「いでえっ!!」
吹き飛ばされていたアレンは床にかなりの勢いで、
たたきつけられそうになった。
周りを見渡すと、
神殿というよりは、所謂ダンジョン・・塔の中のような雰囲気だった。
一応、神殿の内部に入り込むことに成功したようだった。
アレンはごくりと喉を鳴らすと、
ゆっくり立ち上がった。
「カイン、マリア・・?どこにいる・・?」
しかし、いくら見渡しても仲間達の姿が見えない。
「カイン・・マリア・・・!?」
フロア中を走り回ってみたが、見当たらない。
アレンはもう一度息を呑んだ。
いない、2人の姿は見えなかった。
いなくなってしまった・・。
まるで、あの幻の世界と同じじゃないか・・!?
アレンの脳裏に、
神殿に入った直後見せれらた幻の世界が浮かんだ。
どうやらマリアの話によると、
マリアは過去のムーンブルク城を見せられたらしい。
アレンはと言うと、
見せられたのは、未来の幻だった。
何故か、そこは荒廃した世界だった。
ローレシアと言う自分の故郷は、
王を始め、他の民もまるで人が変わってしまった様子だった。
アレンは何故かそこに帰れないと思っていた。
勿論、違和感を感じたものの、
さらに、アレンにとって受け入れられないものもあった。
ローレシアだけではない。
アレンの周りには誰もいないのだ。
いや、正式にはいなくなった。
「あなたとの旅の日々は確かに存在した。
でもそれは過去の事なのよ。」
昔から毅然とした強さを持っていたマリアだったが、
もう二度と振り向かないといった風に去っていった。
そして、もう1人。
「さようなら。
ごめんね。もう僕は・・・君には着いていけないんだ。」
そう言ったのはカインだ。
寂しそうな表情を浮かべていたカインに手を伸ばしたが、
何故か届かず、そして、いつの間にかいなくなった。
「カイン・・・?なんだよ、それ・・・。」
ずっと無理やり連れまわしていたのが
お前にとっては、迷惑だったのだろうか?
お前達にとって、俺とは一体何なんだろうか?
目標を達成するための
ただの力、ただの道具だったんだろうか?
いや、いや・・違う。
ふざけるな、こんなものは嘘だ!
旅の道中、毎日のように3人で笑いあい、時に怒鳴りあった日々、
生き返った俺を抱きしめて大声で泣きながら喜んでくれたカインとマリア、
三人で強くなろうと誓い合ったあの日。
全部全部鮮明に思い出せる。
嘘じゃない。
日が経てば、そりゃあ何年も経てば、
全ての思い出がいずれ色あせるしまうのかもしれないが、
真実は変わらない。
3人で旅をした絆は消えない。
だから、もしかして今見たものが
何らかの意味があったり、将来の姿だったとしても、
それには、絶対何か事情があるに違いない。
なら俺は、いつでもその力になる。
ローレシアが荒廃してるって言うなら、俺がそれを正す。
それに仲間が寂しそうに去っていくのなら、
俺はいなくなった仲間を探して事情を聞くんだ。
だから、もう一度カインを見つけてやる。
そうして、いつかのように、また出会うんだ。
必ずだ。
俺がそう考えたとき、まやかしが晴れたのだ。
そこには心配そうに覗き込むカインの姿があったのだ。
俺はやっぱり、変なまやかしを見せられていたのだ。
心を揺さぶろうとするハーゴンの罠だったんだろう。
しかし今、2人がいないのは、現実と言えば現実だ。
どうやらあの邪神の像の移動能力によるもののようだ。
3人は別々の場所に飛ばされてしまったようだ。
早く合流しなければならない。
そう思ったアレンの前に、ずーん・・・という腹の底に響くような
重低音の足音が聞こえた。
現れたのは見覚えのある一つ目の化け物。
「!!」
今見ると、ギガンテスとよく似ている。
が、よく観察すると肌の色が違う。
なるほど、こいつが出てくるわけか。
ローレシアに帰ったとき見た一つ目の化け物。
「アトラスって言ったか!?」
相手は答えない。
どうやら、こいつは知能が少ないようだ。
ローレシア城を襲っておいて、自分も殺されそうになったが、
いつの間にかいなくなっていた。
その理由を、こいつから聞くことは出来ないだろう。
まぁ、良い。
敵意むき出しに、アレンを睨みつけるアトラスと
友好的にコミュニケーションなんて
どっち道取れやしない。
アレンは稲妻の剣を構えた。
あの時は全然敵わなかったが、
今ならどうだろうか?
ローレシアで初めて戦った時も、カインたちはいなかった。
何故だか今もいないが、
1人で戦うことに、戸惑うつもりは無かった。
いつでも戦える準備はしてきたからだ。
三人で戦えばどんな敵にも勝てるようになったと思っていたが、
1人で戦うとは少々ヘビーな話だ。
が、まぁ、仕方ない。
それに、今自分がこいつと敵対していると言う事は
カインやマリアも同様に巨神たちと敵対しているってことだ。
とっとと倒して、カインたちの助太刀に行かなければならない。
そうこうするうちに、アトラスはアレンに向かって雄たけびを上げながら、
大きな棍棒で殴りかかってきた。
「がああああーーー!!!」
「おっと・・!」
それを間一髪アレンはジャンプしてかわした。
体制を整えて、返しの一発を浴びせようとした所、
かわしたはずの棍棒がすぐ目の前にあった。
「ううっ!!」
なんとかロトの盾でそれを押さえた。
アトラスはやはりかなりのスピードと力だ。
だが、アレンはアトラスの攻撃をやり過ごすと、
すかさず回りこんで、稲妻の剣でその硬い皮膚に切りかかった。
アトラスの皮膚から、血が流れ出る。
よし。戦える。
アレンは確信した。
以前はかすり傷もロクに与えられず、
防御などままならず一方的にやられた相手だが、
今なら攻撃も防御もどちらも十分可能だ。
倒す。
後ろに仲間がいないのは少し不安だったが、
逆に言うと、後ろの事を一切気にせず
今自分がするのは、攻撃の一点のみ。
どうせ回復魔法など使えないのだし、
体力尽きるまで前進するのみ!
「行くぞおーーー!!」
アレンは地を蹴って走り出した。
こんなでっかい化け物相手に真正面から行くほど馬鹿ではない。
体格差を利用してアレンはすばやく回り込んだ。
時には足元をかいくぐり、
時にはジャンプして壁を走りぬけ
足元に一撃。
背中に一撃。
着実に攻撃を与えていく。
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最初は自分の攻撃が有効だと感じていたアレンだが、
次第に少しずつ焦りを感じ始めた。
倒れないのだ。
いくら攻撃をしても倒れない。
「なんなん・・・だ?こいつ・・・。」
そう思いアレンが一瞬立ち止まった時、
アトラスはその隙を逃さず、一撃、そしてもう一撃と
アレンを殴りつけた。
「ぐっふ!!」
吹き飛ばされたアレンは壁に叩きつけられた。
「あ・・・っ・・・。」
どすどすっと足音を立ててアトラスがやってくるのが見える。
逃げようにもどうやら壁に食い込んでいるようで
身動きも取れない。
「くっそ・・・!!」
今までならこんな時、
カインかマリアが助けてくれるのだ。
1人で戦う必要は無いよと言ってくれるのだ。
が、今はその仲間がいない。
いや、待て。
大体さっきも仲間はいないと思っていたはずなのに
どうしてすぐ自分は仲間を期待するようになっているのだ。
仲間に助けられるんじゃない。
俺が引っ張るんだ、俺が助けるんだ。
こんな所でやられてたまるか!!
「くっそおぉぉーーー!!」
アレンは自由に身動きを取れないまま
右手の剣を振るった。
アレンの剣気を纏った剣戟がアトラスに届く。
しかし、その一撃は浅かったらしく、
アトラスに対して足止めにもならない。
逆に、怒り狂ったようにアトラスはアレンを攻撃してきた。
そのすさまじい攻撃はアレンを捕らえてる壁を
破壊させる勢いだった。
「ぐうぅうう!!」
アレンはそれをロトの盾と鎧で受けたが、
その一撃で盾が吹き飛ばされてしまった。
そして、体制を整えるよりも先に、
すぐそばに再度、アトラスの痛恨の一撃が迫っていた。
身をかわすことも出来ず、
その一撃は激しく生身のアレンの左半身を殴りつけた。
「うわああっ!!」
まともに受けたその左肩からボキボキッと嫌な音がする。
肩がイカれたようだ。
だが、アトラスの馬鹿力のおかげで壁から開放されて、自由の身になれた。
痛みなど気にする暇はない。
アレンはすぐさま、自分の頭上にあるアトラスの巨大な棍棒と両腕に飛び乗った。
そして、その腕を顔面に向かって走り出した。
「いっくぞーーー!!!」
狙いはあの巨大な一つ目だ。
目を潰せば、とりあえずあいつの攻撃はままならなくなるだろう。
大きく飛び上がったアレンを
アトラスは見上げた。
その目は明らかにアレンを捕らえていた。
一瞬ぎくっとしたアレンであったが、もう勢いを止められない。
止められないくらいなら、
全部込めてやれ。
アトラスの攻撃に負けないくらいの一撃を。
バキバキと言う折れてるらしい左手もあわせて、
両手で稲妻の剣の柄を握った。
「くっ!!」
その痛みに少し動きが鈍る。
その間にもアトラスがこちらを照準に捉え、
巨大な棍棒で殴りかかってくる。
「負けるか・・・お前なんかに負けるか!!!
うおおおああああ!!」
叫んでるんだか悲鳴だか良く分からないが
アレンは持てる力の全てを稲妻の剣にこめた。
とにかく、アトラスより早く一撃を。
アレンが考えていたのはそれだけだった。
すると不思議な感覚を覚えた。
アレンの剣気だけでは無い。
不思議な力がアレンに力を貸しているかのように、
稲妻の剣は眩しく光り輝いた。
そうして、普段の何倍かの勢いで、
アレンは大上段に剣を振り下ろした。
「だあああああっ!!!」
勢い余ってアレンは着地に失敗してごろりと前転した。
再度、アトラスの反撃より早く一撃を喰らわる・・・!と
体制を整えようとしたアレンであったが
アレンに追撃の、その機会は訪れなかった。
何故なら、ずぅぅぅーーーーーんと音を立てて、
アトラスのその巨体が倒れたからだ。
「・・・・え・・・?あ・・・?」
なんだ?
アレンはすぐには何が起きたのか分からなかった。
だが、起き上がってこないアトラスを見て、確信した。
アレンの攻撃は会心の一撃となり、
ついにアトラスは倒れたようだった。
「勝った・・・!?勝った!俺の勝ちだ!!」
- 続く-
2013/05/20
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