ローレシア 3


足早に3人は駐屯場に向かった。
何か異常があるなら、兵士達が掴んでいるだろう。


すぐさま、駐屯場に行ってみると
幾人かの兵が装備を固めて出陣していたようだ。

残った兵達は突然入ってきたアレン達に驚いていたが、
どうやら帰ってきていたことは報せが届いていたらしい。

「アレン様!お帰りなさいませ。」

「ああ。ところでどうしたんだ。武装して。何かあったのか。」

まさか、本当にローレシアを魔物の群れが襲ってきたのか・・・
アレンの表情に緊張が走った。

「いえ、大した事無いです。
 たまにあるんですが、スライムやドラキー・・せいぜいアイアンアントですかね。
 そいつらが餌を求めて、城下に紛れ込む事があるんです。
 先ほどドラキーが現れたと報告がありまして。」

「・・そうか。」

アレンは胸をなでおろした。
ローレシア近辺は本来魔物もさほど強くない。
アイアンアント程度ならいくら徒党を組もうとも
歴戦のローレシア兵の敵ではないだろう。

アレンが出るまでも無く、大方の戦闘は終了しているだろう。

「それくらいなら以前もあったことだ。心配はいらないか。」

そういうアレンに厳しい表情でマリアが言った。

「いいえ、敵が弱いのなら良かったけど、決して油断はならないわ。
 弱いのなら弱いで、一人の犠牲者も出ないよう
 最善の対策をするべきだわ。」

「マリア・・。」

ムーンブルクを魔物に滅ぼされたマリアが言う言葉だ。
無視することはできない。
そしてこの場合の最善の対策とは
帰ってきたアレン達自ら出陣することだろう。

「分かった。そうしよう。」

アレンの言葉にカインとマリアは頷いた。


駐屯場の兵が言うには敵が現れたのは
城下に通じる南側ではなく
城壁に囲まれた北側らしい。



言われるままにそちらへ向かってみると
そこでは信じられない光景が広がっていた。

魔物の数は15匹ほどはいたか。かなりの大群といえるが、
ムーンブルクのように一斉に魔物が襲ってきたというわけではないようだ。

そして駐屯場で言われていたとおり、
魔物は大して強くないスライムやドラキーを初めとした
レベルの低い魔物たちなのだ。

一般人ならさておき、日々鍛錬を重ねるローレシア兵が
遅れをとるものではない。

それなのに、目の前に広がる光景は
一方的にローレシア兵がやられているのだ。
その中にはアレンが育てあげた兵、スコアもいた。

「なんだ・・・!?どうしたんだ!?」

自分の目がおかしいのだろうか。
あれはドラキーではなくて、見知らぬ魔物なのだろうか。
アレンは自分を目を疑った。

「アレン!このままでは危険よ。」

「アレン、兵達の回復は僕らに任せて!」

マリアとカインの声にアレンは我に返った。
負傷した兵は二人の回復魔法によってすぐさま治療されていった。

相手が、見知らぬ魔物であろうが何であろうが、
歴戦の自分達までがやられる相手ではないだろう。

アレンは背中のロトの剣を抜くと
近くにいるドラキーに切りかかった。

するとアレンの気合のこもった一撃にドラキーはあっけなく
真っ二つになった。

「・・・なんだ?」

その手ごたえは、旅の始め頃に自分が倒した覚えのあるドラキーのものだった。
ドラキーに化けた、何かほかの高等な魔物・・
という訳ではないようだ。

じゃあ、何故ローレシア兵はこんなに苦戦しているのか?

その理由は徐々に分かってきた。

魔物たちの攻撃が重いのだ。
盾と鎧で身を防御で固めても、
魔物の一撃は体をえぐるような大きなダメージを受ける。

「確かに変だな・・。」

「これって・・やっぱり何か変だね。」

「もしかして・・やっぱりさっき私が感じたのは・・。」

カインやマリアもこのおかしなカラクリに気づいたようだ。
何か思い当たることもあるらしい。

とっととこの場を片付けて、その謎解きをしなければならない。

いくらスライムやドラキーが多少攻撃力を身につけたところで
所詮はアレン達の敵ではなかった。
ダメージを受ける前に一気に片をつければ良いのだ。

「カイン、マリア、ここで手こずっている時間はない。
 とっとと片付けるぜ。」

「オッケ!」

「任せて!」



アレン達3人は、お互いの背中を預けて立っていたが
三方に向かって、向かっていった。

「いくぜ!!」

「ベギラマー!!」

「バギ!!」






ローレシア周辺の低レベルの魔物たちが
この三人による攻撃に耐えられる訳がなく、
アレン達は魔物たちを、文字通り一気に殲滅させた。

「アレン、先に行くわ。」

マリアは敵の全滅を確認すると、
どこかへと走っていった。カインもそれに続く。

「ああ、俺もすぐいく。」


「す・・・すごい。アレン様は、また強くなっている・・・。」

スコアはアレンと仲間達の強さに目を見張った。
昔からアレンは強かったが、さらにその強さは段違いにレベルアップしているだろう。

「ああ、お前ら負傷者はいないか?」

戦いを終えたアレンは先ほど苦戦していたローレシア兵達を見渡した。
負傷者は既にカインとマリアの魔法で癒されていた。
重傷者は一人もいない。

「大丈夫そうだな。
 でもまだ不穏な空気が消えない。何かあれば俺達にすぐ知らせろよ。」

「不穏な空気とは?もう魔物たちは全滅したじゃないですか。」

「全滅したのは目の前の魔物だけだ。
 お前何も不振に思わなかったのか?魔物たちの強さを・・・。」

「た、確かに妙に魔物たちの攻撃が重く感じられました。
 一体どういうことなのでしょうか?」

普段遅れを取るはずの無い魔物に思わぬ苦戦となったことで、
スコアを始め、兵達は心中には不安が渦まく。

「俺が知るかよ。」

「え?でも・・。」

「まぁ、あいつらは目星がついてるみたいだ。」

「・・カイン様とマリア様ですか。」

「ああ。あいつらは魔導師だからな。何か感づいたんじゃないか。」

不安そうな顔をしていたアレンにはどこか余裕があった。

「だから、俺はあいつらに着いていくから。
 お前らは再度体制を整えなおして、あるかわからねえが
 次の戦いに備えろ。良いな!」

「は、はい!」

そういい残してアレンはカインたちの後を追った。




ほどなくアレンは、先を走っていたマリアたちに追いついた。

「よぉ。」

「アレン。」

アレンが追いついた先では、
マリアがローレシアの城壁に向けて魔導師の杖を構えていた。

「マリア、どうしたんだ?城に何かあったのか!?」

その問いにカインが答えた。

「違うよ。アレン。マリアがここに六芒星の結界を一つ見つけたみたい。
 だから、それをまず吹き飛ばそうと思って。」

なにやら薀蓄を言われたが、アレンには意味がよく分からない。

「何か見つけたのは分かった。
 だが、何事かはさっぱり分からん。俺にも分かるように言え。」

「ああ、えーっとね・・。このローレシア一帯に結界が張られているみたいなんだ。」

「どういうことだ、それ?結界・・・て?」

「さっき魔物と戦って分かったでしょ。
 スライムやドラキーなんて低レベルな魔物にあんな攻撃力がある訳無い。
 これは知らない間に僕らに魔法がかかってるんだよ。」

「魔法?何の?」

「僕は使えない魔法だけど、マリアはすぐ分かったみたい。」

そう言ってカインはマリアのほうを見た。

「ええ、間違いないわ。このままにしていたらローレシアは滅びてもおかしくない。」

「だから!何の魔法だ!?」

アレンはもう気になって仕方がないようだ。

「おそらく・・・『ルカナン』よ。」

「ルカナン?ルカナンって・・守備力を下げる魔法だった・・か・・?」

たまに魔物たちとの戦いでルカナンをかけられることがある。
守備力が下がって、戦いが若干不利になる魔法だ。

「そう、そのルカナンが多分・・・国中に広まっている。」

「はぁ!?国中・・・!?それは・・・やばいだろ!?」

そんな状態で、魔物に襲われたら・・間違いなくピンチだろう。
いや、実際先ほどの低レベルの魔物に襲われただけで、
鍛えられたローレシアの兵士達はあの有様だったのだ。

もしも・・・もっと高レベルの魔物が襲い掛かってきたとしたら・・・・

そのアレンの考えは、顔に出ていただろう。

「もし、もっと強力なやつがやってきたら・・・」

「アレン。ありえない話じゃない。それは『もしも』どころじゃない。
 だってこの結界は誰かが故意に張っているものよ。
 その狙いはこの国なのか、他のものかは分からないけど・・。
 国が滅びるのは、1日あれば十分よ。」

もしかすると、ムーンブルクも同じような手法で
魔物たちの強襲を受けたのかもしれない。
あの頃のマリアには分からなかったことだが、
経験を積んだマリアには、すぐにこの罠を発見できた。

「だから、この張られた結界を破壊しなければならない!
 アレン、今度は止めないわね?」

アレン一人ではとてもここまでたどり着けなかっただろう。
まだ全ての状況を把握しきれていないが、
危険の芽はひとつでも潰していかねばならないだろう。

「ああ・・頼む、やってくれ。」


マリアは頷いて、天に掲げる魔導師の杖に魔力をこめた。



「イオラ!!」


砂埃が舞い起こり爆風が吹き荒れ、城壁はガラガラと崩れ落ちた。

アレンはその奥にどんな禍々しい光景が広がっているのかと剣を構えた。
しかし、その奥には特に怪しい魔物もいなければ
怪しい魔方陣も描かれてはいなかった。

「な、なんだ・・・?何もないぞ。」

拍子抜けしているアレンの側をカインが通り過ぎた。

「いや・・これじゃない?」

拾い上げたのは漆黒の宝石のような、石だ。
マリアのイオラの影響か真っ二つに割れている。

「マリア。これだよね?多分楔になってるのは。」

拾い上げた石は覗き込むとジュージューと煙が出ている。

「そうね。恐らくこの魔石が魔方陣の楔ね。」

マリアはカインの持つ石を見て頷いた。

「なんだかよく分からないけど、これでルカナンの
 魔法は解けたんだな?」

嬉しそうに聞くアレンにマリアは困ったように首を振った。

「違うのか?」

「言ったでしょう。魔方陣の結界よ。
 結界は恐らく六芒星。」

「六・・ぼう・・?」

「ようは六角形の結界よ。
 同じようなものが6個あるはずよ。」

「あと5箇所ってことか。」


アレンは頭の中を整理した。
今、ローレシアは表立って窮地に立っているわけではない。
国内に混乱が起きている訳ではない。

だがこのままでは放置できない危険がすぐ近くまで迫っている。

六個の魔石のよる結界が
国全体に張られた国中にルカナンの魔法効果を及ぼし
今ローレシア国の防御力は落ちているだろう。

そんな中強力な魔物の大群に襲われては
確実にローレシアは大きなダメージを蒙るであろう。

問題はそれだけではない。

結界は何らかの目的で、誰かが意図的に張ったものだ。
何が目的かは分からないが、そんな怪しいやつが
この国にもぐりこんでいると言う事だ。

「もう少し帰ってくるのが遅かったらまずかったな・・」

アレンのつぶやきにマリアが言った。

「まだ、遅くない。まだこの国は滅んだ訳じゃないわ。
 アレン、早く対策をしましょう。」

「そうだな・・・。
 よし、じゃあ、残り5個の結界の破壊はお前らに任せた。
 俺にはどこにあるのか、わからないからな。
 俺は、兵達に警備を固めるよう指示してくる。」

「分かったわ。」

「ま、待ってよ、アレン。
 僕ら離れない方が良いよ。嫌な予感がするよ。」

カインが不安そうな顔をしている。
戦力が分散するのは確かに好ましくない。

「俺も・・・正直良い予感なんてしねえよ。
 でも無防備の兵達を放っておく訳にもいかねえからな。」

「じゃあ、何かあったらすぐ合流しよう。
 深追いはしないこと。良い!?」

「わ、分かったよ。」

カインの剣幕にアレンは頷くしかない。

「じゃあ、そうと決まったら、マリア行こう。
 多分次は上のほうにあるんじゃないかな。」

「そうね。行きましょう。」

いつもアレンは思うが、
この二人のそういう勘は外れることが無い。
多分結界は無事に解除されるだろう。

「じゃあ、後でな!」

そう言ってアレン達は分かれたのであった。



- 続く -

2011/02/13
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展開が遅いです。
回りくどいです。何故だろう。
早くドンパチ始まれば良いのに(人事か)。

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