今3人はムーンブルクの東にある風の塔に向かっている。
ハーゴンを討ち、ムーンブルクの敵を取ると言うパーティーの目標は定まった。
定まったものの、ハーゴンがどこにいるか分からないし、
まだまだ倒せるレベルに達していないだろう。
そこで、アレフガルドを目指すことにした。
ロト伝説発祥の地であるかの地へ向かい、ロトが使っていた伝説の武具のことについても
情報を集めたい。
が、そこに向かいたくても、この混沌の時代船が出ているのは
はるか北西のルプガナのみ。
そのルプガナすらも陸路ではつながっておらず、空をも飛べると言うアイテム
風のマントの眠る風の塔へ向かうことになったのだ。
「はぁ、先は長いよねえ。」
カインがつぶやいたのは、モンスター巣食うダンジョンでもなく、
風の塔でもなく、何故か素足になって川の中。
「うるせえ。口を動かさず、手を動かせ。」
ぼやくカインを尻目に、アレンは自慢の愛刀を川の中へと突き刺した。
獲物を一撃でしとめた。
「うーし、これで3つ。こんなもんで良いか。」
尋ねるアレンにマリアは「十分よ」と答えた。
マリアは集めてきた木々に魔道師の杖を使って火をつけた。
アレンは仕留めた獲物を焼き始めた。
「今日のご飯は焼き魚ー」
先ほど仕留めたのは魚であった。
今3人は道中で野営することとなり、その食事用に魚を焼いているのであった。
「文句があるなら食うなよ。」
アレンはぎろりとカインをにらむ。
「文句ぐらいは言わせてよ。誰のおかげでお金がないのさ。」
アレンの福引のおかげで今までの旅の資金を失ったパーティであった。
両手に余るほどの薬草は何本かは売り払い、
布の服のみの装備であった王女にローブを買い与えた。
おかげで本当に現在は一文無しである。
「僕たち仮にも王族なんだけどなあ。一文無しなんだよ?」
しばらくは野宿を余儀なくされて、さすがのカインもむくれている。
「だーかーらー、ちゃんと飯は調達できてるだろう。
心配しなくても、ここでレベルアップがてらモンスターと戦ってたら
金は手に入るよ。」
「マリアなんて深窓のお姫さまなのに、いきなりこんな生活なんて・・」
「カイン、私なら大丈夫よ。お魚大好きですもの。」
ニッコリ強気に答えるマリアを見ると、これ以上何も文句は言えない。
だが、マリアはどう見ても無理をしている。
早く目的を達成して、お金もそれなりに手に入れて
いつでも宿で休めるようにしたかった。
しかしこのパーティーはお金の事以外でも悩んでいることがあった。
3人パーティでの戦い方、戦術についてである。
大きな魔力を秘めているはずの姫だが、
まだ慣れていないのか戦いの場では発揮できていない。
アレンの剣の腕は迷いが無く実力も確かなものだ。
多くのモンスターは、アレンの一撃よって大きなダメージを与えることができる。
しかしいかんせんアレンの武器は剣のみ。
複数の敵が出たとき対応ができない。
一方カインは旅に出た最初のころと違って
魔法と剣の両方を使った攻撃ができるようになっている。
だが、その力はまだ未熟であり、敵を一撃で討ち果たせるほどではない。
魔法にしても広範囲に効果があるものではない。
2人パーティのときはアレンもカインも前だけを気にして
攻勢に出ることが出来たが、マリアがいるとそうはいかなくなった。
後ろを取られてしまうと終わりである。
結局マリアのそばに一人を残すとすると、
アレンにしてもカインにしても複数の敵が出たときに
敵を倒す決め手に欠けるのである。
マリアは2人の負担になっていることを感じていた。
しかもおかしな違和感があったのだ。
現在回復呪文は使えるので、魔法が使えないわけではないのだが、
炎の呪文ギラが使えないのである。
かつては使えていたのにだ。
カインもそれは不思議に思っていた。
ロト祭で出会ったときに、マリアはギラを使っていた。
もう5年も前のことだ。つい最近使えるようになった自分とは
違って、マリアは魔法をつかさどる精霊に愛されていると
感じた。
先ほど魚を焼くためにギラで火をつけようとしたが、
それもやはり駄目で、魔道師の杖を使ったのである。
ひょっとして魔法力が弱まっているのか、マリアには
分からなかった。
風の塔へ向かうにはムーンブルク城をさらに南下する必要がある。
城が近づくとさすがにマリアの表情が曇る。
アレンもカインも気にはなったが、今は城へは立ち寄らずに
塔へ向かうこととした。
しかし城の周辺はやはり魔物が多くなっていた。
そんな中、リザードフライの大群が現れた。
「5匹か!」
アレンは迷わず攻勢に出た。
一匹に致命傷を負わせたが、リザードフライは炎を吐きだした。
炎に包まれてアレンは膝をついた。
「アレン!!」
カインはどうするべきか悩んでいた。
ここでマリアを守りつつ、遠距離攻撃の魔法に頼るべきか
自分も攻勢に出るべきか。
マリアは自分が足を引っ張っていると感じていた。
でもこのまま守られているだけの存在でいることは嫌だった。
「カイン、行って。」
「マリア・・・でも、君今魔法が・・・」
今の自分は攻撃呪文が使えない。
それは本当だろうか。確かにギラは使えないが、逆にその上位の
魔法ならどうか。今まで使ったことの無い魔法だったが、
試してみたかった。
もしかすると本当に攻撃魔法が使えなくなっているのかもしれないが、
マリアはそれを振り切って決断した。
「試してみたい魔法があるの。」
試してみたいと言いつつ、自信のなさは不安な顔に表れているだろう。
「そっか、じゃあ任せたよ。
大丈夫だよ、いつだってマリアは魔法の天才なんだから。」
カインは笑ってそういうと、アレンの元に駆け寄った。
「アレン!大丈夫!?」
一人で戦うアレンのそばへ駆けつけたカインは即座にホイミを唱えた。
傷が治ったアレンであったが、後ろを気にするように言った。
「おい、置いてきて大丈夫なのか?」
アレンもマリアのことをずっと気にしていた。
魔法も本調子ではないようだが、魔法のことは全く分からず
アドバイスもできない。
「うん。大丈夫だよ。きっとすごい事をやってくれるはずだよ。」
カインはマリアの力を信じていた。
もう後ろを振り返らなかった。
リザードフライの大群にカインも斬りかかった。
マリアは魔道師の杖をかまえ、ある魔法を唱え始めた。
術者の周辺の風が舞い起こる。
大丈夫。できる。
そう確信したマリアは前の二人に叫んだ。
「二人とも伏せて!!」
その声を聞いた二人は反射的にしゃがみこんだ。
「風の精霊よ、鋭い刃となって、我の力となり、荒れ狂え!
バギ!!」
マリアはバギの呪文を唱えた。
突如巻き起こったかまいたちは、文字通り鋭い刃となり
確実にリザードフライを切り裂いた。
全ては一瞬のことであった。
リザードフライは全てこの一撃で息絶えていた。
「・・・・・マジかよ」
しゃがみこんだままのアレンはその威力に
下手にマリアを怒らせまいと思ったのであった。
「す、すごい・・・。」
カインもその威力に驚いていた。
バギはもちろん自分には使えない。しかも数匹の魔物全てに
確実にダメージをあたえるのは、すさまじい集中力が
必要だ。
「できたわ。これできっと私も戦えるわよね・・・?」
マリアはこれだけの魔法を使ってもまだ自信なさげに二人に聞いた。
アレンもカインも顔をみあわせて笑った。
「十分っだっつの。」
少なくとも自分が倒し切れていなかった魔物の群れを
この剣も持てないような女性が一人で倒したと言うのが
アレンにとっても衝撃だった。
「でも私・・・ギラが・・・・・使えない。・・・・使えなくなったの。」
マリアは自分が不安に思っていることを、アレンに告げた。
アレンには魔法のアドバイスなんて出来ない。
ため息をつきながら答えた。
「ギラなんて、カインが使えるだろ!それに、杖だってあるんだし。
って言うか、お前十分すごいからな。」
「うん、僕たち何も同じ能力で競う必要ないんだよ。
だって、僕なんていっくら剣の修行をしてもアレンになんて
勝てっこないんだから。」
苦笑しながらカインは言った。
当たり前だよ、100年早いんだよ、とアレンはカインにつっこみを入れるのを忘れない。
私には私の戦い方がある。
マリアが魔法に対する自信を取り戻した。
その後、3人はマリアの魔法と言う戦力を得て
風の塔の入り口へと辿り着いたのだった。
- 続く -
2010/10/03
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