休めたほうが良いだろうと考えた。

「じゃあ、シングル三部屋で良いんじゃね?」

「あ、あのさ、えっとさ」

シングルで決めてしまおうとしたとき
財布係のカインが駄目だしを出してきた。

「明日から旅が長いんだし、ここはアレンと僕は一部屋にして
 節約しとかない?マリアはシングルで良いんだけど。」

「なんだよ。変なとこケチだよなお前って。
 まぁいいか。じゃあ二人部屋一つと一人部屋一つ。」

「かしこまりました。ではこちらのお部屋になります。」




「じゃあ、また後でね。」

「おお。」

マリアは先に案内された部屋へと入っていった。
アレンとカインが案内された部屋は、外観と同じく
素朴なツインベッドの部屋であった。

「ま。2ゴールドだし。こんなもんだな。」

アレンは荷物を降ろして上着を脱ぎ捨て、
ベッドに寝転んだ。

ふと見るとカインがそのままの格好で立ち尽くしている。

「お前、何やってんの?」

「・・・あの、僕両腕痛くて服も脱げないんだけど・・・」

「はー!?
 って・・・ああ、そっかホイミも何もしてないんだっけか。」

竜王に噛まれた腕がそのままの状態であった。
血みどろのままで治療もしていない。

「明日になったらホイミできんだろ?
 とりあえず包帯でも巻いとけば大丈夫だろ。」

「うん。ありがとー。」

アレンは荷物の中にあった応急処置用の包帯を
カインの腕にぐりぐりと巻いてやった。


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「お前さー。自分でコレ出来ないから俺と同室にしたんだろ。」

「あはは。カッコ悪いよね。」

「で、カッコ悪いと思ったから、マリアは別室な訳だ。」

アレンはからかうようにニヤニヤと笑った。
するとカインは真っ赤になった。

「べ、別にー!普通女の子と一緒の部屋で寝ないでしょ!
 野宿じゃないんだか!」

何やら必死な様子のカインを笑いながら、
応急処置を終えた。

「まぁ、そういうことにしておこう。」

アレンがそういったとき、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「私だけど・・入って良い?」

マリアであった。

「おう。良いぜー。」

即答するアレン。その声を聞いてマリアが部屋に入ってきた。

「失礼するわね。あら、カインどうしたの赤い顔して。」

「や。なんでも・・・ないよ。」

聞かれてプルプル首を横に振るカイン。

「どうしたの?怪我のせいで熱でも出たんじゃないかしら?」

俯いてしまったカインにマリアは心配して
熱をはかるようにおでこに手を触れた。

「わわ、本当に!なんでもないって!」

「そうなの?確かに熱はなさそうね。」

マリアは不思議そうに首をかしげた。
その様子をアレンは笑って見ていた。



「それよりマリアどうしたんだ?飯には早いんじゃないか?」

「ええ、ちょっと思いついたことがあって。良いかしら?」

そういうとマリアは手近な椅子に腰をかけた。

「思いついたこと・・?」

「竜王が言ってたじゃない?ロトの子孫の元にも
 ロトの道具が伝わっているはずだって。」

確かに竜王はそのように言っていた。

「ああ、だけど俺はローレシアではそういうのは
 聞いてなかった。ムーンブルクには何かあったのか?」

アレンには心当たりが無かったが、
同じロト同盟国のムーンブルクやサマルトリアの話を
聞いてみることは確かに大事だろうと思われた。

「具体的に何なのかは分からないの。
 でもムーンブルクには王家の人間の戴冠の儀式のときだけ
 見ることができる、貴重な武具の至宝があると伝えられていたわ。」

「ムーンブルクの至宝・・・。ああ!」

ふとアレンは思い当たることがあった。

ムーンブルク落城を伝えにやってきた兵に対して、
ローレシア王である父が妙に慌てた様子で
ムーンブルクの至宝が無事かどうかを確認していたのだ。

きっとそれの事だろう。

「どうしたの?」

「ムーンブルクの至宝ってやつは、
 多分・・・どこかに持っていかれちまったようだぜ。」

「どうして、そんなことアレンが知ってるの?」

カインはアレンがムーンブルクの至宝について
知っていることが不思議だった。

「いや、ローレシアに落城を伝えにきたムーンブルク兵がいてさ。
 父上がやけに必死になって、兵に聞いてたんだ。
 ムーンブルクの至宝はどうなったんだって。」

「へぇ・・。」

「それで、その兵はなんて言ったの?」

「無事ではないとか、言ってたと思う・・・。」

「そう・・・その兵とはローレシアへ行けば
 会えるのかしら?」

「その兵もそのまま亡くなってしまったんだ。
 だから、結局詳しくは聞けなかったんだが・・・。」

アレンのその言葉を聞いて、マリアは肩をおとした。

「そうだったのね。ムーンブルクの生き残りは
 本当に誰もいないのかしらね。」

悲しそうにマリアは唇を噛んだ。



「そうか!分かった!」

そんなとき、カインが大きな声で叫んだ。

「何?」

「どうしたの?カイン?」

「ムーンブルクの宝物をローレシアの王様が気にするって事は
 きっとそれは、一国の宝じゃなくて、ロト同盟国全ての宝なんだよ。」

「うん。俺もそう思った。」

アレンもマリアも頷いた。

「じゃあうちにあるよ!!きっと・・・・ロトの盾が!」

「え!?」

「本当?カイン見たことあるの??」

そう聞かれるとカインは首をうーんと傾げた。

「いや、見たことは無いんだ。
 ただとても大切な盾がサマルトリアの宝物庫にあるんだって
 言うのを父様から聞いたことがあるんだ。
 今までそれがロトの盾とは想像もしてなかったんだけどね。」

そう言ってカインは笑った。

「マジかよ!すげえじゃねえか。ってかそれ先に気づいてたら、
 こんな海を越えてアレフガルドまで
 来なくても先にサマルトリアに寄ったのにー」

「でも宝物庫を開ける金の鍵が必要だよ。
 僕らが持ってるのは銀の鍵だから、開けられないよ。」

国のお宝を拝借するのに、王子が鍵を開けられないってことは
無いだろうとアレンは思った。

「お前の国だから、鍵くらい開けれるだろ?」

首を振ってカインが答えた。

「駄目駄目。これもマリアのところと同じ戴冠のときしか
 見られない宝物なんだよ。しかももう何十年も経ってて、
 金の鍵サマルトリアにないんだよねー。」

「え、おい。じゃあ次お前が王になるときどうすんの?」

「さぁー?どうすんだろね?」

相変わらずのカインののんきっぷり。
のんきな体質はお国柄でもあるのだろうか。

「そんじゃあ金の鍵も探しにいかねえとなあ。
 何か急に探すもの増えたなあ。ロトの装備と紋章と鍵ね。」

アレンは指折り数えて、忘れないように紙に書きなぐった。



「でもさ、問題があるんだよね。」

カインが何やら難しそうな顔をしている。

「今のとこ問題だらけだけど、まだ問題があるのか?」

「ロトの盾、装備できないかもしれないよ。」

「は!?なんで!?」

「歴代のサマルトリアの王がその盾を装備しようとしても
 重くてできなかったんだって。もちろん父様も。」

「えー・・・なんでだ。サマルトリアってロトの血筋だろ?」

アレンは頭をかかえた。
しかし装備できない盾を代々大事に継承している
サマルトリアの王家は何なのかという気分がしてきた。

「それは・・・大丈夫じゃないかしら。」

ロトの盾談義をしているアレンとカインに、マリアが口を挟んだ。

「私がロトの剣を持とうとしても持てなかったのと同じで、
 ロトの血筋なら誰でも装備できるって訳じゃないのよ、きっと。
 アレンは既に剣を装備できてるんだから、アレンなら大丈夫じゃない?」

「そうだね。アレンならきっとロトの盾も似合うよ。」

カインもそれに同調した。

「ま・・じゃあそれは出たとこ勝負だな。」

アレンはため息をついた。

「ローレシアにも何かあんだろうなあ。何だろ。
 あの狸親父なーんも言わなかったけど。」

「戴冠のときにあるんじゃないの?」

「うーん。剣と盾以外でなあ。鎧とかあんのかなあ。
 いや、聞いたこと無いなあ・・。」

記憶を遡ってみたが、やはり覚えが無かった。
ローレシアだけ仲間はずれで何も伝わってないとは
思わないのだが・・。

「ムーンブルクに何があったのかも、
 ローレシア王に聞けば分かりそうだね。」

「そうだな。」

アレンは頭を整理した。

「じゃあ、順番としてはメルキドの南の塔に行って、
 紋章を手に入れて、
 どっかで金の鍵を手に入れて、
 それからサマルトリアとローレシアだな。」

「どっかで金の鍵ってのが・・ちょっと厳しいね。」

「だよなー。」

「紋章もあと4つあるしね。」

「はー。先は長え〜。」

アレンは竜王にもらってきた世界地図を見つめながら
ため息をついた。



「そうだ、二人には謝らなくちゃ。」

カインが唐突にアレンとマリアに頭を下げた。

「何がだ。今度は何だ。」

「カインどうしたの。」

二人は訳が分からない。

「竜王と戦ってたとき、せっかく二人が期待してくれたのに
 僕応えられなかったでしょ。ごめん・・ね?」

二人の思いを背負って、ベギラマをしたときのことだ。
これで失敗したら命はないものだと言われたいたのに
結局竜王を倒すには至らなかった。

「ああ・・なんだ・・そんなこと。」

アレンは思い出してふぅと息をついた。

「そんなことって。」

「気にしてもしょうがねえ。」

「しょうがないって・・そうかなあ。」

アレンの励ましが少々麩に落ちないカイン。

「あいつだって火傷したって言ってたじゃねえか。
 俺なんて結局たった一つの手傷も負わせられてねーんだぞ。」

「そうね。私のバギも利かなかったわ。」

アレンは思い返すとむずむずしてきたらしい。

「くっそ!思い出したら腹が立ってきた!
 今はロトの剣があるんだから、勝てるんじゃね!?」

アレンは立てかけておいたロトの剣を手に取った。

「アレン、昨日今日じゃあ無理よ。」

「ああ、お前達魔法力ゼロだもんな。」

「そうじゃなくて・・・。」

逸るアレンを抑えるマリア。

「・・・分かってるよ。俺たち全体的にレベルアップが必要ってことだ。
 ってことだよ、カイン!」

アレンはカインを指差して言った。

「う、うん!次は頑張るよ!」

「まぁ旅をしてたら強くなるだろ。」

アレンの思考は次の旅へと飛んでいた。




「旅に出るのも良いけれど、
 旅の用意を整えたほうが良くないかしら?」

そんなアレンにマリアが声をかけた。

「どういうことだ?」

「あなたはロトの剣を持つから良いかもしれないけど、
 カインの武器が無いじゃない。」

「そうだねえ。武器屋行かなきゃ。」

「それはいっとかないとなあ。」

アレンもカインも頷いた。

「それに、私少しラダトーム城の書庫に行ってみたいの。」

「書庫?」

「ああ!良いね!行こう。」

アレンは首を傾げたが、カインは何やら思い出した様子だった。


「書庫って?何しに行くんだよ?」

意味の分からないアレンに対してマリアは力強く答えた。



「私、古代の魔法について調べてみたいの。」




- 続く -

2010/11/02
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あれ。また続き物になってしまった。
しかも題名ラダトーム城なのに、お城にたどり着いてないよ(笑)

今回は長々とロトっ子達のミーティングの会となりました。

 
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