ハーゴンの神殿 7

ごぼっと嫌な音がして、
ハーゴンの口から血が流れ落ちた。

「や・・・や・・・ったのか・・?」

傍にいたアレンの呟きに、マリアはハッと我に返った。
そしてその手に受けた衝撃に、震えた。

ハーゴンを殺した・・?
この手で・・・・・・?

「マリア!!下がって・・・!!」

呆然とし、動きが緩慢なマリアに
離れた所で見守るカインが声を掛けた。

悪魔神官の唱えていた祝詞が止まっていた。
そして悪魔神官たちがこちらを見ていた。

あれだけ騒々しかった礼拝堂内はシーンとしていた。

ハーゴンが反撃をしてくると予想し、
アレンはマリアの手を引き後ろに下がらせ
反撃に備えようとした。

だが、ハーゴンは血を吐きながら、
不気味に笑っていた。

倒した・・・?

ハーゴンの討伐が悲願だったはずだが、
とてもそれを成し得た喜ばしい状況とは思えなかった。

「かん・・・き・・・せよ・・・。」

「!?」

歓喜?歓喜と言ったか・・・?

「我らの・・祈り・・は今、完成する。
 全てを統治しうる・・・その力。」

「・・・!?」

「全てを破壊しうる神の力。」

口々に口ずさんでいる。
気味が悪い。

「カイン、こいつら何を言ってるんだよ!?」

「わ、分からないけど・・!」

力こそ全てと言う思想。
実際問題、アレン達は強くなった。

そうして、数々の苦難を越えて、ここまでたどり着いて、
ハーゴンを討ったとして・・?

全然分からない。
それを、想定していないはずが無い。
・・・いや、想定していたのは、それなのか?

これがハーゴンの求めたもの?
求めていたものが自分の死だと言うのか・・!?

どうも戦勝ムードなど全く湧いてこない。

呆然としているアレンをよそに、
悪魔神官が襲い掛かってきた。
アレンはそれを横目で剣でなぎ払いながら、
確認するように叫んだ.

「ええい、あとはこの悪魔神官どもを殲滅させれば良いんだろう!?」

そうアレンが言ったとき、
よろよろと、ハーゴンが天に向かって手を掲げた。

「は・・・かいし・・ん シドー・・・・よ・・・。
 アトラス・・・バズズ・・・ベリアルをほう・・むり・・・
 ヒトを越える・・・力・・・」

「!?」

「いま・・・ここに・・・いけにえをささぐ!!!」

「生贄・・・って・・?」

その言葉と同時に
神殿の天井が軋む音がして、
天井と壁がバギッと激しく破壊された。

「危ないっ!!」

アレンはロトの盾で、マリアをその瓦礫を防御した。

次の瞬間、ドンっと激しい音がして、
何者かが眼前に降り立った。

その姿はアトラスやベリアルなどよりも
遥かに巨大な化け物の姿。

鱗のような不気味な皮膚と4本の腕。
鋭い爪と大きな羽。
そしてどこを見ているのか定まらないぎょろりとした目・・。

ロンダルキアに来て様々な人智を超える魔物を見てきたが、
こんな魔物今まで見たことが無い。
唖然としてそれを見上げた。

だが、どこかで見たことがあるような・・・・そんな不思議な既視感があった。

「じゃ、邪神の像・・・?」

マリアがぽつりとそう言った。
ロンダルキアの洞窟に入る時、またこの神殿の内部に入る時使った邪神の像。
邪教における神体とも言えるその石像の姿を、
今までは醜い化け物としか認識していなかったが、
恐らく今召還されたこの魔物の姿だったに違いない。

つまり、この巨大な化け物こそが、邪教の追い求めた神の姿なのだろう。

「うわっ!?」

呆然としているアレンに再度悪魔神官が掴み掛かってきた。
イオナズンをするでもなく、攻撃をしかけてくるでもない。
なんなんだ、鬱陶しい!

「ぐ・・ふふふ・・ふっ・・・」

息も絶え絶えなハーゴンが不気味に笑った。

「ロ・・トの・・・・まつえいを・・・捧げ・・・
 破壊による・・・統治が始まる・・・。」

「?!」

「破壊神・・・シドーよ・・・!!
 我らが・・・ひが・・・・んっ!!!!!」

血を吐きながら続けられたその言葉は、話途中で遮られた。
シドーと呼ばれたその化け物が振るった手が、
ハーゴンの身体を真っ二つにしていたからだ。
残された下半身が力なく、その場に倒れた。

「あ・・!?」

アレンは、思わず声をあげた。
ハーゴンに同情するつもりなんて最初から無い。

だが、恐らくハーゴンが追い求めた理想と言うのが
全てを破壊しうるこのシドーと言う化け物による統治なのだとしたら、
まるで何1つ顧みられる事無く、今ハーゴンの命運は尽きたではないか。

何だ・・なんだ・・!?
これから何が起きようとしているのだ!?

シドーが雄たけびを上げた。
叫び声とも泣き声とも違うその咆哮は、
アレン達の足を竦ませるに十分なものだった。

だが、直後アレンの意識を覚醒させる声が聞こえた。

「アレンーーー!!!う、動いて!!」

そう叫んだのはカインだった。
その声に一瞬我に戻ったアレンは、悪魔神官を力で振り切って、
傍のマリアを抱きかかえ、サイドに大きくジャンプした。

直後、シドーの巨大な足が、アレンがいた場所を
床ごと、踏み潰した。

「うわ・・っ・・!半端ねえ・・・!!」

今のはシドーにとっては、一歩足を踏み出しただけだったようだ。
実際、次の一歩では、仲間であるはずの
悪魔神官を踏み潰していた。

「うげっ・・・・!!」

仲間とも何とも意識していないのだろう。
残忍な行為とも思っていない。
きっとこれは、ただの破壊行為。
本能のままに動いているだけのようだ。

「ア、アレン・・・・!!」

カインが慌てて駆け寄ってきた。
先ほど、アレンに避けるように助言してきたくらいだから、
よっぽど冷静なんだと思ったが、
どうやらそうでもなかった。

青い顔をして、剣を持つ手も震わせていた。

見ると、マリアはさらに色を無くして
先ほどから一声も発していない。
声も出ないほどの衝撃らしい。

確かに、ハーゴンと出会ってから、
頭の整理もできないまま、ハーゴンの喉元を貫き、
さらにまともな思考など全て破壊されるかのような
この衝撃的現実。無理も無かった。

「カイン、マリア・・・・。大丈夫か?
 大変な事になったな!
 どうやら、俺達生贄に捧げられるらしい。
 悪魔神官が俺らを捕まえようとしようとするから気をつけろ。」

「そ、そういう事なんだったんだね・・。
 僕らを生贄にして・・どうするんだろ。」

「俺達が全滅したら・・・、
 きっとあの化け物が世界を破壊しつくすんだろうな。」

言ってる間にも、悪魔神官が襲い掛かってこようとする。
だが、アレンたちの元にたどり着く前に
シドーに踏み潰されるものも多数いた。

「なんか・・・・哀れだな・・。」

その死に様にカインがぽつりとつぶやいた。
悪魔神官だって敵は敵であり、
襲い掛かってきたならもちろん対抗はするが、
おそらく召還されたシドー自体は、その彼らの思想を何も
意識していないのだろう。

ただの破壊活動を行っているのみだ。

こうなれば、命が惜しくば
悪魔神官も逃げたほうが良いんじゃないかと思う。

それは自分たちも同じだろうが・・・。 

「けど、考えようによっては、
 俺達、まるで大魔王と戦う勇者・・・みたいじゃん・・・!」

アレンがそう言うと、
唐突な言葉にカインが驚いた顔で自分を見つめた。
何を言ってるんだと言う顔だ。

「あれー?俺は割と本気なんだけどな。」

「何を馬鹿を言っているの!?
 どうしようっていうの・・・!あんな化け物・・・!
 見て!!歩くだけで・・あの悪魔神官が殺されていくのよ。
 近づく事もできないわ・・・!」

ようやくマリアが喋ったと思ったら、
そんな事を言い出した。

「勝つんだよ!何のためにここまで来たんだよ。
 あんなの放っておけねえぜ。」

「だけど・・どうやって・・・・」

確かに・・・あれほどの化け物と戦うのは初めてだが、
それでも、俺たちにも今まで修練してきた戦い方っていうものがある。

「マリア、まずはルカナンだ!
 あの化け物の守備力をギリギリまで削げ落としてくれ!」

「本気で!?アレン、本気なの!?
 破壊神の召還と言ったわ!神だと言ったわよ!?
 私達はただの人間よ!?」

震えるマリアの手を沈めるように押さえたのは、カインだ。

「マリア、落ち着いて。」

「カイン・・・?あなたも怖くないの・・!?」

「怖い。びっくりするほど怖くて、今心臓がバクバク言ってる。」

マリアの問いかけに、そう言ってカインが笑った。
確かに自分の手に触れているカインのその手は汗ばんでいた。

「マリア、君はハーゴンを倒したんだ。
 もうマリアはやるべきことはやったんだから、
 安全な所に逃げていて良いんだよ。」

実際カインはマリア一人くらいならルーラなり何なりを使って
逃がすことが出来たんだろう。
だけど自分一人が逃げて何になるだろうか。

「馬鹿な・・・!逃げるなら、皆一緒に・・!!」

マリアはそう言ったが、カインはアレンの方をちらっと見て
首を振った。

「多分ここで逃げたら、サマルトリアもローレシアも
 滅ぼされるだろうし。
 ムーンブルク復興もあいつを倒さないと叶わないと思う・・。」

「だろーな。」

アレンは先ほどから、カインたちの方を向いていないが、
話は聞いているらしい。

「まぁ、僕はマリアの夢を叶えるためなら、
 なんでもするって決めてるしねえ。」

「・・・な、何を馬鹿な事を・・っ・・!!」

「ははっ。こえーな、お前。
 マリアのためなら神にも逆らうか。」

マリアは信じられないような心境だったが、
でもカインの言う事も分かる。

もし・・・もし、あのシドーを倒す事が出来れば・・・

ハーゴンがいなくなったのだ。
きっと本当に、待ち焦がれた平和な世界が戻ってくるまで後少し。

「ば、馬鹿・・本当にあなた達は馬鹿ね・・・・!
 でも・・・・でも・・・あなた方だけに任せるなんて出来ない。
 ずっと一緒に戦ってきたんだもの!
 だから、だから・・・私も・・・戦うわ・・・・。」

とうとうマリアも、逃げず戦う道を選んだようだ。

「お前も馬鹿の仲間入りだな。」

そう言ってアレンは笑った。
カインは笑えない心境のようだが、ここまで来たら
腹をくくって、戦うしかなかった。

「よーし!指示を出す!
 行くぞ!お前ら!!」

アレンの一声に3人はいつものように戦闘体制に入った。
正真正銘、これがラストバトルであった。 







*****






「ぐっ・・・は!!」

ボキボキと嫌な音がするのと、
カインが二度目のスクルトを唱えたのは、ほぼ同時だった。

スクルトは間に合ったのだろうか?
アレンはシドーに掴まれ、握りつぶされそうになっていた。

身動きを取らなくなったアレンに
興味をなくしたように、シドーはアレンを振り落とした。

だが、アレンは倒れたまま微塵も動かない。

「アレンッ・・・!!」

すぐさまアレンの回復をしたくとも、
カインとマリアが二人揃ってシドーに背をむけていたら、
きっと3人揃って吹き飛ばされてしまう。

「マリア、アレンをお願い・・。」

カインはマリアに、そう合図した。
回復の間の時間稼ぎをするつもりだろう。
2人とも、今までの短い攻防でシドーの恐ろしさは十分分かっていた。

既にマリアがルカナンを限界まで唱えているが、
それでも、まともにダメージを与えられるに至っていない。
あえて言うなら、ダメージを与えられるのは
アレンの一撃だけだった。

「カイン、何をするの?」

「時間稼ぎ・・・くらいなら・・・・。」

カインは、ぎゅっと武器を掴んで、そう言った。
炎の剣を使ったって、自分の力では、対して通用しない。

攻撃魔法にしたって、自分よりマリアの方が強力だ。
だが、イオナズンを唱えた所で、
その爆風など、シドーは意にも介さず、足止めにもならないのだった。

それなら、自分が隼の剣を使って素早く動き回るのが、
いくらか時間稼ぎにはなるだろうと思った。

「・・っ・・・すぐに戻るわ!」

マリアにしても、それしかないと思ったから、
あえてそれを止めずに、逆にすぐに回復を終える方を選んだ。

アレンを戦線に戻すのが最善だろうと思った。


倒れたアレンの元へ駆け寄った。

ロトの鎧を纏っていても、防御しきれないようで
その床に血がしたたる。

「う・・・うう・・・・。」

あまりに大量の血に、
いつかの悪夢が一瞬頭をよぎった。
だが、アレンが漏らした声に若干安堵した。
生きてさえいれば・・・大丈夫。

「ベホマ・・・!!」

マリアの回復の光がアレンを包み込んだ。
その傷が回復していく。

「・・・マリア・・・?
 ・・俺・・生きて・・?」

「良かったわ。アレン!紙一重スクルトが
 効いていたのかもしれないわ。」

起き上がったアレンは拳を何度か握り締めて、
感覚を取り戻そうとした。

「はー・・。死んだ・・・かと思った・・。」

骨と言う骨がボキボキと音を立て壊されていく感覚、
抗う力が有無を言わさず体から抜けて行った。

「や、やめてよ。縁起でもない・・・。」

「縁起とかそう言う話じゃなくて、マジでだ。
 あの化け物半端ねえぞ。
 俺達なんか恐竜に逆らう蟻みたいなもんだ。」

「アレン・・・・。」

アレンからそんな言葉を聞きたくなかった。
じゃあ、どうしろと言うのだ。

そんなマリアの顔を見てアレンはその不安を察したらしい。

「あ、いや・・だからって負ける気はねえけど。
 ところで・・・マリアのあの魔法は完璧じゃないんだろ?」

「え?」

「ザオリクを完璧に使えるのはカインだけなんだろ?
 じゃあ、カインは殺されないようにしないとダメだ。」

「・・・・・!!」

それはこの戦いで誰かが死ぬかもしれないと
アレンが言っているようなものだ。

「マリア、お前は後方からの支援だけだ。
 前に出てくるなよ!」

「アレン!!」

そう言ってアレンはシドーに向かって再度、走り出した。





カインは力の限り動き回って、
時に炎を交えながら、
全力でシドーの気を引いていた。

やはり隼の剣で斬りつけても、
大きな傷にはならない。

なので、深追いは厳禁だ。
アレンが復活してから・・・反撃はそれからだ。

だが、シドーの方も、カインが攻め込んでこない様子を悟ったのか
興味を失ったようだった。

踵を返し、反対側へ向かおうとした。

「あっ・・・待て!」

アレン達の元に行かせては行けない。

気を引かねば・・・。
そう思って、カインはベギラマを唱えた。

が、シドーはちらりとこちらを見ると、
すうっと大きく息を吸って、激しい炎を吐き出した。

ベギラマの2倍はあろうかと言う巨大な炎は、
あっという間にカインの炎を飲み込んだ。

「・・・・わっ!!」

一瞬の出来事に思わず防御しようとしたが、
その自身の炎を貫いて、より恐ろしいシドーの巨大な爪が
ぬうっと現れた。

「あああっ・・・・!!」

予想外な攻撃に、まともに防御することも出来ず、
その鋭い爪がカインの首元から肩にかけて突き刺した。

「ぐ・・・はっ・・・・!
 うっ・・・げほっ・・!!」

思わず、その場に倒れこんで何度か咳き込んだ。
一瞬喉を突き刺されたのかと思ったが、
どうやら急所は外れていたらしい。
何とか息をすることが出来た。

回復を・・・と思って、ベホイミを唱えようとしたが、
頭上から再度炎が降りそそがれようとしているのを感じた。

「・・・・ーーーー っ !」

為す術もなく、思わず目をつぶったカインの
その前に颯爽と誰かが現れた。

「っらああああーーーー!!」

アレンの声だった。
アレンの気合の一振りが、炎を切り裂いていく。

さすがにこれだけの巨大な炎を、全て左右に切り裂く事は出来なかったが
それでもダメージなど感じさせないように、
アレンはカインの前に立ちはだかった。

「アレ・・ッ・!!」

思わず叫んで、息が詰まってげほっと咳をしたカインに
アレンが駆け寄った。

「平気か・・・?」

「う・・・うん。」

今度こそ落ち着いて、ベホイミで回復をすると
カインもすぐに、立ち上がった。

「僕なら、何とも無い。」

「よし。なら、お前もマリアと一緒に下がってろ。」

「え・・・?なんて・・?」

アレンの言葉をカインは思わず聞き返した。
アレンが言うには、マリアは今後方に下がらせているらしい。
それは別に構わない。
だけど、自分まで下がれという。
アレンが一人で戦おうというのか?

「僕が・・・弱いから?」

カインの言葉をアレンが笑った。

「今更そんな事いわねーよ。
 お前がすげーのは分かってるんだから。」

そう言われて逆にカインは困ったように眉をひそめた。

「それなら、・・・なんで・・?」

「聞けよ。考えたんだ。作戦だ。
 俺があいつを出来るところまで攻撃して、ダメージを与える。」

「う、うん。」

そこまでは良かった、
だがそこから先は容認できるものではなった。

「で、俺が死んだらお前がザオリクしてくれ。
 そしたら何度でも戦える。」

その言葉にカインが顔色を変えた。

「・・・な・・・何を言ってるんだ!!
 そんな作戦だったら聞けないよ!!」

血相を変えてカインが首を横に振った。
アレンの作戦に逆らうのは珍しいが、
従えないものは従えない。

「誰も死なないし、死なせない・・・!」

「カイン・・・。」

「そもそもアレンそんな作戦無理があるよ!?
 ザオリクはすごい魔法力が要るんだから!
 何度も使うのは無理なんだから!!」

まくし立てるカインに、冷静にアレンは言った。

「一回は使えるんだ?」

「い・・一回って・・・アレン!!もう、止めてよ!」

こんな剣幕なカインも珍しかった。
これ以上話をしていても、無理だろうと思った。

「分かったよ。もういわねえ。」

そう言ったアレンにカインは明らかにほっとした様子だった。

「じゃあ、お前も死ぬなよ。
 作戦は、いつかと同じだ。
 お前らが気を引いて、俺がとどめ。」

「うん!!」

そう言っているうちにもシドーが殴りかかってきた。
慌てて、左右に散る。

「マリアーー!!」

アレンがマリアに合図をした。

すぐさま意図を理解したマリアが離れた場所からマヌーサを唱えた。
どうやら、それは効いたらしい。

シドーの一撃は、アレンから大きく外れた。

「ベギラマ!!」

さらにカインの炎がシドーの足を一瞬止めた。
それを見てアレンが武器を握る手に力をこめた。

「今だああああ!!!」

アレンは飛び上がって、天高く飛び上がった。
アトラスを倒した時のような一撃を・・・。
この一撃に賭ける!

アレンの思いに応えるように、
稲妻の剣が激しく光を帯びて輝いた。

「うおおおお!!!」

アレンの一撃は、
なんとシドーの4本あるうちの1本の腕を斬りおとした。

シドーが激しい痛みに暴れている。

アレンはその様子に、拳を握って喜んだ。

「よぉし!」

腕を一本失わせるという、確実に大きなダメージを与えられた。
この調子で行けば、何とかなるかも・・・。

そう思ったアレンであったが、
だが、次の瞬間、激しく絶望することになった。

「なっ・・!??」

「嘘だ・・!」

アレンとカインが思わず声をあげたのは
シドーが唱えた魔法に驚いたからだ。

シドーが唱えた魔法はベホマだった。
斬りおとされた腕が元通りに治って行く。

「そんな・・・あいつ回復魔法唱えるのか!?」

更に唱えた魔法は、スクルトとルカナンだった。
先ほどカインとマリアが唱えた魔法だ。

もしかして・・・あいつは人の魔法を見て、
すぐ覚えるのか・・?

「こいつはやべーーな・・・。」

だが、シドーは色々考える隙も与えてくれなかった。
激しい炎が降りかかってくる。

「アレン!!ちょ、ちょっと一旦下がって!!
 炎よ・・!!」

カインがアレンの前に立ち、
今度は激しいシドーの炎に負けないように
両手を使って、ベギラマを唱えた。
それでもシドーの炎に打ち勝つ事はできなかった。

「くっ・・・!!」

いくらか炎のぶつかり合いの余波を受けつつも、何とか凌ぎきった。

「大丈夫か!?」

「う、うん・・。なんとか。
 アレンこっちへ・・!!」

カインは、アレンの手を引いて、一旦マリアの元に戻った。



「アレン!カイン!!大丈夫!?」

戻ってきた仲間にマリアは心配そうに声を掛けた。
2人とも、それには頷いて応えた。

「しかし、あいつやべーぞ。
 ベホマとか使うんだったら、いくら攻撃しても
 イタチゴッコじゃねえか!」

「本当に、恐ろしい化け物だわ。
 既に覚えていたのか、私達の魔法を真似したのか
 分からないけど・・・。イオナズンも大して効きはしないわ。
 どうやって倒せばいいの・・!?」

絶望感でいっぱいのアレンとマリアであった。
アレンが、例え先ほどの作戦の通り
ザオリクで生き返って、いくらダメージを与え続けても、
ああやって回復されては倒せる気がしなかった。

「あの・・僕1つ思いついたことがあるんだけど・・・。」

そんな中、カインが何かを思いついたようで、
すごすごと手をあげた。

「なんだ・・?言ってみろ・・!」

正直今はどんな小さい光でも良い。
倒せる方法があれば知りたかった。

だが、カインが言ったことは、
アレンにとって全く荒唐無稽な話だった。



- 続く-

2013/06/16
▲

     
     いよいよラストバトルです!!
     たぶん、次で終戦する・・はず・・!
    

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