竜王の城 2


マリアと同じくらいの身長だった青年は
今目の前で巨大な竜王の姿に変化していた。

「最初にお前達の名前を聞いておこう。」

竜の姿と化しても、理性は残っていて、
竜王はどうやら普通に話すことも出来るようだった。

「ローレシアの王子、アレンだ。」
「サマルトリアの王子、カイン。」
「ムーンブルクのマリアよ。」

「なるほど。アレフの作った国々の王族と言うことか。
 それならば確かにロトの血を引いているんだろう。」

竜王は何故かは分からないが、
アレフのその後のことを知っているようだった。
アレフは竜王を倒したとされているが、
とどめはささなかったのだろうか・・・・?

「どれほどの力を持つものか、楽しみだ。」

竜王はそういうと、大きく息を吸い込んで大きな雄たけびをあげた。



「お前ら!下がれ!!!」

アレンはあわててカインとマリアに距離をとるように指示を
出した。

あの太い腕で殴りかかられたら、
自分達などひとたまりもないだろう。

一旦距離を取ってからアレンはもう一度二人に話しかけた。

「作戦は、予定通りだ。良いな!」

竜王の城に入ったときに決めた作戦。
魔法で竜王の気を引いて、アレンが顔面に切りかかるというものだ。

「う、うん!」
「分かったわ!」

伝説の竜王と、今の自分達が戦って勝てるのか・・。

そんなことは分からなかったが、とにかく今はやるしかなかった。





マリアは魔道師の杖を天に構え、バギの魔法を唱えた。

吹き荒れるかまいたちが竜王の動きを止めるはず・・・・

しかし、その考えは簡単に破られることになった。

竜王は吹き荒れるかまいたちを、意にも介さなかった。
その太い腕でなぎ払い、こちらへと走りよってくる。

「マリア!逃げて!」

カインがマリアの前に立って、ベギラマの魔法を唱えた。
大きな炎の塊は竜王を捕らえた。

「やった成功だ!アレン、今だよ!」

「よおし!」


アレンは鋼の剣を持ち直すと、大きく飛び上がり、
竜王の顔面めがけて剣を振り下ろした。

しかし炎に包まれ動けないはずの竜王は、
アレンの姿を認めると、その太い腕を軽く動かし
逆にアレンに襲い掛かった。

「う、うわ!」

竜王の一撃でアレンは壁に叩きつけられてしまった。
ぱらぱらと岩壁が剥がれ落ちる。

「アレン!」

マリアが駆け寄って、べホイミで回復を行った。

「サンキュー。しかし、なんて頑丈な奴なんだ。」

バギとベギラマは竜王に大きなダメージを与えるには至っていない。




「どうした。こんなもんじゃないだろう?ロトの力は。」

竜王は不満そうだった。

「うっせえ。勝負はこれからだ。
 マリア、ルカナンだ。」

まずはあの頑丈な守備力を少しでも下げたい。
マリアはルカナンの魔法を唱えた。

魔法は無事成功したようであった。

「よし・・これで少しは勝負になるんじゃないか?」

「ほう。そう思うか?」

アレンのつぶやきは竜王の耳に届いていたようだ。
ルカナンの魔法をあえて受けてやったと言うような
余裕の表情だった。

「うっせえ。あとで絶対後悔させてやる。」

苦々しくアレンは言った。しかし、どうやって攻撃をするべきか。
カインも再びアレンの元に駆け寄ってきていた。

「お前ら、魔法も真正面からやってたら通用しない。
 バラバラに散るぞ。何とかチャンスを作るんだ。」

その指示にうなづいた二人は、アレンから少し距離を取った。




「さぁ次はどうする?」

相手の気を引く。マリアとカインにできるのはそれだけ。
だとしたら、魔法のランクを下げてでも、色々試すべきだ。

「こちらよ。」

マリアは再び魔道師の杖を天にかざした。

「さきほどの魔法程度なら、我に効かない事は実証済みだぞ。」

「今度はどうかしら?」

そうは言いつつ、この魔法が竜王に効くとは思えなかったが
一瞬でも気が引ければ・・・

「ラリホー!」

「む!?」

マリアの睡眠魔法は一瞬効いたかに見えた。
しかし、竜王は大きく首を左右に振り睡魔を振り払った。

ラリホーは効かなかった。

「なるほど、小賢しいマネをしてくれる!」

竜王は腕を振り上げて、マリアに襲いかかった。

しかしその時、竜王の後頭部に小さな火の玉が襲い掛かってきた。
背後に回ったカインのギラであった。

「こっちだ!竜王!」

カインが再び放ったギラは今度は竜王の腹部に命中した。
マリアへの攻撃の気をそらすことができた。

しかし今度は竜王はカインに襲いかかってきた。
振り下ろしたその腕は床にめり込んでいる。

「うわわ!こわー!」

こんなのが当たったら、本当にひとたまりもない。
カインはあわてて、その場を走り去って叫んだ。

「マリアー!次の魔法!」

この魔法が決まれば、次は絶対アレンがやってくれる。
そう二人は実感していた。

「ええ。いくわよ!マヌーサ!!」

マリアの唱えたマヌーサの幻が竜王を包み込んだ。
マヌーサは効いていた。




「アレン!今よ!」
「アレンー!!」

二人は目一杯叫んだ。
竜王は完全にマリアとカインに気が行っており、
アレンに関してはノーマークの状態になっている。

しかも竜王は今幻惑に包まれている。
これは、またとないチャンス!

「よっしゃああ!」

アレンは壁を蹴り、家屋ほどもあろうかという竜王の顔面の高さまで
飛び上がった。

竜王は襲い掛かるアレンを認識はできているが、
マヌーサの幻惑のため、その姿を今だとらえられないでいる。
今度こそアレンの一撃が、その顔面をとらえたのだ。

振り下ろした剣は、目指す竜王の顔面に確実に命中した。

しかし。

 ガキィン!

確実にとらえた筈の一撃で傷ついたのは竜王ではなく、
アレンのもつ鋼の剣であった。

「え・・・!」

鈍い音とともに剣が衝撃に耐え切れず真っ二つに折れてしまったのだ。
ルカナンを受けた竜王の守備力は下がっていたはずなのだ。
それでも竜王に傷はついていない。

「・・・・・・っ!」

「これは、おしかったな。」

竜王はまだ目がくらんでいるらしかったが、
大きく息を吸い込むと、口から炎を吐き出した。



炎に包まれ、地上へと落ちるアレン。

「ア、アレン大丈夫!?」

カインが駆け寄ってきた。

「こんなの、たいしたことねえ。」

炎による火傷は大したことはなかった。

しかし剣が折れてしまった・・。これではもう攻撃が出来ない。
もともと鋼の剣で竜を斬るのは難しいとは思っていたが、
これほどとは・・。

その様子を見ながらカインはひとまず回復魔法を唱えて
アレンの怪我を治した。



マヌーサの効果も消えたのか、竜王はこちらを見ながら
心底残念そうに言った。

「弱い・・・・。待ちわびたロトの子孫がこんなに弱いとは残念だよ。」

「お、俺たちが弱いだと?」

「そう、弱い。3人もいるんだから、どんなに強いんだと楽しみだったのに。」

アレンたちは返す言葉がなかった。
今までの戦いで苦戦することはあっても、
真っ向から自分達を弱いと罵られるようなことはなかった。


「そこの二人は魔法を使うのだな。
 姫は多彩な魔法を使うのが自慢のようだが、いかんせん非力。
 魔法の効かない敵と対したときに、姫はまるで相手にならないだろう。」

確かに、マリアは魔法の修行はつんでいるが、肉体的には普通の女性と
変わらないだろう。魔法の効かない敵が出たら今までアレンやカインに
頼りっきりであった。


「そちらの魔法を使う王子も、多少剣にも覚えがあるのかは知らんが、
 もう一人の王子に頼りっきりではないか。
 そしてロトの使う魔法としてはあまりにも弱い。ライデインの一つも
 して欲しいものだ。中途半端な力だな。」

「ラ、ライ・・何だって?」
聞いたことがない魔法だが、カインは自分の力が中途半端なのはよく感じることだった。


「そして、そこの剣士。お前は先ほどから、剣を振りかざすばかりだが、
 まさか魔法が使えないのか。そんなロトの血脈など聞いたことがない。」

「うるせえ!関係ねえだろ!」

竜王に魔法のことなど言われたくはなくて、アレンは吠えた。

「ふん。しかも威勢をはるだけで、実力も伴っていない。
 いつかお前は、その弱さのせいで仲間を失うだろう。」

「・・・・!な、なんだよそれ!」

自分が仲間を引っ張ることはあれど、自分の弱さのせいで仲間を失うなんて
あってはならないことだった。

「自覚もない様だな。現実、剣を失ったお前は今どのように戦うつもりだ。」

「・・・・・・・」

アレンは唇を噛んだ。



「今後生かしておくのも哀れだ。今ここで長年の因縁を晴らし、
 引導を渡してやろう。」

竜王はアレンの前に立ちはだかった。

「・・・!」

アレンは剣を持たない。
まともに攻撃もできないだろう。

それでも・・・認めたくなかった。

「アレンが弱いなんて、そんなことあるもんか!撤回しろ!」

カインはアレンの前に立ち叫んだ。

「撤回しない。」

「・・・アレン、下がってて!」

カインはそういうと、渾身の力をこめてベギラマを唱えた。

「その魔法は効かないと言った筈だ。」

竜王は印を唱え始めた。同じような炎の魔法。

しかし、、

「上には上がいると思うのだな。小僧!」

竜王が唱えた魔法はギラ系最大の魔法と言われる
今は失われし古代魔法。



「ベギラゴン!」



まばゆい光とともに、激しい炎が二人を包んだ。

「アレン!カイン!!」

少し離れたところにいたマリアは直接炎を受けていないが、
それでもこの爆風のすさまじさを十分に感じ取っていた。

「ベギラゴンですって・・・?」

ベギラマよりも上級の魔法として過去に存在したと言われている。
しかしもうずっと前に継承が途絶えており、今はその使い手もいないとされる。

「そう。魔法使いを語るのであれば、姫ももう少し魔法の研究を
 することだな。」

「・・・?」

何故そんなことを自分に言うのかマリアは良く分からなかった。
自分は竜王にとっては生かしておけない憎き敵の子孫ではないか。

「それから、そんなところで突っ立っている間に、仲間が死んでも
 しらんぞ。」

「・・・!・・・カイン!アレン!」

マリアはあわてて倒れている二人に駆け寄った。
炎による爆風が未だにくぐもっていた。


「二人ともしっかりして!」

マリアは倒れている二人に声をかけた。

「いっつ・・・・・な、なんだ・・・・今の・・・・?」

アレンは立ち上がれない様子だが、意識があるようだ。
ゆっくりとだが、身体を起こしつつあった。
しかし直撃を受けたカインは倒れたままだ。

「カイン!しっかりして・・・・!」

マリアの呼びかけにも答えない。

「おい。マリア、俺はあとでいい。カインにベホマだ。」

「ええ!」

マリアは覚えたばかりの完全回復魔法ベホマを唱え始めた。

アレンは炎によるダメージで、まともに動ける状態ではなかったが、
何とか上半身を起こして膝立ちの状態で竜王を見すえた。。
そんなアレンに竜王はあざ笑うように声をかけた。

「ほら。お前のせいで仲間が死ぬだろう?
 しかもお前にできることは何もない。」

確かに、カインはアレンをかばうように前に立ち、
ベギラゴンの直撃を受けてしまったのだ。
そのカインを助けるための回復魔法も自分にはできない。

「ア、アレン・・・?」

マリアはこんな風に自信をうしない立ち尽くすアレンを初めてみた。
なんと声をかけたらいいのか分からなかった。
自分達はここでやられてしまうのであろうか・・。



そんなとき倒れていたカインがベホマの効力で回復し、意識を取り戻した。

「マリア、ありがとう。もう大丈夫。」

ゆっくりとカインが起き上がって、座り込んだ。
ベホマの魔法が効いたらしい。

「良かった、カイン。大丈夫?」

「うん。ありがとう。」

前にいるアレンの手をつかんで、カインはべホイミを唱えた。

「あ、お前、大丈夫なのか?」

「うん。ごめんね。心配かけて。もう大丈夫。」

そう言ってアレンに笑ってみせた。

「本当に、上には上がいるもんだねえ。
 ベギラマより上の火炎魔法があるなんて知らなかった。」

「いや・・・俺のせいだ。俺のせいで・・。」

「?」

先ほどの竜王の言葉は倒れていたカインにも聞こえていた。
カインもこんなに自信をなくした様子のアレンを初めて見た。

「まさか、竜王の言うことを本気にしてるの?
 アレンが弱いなんて、そんなことないんだから。
 それにね。」

「?」

「アレンのせいで僕達が死ぬほど、僕達も弱くないよ。」

カインに言葉にマリアも頷いた。
アレンができないことは自分達がフォローする。
自分達の力の足りない分はアレンがフォローする。

そうやって、自分達は戦ってきたのだ。



アレンはゆっくり息を吐いた。


「なぁ、こんな俺で良いのか?」

「馬鹿なこと言わないでよ。僕達二人ともアレフ様じゃなくて、
 アレンに着いていったんだよ。アレンじゃないと駄目だよ。」

「私もそう思っているわ。あなたの強さがいつも私達を引っ張っていたわ。」

アレンは目をつぶると、ふぅっとため息をついた。

「カイン。お前の剣を貸してくれ。」

折れた剣の代わりに、カインの剣を貸してもらえないか尋ねた。

「うん!喜んで!」

カインは自分の持つ剣を差し出した。
しかしカインの持つ剣は銅の剣である。鋼の剣よりなお強度に劣る。
だが、あきらめる訳にはいかなかった。

「お前ら、これで最後だ。やれることを全部出せ。まだ出来るはずだ。」

アレンは二人にそう声をかけた。

「うん!やろう。やれること全部!」

「ええ、そうね。散るときは3人一緒よ。」



最後の覚悟を決めた3人のロトの子孫を見つめながら、

竜王は静かに目を瞑った。




- 続く -

2010/10/19
▲

なんか大変なことになっております。
竜王強いです。さすがラスボス。

そしてまだ続きます。

全滅の危機っぽくなっておりますが、
弱っちい銅の剣で
無事乗り切れるか乞うご期待ー。

しかし、なんで竜王と戦っているんだ
とつっこんではならない。

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