風の塔 2

3人は風の塔の入り口に立っていた。
マリアの魔法も冴え渡り士気が高い。

「よし、お前ら、塔の中はダンジョンと同じ。魔物がひしめいていると思う。」

先頭に立つアレンはカインとマリアの方を振り向いた。

「うん。」
「ええ。」

「そこで俺たちの戦術をもう一度確認しておく。
 魔法は基本的に無駄に使うな。緊急時を除いて、回復には薬草を使うこと。
 そして、魔物が複数・・・そうだな3匹以上同時に現れたときに
 マリアの魔法を使う。
 それ以下の場合は、俺とカインで攻撃すること。マリアは身を守ってろ。
 敵が油断している状態のみ、魔道師の杖を使った炎での攻撃を認める。」

アレンは長期戦を見越して二人に指示を出した。

「分かったよ。」

カインは頷いたが、マリアは不服そうだ。

「私は身を守ってろって・・何故?戦えるわ。」

「悪いが、マンドリルなどの魔物が現れたときには、その細腕では
 ダメージを与えることは出来ない。
 奴らの体を切り裂くことができるか?
 それに、奴らの攻撃をまともに受けることなんて出来ないだろ。
 前線には出るな。」

その的確な意見にマリアは反論することが出来ない。

「だが、マリアの魔法は俺たちの切り札なんだ。対複数の戦いになったときは
 任せたぜ。」

「分かったわ。」

正直実践の経験の少ないマリアは長期戦となると魔法力切れが怖い。
魔法が一切使えない状態になったら、まさに足を引っ張ってしまうだろう。

アレンの戦術は効果的だと思えた。



3人は塔の中に入った。
入ってすぐのところに宝箱が見える。

「宝箱が見えるよ。あれ、当たりだったらいいんだけど。。」

期待を持って開けてみた1階の宝箱は薬草が入っていた。

「やっぱり、そんな楽なことはないよな。」
「どこにマントはあるんだろう?」

外から見た様子だと、塔は5階以上ありそうだった。

「やっぱり上のほうにあるんじゃないか?」

何の確信もなくアレンは言う。

「まぁ・・・・上がってみるしかないよね。」




ふと、つぶやく3人の上空に何か気配を感じた。

「タホドラキーだ!」

3人は敵の襲来に身構えた。
数は4匹と多い。

「マリア!」
「ええ!」

マリアはバギを唱えた。
巻き起こる風の刃はタホドラキーを捕らえて、致命傷を与えた。

そして虫の息となった魔物にアレンは止めをさした。

「よーし、倒したぞ。って僕、何もしてないけど。」

カインは笑顔でアレンの手を叩いた。

やっぱりマリアの魔法は強い。
アレンもカインも圧倒的に戦いが楽になるのを感じていた。
だからこそ、マリアが倒れるようなことはあってはならない。


三人の作戦は的中し、風の塔の快進撃は続いた。






「次は化けねずみとキングコブラだ。敵は二匹。一気に突っ切るぞ!カイン!」
「オッケー!」

アレンとカインは駆け出した。
マリアは後ろで身を守りつつ、敵の様子を観察した。

しかしお化けねずみは仲間を呼ぶモンスター。既に近くまで
仲間がやってきていたらしく、マリアの背後から襲いかかってきた。

「!」

すんでのところで直撃をかわしたが、肩を痛めた。
目の前にいる魔物は自分の2倍もあろうかという巨体。足がすくんだ。
攻撃をしなければと思うが、とっさのことで魔法の詠唱が間に合わない。

マリアは一瞬覚悟を決めた。

しかし自分に襲い掛かるはずの魔物の腕は自分まで届かず倒れた。

「あっぶねえ。大丈夫かよ。」

キングコブラを切り捨てて、すぐに戻ってきたアレンであった。
完全に魔物の脅威に飲まれていたマリアを間一髪でアレンが助けた。

「あ、ありがとう。」

「油断は禁物だ。気をつけろ。」

肩の傷にはすぐに薬草を使って癒してくれた。




アレンの力強さとリーダシップはこのパーティの要となっていた。





塔は上階にあがるほど、狭くなり、風が強くなっていた。
しかも塔の一面には壁がない面があった。風はそこから吹き荒れていた。

そろそろ疲労も感じていた。

「おい、気をつけろよ。そっから落ちたら真っ逆さまだぞ。」

「う、うん。」

細い足場は歩いているだけなら、まず落ちることは無いだろう。
だが、問題なのは・・・・

「こんなところで戦いたくないんだが・・!」

魔物の来襲だ。前方にラリホーアントとキングコブラ。
目の前のモンスターのみならず、吹き抜けから空を飛べる
タホドラキーなども襲い掛かってきた。

マリアはバギを唱えようとしたが、前方のみならず上空にもいる敵の
どちらに照準をあわせようか一瞬の躊躇があった。

そのマリアに対して、ラリホーアントが襲い掛かった。
近くにいたアレンがマリアを守ろうとしたが、
ラリホーアントの狙いは直接攻撃ではなく・・・・


 『 ラリホー! 』


アレンは恐ろしい睡魔が襲い掛かり、体がしびれて立っていられなくなった。

「っ・・・」

そのままアレンは倒れてしまった。

「アレン!?しっかりして!!」

マリアはあわててアレンを抱き起こしてゆすったが、全く反応が無い。
ラリホーアントは我が意を得たりと襲い掛かってきた。

抱きかかえる形でアレンを守るマリアにラリホーアントの巨体が
覆いかぶさるようになり、鋭い牙をむいた。

「マリア!!」

その様子をみたカインはあわててギラを唱えてラリホーアントは飛びのいた。
炎によるダメージはあったが、しとめ切れていなかった。


「くそ!!!マリアから離れろー!」

カインは反撃が来るより先に、続けざまに、剣で攻撃に出た。
ラリホーアントは何とか倒すことが出来た。

「大丈夫!?」

「ええ、でもアレンが・・・」

アレンの眠りは深いらしく、目覚める様子は無い。

「・・・眠っているだけだよ。早く目が覚めてくれたらいいんだけど。」




アレンが倒れ、カインは塔に入って初めて焦りを感じた。
アレンのリーダーシップの元、3人で戦えば、攻撃も守りも
十分に3人の実力を発揮できていた。



では、アレンがいなくなったら・・・・?




アレンと旅を始めてから、そんなことは想像もしていなかった。

「・・逃げる・・・か・・・・?」

カインのつぶやきがマリアの耳にも届いていた。

「無理よ。この細い通路の細い足場に、さらにアレンをかついだ状態では
 逃げられないわ。」

マリアはきっぱり戦況を見極めて言った。

「あ・・・うん。」

「幸いに今までの作戦の効果で魔法力が残っているでしょう。
 残りの魔法力気にせず、全力で戦いましょう!!」

やるしかない。

カインは前方の敵ラリホーアントに向かってギラを唱えた。
マリアは後方の空飛ぶタホドラキーらの魔物たちにバギを唱えて一斉に
ダメージを与えた。

ギラ1発では強力な魔物たちを一撃で倒すことは出来ない。

自分には、アレンのような力は無い、マリアのような集団攻撃できる魔法も無い。
カインは自分の力が中途半端であることを痛感した。

だからと言って、今こんなところで全滅するつもりはなかった。

ラリホーアントの反撃が来る前に、カインは素早く回り込んで、
とどめの一撃をさすことができた。

しかしこれで倒せたのは一匹。
キングコブラの強襲までは対応できなかった。

「うわっ」

がくっと力が抜ける。腕をかみつかれてしまった。キングコブラの牙には毒のエキスがあり、
放っておいたら全身に毒が回ってしまうだろう。


「カイン!大丈夫!?」

マリアの呼ぶ声が聞こえる。こちらに向かって駆けよってきている。
しかし目の前の敵を討つのが先。
カインはしゃがみこんだまま魔法を唱えた。

「もう一回・・・・ギラ!」

炎はキングコブラを包み込んだ。
自由を失ったキングコブラはもだえ苦しみ、のたうちまわった。

だが、未だ息絶えない魔物の尾は鋭く動きまわり、あろうことか
駆け寄ってきていたマリアに迫った。

マリアはそれを避けたが、壁際から駆け寄ってきたマリアの避けた先は
その反対側の吹き抜け。

「え・・・?」

果たして今何階まで昇ってきていたか、一瞬塔の外の青空が見え・・・
突風が吹き荒れた。



落ちる・・・!



「危ない!!」

自分がしとめそこなった魔物がマリアを襲うさまを見たカインは
負傷も顧みずに走った。


自分のせいでマリアが死んでしまう・・・・! いやだ・・・・・!


「マリア!!」

必死に手をのばして、ぎりぎりのところでマリアを捕まえることができた。

しかし毒を受けた腕と体は踏ん張りがきかず、自分とマリアを支えることが出来ない。
それどころかズルズルと引きずられていく。

「カイン、あなたまで落ちちゃうわ!離して!」

「いやだ!いやだ・・・!絶対いやだ!」

必死に引き上げようとしたが、血の流れる腕の負傷と毒とで
力が出ない。


このままでは耐え切れず、二人とも落ちてしまう・・・!


そう思ったとき、横から腕が伸びて、力強く自分の手を支えるものがあった。

「お前さ、仮にも姫を守るナイトをきどるんだったら、もっと鍛えんと。」

「ア、アレン!」

ラリホーアントに眠らされていたアレンであった。

「引っ張りあげるぞ、踏ん張れよ。」

そういうと、アレンは一気にマリアを引き上げた。
カインは安堵のあまり座り込んだ。

「おい、大丈夫かよお前ら。気がついたら、目の前で二人とも落ちそうになってるから
 びっくりしたぞ。」

二人は九死に一生を得た思いであった。

「助かったわ。でもアレン、元はといえば眠らされてるあなたが悪いんじゃないの。」

「悪かったよ。っていうかカイン、お前女一人引っ張りあげられないのかよ。貧弱だぞー」

アレンは、マリアもろとも落ちそうになっていたカインに指差して言った。


カインは座り込んだまま、心臓がバクバクいうのを感じていた。
今はたまたま、奇跡的なタイミングで目覚めたアレンが助けてくれたが、
本当なら今頃塔の下の地面に叩きつけられている頃であろうか。
マリアをつかんだ手が震えていた。


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「違うわよ。カインは毒に犯されて負傷している中助けてくれたのよ。」

言うなりマリアはべホイミの魔法を唱えた。
傷口はすぐさまふさがった。自分の使うより上級の回復魔法だ。

「なんだ、毒だったのか。じゃあ毒消し草使えよ。」

アレンは自分の道具袋から毒消し草を取り出し、カインに使った。

「うん・・ありがとう・・・・ごめん、マリア、アレン。」



アレンは周りを見渡した。自分が不覚にも眠っている間に
大量の魔物たちが倒されていた。
自分を気にしながら、戦うのは負担があっただろう。

そんな状況で奮戦していたカインに言いすぎただろうか。

「まぁ・・・なんだ。俺も油断していて迷惑かけた。気をつけようぜ。なっ!」

「うん。」

「よし。んじゃ回復したことだし、次のフロアに行こうぜ!」





一行は魔物たちの屍を乗り越えて進んだ。

3人は今度はラリホーアントのラリホーや、キングコブラの毒と言った
特性を知り、さらに注意して陣形を組み撃破していった。

だが、長く続く戦いのため、大量にあったはずの薬草も尽きていた。
魔法力も余裕が残っているわけではない。

「これ以上は戦いが厳しくなるな。。」

帰りの街へ戻る道中に出てくるであろう魔物たちと戦う体力も
残しておかなければならない。

アレンは戦況を考えて、二人に告げた。

「一度撤退するべきじゃないか。息も絶え絶えにマントを
 手に入れても、帰りの道中でやられたら意味が無い。」

マリアもここまで来ての撤退は無念であったが、
仕方なくうなずいだ。

「待ってよ。」

「なんだよ、カイン。」

「・・僕さっきリレミトを覚えたんだ。」

「なんだ?それ?」

「ダンジョンから脱出する魔法だよ。ルーラも覚えている。
 マントを手に入れたら、魔法ですぐに街へ帰れるよ。
 ここまで来たんだ、帰りのことは気にせず、前進してはどうかと思うんだ・・」

ルーラならラーの鏡のあった毒の沼からムーンペタの街に帰るときに
使った魔法でしっていた。便利な魔法だった。

「カインがルーラ使えるなんて知らなかった。
 それならば行きましょう!」

「なんだ、そんな便利な魔法覚えてたのか。
 魔法力は持つのか?」

「う・・・・」

魔法力に余裕があるわけではない。
薬草が無い今ホイミを頻発するようであれば
残らない可能性がある。ギラだって控えないと
いけないだろう。

「回復なら私がやるわ。私は魔法力が尽きたって
 かまわない。魔道師の杖もあるんですもの。
 戦えるわ。いきましょう。」

「よし・・なら、行くか。」

3人は前進を決意した。



既に上に昇る階段は見当たらず、
下への階段しかなかった。

「よし、じゃあ降りるぞ。降りてすぐにモンスターと言うこともありうる。
 油断するなよ!」

アレンは指示を出した。

「分かった!」

「ラリホーに注意よ!」

「分かってるよ。」
アレンはむくれて答えた。


恐る恐る降りたフロアは狭く四方を壁に囲まれていた。
そこには宝箱が一つ。

「この壁のせいで、中には来れなかったんだな・・。これがひのきの棒とかだったら
 がっくりだぜー・・頼むぞ・・・・」

中にあったのは、一枚のマントであった。

「やった!風のマントだ!これ風のマントだろ!?」

アレンは、勢いマントを取り出して、二人に見せた。
一見普通の布製のマントに見えたが、風の魔法の使い手である
マリアには、それが風のマントであることが確信できた。

「ええ、間違いないわ。」

3人は喜び、達成感を感じていた。

「じゃあ、敵の出ないうちに帰ろうぜ。」

「うん。アレン、マリア、僕に掴まって。さぁ、帰ろう!」

二人はカインの手を取った。
そして、カインはリレミトの魔法を唱えたのであった。




- 次章へ続く -

2010/10/05
▲

おわたー
何か無駄に長くてどうしようかと思いました。

今回はカインが悩むような話。悩んでばっかり。そればっかり。

ニュアンスで「塔と言えば落ちるやつ」ということで
盛り込んでみました。いかがでしょうか。

今後もニュアンスで進めて行こうと思います(危険な香りのする小説)。

      ★2P漫画化しました
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