ぺルポイ

「ど、どこだろ・・ここ・・・。」

ルーラで飛んできた場所は薄暗く湿気た空間であった。
一瞬夜になったのかと思ったが、
そうではなかった。

カインは周りを見渡した。
薄暗さには徐々に目が慣れてきたが、やっぱり知らない場所だ。

「どこなのかしら?」

マリアは手を伸ばした。するとすぐに壁にぶち当たった。
どうやらここは室内のようだ。それに、さして広い場所ではない。

「アレン、どこだろ?いると思うんだけど・・・。」

狭そうだし、探せばすぐに見つかるだろうと思った。

この部屋には誰もいないようだった。
カインとマリアは部屋を出た。

出た先に廊下も薄暗かったが、背中の方角から光を感じた。

「あっちが出口かな?」

光の方へ向かおうとして、
思わずはっと足を止めた。

「・・・・・・・・あれ・・・?」

「カインどうしたの?」

急に足を止めたカインにマリアが声を掛けた。

「わっ、マリア!ちょっと隠れて!!」

「えっ??何、なんなの??」

「しーーーー!!!」

カインはマリアの背中を押して元の部屋に戻った。
訳も分からずマリアは押されるがままに部屋に押し込められた。

暗い部屋に気まずい沈黙が広がる。

「ど、どうしたの・・?カイン何か見つけたの?
 まさか魔物とか?」

マリアの問いかけにカインは注意深そうに廊下を再度覗き込んだ。

「いや、魔物はいないんだけど・・・
 なんか強そうな門兵が見回ってる・・・・。」

「え、どういうこと?」

そう言いながらマリアも目が慣れてきたようで
回りの風景がくっきりと見えてきた。

普通の部屋と思ったが、
扉が普通ではない。鉄格子だ。

「あれ、ここってもしかして・・・牢獄?」

「もしかしなくても、牢獄だね、ここ・・・。」

粗末な室内には簡素な寝台とトイレが備え付けられている。
お世辞にも綺麗な空間とは言えない。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

二人は顔を見合わせると、何とも言えない微妙な空気が流れた。

「え、ちょっと待ってどういうこと?」

静かにしていたカインが耐え切れず頭を抱えた。
アレンを追ってルーラで来たやってきた先が牢獄だった。
多少のずれはあるにしても、
どちらにせよアレンはここにいるはずだ。

牢獄に。

どうしても、牢獄=犯罪者

という図式が頭に浮かぶ。

「えーーーー!?アレン帰ってこないと思ったら
 悪いことして捕まってるの?うっそーーー。」

怪我でもして動けなくなっているのではないかとか
そんな予想はしていたが、
まさか悪事を働いているとは・・・・
いくらなんでも、そんな予想はしていなかった。

「一体何をアレンがやらかしたのか・・・。
 話だけでも聞いてみましょうか・・・。
 何か言い分があるかもしれないわ。」

神妙な顔をしたマリアにカインも頷いた。

「そ、そうだね。アレンのことだもん。
 きっと、勢い余って町の壁蹴り破ったとか
 そんなんだよ。」

「あるいは、人様の家の木になった木の実を
 勝手に食べたとか・・・?」

「有りうるー。お腹空いちゃったんだ。」

想像力豊かにアレンの罪状にあれこれと思いをふける。
そんなカインの頭を背後から何者かがはたいた。

「長い!長い!長いわ!お前らのボケ。」

思わず振り返った先にいたのは
探していた懐かしいその人だった。

「アレン!アレンだ!!
 わあ!!僕ら探してたんだよー!」

「騒々しいんだよ、お前ら。どっから来たんだ。」

そこにいたのは憮然とした表情のアレンだった。

「アレン、一体・・・
 一体なんで悪いことをしちゃったの・・?」

「なに言って・・・。」

「私たちは仲間よ。
 包み隠さず言って頂戴。」

「・・・・・・・。」

慈愛に満ちたマリアの瞳を見ながら、
わなわなとアレンが震えだした。
そしてカインの頭を遠慮なく殴った。

「ちょっとなんで、僕を叩くのさ。」

カインを無視して、アレンはマリアに文句を言った。

「マリア、お前な〜〜。
 お前のイオナズンのせいで船損傷してたんだよ。」

「え?そうだったの・・・?」

アレンは面倒くさそうに話し出した。
船の修理のために近場の街に停泊したこと。
修理している間に、この街へやってきたこと。
そしてどうやらここで、逃げ出した盗賊を探す手伝いをしているらしい。
決して、罪を犯して牢獄に閉じ込められた訳じゃないらしい。

「つまりやむなくやってきた街で人助けしてんだよ、人助け。」

「そういうことだったのね。
 私たちアレンが帰ってこないから心配してたのよ?」

マリアの言葉にアレンが憮然として顔をそらした。

「もう帰る予定だったんだよ。船も直ってるころだし。
 カインの事は、お前に任せてたから大丈夫だろうって思ったしな。」

そう言うとアレンはようやくカインの方を向き合った。
感動の再会をするはずだったのに、思わぬ再会になってしまった。
でも久しぶりに見たカインは元気そうだった。

「よう、カイン・・・・げ、元気になったようだな?」

「うん。アレンのおかげだよ。
 僕アレンに言いたいお礼がいっぱいあるよ!」

カインの明るい笑顔を見て、アレンも安堵したように苦笑した。

「俺も・・・、お前に言いたいことがいっぱいあるよ。
 良いか?あとで、覚悟してろよ?」

アレンはびしっとカインに人差し指を突きつけた。
こくんとカインは頷いた。

「え?うん・・・。」

「とりあえずここは門兵が見張ってるから、
 とっとと用事を終えて出ようぜー!」

「そうだね。僕らも手伝うよ!!」

どうやら盗賊はこの牢獄から逃げ出したと言うのだが、
街にはいないらしい。
ってことは、まだ牢獄に隠れているんじゃないかというのが
アレンの考えだ。

「オッケー!じゃあしらみつぶしに探してみるよ。」

カインはそう言うときょろきょろと盗賊を探しに部屋を出て行った。

「ちょっとアレン。隠れる場所なんてないと思うわよ?
 部屋はこんなに狭いんだもの。」

マリアも見渡しつつもそう言った。
長くいると異臭も感じてきた。あまり長居したくない場所だ。

「まぁなあ・・・。俺も全部の部屋を見て回ったんだが、
 そんな広い場所でもないし。」

アレンもいい加減探し飽きたらしい。
どうも探し方が雑だ。

そして寝台の下を覗き込みながら、マリアに話しかけた。

「なぁ、マリアありがとうな。」

「何よ?急に。」

急に礼を言われてマリアは戸惑った。

「カインちゃんと助けてくれて。
 いや、疑ってなかったけどさ。」

「・・・・カイン、あなたに会いたがってたわよ。」

「そっかぁ。」

アレンの口元が思わず緩んだ。
それにしても、こんな所で再会するつもりはなかった。
確かに衛生的にも良くないし、臭いし、暗いし、
思えばこんな所で何やってるんだと言う気になってきた。

もう諦めて出ようかと思ったとき、
とことことカインが帰ってきた。

「おう、見つけたか?」

「ねえ、アレン。そういえば僕探してる人の
 人となりを聞いてなかった。
 どういう人なの?」

今頃そんな事をのんきそうに聞いてきた。
じゃあ、今まで何を探してたのだろうか。

「よくはしらねえけど。
 盗人って言うからには、ごつい人相なんじゃねえか?」

「ごつい?髭とか生やしてたり?」

「そーそー。そう言う奴。いたか?」

カインはうーんと首を傾げた。

「そう言う人はいなかったなあ。
 ひょろっとして、髭の生えてない細っこい人ならいたけど。」

アレンは思わずむせた。
アレンだって人相なんて知らないのだ。
怪しい人物がいれば・・程度に考えていた。

「え?なんだよ、それ、どこにいたんだ!?」

「反対側の部屋にさ、
 隠し通路があったよ?その奥に人がいるようだった。」

「か、隠し通路!?」

こいつの勝手な行動はたまにこうやってよく分からないように
新たな道を切り開くんだよな・・・。

アレンはそんな事をぼんやり思いつつ、
言われるままにカインに着いていった。

「おお・・・こんな所に道が・・・。」

確かに壁と部屋の暗さにまぎれて気が付かなかったが、
隠し通路があった。
小石を投げているうちにカインが見つけたらしい。

狭くて暗い道を通り過ぎると、
そこにはカインの言ったひょろくて細っこい怪しい人物が隠れていた。

隠し部屋で本でも読んでいたらしく、
唐突に現れたアレンたちを見て、その人物は思わず仰け反って叫んだ。

「うわっ、なんだお前たちは!!」



****

盗賊の名はラゴスと言うらしい。
どんなごつい奴かと思ったら、思いのほか弱腰なやつだった。

逃げ出すつもりもなく、
悪行からは手を洗ったのだと、
アレンたちにその謝罪の気持ちとして「水門の鍵」を手渡してきた。

「ここから出るつもりはないよ。
 だから許しておくれ。」

「・・・・・・・。」

どうしたものかとカインとマリアはアレンのほうを見た。
アレンはため息をつきながらいった。

「門兵にはお前の居所は言っていいんだな。」

「ああ、ここは居心地が良いからいるだけだ。」

「・・・じゃあ・・・・見逃してやらあ。」

アレンはラゴスの言い分を飲むことにした。

「ありがとう!水門の鍵はその証だ。」

「なんだよ、これ。」

古びて錆びた鍵だった。
今まで見たことも聞いたこともない。

「テパって街で水門を空ける鍵さ。
 手に入れてから何ヶ月も経ったから、
 そろそろ日照りで困ってるかもしれない。
 よろしく頼むよ。」

「なんだよ、そりゃ。
 お前の悪事の尻拭いかよ。」

「だって、僕はここを出られないんだから。
 出て良いなら、ここから出たいけど?」

悪びれなくラゴスはそんな事を言う。
中々口八丁のようだ。

「それは無理だ。」

だが、テパとは初めて聞く街の名前だ。
話に乗ってみるのも悪くない。

「じゃあ、これはもらっていくぜ。」

アレンたちはそう言うと、
牢獄を後にした。



「アレン良いの?あんなにあっさり盗賊を許して。」

カインもマリアも罪人を突き出すでもなく、
あっさりと見逃したアレンに驚いた。

「大丈夫だろ。そんなに悪い奴でもないさ。」

「どうしてそう思うの?」

「自分が盗んできたあとの街を心配してるような
 極悪人がいるかよ。」

「・・・・なるほど。」

言われてみれば、それもそうだ。
アレンの人の見る目は確かだし、カインたちも納得した。


「何はともあれ、一件落着だねー。」

「そうだな」

牢獄を出て、街にでた3人であったが、
どうにも薄暗い街だった。

「なんだか暗い街ね。
 どうしてかしら・・・?」

「この街は、街全体が地下にあるんだよ。」

アレンは上空を指差した。
見上げると確かにそこにはあるはずの空はなく
岸壁で覆いつくされていた。

「珍しい街だね・・・。なんでこんな所に・・?」

「ハーゴンや魔物の手から逃れるためらしいぜ。」

アレンは既にその理由を街の人から聞いていたらしい。

「そうなんだ・・・。でも陽の光が無い所で過ごすのって
 なんだかそれもおかしい話だね。」

「確かになー。」

「早く地上で安心してすごせる日を取り戻したいわね。」

そんな事を言いつつ3人は街を歩いた。
地下にあるからといっても、
街は活気があり、賑わっていた。

「あ、武器屋もある。ねえアレン、武器探し一緒に付き合ってよ。」

「あ?ああ、そうだな。
 ロトの剣折れちまったんだもんな。
 ここの武器屋結構いいもん売ってるぜ?高いけど。」

武器好きのアレンはすでに武器屋も覗いてたらしい。

「マリア少し見ていって良い?」

「いいわよ。じゃあ私先に行ってるわね。
 宿を取っておくわ。」

マリアそう言うと先に宿探しに行ってしまった。
アレンとカインは武器屋を覗いてみた。

「わぁ〜知らない武器が売ってるね。
 えーっとひかりの剣・・・、16000ゴールド!?
 高ー!!」

「そりゃお前ここの店そういうのばっかりだぜ。
 あれとか65000ゴールドもするぜ。」

「なになに?ミンクのコート??
 ミンクって何?なんで65000ゴールドもするのー?」

カインの頭は今ハテナだらけになっていることだろう。

見たこともない武器や防具が沢山見られた。
見られたが、とても買えなかった。

「ミンクのコートはさておき、
 ひかりの剣くらいは買えるようになりたいね。」

「そうだな。お前でも装備できるんじゃねえか?
 力の盾なんかも、お前装備できるんじゃね?」

「そっかぁ、じゃあ合わせると・・・
 37500ゴールド?ひゃー。これは大変だ。」

指折り数えるとカインはあまりの額に頭をかかえた。

「ま・・・・大丈夫だろ。
 これからはそんなに焦る必要は無い。
 レベルアップも兼ねて、ゆっくりやっていこうぜ。」

「ん。そうだね。」

「よし、カイン。ちょっと話がある。
 こっち来い。」

アレンの言葉に驚いてカインは顔を上げた。

「?う、うん。」

アレンはカインを店の外に連れ出して、
そのままどこかへ向かった。

「アレンとこうやって歩くのって何か久しぶりだねー。」

「だな。」

「・・・・・・・・。ねえ、アレンどこに行くの?
 宿は反対だけど・・・・・。」

「だから、言ったろ。
 焦る必要ないって。」

「ん?う、うん。そりゃ、まぁ・・。」

アレンの有無を言わさぬ言い方にカインも従うしかなかった。
しかし行き先はどこかの店でもなく、
街の外れだった。

「こんなところで何かあるの・・・?」

街の外れには天井を覆い尽くすのと同様な
岸壁が張り巡らされていた。
コンコン叩いてみても、かなり硬い。
こんなのよく切り開いて街を作ったものだと感心した。

「おい、カイン約束を覚えてるか?」

アレンのただならぬ雰囲気にぎょっとした。
なんかアレンはすごい形相をしている。

「や、約束・・・・。ああ、あの・・・覚えてるよ。
 ぶん殴るんでしょう。」

「おお、よく覚えてるようだな。
 お前さんっざん俺たちに心配かけたからな。」

「そうだね。本当にありがとう。
 それからごめん。
 いいよ、マリアがいるところでぶん殴るのもあれだから
 連れ出したんでしょう?
 さぁ、思いっきり殴って。」

カインは躊躇いも恐れもなくそう言った。

「お前らしいな。」

そう言うとアレンは拳をぽきぽきと鳴らした。
気合十分に言った。

「歯の2・3本は覚悟しろよ〜。」

「あとでホイミするから。でも死なない程度でお願いするよ?」

殊勝な言葉を言うものの
さすがに少し怖くなって、カインはぎゅっと目をつぶった。

ざっとアレンが拳を振りかぶる音がした。

アレンが一歩ずつ近づいてくる。
カインは激しい衝撃を覚悟した。

が、いくら待っても、
歯が折れるほどの衝撃などやってこなかった。

代わりにやって来たのは
暖かくふわりとした抱擁だった。


アレンはぎゅっとカインを抱きしめた。


「?!???え、アレン!?」

カインは驚いて目を開けた。

「無事で・・・・・良かった・・・・・・!
 助かって、良かった・・・・な、カイン。」

「ア・・アレン。アレン、うん。ありがとう。
 君のおかげだ。」

最初戸惑ったカインもアレンを抱き返した。

「ふっ・・。マリアにもそう言ってるんだろ?」

「そうだよ。マリアとアレンのおかげだよ。
 二人には感謝してもしきれない。
 だけど、アレンには・・本当になんていうか・・・」

心配をかけるどころか、あろう事かアレンに斬りかかったりもしたし、
ロトの剣は折れるし、とんでもないでは済まされなかった。

「ごめんアレン。なんて言ったら良いんだろう・・。」

「ま、後のことはゆっくり考えようぜ。」

アレンはぷっと笑った。そしてカインから体を離した。

「ちょっと痩せたか、さすがに。」

「そうでもないよ。最近ご飯がおいしくって。」

そう笑うカインは今までよく見てきたカインだ。
こうやって笑い合えることが懐かしかった。

「でもまだ何日も経ってないだろ。
 大丈夫なのか?」

「そうだね・・・。でも体力も戻ってきてるし、
 魔法の方は問題ないと思うよ。
 ここへはルーラで来たんだ。」

「そっか。急に現れるから、びっくりしたぜ。」

「はは。僕らもアレンがまさか牢獄に捕まってるとは
 思わなかったから、びっくりしたよ。」

カインが冗談っぽくそう言うとアレンは若干むっとした顔で
カインの額をデコピンした。

「わっ。痛い。冗談だよー。」

「ちぇ・・・。俺の気持ちも知らないでさ。
 今はお前病み上がりだから、これで勘弁してやるけど、
 いつか本気で一発ぶん殴ってやるからな。」

「えー今のじゃなくて?さっきのも痛かったよ?」

カインが文句を言うと、ぎろっとアレンが睨みつけてきた。

「あんなの、一発に入るかよ。」

「・・・ぶー・・・覚悟しときます。ってか君結構ひどいよね。」

若干釈然としない顔でカインが頷いた。

「ひどいのはどっちだか。」

アレンはぼそっとそう言うと、話題を変えた。

「じゃ、そろそろ宿にいこーぜ。
 これからの旅の計画練るとするか。」

「うん。行こうか。」

そうして、アレンとカインはマリアが待つ宿へと戻っていった。






- 続く-

2012/05/30

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     アレンとの感動の(?)再開編でした。
     ぺルポイはこれで終わりです!巻き巻き進行で進んでいきますよー。
 
      ★2P漫画化しました
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