「アレン、アレン。おーい、アレンってばあ。」
先ほどから、木霊か何かのように、
誰かがアレンの名前を呼んでいる。
そんな何回も呼ばんでも聞こえてるっての!
アレンは面倒くさそうに、それを手で払った。
「あ、アレン!」
「って!!お前らっ!!」
アレンが目を開けると、
そこに見慣れた仲間が2人いた。
「良かった〜〜。アレン、また死んじゃってたら
どうしようかと思ったー。」
縁起でも無いことを言いながら
さっきから自分の名前を呼んでいたのは
カインのようだ。
その後ろにはちゃんとマリアもいた。
どうやら2人は無事だったらしい・・。
良かった・・。
いやいや!それで済ませてたまるか!
こちとら、どんだけ大変だったと思ってるんだ!
「お!お前らどこに行ってたんだよ!
俺がどんだけ・・・!」
「ご、ごめんね。探してくれてたの?」
「探してたけど、落とし穴落ちるし、
魔物はひっきりなしだし!薬草きかねえし!」
アレンは大変だったと言いたいようだ。
「そうだね。大変だったよね。
ベホイミはしたんだけど、大丈夫?」
カインが心配そうにそう聞いてきた。
どうやら傷が大体治ってるところを見ると
倒れてた俺を本当に案じていたようだ。
「へ、平気だけどさ・・。
どうやってお前ら帰ってきたんだ?
リレミトしたんじゃねえの?」
アレンは気になっていたことを聞いた。
「リレミトじゃなくて、ルーラだよ。
今もね、ルーラで帰ってきた。
だから洞窟からは出て無いんだ。」
「は?」
事も無げにカインがそう言った。
なるほど、緊急回避でカインはルーラを唱えていたのか。
いや、それでも、仲間を残してルーラもどうだろうか?
せめてその作戦を言っておいて欲しい。
すぐ戻る・・とか・・さ・・。
「アレン、どうしたの?ブツブツと・・。」
「お前よくへーぜんとした顔で言うよな!
俺がどんな気持ちだったと思ってるんだよ!!」
「ご・・・ごめん・・。」
カインがアレンに頭を下げたのを見て、
今まで黙っていたマリアが割って入ってきた。
「アレン怒るなら、カインに怒るのは筋違いよ。
ルーラをしたのは私だもの。」
マリアのその言葉に一瞬アレンは眉を顰めた。
ん?何か違和感があるぞ?
「・・・マリアが?ルーラ??出来たんだっけ?」
「出来たか出来てないかで言うと、今までは出来なかったんだけど、
なんだかさっきやったのは本当に私みたいよ。」
どうやらマリアは自分でも納得しがたく思っているようだ。
硬い表情でそう言った。
「マリアは天才だよねー。
一応今戻ってきたのは僕がやったルーラだけど。」
・・・なるほど。
無我夢中で危険回避をしたのはマリアだったらしい。
苦手なルーラをして・・
で、帰ってきたのはカインのルーラだそうだ。
確かに、こいつはたまにそう言ったルーラを使う。
「そーかい。そーかい。
そりゃあ結構なことだよ。」
「アレン怒ってるの?」
「怒ってねえよ。
まぁ俺も1人で奮闘してて、こいつを見つけたし!」
どうやら緊張がほぐれたらしいアレンは
笑顔で、今手に入れたばかりの剣を二人に見せた。
カインの持つ隼の剣とは明らかに違う
重々しい刀剣だった。
その刃の形状はまるで・・
「稲妻のような力強い剣だぜ。」
アレンは嬉しそうにそう言った。
「稲妻の剣?」
その言葉を受けてカインがその名前を聞いた。
「いい名前だな!稲妻だって落とせそうだ!」
アレンは嬉しそうだった。
それはそうだろう。
さっきだって、やっぱり剣が好きなのだと言っていた。
その彼が自分に相応しい剣を、自分の力で手に入れたのだ。
「アレン、すごいや。良かったね!
これでアレンは剣とロトの盾、兜、鎧全部揃ったんだ!!」
確かに、今考えられる最強装備と言って差し支えないだろう。
「そうだな。ロトの装備も全部揃ったな!
あとは、なんだ?紋章くらいのもんか。」
アレンの言葉に、カインとマリアは顔を見合わせた。
「その事なんだけど・・アレン・・。
いいや、道々に話すよ。」
カインはアレンに歩くように促した。
いい加減、長く留まっていては魔物の標的にされるからだろう。
***
「はぁ!?紋章が全部揃った!?」
アレンは唐突に天井から降ってきたメイジパピラスを
斬り捨てながら、大声を出した。
続く追撃を・・とカインが駆け寄ると
メイジパピラスは既に息絶えていた。
「わぁ・・その剣本当に強いんだね・・。」
アレンは稲妻の剣を装備して、どうやらさらに攻撃力が
上がったようだった。
「おい、質問に答えろって。」
アレンは血糊を拭って剣を鞘にしまった。
「ああ、うん。手に入ったんだ。
マリアがルーラした先でさ・・・。
場所は最初に行ったあの人骨が沢山あった場所で。」
「たまたま墓石のあたりで私達休憩を取ろうとしたんだけど、
そうしたら・・・ね。」
「ね・・・じゃねーよ。お前らな〜〜!」
「駄目だった?」
アレンのいないところで手に入ったのが
気に入らないのかと思った。
「や、良いんだよ。ラッキーだな俺ら。
で、何紋章だ?」
あっさりアレンはそう言った。
「命の紋章よ。」
最後の5つ目の紋章は命の紋章だった。
「それでね、紋章はマリアが見つけたんだけど、
触れるといつも光って消えるでしょ?」
「ああ・・大体そんな感じだったな。ピカーっと光って
『紋章は心に刻み込まれるんだぞよー』だっけ?」
「あははっ。アレンそれ誰真似?」
カインはアレンの物真似に笑った。
「今回は何故か光って消えずに
これが手に残ってたの。」
マリアが差し出したのは首飾りのようなものだった。
見たことも無い素材のようで
5つの宝玉が輝いていた。
「なんだ?それは・・・。」
「わかんないけど、僕ら2人で、
これがルビス様のご加護の印かなあって言ってたんだー。」
「ルビス様・・・ねぇ。」
そう言えば俺も何故かさっき1人で戦っている時
珍しくルビス様がどうのと頭がよぎった。
こんなことは珍しいが、たまたまだったのだろうか?
「アレンはどう思う?」
カインがアレンに意見を求めてきた。
どう思う?と言われても・・・
「わかんねーけど、良い事だろ。
とりあえず紋章が全部揃ったんだろ?
いいんじゃねーか。俺見てないけど。」
「・・・だよね。良い事だよね。よくわかんないけど。」
アレンの言葉にカインがうんうんと頷いた。
「ちょっと・・・2人とも、よくわかんないで済ませてて良いのかしら?」
そんな様子にマリアが苦笑した。
でも、これで探していたものは全て揃ったと言えるのだ。
「あとは、この洞窟を抜けるだけだーー!!」
アレンはそう息巻いた。
**
「アレン、そっちの道じゃなくてこっちだよ。」
マッピングした洞窟内の地図を持っているカインは
さすがに落とし穴から戻る道を把握できているようだ。
確かに良く見ると、何度か通った場所のようにも感じる。
「おーー。右だったな。」
攻撃力を増したアレンは洞窟内の強力な魔物たちにも
引けを取らない戦いを出来るようになっていた。
おかげでカインとマリアは少し魔法力を節約しながら、
アレンに着いて行った。
「ここら辺は来た事が無いね。
分かれ道があるけど、どっちだと思う?」
「そーだなーー。さっき右に行ったから、今度は左!」
「適当ねーー。」
マリアは呆れつつ、別に反対もしない。
どうせ正解は分からないのだから、
マッピングしながら先へ進むしかない。
先ほどから何度も何度もそうやって進んでここまで来たのだ。
「いいよ、左だね。」
カインは地図に印をつけながら、そう言った。
そして先へ進むと、今まで感じなかった風を感じた。
「あれ?なんか風が吹いたか?」
「もしかして、出口!?」
思わず、身を乗り出したカインだったが、
残念ながらそこに見えたのは出口の光ではなかった。
風、などという生易しいものではない。
凍れる吹雪が急に吹き荒れた。
「わ・・・冷たい!ベギラマ!!」
カインは思わず、その吹雪をベギラマで防御した。
その先にいたのは青白い体のブリザードであった。
「あ、さっきいた炎の魔物の氷バージョンか?」
アレンは思わずそう言った。
炎がいるんだから、氷バージョンもあるんだろう。
単純な話だ。
「どーせ、お前ら氷を投げつけるしか出来ねーんだろ?」
アレンがそう言いながら、ブリザードに斬りかかろうとすると
魔物は思いがけない魔法を唱えようとした。
「・・・・ザ・・ラ・・キ・・!」
「わーー!!マホトーン!!」
あわててカインがマホトーンを唱えるのと
ザラキを唱え終わるのがちょうど同時くらいだった。
「・・・?え??」
アレンは思わず足を止めて、
何ごとかと自分の身の無事を確認した。
ちゃんと両の足で立っているし、何ともなかったようだ。
「あーびっくりしたー。なんともねーわ。
って、そう言う事するのかー!?・・こいつ!!」
「良かった〜〜。
ザラキが効いてないのか、
マホトーンが効いたのかどっちか分からないけど。」
カインは胸を撫で下ろしていた。
どうやら、単純な氷の魔物では無いらしい。
「下手な刺激をしない方が良さそうよ。
でもきっと炎には弱いんじゃない?カイン。」
「ああ、うん。そうだね!いくよー!
ベギラマ!!」
カインは魔物に向かってベギラマを唱えた。
やはり氷の魔物だし、炎には弱かったらしい。
「マリアも!」
「ええ!!」
マリアがいかづちの杖をかざすと、そこから炎が飛び出した。
得意ではないが、一応マリアは炎の魔法も使えるのだ。
ブリザードは反撃に移ることもできず
そのまま解けて消えていった。
「やった〜〜!倒したね!」
カインは手をグーにして喜んだ。
「俺、何にもしてないんだけど・・・。」
若干面白くなさそうにアレンが言った。
「良いじゃない、さっきからアレン1人で奮闘してたんだし。
たまには僕らでも倒せるってことで。」
カインは嬉しそうにそう言った。
まぁ、別にそれは構わない。
ところで・・・ふとアレンは思った。
カインは炎の魔法が得意だ。
その点においては、魔法の天才のマリアより優れているんだろう。
さっきの炎の魔法の競演も、
明らかにマリアよりカインの炎の方が強かった。
「なあー。お前さ、炎が得意なんだろ?」
「え・・?あ・・あえて言うなら炎は得意な方だけど・・何?」
「さっきさあ、さっきの・・・・あのルーラで逃げる前のやつ!
ドラゴンから炎を受けてたとき
なんであれは、攻撃受けるがままにされてたんだよ。」
なんで今更アレンがそんな事を聞いてくるのか・・と思いつつ。
「ど、どういう意味?あれは・・格好悪いけど
反撃・・出来る勢いじゃなかったんだよっ。」
恥ずかしそうにカインが答えた。
アレンは何気なく再度尋ねてきた。
「あのさ、普通、炎が得意な魔物って、炎で攻撃されても
効かねえじゃん?お前はなんで炎が効くの?」
「ちょっと・・何その質問・・。
僕は普通の人間なんですけど・・。
炎は魔法として得意だけど、
普通に火傷するし、普通に熱いんだよ?」
「そうなのか?
じゃあ炎の魔物はなんで炎がきかねえんだ?」
アレンは本当に素朴な疑問を聞いているようだが・・。
「そんなの魔物さんに聞いてよ・・。
アレンだって剣が得意だけど、
剣で攻撃されたら怪我するでしょ。」
「ああ、そっか。そう言う事?」
何かに納得したようにアレンは頷いた。
「なんでそんな事聞くの?」
「でも俺は剣が得意だから、
だからこそ剣での反撃できる幅も広がるだろ?」
「はぁ・・・。」
「だからお前もそうかなって思っただけだよ。」
「・・・・・・?」
何となく釈然としなかったが、
アレンは言いたいことが言い終わったらしい。
すたすたと先へ進んでいってしまった。
「マリア、今のどういう意味だと思う?」
カインは良く分からないままマリアに尋ねた。
マリアも何とも言いがたかったが・・。
「もう少しやりようがあるんじゃないかと言いたいんじゃない?
あなたに期待してるのよ。
アレンなりの上昇志向よ、きっと。」
「・・・・そう・・なの?」
これ以上・・?
とは、カインは言わなかった。
***
先へ進めば進むほど、
3人は先ほどのような風を感じるようになった。
でもその風は、先ほど同じく凍れるように冷たい風だ。
「気をつけろよ。きっとまたさっきのブリザードだ。」
「うん。」
「分かってるわ。」
アレンは背後の2人に声を掛けながら、
一歩ずつ進んでいく。
風はどんどん激しくなっていく。
目を開けるのもきついような強風だった。
きっとよほどの数のブリザードがいるのだろう・・と思った。
しかし、そうではなかった。
「なん・・・だ・・?ここ・・・。」
アレンは思わず息を呑んだ。
その風に堪えて、3人が進んだ先に広がっていたのは、
白銀の世界だった。
今まで暗い洞窟にいたその瞳には、痛いほどの白い光。
そしてそれは見渡す限りどこまでも白く広がり、
どこか幻想的ですらあった。
- 続く-
2013/02/20
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