デルコンダル8

・・ああ・・・

・・すごい・・・・・すごいなあ・・・・

本当にアレンはあの化け物を追い払ったんだ・・・。

カインは、詰めていた息を吐いた。
アレンがやってくれた。

やっぱり・・アレンはすごい。




「おーい!!ベリアル!どこ行った!!?」

アレンは着地すると前後左右を見渡した。

呼べど叫べど、もうあの化け物が出てくることは無かった。
その他の魔物達も、マリアのイオナズンで最早息絶えていた。

「勝った・・の・・か・・・?俺たち、やったんだよな?」

アレンはその場で、よっし!と両拳を握り締めた。

いや、正確には追い払っただけだ。
でも、十分この危機を乗り切ったと言えよう。

「アレン、やったわね!」

イオナズンの消耗も忘れてマリアも喜んだ。
アレンも手を振ってそれに応えた。
だが、共にこの喜びを分かち合えるもう一人の仲間の声が聞こえない。

いやな予感がして、振り返ると、
その場に崩れるように倒れこむカインの姿が見えた。









++++




暗い・・・。

暗いなあ・・・。
ここはどこだろう?


カインは今自分がどこを歩いているのか良く覚えてなかった。

さっきまでデルコンダルにいたと思うんだけど、
ここは・・・どこだろう?洞窟かな。

手にはロトの剣があった。

「あれ?ヒビが入ったんじゃなかったっけ?」

見るとロトの剣は、ヒビもなく綺麗だった。

「・・・なんかの間違いか。ロトの剣にヒビが入る訳無いよねえ。」

ぶんぶんと剣を素振りしてみる。
軽くて手になじむ感じ。

「良い感じ。」

あれ?
それより、なんでこんな苦労もなく身体が動くんだろう。
確か、自分の身体は呪われていて、
手も足も何十キロもの重しをつけているかのように重かったのに・・。

「・・・・・気のせいだっけ?」

もしかして治ったのかな。
精霊ルビス様のご加護だろうか。

手をいくら動かしても、その場でジャンプしても、
歩いても、走っても、全然楽に動ける。

「わ・・・これって。」

何だかわかんないけど、治ったんだ。

やった、やった!
嬉しい!

これでまた二人と旅が出来る!!

「ねえ!聞いてよ、僕の身体治ったみたいなんだ!」

パッとカインは背後を振り返った。
きっといつもみたいにそばにいてくれているはずの
仲間たちの姿は・・・・なかった。

「アレン?マリア?・・どこにいるの?」

見渡しても、そこはただ真っ暗な空間だった。

きょろきょろとカインはあたりを見渡した。
何にもない。

人の気配どころか、虫や植物の気配も・・・何も無い。

「・・え・・・?なんで?ここどこなの?
 皆どこに行ったの?」

段々不安になってきた。
カインはその場を走り出した。

いくら走っても、二人が見つからない。

僕はここに置いていかれたんだろうか。

そう思うと、悲しくなってきた。
でも、アレンは強いから、マリアも強いから、
二人で行けばきっと戦っていける。

「そっか・・・。」

とぼとぼと歩いていると、
ふいに目の前が明るくなってきた。

出口かな、と思って明るい方へと歩いていった。

気がついたら、手に持っていたはずのロトの剣が無くなっていた。

「・・あれ?・・どこ行ったんだろ?
 でも・・・もう、僕には必要がないから、良いか・・・。」

この暗闇から抜け出せれば良いや。

そう思ったとき、初めて人影が見えた。
その人影は、こっちを見ながら手をふっている。

「あ。」

アレンとマリアだ。
なんだ、待っててくれたんだ。

「おーいい!!」

カインも手を振り替えして、二人の下へと急いだ。

「ねえ、どうしたの?ここどこなんだろう?
 二人は知ってる?」

カインがそう尋ねたとき、
アレンはカインのことを、
まるで信じられないものを見るような顔をして・・・

倒れた。

「アレン?ちょっと・・、どうしたの?」

驚いてカインはアレンを助け起こした。
アレンの手首に触れると・・・それは驚くほど冷たかった。

「・・・・・え・・・何・・これ・・・アレン、どうしたの・・?」

揺さぶると、ぐらっとアレンの首が力なく倒れた。

「!?ア、アレン!?」

そして何度揺さぶってもアレンは何の反応も示さなかった。

ざっと、後ずさる足音が聞こえる。
マリアが、二三歩後ずさった音だ。

「マリア・・・?ねえ、アレンが!!」

マリアはいかずちの杖をカインに向けながら白い目で言った。


「・・・・あなたが・・・・****!!」


え・・・なんて言った・?
何、それ・・・。

そんなの・・・・そんなの・・・・嘘だ。絶対嘘だ!


「う・・・わ・・ああ。あ、あ・・ああああああーーーー!!!」






+++



「おい、おい。起きろよ!カイン!!」

カインは激しい衝撃で揺り起こされた。

「え・・え・・・?」

目を開けると、そこにはアレンがいた。
目の前で倒れたはずのアレンが、そこにはいた。

「あ!!アレン・・?アレン、アレンだ・・!!」

カインはアレンの手首を捕まえた。
それは、温かく血の通ったものであった。

「な、何だよ。」

「アレンが・・・いた。」

「いるよ、さっきから。お前どうしたんだよ。
 めちゃくちゃうなされてたぞ?」

どうやらさっきのは夢だったらしい。
カインは嫌な汗をかいていた。

「マリアは?ねえ、マリアはどこ?」

「いるよ、そこに。」

アレンは椅子に腰掛けたまま、
カインのいるベッドにもたれ掛かって眠っているマリアを指差した。

「マリアは兵たちの回復で引っ張りだこだったからな。
 魔法の使い通しで疲れたんだろう。」

「そっか・・・・大変だったんだね。
 ごめんね、僕何にもできなくて。役立たずで。」

そういうカインにアレンは軽くこついた。

「バーカ。もう一回それ言ったら怒るぞ。
 どこが役立たずだよ。
 今回だって、俺たち3人誰が欠けても
 生きていられなかっただろうさ。」

アレンの言葉が暖かかった。

「ありがとう。アレン。
 ところでさ、えーっと、ここどこだっけ?」

アレンは首を傾げながら、
カインの頭に手を乗せた。

「なんだよ、デルコンダルだろ。しっかりしろよ。
 ここは城の一室だよ。王様が使って良いって。
 お前を休ませるためにこの部屋借りてるんだよ。」

見ると、とても広い部屋だった。
どんなリッチな宿でもこんな広い部屋は用意できまい。
おそらく国賓級の来賓客のための一室なのだろう。
恐れ多くも、ありがたい話だ。

「で?お前どうしたんだよ。変な夢でも見たのか?」

「あはは。う、うん。そうみたい。」

カインは笑って答えた。
大分気持ちも落ち着いてきたみたいだ。

「ほんで、体調は?」

「僕どれくらい寝てたんだろう?」

「ん?時間にして数時間くらいだよ。
 今日はもう起きないかと思ってたぞ。」

外を見てみると、徐々に暗くなり始めていた。

「体調は・・・。」

答えようとしてカインは身じろぎした。
何とか踏ん張って、身体を起こした。
半身起こすのも大変な労力だ。

でも、これが今の現実だろう。
そう思えば、さっきの夢は単なる夢に過ぎないってことだ。

「普通みたい・・・。」

「普通かよ。それで。」

ハアと呆れたように、アレンがため息をついた。

「それより、マリアもこんな所で寝るんだったら
 ベッドで寝た方が良いよ。
 戦いは終わったのだから、ゆっくり休んだ方が良いよ」

そんなことを言いながら、
カインは眠っているマリアの手を引いてベッドに寝かせようとした。

「よい・・しょ・・。」

「・・・・・・。」

アレンもそれを無言で手伝ってやった。
手伝ってやりながら、疑問を口にする。

「ほんで、何なの?
 お前は、俺の前でマリアと二人で寝るの?」

「は!?何言ってんだよ。
 この部屋広いじゃないか。あっちのベッドに
 僕移動するよ。」

と、言いながらベッドからカインは降りようとした。

「あーほ、か。
 お前が一番寝てろって言うんだ。」

アレンはカインの額にデコピンを食らわせた。

「いったい。やめてよそれ。
 アレン馬鹿力なんだから、痛いんだよ。」

ぶつくさと文句を言いながらも、
やっぱり結局別のベッドに移るらしい。
壁に手をかけながら、移動するカインに
呆れながらも手伝ってやった。

「ほら。」

「ありがとう。
 ところで、この部屋本当に立派だねえ。
 王様にあとでご挨拶に行かないと。」

「ああ、お前大分無礼な口聞いてたもんな。
 無礼撃ちにされるかもなー。
 俺、しらねーぞ〜?」

「えー、そうかな。やばいかなあ。。」

うーん、と困った顔でカインは頭を抱えた。
あの時はあの時で必死だったんだからなあ・・と
思いつつ、やっぱりやりすぎだっただろうか。

本気で悩み始めたカインを
そんな訳無いだろうと思いつつ、
アレンは気にかかっていたことを聞いた。

「あのさ、全然話変わるんだけど・・・。」

「ん?何?」

アレンは少し前の記憶を思い返した。
あの、呪いを受けようとしたときのことだ。

「俺さ、お前の呪いを一瞬かぶったじゃないか。
 そんでさ・・」

「何?あれは止めてよって言った筈だけど?」

その話をしようとすると途端に嫌な顔をするカインを
無視してアレンは続けた。

「良いから聞け。あの時な・・・」

「・・・・?」

「まぁ、お前が言ってるような事も・・
 身体がずしっと重くなる感じもあったんだけど、
 それとは別に・・・。」

「別に・・何?」

「なんかさ・・よくわかんねえんだけど。
 血みどろのどろどろの・・目を背けたくなるような・・。」

アレンはあの時見たものを表現しようとした。
そうだ、あれはすごい血が流れていて、そこに人が倒れていたんだ。
正直アレンが目を背けたくなるような惨状とは結構ひどい。

「あれって何なんだろうな?お前もそういうの見てるのか?」

アレンの問いかけにカインの表情が硬くなった。
じーーっとアレンが何を言うのか注目していた。

「・・・・・血・・・・??え?」

カインはしばらくの間の後に、首を傾げた。
さっきの夢もそんな風な暗いイメージであったが・・・
だけど、はっきりと覚えている。

血は一滴も流れていなかった。

ただ、がくりと糸が切れるように倒れたのだ。

「・・・・・それって・・えっと・・・?血って何のこと・・?」

「え?何のことって、あれ?あれはお前が見たものじゃないのか?
 だって、お前見るな見るなって騒いでたじゃないか・・」

散々目をつぶれだの何だのと騒いでいたので、
アレンはてっきりカインはいつも見ているものだと思った。

「それは・・・呪いって言うのは・・・術者に意識をとられたら
 すぐに暗示がかかると言うか・・
 その・・アレンは・・・単純そうだし。」

「なんっじゃ、そりゃ。」

じゃあ、あれは単なる何かのイメージに過ぎないんだろうか。
アレンは気にする必要ないのか・・?と思った。
カインも正直意味することがよく分からなかったし
あんな夢を見たのも初めてだったのだ。

二人がそんな話をしていたとき、
扉をこんこんとノックする音が聞こえた。

「失礼して良いかな?」

その声はデルコンダル王のものであった。

「あ、はい!!」

アレンはあわてて立ち上がって、
扉を開けに行った。

デルコンダル王は侍従を何人か連れて部屋に入ってきた。

カインは先ほどの自分の無礼を思い出して、
背筋を伸ばして座りなおした。

「おお。カイン殿、目が覚めたか。良かった!うむ!」

大声でそう嬉しそうに王は頷いた。

「はい。ご心配をおかけして申し訳ありません。
 あの・・マリアがまだ休んでますので、
 ご挨拶はその後にと思ったのですが・・。」

カインはそう言ったが、いつの間にか
マリアは起き上がって、ベッドからも降りていた。

「あれ?マリアいつのまに?起きてたの?」

「ええ、カイン。少し前からね。
 ごめんなさいね、
 返って手間を取らせちゃったみたいで。」

「全然〜。」

こっそりとそんなやり取りをするカインとマリアを
うんうんと頷きながら、王はカインの元へとやってきた。

「それでだな、うちの優秀な医者を連れてきた。」

王が連れてきたのはどうやら医者だったらしい。

「あ、ありがとうございます。
 でもこれ病気じゃないんです。」

「どういうことじゃ?」

カインはどう説明したものかと思い、
アレンたちの方をちらっと見た。

「ああ、おぬしたちの事はアレン殿からも聞かせてもらった。
 アレン殿とマリア殿も一国を背負って旅をしているとな。」

アレンは苦々しい顔をしながら、
芋づる式に話すことになったんだよ・・とぼやいた。

どうやらこの部屋を借りたりするときに
王と話をしたらしい。

カインもそう言うことであれば、と簡単に呪いの事を説明した。
王は怪訝な顔をしていたが、
でも目の前でこうしているのを見ると納得したらしい。

「そうだったのか・・・。そう言うことであれば、
 この医者は役に立たんな。」

「お心遣い、心より感謝いたします。
 それに王様、城下の占い師に教えてもらったんです。
 西の方に行けば良いと。」

「ほう、城下の占い師は腕は確かだ。
 大雑把なのがたまに傷だがな。」

どうやら王様のお墨付きの占い師だったようだ。

「そうか、西かー。そうだなあーー。
 お主らがどこに行くかは分からんが、
 ベラヌールという街は行ったかね?」

アレンたちは顔を見合わせた。
行ったことがない街だ。

アレンは地図を取り出した。

「ここですね、西って言うか・・・はるか西・・。
 ここがどうかしたんですか?」

「うむ。ここと同じように海に囲まれておってな
 規模は小さいのだが、綺麗な水の都でな。」

「はぁ・・・?」

3人には話が見えなかった。

「まぁ、それは表向きの呼び名であって、
 この街には別名があってな。
 それが『魔界に一番近い町』と呼ばれておる。」

「ま、魔界・・・・って!?」
 
「どういう事なんですか?」

口々に問うてくる質問に対して
王は答えをつまらせた。

「噂だよ。詳しいことは分からんが・・・・
 お主らの目的から言えば、とうに行ってるかと思ったぞ。」

「そう・・・ですね・・・。貴重な情報をありがとうございます。」

アレン達は礼を言った。

「王様色々ありがとうございます。」

「うむ。ところで、わしは強いものが好きでな。
 お主たちの戦い、胸が躍ったわ。」

そんな悠長なことを言うよりも
かなり絶望的な国の危機であったと思うが、
胸が躍るとは中々豪胆な王である。

「カイン殿の身体が治って、
 平和な世になったら、
 またこの国に遊びに来ると良い。
 その時は歓迎しよう。」

「ありがとうございます。」

デルコンダル王のその好意の言葉に、
ありがたく思ったのは本当だ。

だが、カインはふと思った。

そんな時は本当に来るのだろうか?
例え来たとしても、
その時はもう3人で旅なんて出来ないかもしれない。

それでも・・・・
出来れば、いつかまたこうやって3人で旅をしたい。

その希望もこめて、答えた。

「必ず、また来ます。」


王の方は満足げに頷いた。
そして胸元から、あるものを取り出した。


「さぁ、約束のものじゃ。
 わが国の守り神とも言える『月の紋章』。
 持って行くが良い。
 ロトの小さな末裔達に、輝かしい明日が来るように祈っておる・・・!」

既に太陽が落ち、
暗闇が城下を包み込むような刻限に、
それはまるで月の様に明るく輝いたのであった。






- 終-

2012/02/10

▲


     本当は戦勝パーティやら武器屋とのやり取りとか書こうと思ったんですけど、
     分量の都合でカットです。(どっかでやると言う手もあるし)
     これにてデルコンダル編終了です。長々ありがとうございました。

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