ルプガナ 3

「はぁ!?いきなり仲間割れか!?」

新しい船の航海士として新たに仲間になったミゲルであったが、
今心から呆れていた。

「いや、別にそういうわけじゃあ・・ないわ・・。」

応えるマリアの声も心なしか語尾が弱い。

昨日とうとう船を手に入れることができ、
翌朝出航という段になり、何故だか急にカインがアレンに
真剣勝負を申し出てきたのだ。

アレンもマリアも寝耳に水であった。

その後は言葉少なく宿に戻り、
一人部屋なのをいいことに、各自部屋にこもってしまったため
結局その意図を確認することも出来ないままである。

「べっつにぃ、俺は全然かまわないぜ。
 ってか、俺があいつに負ける訳ないし。
 お前負けるとでも思ってる?」

アレンは余裕の表情でマリアに聞いた。

「・・・そんなの、どっちが勝って、どっちが負ければ良いって
 話じゃないじゃないわ。」

血気盛んなアレンに対し、マリアは冷静だった。


「あんたらー!おれが聞きたいのはー!航海はどうすんだよ。」

ミゲルもせっかくの久々の航海を楽しみにしてたし、
準備も進めていた。せっかく長老の許可も出たのに、
結局船を出さないのなら、一体何だったんだという話だ。

「行くって。あいつが何と言おうと、行くから。」

せっかく頑張って航海の段取りをつけたのだ。
それは3人で努力したからできたことだ。
カインだってその中にいたのに、何を今更輪を乱すようなことを
するんだ。

アレンは若干いらいらしてきた。


そうこうしているとカインが現れた。

「ごめんね。皆、忙しいのに。」

そういう姿はいつものカインの姿であった。

「お前、昨日俺に何言ったか覚えてるよな?」

「うん。真剣勝負・・しようって。」

「本気で言ってるんだよな?」

「うん。」

静かな表情でカインは頷いた。
その表情を見ながら、アレンはため息をつきながら言った。

「真剣勝負だぜ。死んだって責任もてないぜ?」

「アレン!!」

マリアは驚いてアレンの手をひいた。
まさか仲間同士で殺し合いなどありえない。

「もちろんだよ。」

だが、カインはそれすらも静かに認めた。

「・・・・・・・・・・」

アレンはもう何も言わなかった。

「じゃ、やろうぜ。」







二人は剣を構えた。
といってもまず装備から違う。
アレンが持っているのははがねの剣、
カインが持っているのは未だに銅の剣であった。

装備だってアレンが上。攻撃力は当然勝負にならない。

あえて言うなら注意すべきは魔法だが。
カインの攻撃魔法ギラだけでは、アレンを倒すには
至らないだろう。

カインは最初のころよりずっと強くなった。
それは最初から一緒にいるアレンが一番良く分かっている。

それでも・・

『・・・・勝てるわけないだろう。』

苦々しくそう思った。



一方カインも頭をフルに動かして考えていた。
アレンと力で勝負しても勝てるわけがない。

魔法を使うのはもちろんのことだが・・・

あえていうなら、あと一つアレンより優れてる可能性が
あるものは・・・

素早さだ。



カインは先手必勝とばかりに地を蹴った。
素早くアレンの後ろに回りこんで、剣を振り下ろした。


キィン!


だが、カインの振り下ろした剣は、軽くアレンに阻まれた。

「ま・・・そうくるだろうと思った・・・よっ!!」

アレンは力任せにカインの剣を振り払った。

「で、次は?どうするんだ?」

「次は・・これだ!」

カインは至近距離からギラを放った。
ギラと同時に、距離をあけて、間合いを取った。

ギラの炎と煙がアレンの周囲で立ち込めてきた。
それでもギラ単発では体力のあるアレンを倒すには至らない。

それを承知しているカインは
・・最初のギラが消えきる前に・・・

「ギラ!」

カインはギラを連発して動けぬアレンにもう一度畳み掛けてきたのだ。


アレンは少々驚きながらその攻撃を受けていた。
最初の頃、すぐに魔法力が切れていたのは誰だったか。

魔法の連発なんて、
なるほど、強くなったじゃないか。

でも・・・・

強くなったのは自分だって同じ!

アレンは一発目のギラを盾と鎧で耐え切り、
そして二発目のギラが襲い掛かってくるのを睨みすえて、
剣を、上段から振り下ろした。

「!」

アレンの剣はギラの火の玉を真っ二つに切り裂いたのだ。


「アレン・・すごいわ。」

マリアはこの戦いに目を見張った。
今のようなギラのさばき方は、魔物との戦いとでもアレンは
見せたことがなかった。


「・・ギラで俺は倒せないぜ。」

アレンはカインに剣を向けて言った。


ギラでアレンは倒せない・・・。
カインは目の前で起きたことを、瞬きもせずに見ていた。

ふと頭の中に今までの戦いが蘇ってきた。
数々の魔物たちとの戦い、熾烈だったダンジョンでの戦い・・・。

「ギラじゃ・・・駄目だ・・・。」

もっと強い魔法を使わないと、もう戦っていけない。
自分だけじゃない・・・自分のせいで仲間を、
マリアが危険な目にあってきた。

もう嫌だった。もっと強くなりたかった。

昨日グレムリンを倒したとき、
カインは必死に魔法を!と願った。

その時発動した魔法はギラだったのか、それとも・・・。


「どうした?もう終わりか?降参か?」

アレンは動かなくなったカインに声をかけた。
構えを解こうとしたときに、カインは応えた。




「いや、まだだ!」

カインはありったけの力をこめて魔法を詠唱した。

「なんだ?」

アレンは聞いたことのない魔法の詠唱に身構えた。
横で見ていたマリアも聞いたことがない魔法だった。

「これは・・・」

「炎の精霊よ・・・・我が手に集いて、灼熱の炎となり、全てを焼き尽くせ!!
 ベギラマー!!」

カインの手のひらからは、今までのギラとは桁違いの、
何人もの人を丸ごと包み込むような巨大な炎が発せられた!

【 挿絵を見る 】




「な、なんだ・・・・・!?」

アレンは成す術もなく、その炎に包み込まれた。

「で・・・できた・・・。ベギラマ・・!」

カインは手のひらを見つめていた。




「アレン!」

マリアは炎に包まれたアレンに叫んだ。家をも焼き尽くすであろう猛烈な炎であった。
このままではアレンが本当に倒れてしまう。

マリアの声を聞いて、カインももう火を消さないと・・・と思った。

その時

裂帛の気合とともに、アレンは炎をなぎ払って出てきたのだ。
体中火傷を負っているが、アレンは膝もついていない。

「まだ・・・やれるぜ。」

「アレン、もう辞めて!!」

怪我だらけのアレンを見てマリアは悲壮に叫んだ。
だが、アレンは戦意を失っていない。

「やっぱり・・・・アレンは強いなあ。でも・・!」

ベギラマでも倒せないアレンに対して、カインは改めてそう思いつつ、
アレンに向かって走り出した。

アレンはもう満身創痍だ。
あと少しで勝てる!そう思った。

カインは今度はギラを放った。
狙いは、アレンが剣を持つ右手!
剣さえ手放せば、もうアレンに攻撃する術はない・・そう考えたのだ。

アレンはギラをかわせずに、思惑通り剣を手放してしまった。

「いまだ!!!」

カインは渾身の力で、剣を振り下ろした。



マリアは次の瞬間起こるであろう惨劇を思い、思わず目をそらした。

だが、聞こえてきたのは、剣が身体を切り裂く音ではなく、
もっと鈍い音だった。

「・・げほっ」

マリアが見たとき、膝をついて崩れ落ちたのはカインの方だった。

「うっーーーー・・」

カインは鳩尾を押さえてうずくまっていた。
剣を手放したアレンだったが、その闘志は全く薄れることなく、
その拳でカインの鳩尾を殴りつけたのであった。

アレンはカインを見下ろして立っていた。

息をきらしながら、アレンは落としたはがねの剣を拾い上げた。
アレンはゆっくりと剣を上段に構えなおした。
その様子を見て、カインは白旗をあげた。

「ぼ、僕の負けだよ。」

勝負はついた。アレンの勝ちであった。





「やっぱり、アレンに勝つなんて無理だったかあ・・。」

「あ、当たり前だ!手間取らせやがって。」

アレンはカインの手をとり立ち上がらせた。
ようやく戦いを終えて、マリアが二人の元に駆け寄ってきた。

「二人とも、大丈夫!?」

「大丈夫?って見ての通りだよ。真っ黒こげだよ。ひどいことするぜ。」

アレンはちゃかして答えたが、実際すさまじい炎であった。
剣すらも落とされ、最後無我夢中で拳を出したのが偶然当たったというだけで
そうでなければ・・・・倒されていたのは・・・・

「二人とも、心配かけてごめんね!」

カインは二人に向かって頭を下げた。

「僕、どうしてももっと強くなりたくって、アレンの胸を借りれば、少し変われるかな?って。
 心配かけてごめんね!!」

頭を下げたまま、カインは今回の戦いの理由を二人に伝えた。
マリアはそんなカインを見て、微笑んだ。

「そんなことだろうと思ったわ。」

「アレンも・・・・ごめんね?」

目の前で成長した姿を見せられては、怒る気にもなれない。

「いーけど。今度からは先に言ってからにしてくれよ。」

「うん!ありがとう!アレン、マリア!!」

ようやくカインに笑顔が戻った。




「っていうか、あんたら・・・え・・・!?」

少し離れた所で見ていたミゲルは目の前の戦いをあんぐりと見ていた。
今の魔法はなんだ?火の玉を斬っちまうなんてなんなんだ!?

「あんたたち一体何者だ!?」

およそ人が戦えるレベルを超えた戦いであった。
勇猛な男達を何人も見てきたが、あんな戦いは初めてだった。

アレンとカインは顔をあわせて言った。

「あれ、言ってなかったっけ?」

マリアは背をむけたままで答えた。

「アレンも、カインもロトの血をひく勇者よ。」

言うなり、マリアは二人にべホイミを唱えた。
傷だらけの身体が見る間に癒されていく。

「え!?ロト・・・・!?」

ロトと言えば、あの伝説の竜王を倒したというあれか?

「あんた達、兄ちゃん!勇者の血を引いてるのか!?」

ミゲルは興奮していた。まさかこんな子供が・・・?


「サンキュー」

べホイミにより、アレンの大火傷はたちまち治り、アレンはマリアに礼を言った。

「よう、ミゲル。びっくりすんのはまだ早いから。
 このマリアもロトの血をひく勇者なんだから。」

アレンのその一言に、いよいよミゲルは腰を抜かしたのであった。




- 次章へ続く -

2010/10/10
▲

原作にこんな話がないのは当然なのですが、
どうしても入れたかった話でした。

カインが強くなる。
それでもアレンは強くって、
その隣にはマリアがいるよってことです。

という訳で3人は仲良しなのです。
(何が、という訳だ)



更新の活力。楽しんで頂けましたら是非ポチを。→