初めて踏み入れたデルコンダルと言う国は思わぬ熱気にあふれていた。
国民たちはやってきてアレンたちに目をくれることもなく、
半ば興奮気味に城へと向かっていく。
「?城で何かやってんのか・・・。」
一人城下町をぶらぶら歩いていた
アレンは不思議そうにその様子を眺めていた。
先ほど港からデルコンダルへと初めて入国したのだが
うわさに違わぬ屈強の兵たちが、城門を閉ざしていた。
国王への挨拶をどうするべきか考えたが、
今回は何も彼らは国の代表として来た訳でもなく、
国交の目的がある訳でもない。
身分を明かさずに、城下町へと向かうことにした。
初めて来た国だし、アレンたちには旅の目的が色々あるのだが
今回の一番の目的はカインの呪いの解呪に手がかりを
見つけることだった。
城に出向いて騒ぎにもなりたくない。
そこでカインは取り急ぎ、熱気あふれる国の中でも
落ち着いた空気の流れる教会を尋ねてみることにした。
アレンも付き添って行ってみたのだが、
解呪の魔法と言うのは何やら複雑で時間がかかるらしい。
マリアは理解しているようだったので、後のことはマリアに任せて
アレンは一人城下町を探索してみることにしたのだ。
彼らは神父と何やら複雑な話をしていて、よく分からなかったが、
それだけにきっとカインの呪いも解けるのだろうと
アレンは楽観していた。
この国は産業も盛んのようだ。街は賑わっている。
店も数多く営業しているようだ。
武器屋も繁盛しているようで、店から人が出てきた。
「ちぇっ、ケチケチしてんな!!」
店から出てきた筋骨逞しい兵士は
いきなり店内に向かって忌々しそうに毒を吐いていた。
「どうしたんだよ?」
アレンはその兵士の様子が気になって聞いてみた。
武器ならラダトームで新調したばかりなので、
今回買い換える予定はなかったが、
やはり貴重な武器があるなら興味がわく。
「何だ、お前もドラゴンキラーが気になってやって来たのか。
だが、駄目だぜ。店主め足元を見やがって、
2万ゴールドなんてふざけてる!」
「ドラゴン・・キラー!?」
百戦錬磨のアレンも聞いたことがある。
頑丈なドラゴンの硬い皮膚をも貫通する威力を持つと言う。
「ここ!ドラゴンキラーなんて売ってるのか!?」
俄然アレンはこの武器屋に興味を示した。
名前は聞いたことがあるが、武器そのものは見たこともない。
「あんた見ない顔だが、ここの武器屋の噂を聞いてきたのかい?
噂によると・・・伝説的に強力な鎧も取り扱ってるらしいぜ。」
「強力な鎧って何だ?」
「噂だよ噂。実物は拝んだことがねえんだ。
いずれにせよ、いけ好かない武器屋さ。」
そう言うと兵士は文句を言いながら、去っていった。
アレンが探している強力な鎧と言えば、
ロトの鎧に他ならない。
「うーん・・まぁ、普通の店に売ってたら世話はないよな。」
そうは思いつつ、アレンは一縷の望みをかけて
店に入ってみることにした。
店主はアレンの姿を認めると、
その身体を見定めるように、視線を上から下へと動かした。
「お客さん、中々良い身体をしているようだね。旅人かい?」
「ああ、旅をしている。
なあ、ここにドラゴンキラーがあるって聞いてきたんだが。」
「あるよ。これだ。」
店主はカウンターの奥から一つの武器を持ち出してきた。
見たこともない形状の武器であった。
てっきり鋭い刃の剣なのだと思っていたのだが、
出てきた武器は、剣とも槍とも最近新調した大かなづちとも違う形状だ。
「こいつを手にはめて戦うのさ。
貫けないものは無いぜ。」
「へー・・・。そういうことかあ。」
アレンが何気なく手を触れようとすると、
店主はドラゴンキラーを引っ込めた。
「おおっと、貴重品だからね。簡単に触らないで欲しい。
お客さん金はあるのか?」
「金?なくはないけど・・・。」
財布はカインが持っている。
いくら中に入っていたっけ?大かなづちを購入したから
あまり無かった気もする。
「お客さん世界中を旅してそうだから、
金ならありそうだよな。特別にこれでどうだ?」
と、店主は、アレンの目の前に手をパーにして広げた。
「ん?5・・?・・・5000ゴールドで良いのか?」
それくらいなら、あるんじゃないかと思った。
カインに財布を借りてきて・・・と思ったが、
店主はニヤニヤ笑いながら、首を振った。
「お客さん相場を知らないねえ。
5万ゴールドだよ。」
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「万!?そんなたっかい武器買ったことないぞ!?
っていうか、さっきの兵士は2万って言ってたぞ!」
アレンが抗議すると、店主は急に態度を変えた。
「国の宮廷兵士と、一介の旅人が同じ金額な訳
ないでしょうが。」
「えーー・・・
俺、旅人だからって、高い金額吹っかけられたこと
なんか無いぞ?」
「それはお客さんが気づいてないだけでしょう。」
そう言うものなんだろうか。
「でも、お客さんが5万ゴールド用意してくださったら
こちらの値打ちものはお売りさせていただきますよ。」
店主はゴマをすりすりそんな事を言う。
「5万・・ねえ・・・・。あったかなあ。」
そんなに今金あっただろうか?
カインに聞いてみよう・・・と思ったとき、
背後からそのカインの声が聞こえてきた。
「ちょーっと!!」
「ん?」
「ないから。そんなの、ないからね!?」
振り返るとそこには武器屋に入ろうとドアを開けていた
カインとマリアの姿があった。
「ん?おお・・カイ・・・」
「どうも連れがお邪魔しましたー。」
カインはにこやかに店主に会釈すると、
アレンを外に出るように促した。
アレンの背をぐいぐいと押しながら、
カインは店から少し離れたところまで行ってから
はぁ〜とため息をついた。
「あー、びっくりした・・・。」
「ああ、ドラゴンキラーがあるなんてびっくりだよな。
ってかお前どこから現れたんだ?」
うんうんと同調しつつ、なんだか的外れなことを言いつつ
アレンは尋ねた。
「アレンのことだから、きっと武器屋に顔を出してるのかなあ・・って
どんぴしゃりだったよ。
じゃなくてー・・・いきなり5万円の武器買おうとしてるなんて。」
「いや、だってドラゴンキラーだもんな?
これがあれば竜だって倒せるんだぜ?
すごくないか?」
「それはすごいけどー・・・。」
竜の皮膚がいかに硬いかは、以前竜王と戦ったことのある3人は
良く分かっていることだ。
「それは結構だけど、5万ゴールドなんてありませんから!
今、うちにあるのは・・えーっと・・8200ゴールドだけです。」
そう言ってカインは財布を取り出した。
「8200?全然足りないじゃん。」
残念そうに言うアレンに、呆れたようにカインとマリアが答えた。
「アレン、そもそもドラゴンキラー5万ゴールドなんておかしいよ。
そんなにする訳ないんだから、5万で買おうとしないでよ。」
「今までの旅で大体分かるじゃない?」
口々に言われて、さすがにアレンは話題を変えることにした。
「はいはい、分かったよ。
それは、諦めるとして、お前の方は終わったのか?」
そう聞かれて、カインはマリアと顔を見合わせた。
「結構思ったより大きな教会でさ、
神父様が上位の神官様を呼んでくれたりして
見てもらったし、解呪の魔法も試してもらったんだけど。」
「おお。そんで、どうなったんだ?」
「でも結局駄目だったんだ。意外と根深いみたいで。はは。」
あっさりとカインはそう言った。
「駄目だったって、お前そんな笑って余裕かましてる場合じゃないだろ・・!?
どうするんだよ。」
「慌てないでよ、アレン。
なんかさ、この国にすごく腕の良い占い師がいるって教えてもらったんだ。
だから、ちょっとそっちも行ってみようかと思ってさ。」
どうも街の北側の外れに、その占い師がいるらしい。
「はあ?占い師?俺そういうの信じねえけど・・。」
「まあまあ、行ってみようよ。」
カインは街の地図をもらってきたらしく、
地図の目印を頼りに歩き始めた。
「怪しい話だなあ・・・。」
アレンはそうぼやきながらも、遅れてついていくことにした。
マリアもそれに従う。
「怪しかろうが何だろうが、何でも当たってみなきゃ
始まらないわよ、アレン。」
マリアの真剣な表情にアレンも頷くしなかった。
その占い師は、城の近くに小さな小屋を建てていた。
「占いはお好きかい?」
占い師は入ってきた3人に対してそう聞いてきた。
「別に好きも嫌いもなかったんですけど、
占って欲しいことがあるんです。」
恐る恐るカインがそう言うと、占い師は満足げに頷いた。
「良いじゃろう良いじゃろう。座りなさい。占って進ぜよう。」
占い師が水晶に向かって何かぶつぶつ唱えると、
再び満足げに頷いた。
「うむ!探し物は西じゃ!!西と出たぞ!」
「西・・・。」
そうか、西か・・・と思うものの、
そもそも自分の探し物とは具体的に何なのか?
大体何を占ってくれたのだろうか?
「あの・・・まだ何も相談していないのですが・・・。」
「いや、水晶は何も聞かずとも分かっておる。
西じゃよ。」
「はぁ・・・西ですか。
皆、西だってさー。」
背後で見守るアレンとマリアにそう言ってカインは立ち上がった。
「えーー!!それで終わりかよ。
西のどこなんだよ。さっぱりわからねえよ。」
アレンがそう言って占い師に難癖をつけると、
占い師は今度はアレンに目をつけてきた。
「おぬしも探しているものがあるな?
占ってしんぜよう。」
「俺の探し物?じゃあ、あんたの力試しに聞いてみる。
さっきこの国に、すげえ鎧があるって聞いたんだ。
それって俺の探し物か?」
占い師は再び水晶に向かって話しかけ始めた。
「うむ!!おぬしの探し物は、ここにある!」
あると断言されると、
一気にアレンのテンションが上がった。
「本当か!?ロトの鎧があるのか!?」
「え?そうなんですか?」
思わぬ掘り出し物に、カインたちも驚いた。
「うむ。探し物は、これくらいの大きさで、
おぬしたちが来るのを待っているようだ。」
これくらいの大きさで・・・と言いつつ、
占い師の手は小石くらいの大きさを示していた。
「そんなちっこい鎧があるかーい!」
「誰が鎧だと言ったかい。
これくらいの大きさの探し物、あるんじゃろう。」
「これくらいー・・・?」
アレンは何のことだ?と首を傾げたが、
マリアはポンと手を打った。
「分かったわ。アレン、カイン行きましょう!」
マリアは占い師に頭を下げて礼を述べると
小屋から出た。
「マリア、なんだよ?」
「きっとここに紋章があるのよ。」
「え?ああー・・紋章、紋章ねえ。
・・・これくらいの大きさと言えば紋章ってことか。」
「それだけじゃないわ。ここの神官様が言っていたの。」
「解呪に失敗した神官様が何を言うって言うんだよ。」
アレンは腕を組んで不満そうに言った。
「アレン、その言い方は失礼だよ。
別にそれとこれとは関係ないことだし。」
カインがそう釘をさす。
「やまびこの笛の音色の返るところに精霊ルビスの
紋章が眠るって。」
そしてマリアが何とも意味深な事を告げた。
「え・・ええ!?本当か?あの笛本当にそんなすげえ力が?
どこでどう吹いてもぴーとしか言わねえぞ、あれ!」
何はともあれ、
しばらく道具袋の奥底で使うことなく眠っていたやまびこの笛を
久々にアレンは取り出して吹いた。
笛の音色は響いた。
ピー・・・・・・・・・・・・・・・・・ピィー
「あ、反射した!!」
「やっぱり、間違いないわ。この国に紋章があるのよ。」
マリアは納得して手を打った。
「やったね。デルコンダルに来て良かったじゃない。」
カインも嬉しそうだ。
「いや、デルコンダルには紋章を探しに来たわけじゃないんだけど・・。」
アレンが複雑な表情で、頭を掻いた。
「良いんだよー、アレン。
これで旅が一歩進んだことに変わりないし。
呪いのことだって、なんだっけ、西?に行けば良いっぽいよ。」
「・・・・西ってどこだよ。」
「さあ?わかんないけど、まぁ西のほうだよ。」
分かったような分からないような顔をしているが、
カインは本当に嬉しそうだ。
紋章は今まで探すヒントもなかったのだが、これで紋章探しは
一歩も二歩の前進するからであろう。
「まぁ、お前がそういうなら良いんだけど。
そんで、紋章はどこにあるのか。」
「やまびこの反射が近くなる方角にあるのかもね。」
「笛吹いて、国中回るか?」
アレンは歩きながら、何度か笛を吹いた。
なんとなく城の方角に行けば、反射が近い気がする。
「城の方角かなあ。もしかして城の中か?」
結局、国王への挨拶に行かねばならないのかと思った。
「城に入んのかあ・・・。名前名乗ったほうが良いのか、どうするか・・。」
「もし本当に城の中で管理する・・国宝だったりするならば
名乗らないわけには行かないでしょう。」
「はははー。笛吹きのアレンー。
王様には演奏家ですって言えば良いんじゃない。」
「それ本気か?」
真面目に答えるマリアと、ふざけて答えるカインが
いかにも対照的である。
そんな会話を3人がしていたときであった。
歩いて向かっていた城から悲鳴のような声が聞こえてきた。
「・・・え・・・・今の・・・・何の声だ?
そういえば、今日は城で何か行われているようだが、
いったい何をしてんだ?」
「ああ・・闘技場で月に一度の御前試合が
行われているとか・・って聞いたわ。」
「試合?それで、怪我人でも出たとか・・?」
しかし、さっき聞こえた悲鳴はもっと切羽詰ったものであった。
そして悲鳴は再度鳴り響く。
次の瞬間、あろう事か硬く閉ざされていたはずの城門の兵が
吹き飛ばされた。
そして、なんと城の奥から大きな獣が街に向かって
放たれたのだ。
「なんだ!?なんだ、なんだよ、あれ!!」
「狼?いや・・・・違う、モンスターよ!!」
間違いなく、先ほどの悲鳴はこの魔物が
人々を襲った声であっただろう。
城内でどんな被害が出たのか分からないが、
この調子で街中をモンスターが暴れたら、どれほどの死傷者が出るか
計り知れない。
「おい・・・!カイン、マリア!止めるぞ、あいつ!!」
そう言ってアレンは巨大な大かなずちを取り出した。
だが、このモンスターは素早い動きでアレンを通り過ぎると
すぐ後ろにいたカインに襲い掛かった。
カインもアレンに倣ってロトの剣を抜こうとしていたが、
モンスターはまっすぐ一直線に襲い掛かってきた。
「うわっ」
突進を止めようとするカインであったが、
勢いに負けて、吹き飛ばされて激しく背中を打ちつけた。
「あ・・・おい・・カイン・・・!」
思わず駆け寄ろうとしたアレンであったが、
その一瞬にもモンスターは街へと走り去ろうとする。
「何ともない・・・っ。
マリア!足止めを・・・・!」
回復魔法を唱えようとしたマリアを制して、
カインはマリアにモンスターの足止めを求めた。
「え・・・ええっ・・・。」
マリアが杖を振るうと、モンスターの足元が凍っていく。
大きな氷ではないが、一瞬の足止めには有効であった。
「アレン、今だ!」
「おう!」
その隙にアレンは大かなづちによる会心の一撃で
モンスターの頭部を殴りつけた。
反撃を試みるモンスターであったが、
再度マリアの唱えた風の魔法が、進撃を止めさせた。
「と、どめだぁ!!」
再度アレンの重い一撃が、今度こそモンスターを沈黙させた。
どうやら、絶命したようだ。
「はー・・・びっくりしたー。なんだったんだ、こいつ。」
アレンが胸をなでおろすと、城内から兵たちが駆け寄ってきた。
「おお!サーベルウルフを倒すとは!!」
「ん?」
兵たちは慣れた手つきで息絶えているサーベルウルフを
運んでゆく。
そしてアレンの顔を見て驚いた。
「おぬしは、先ほどの旅人ではないか!!本当に実力者だったんだな。」
マリアに手を借りて起き上がったカインが
アレンに知り合い?と尋ねた。
「あー、さっき武器屋で出会った兵士だな。」
武器屋の入り口でドラゴンキラーの情報をくれた兵士だった。
兵はアレンの姿を満足げに観察すると、
おもむろに口を開いた。
「お主なら、我が王の期待に沿うかもしれない。
さぁ、来てくれ。わが国自慢の闘技場へ!!」
- 続く-
2011/11/13
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