※注意※
こちらの小説は、クリア後の別時間軸での、病気に倒れたカインの、
もしかしてあったかもしれないバッドエンディング・・・すなわち死ネタです。
(お題62「友達」以降の時系列が発生しなかった場合・・・みたいな感じです)
いやな予感がする方は、全力で回避して下さい。
閲覧は自己責任でお願いします。
(で、アレカイです)
「ねえ、アレン。
最後のお願いがあるんだ
よ。」
俺は久しぶりにカインに会った。
ずっと病床に伏せていたあいつに会うのは、すごく久しぶりの事だった。
何故なら、今までは俺には来ないで欲しいと言われていたからだ。
まぁ、マリアなんかは良く会いに行っていたようだが、
俺はその言葉を受けて訪問は控えていた。
それなのに、今回あいつのほうから珍しく「会いたいからすぐに来て欲しい」と手紙が来たのだ。
俺は全ての予定を投げ打って、カインに会いにきた。
既に病床に倒れて久しいカインは、想像以上にやつれていて、
俺は一瞬何と声を掛ければ良いのか分からず、
胸が締め付けられる思いがした。
でもカインは俺の顔を見ると喜んでくれた。
そんな所は、昔のままの笑顔だった。
「ね、願い・・・?
願いってなんだ?」
「こんなこと、アレンにしか頼めない。
ねえ、良いでしょう?」
そういうカインの表情は、青白い顔色だったが、
少しだけ悪戯心に満ちた少年のような表情だった。
「ああ、良いぜ。」
俺はその『願い』を聞いてやることにした。
***
カインの願いとは、
海を見に行きたいというシンプルなものだった。
せっかく俺を頼ってきてくれたんだから、
それくらいの願いは叶えてやりたい。
俺は早朝にサマルトリア城の裏手に、こっそり馬車をつけた。
まだ誰も寝静まっているような時間帯に、
こそこそ城を抜け出すのだ。
「お忍びで城を抜け出すなんて
何年ぶりだろう?
いつも抜け出すマイを怒ってたのにさ。」
そんな事をカインが言っている。
だけど実は悪いとは思ってなさそうで、何やらおかしそうに笑っていた。
まぁ、たまにはこういう気分転換も良いだろう。
海についたころには、すっかり昼になっていたが、
日差しは肌寒かった。
「少し寒いな。
カイン、大丈夫か?」
「うん、それにしても明るいね。外の世界は。」
馬車から降りるカインに手を貸してやった。
空を見て眩しそうにしているが、
馬車に戻ろうとはしなかった。
「あのね、僕外に出るのも久しぶりなんだ。
やっぱり、外は空気が良いねー。」
「お、おお・・・。」
頷きつつ、少し俺は今の言葉に引っかかった。
外に出るのも久しぶり?
そんなに悪かったのか?
大体、今まで俺に会いに来るなといってた理由は
『元気になってから会いたいから』だった。
少し胸がざわついたが、
でもきっと言葉通り、元気になったんだろうと思った。
で、海や空を見たくなったんだ。
良い傾向じゃないか。
きっとサマルトリアの連中は、
心配がって反対したんだろう、だから俺に頼んできたんだ。
うん、そう言うことだろう。
「よし!カイン、せっかく海まで来たんだ!
何する!?泳ぐか!?」
「お、泳ぐ・・・・?
いやあ、僕泳ぎはあんまり・・・。」
カインは驚いて首を横に振った。
そうだ。そう言えば、こいつはあんまり泳ぎが得意じゃなかったな。
いつだったか、旅の最中に海に飛び込んだ時も
泳いでるんだか、流されてるんだか分からない感じだった。
何気なく、その様子を思い出して、ぷっと吹き出してしまった。
「アレンー?何を思い出し笑いしてるの?
どうせ、僕の泳ぎでも思い出してるんでしょ?
いいよ、アレンは泳いできなよ。
僕、砂浜から見てる。」
「や、いやいや。泳がねーけど。」
よく考えると、泳ぐような季節でもない。
日差しはあるが、風は少し肌寒いくらいだ。
「泳がないんだったら、
お前何しに海にまで来たんだよ?」
俺の問いに、カインは笑って答えた。
「アレンと一緒に来たかったんだよ。」
答えになってるんだか、なってないんだか、
若干よく分からない・・。
まぁ、そんな事はどうでも良い。
それより、俺はその笑顔を見て、何故か分からないが、
怖いと思ったんだ。
例えるなら、『透明な笑顔』。
こんなのは、見たことが無い。
まるで・・・・消えてしまうんじゃないかと思った。
俺は一瞬動けないでいたが、
カインが咳き込んだのでハッと顔を上げた。
「おい、大丈夫か?」
「・・・うん。」
「やっぱ帰らねえか?
肌寒いし、無理すんなよ。」
気遣う俺の言葉にカインは首を振った。
「帰らない。帰りたくない。
もっと海の近くへ行こうよ。」
そう言って、カインはふらふらと海に向かって歩いていった。
ああ、そうだ。
あいつは意外と頑固なんだよ。
「おい、待てよ!!」
俺は慌てて馬車へ一瞬戻って、
その中からブランケットを何枚か取り出して、
急いでカインを追いかけた。
「砂浜だから、足元ふわふわするねえ。」
「砂浜だからじゃねえよ。
お前がふらふらしてるんだよ。」
そう言って俺はカインを支えた。
「あはは、そうだね。
こんなに歩くのも久しぶりだよ。」
「・・・・・・・。」
俺はまた言葉に詰まった。
いや、だって何て答えれば良いんだ?
「カイン・・・・・。」
「アレン、この辺で良いよ。
座っちゃおう。」
「あ、ああ。」
さっきもってきたブランケットを一枚引いて、
ついでにもう一枚はカインの肩にかけてやった。
「えへへ、ありがとう、アレン。」
ふふっと笑うカインの笑顔を、俺はまた見ていられなかった。
お前、なんで・・・なんで・・・・そんな消えちまいそうなんだ・・・?
思わず、本当にそこにいるのか確かめたくて、
俺はカインの隣に座り込んだ。
カインはそんな俺の思いには気づかないようで、
海に向かって方角を差ししめしている。
「海は広いねえ。
あっちが、ローラの門でしょ?
だから、下ってあっちがムーンブルクだ。
アレンのローレシアは反対方向だね。」
「ああ、そうだな。」
「懐かしいね。最初はアレンと2人で旅をしてたんだよね。」
「・・・・・・・・。」
やっぱり、なんか変だ。
今わざわざそんな事を言うために、城を抜け出したかったのか?
カインの考えが分からなかった。
「カイン・・・・?」
「アレン、僕の最後の願いを聞いてくれてありがとう。」
「・・・・カイン、何だよ、それ。
最後って何だよ。」
胸のざわつきが止まらない。
こいつの意図を確かめたかった。
「本当ならね、三人でもう一回世界を旅したいって思ってたけど、
それも無理だし、遠くまで行くのも無理だし、
ここからなら、海からなら世界中を感じられるでしょう?」
「・・・・・・そんなの・・・・」
「ずっと遠くにはラダトームがあるんだ。デルコンダルだって。
ロンダルキアなんて絶壁の中の雪山だったね。
僕ら本当に沢山のところに行ったねえ。」
カイン自身は懐かしそうに思い出を語ってるのかもしれないが、
それにしたって冗談にしてはたちが悪すぎる。
「カイン!!先に俺の質問に答えろよ!
最後って何だよ!お前なんで・・・・!!」
「ごめんね、僕はもう死ぬんだよ。」
かなづちで頭を殴られたような衝撃とは
この事だろうか。
死ぬ・・・?誰が?
「馬鹿!馬鹿を言ってんじゃねえ!!
変な弱気になってんだとしたら、
冗談じゃねえぞ!
人間そんな簡単に死んでたまるかよ!」
思わず、叫んだ俺の言葉を
カインは目をそらさずにじっと聞いていた。
だけど、何も言葉は発さずに。
「・・・・・〜〜!!」
俺は声にならない声をあげて、
思わずカインに掴みかかった。
「ッ・・アレン?」
「ほら、見ろよ。この癖のある髪の毛!
ひょろっと細っこい腕だって昔からっ・・・!」
「アレン、痛いよ・・・」
だが、俺はその手首を取ってぎくっとした。
それはおよそ、成人男子とは思えないほど、やせ細っていた。
こんなんではもう剣なんて持てるはずが無い。
「・・・・・・アレン・・・ごめんね・・・。
びっくりさせて。」
押し倒された状況のカインは
息を荒げていたが、
申し訳なさそうに俺のほうを見上げるだけだった。
「あ・・やまるなよ・・・。」
「もう。皆にもお別れを済ませたんだ。
マリアにも。だから、最後にアレンにも会いたかったんだよ。」
マリアにも。
今カインはさらっと言ったが、それはどんな心境だったか。
将来結婚の約束をしたんじゃなかったのか。
2人は光り輝く未来を夢見ていたはずだろう?
こんなの、悪い冗談に違いない。
急に空が翳ってきた。
俺の心境を表すかのように、ぽつぽつと雨まで降り出した。
「あ・・・・雨だ。
なぁ、カイン悪い冗談はもう辞めてくれよ。
雨も降り出した。帰ろう、風邪でも引いたらまずいだろう?」
その細い腕を引いて起こそうとしたが、
カインはゆるく首を振った。
「雨がまずいの?」
「・・・え?」
カインはその場に寝そべったままで、
空に向かって何かを呟いた。
ふわっとした緑色の光がカインの体を包み込んだ。
「え?え・・・?えええ???
なんだ?雨が・・・・。」
何をしたのだろうか?魔法か?
降っていたはずの雨が止んでしまった。
「けほっ・・。ゲホ、ゲホっ。」
呆然と空を見上げていた俺はカインが激しく咳き込む声に
我に返った。
「お前、大丈夫か!?」
慌てて、苦しげに体を丸めて咳き込むその背中をさすってやった。
「うん。・・・もう、大丈夫。」
大丈夫と言うが、ぐいっとぬぐったその手の甲には
赤い血がついていた。
「だ・・・大丈夫じゃないだろう!?
お前どうしたんだよ・・・!?」
俺は思わず泣きそうになった。
現実を理解できず、理解したいとも思っていなかったのかもしれない。
「アレン、落ち着いて聞いてね。
僕は、今日死ぬんだよ。」
「・・・・・・・・な・・に・・・」
「言ってなかったっけ?僕の魔法の力。
人がね、いつ死ぬかも分かるんだよ。
最近では僕の魔法もすごくなったみたいでね、
だから、分かっちゃったんだ。いつ、僕が死ぬのか。
これは・・・・でも、知りたくなかったよねー」
カインは少し困ったように言った。
「さっきの雨もね、魔法の力で止ませたんだよ。
天候だって操れるんだ。
やろうと思ったら、雷だって落とせるようになったんだよ。
ねぇ、僕すごいでしょう?」
「雷って・・・・お前・・・。」
すごいでしょう?と言ったカインだったが
震える手で顔を覆って、呟いた。
「だけど、僕はこんな魔法の力なんて欲しくは無かったよ・・・。
こんな力を望んでいた訳じゃなかった。」
旅の間にカインが身につけてきた魔法の力。
あの勇者だけが使えるという雷の魔法も
使えるようになったのに、その先に待っていた現実がこれか?
生死の魔法だって何度も俺達を救ってきたが、
最後の最後に、こうやって、自身を苦しめている。
「僕は、皆をいっぱいいっぱい泣かせてしまったんだ。
もう・・・誰の涙も見たくない。
きっと今日城にいたら、皆をいっぱい泣かせちゃう。
だから、本音を言うと・・・僕は城から逃げ出したかったんだ。」
「嘘だろう・・・?」
海に来たいのではなく、
サマルトリアの城から逃げ出したいのが、カインの本音だった。
「嘘だと良かったんだけどね。
むしろずっと嘘だと願ってたんだ。
僕のへっぽこ魔法なんか嘘に決まってる。
だからちゃんと約束したとおり、アレンには元気になってから会いたかった。
でも、それが出来ないから・・・。
最後なんだよ、今日が最後だから、君に会いたかったんだよ。」
一息でそう言ってから、カインが少し苦しげにすっと息を吸った。
カインの目から涙が流れ落ちた。
俺はその場にがくっと膝をついた。信じたくなかった。
でも、信じなければならない現実・・・。
「だから、もう帰れなんて言わないでよ。」
俺はこくりと頷くしかなかった。
残りのわずかな時間、
もう無理するなとも、帰れとも、言うつもりは無かった。
なんでも、こいつの言う事を聞いてやるつもりだった。
もし最後の願いが、誰の涙も見たくない事、そして俺と共にいる事なんだとしたら、
俺はもう絶対こいつの前で涙は見せたりはしない。
だが、逆にボロボロとカインは涙が止まらないようだった。
「マリアに・・・いっぱい心配かけちゃったよ。
いっぱい迷惑かけちゃったよ。
いっぱい泣かせちゃったよ。
絶対、こんな思いさせたくなかったのに。」
カインはきっとずっとそれを悔やんでいるんだろう。
既に別れを済ましたというが、一体どんなものだったのか、
とても聞くことなんて、出来なかった。
「サマルトリアの皆も・・・きっと・・・。
僕がこんなに出来損ないだから、
これからきっと皆大変な思いをしちゃうんだ。
なのに、僕はもう何も出来ない・・・。」
「カイン・・・・。」
「ごめんね・・ごめんね・・・。アレンもごめんね。
こんな事しかいえないけど、
僕の代わりに沢山の素敵な未来を掴んでね。
僕が見られなかったものを沢山見て・・・幸せになってね。」
カインが吐露した感情。
馬鹿野郎!となじるのは簡単だったかもしれない。
俺が1人幸せになってどうするんだって言ってやりたかった。
だけど、今それをぶつけて、一体カインの何が救われるというのだ?
もうずっとずっと何年も苦しんできたカインの心を救うには
俺は何をしたら良い?
俺は喉まで出た「馬鹿野郎」の声を飲み込んだ。
代わりに、すべてを許した。
「ああ、お前の言うとおり、
お前の見られなかったものは、代わりに俺が見てやる。」
「アレン・・・。」
カインの言うことに俺は従って頷いた。
「マリアの事も心配要らない。
俺だってあいつの、お前らの仲間だ。全力で支える。
サマルトリアのことも。何かあれば俺が面倒みてやるさ。
お前の心配なんていらねえんだ。」
「アレン・・・・・。」
「俺を誰だと思ってるんだ?
お前が憧れていたローレシアのアレンだぜ。
俺は、ロトの勇者様さ。
だからな、全部俺に任せろ。大丈夫だ。 」
「大丈夫・・・。」
涙を飲み込んで、全てを飲み込んで、
俺はカインを救ってやりたかった。
カインが悔やんだ全てを救ってやりたかった。
カインの背負っている重荷を代わってやりたかった。
そのためなら、
俺は初めて自ら望んで伝説の勇者の称号をかざしても構わなかった。
「アレン・・・・ありがとう、・・・本当にありがとう。」
カインは少し驚いていたが、泣きながら俺に感謝の言葉を告げた。
少しは心が軽くなったであろうか。少しは安心できたであろうか。
だけど・・・俺は呟いた。
「だけど、何かの間違いだ。こんなの間違ってる。」
一体どこで何を間違ってしまったのか・・・。
「アレン・・・。」
「俺達、頑張ってさ、世界を救ったんだぜ。
だから、幸せになる権利くらいあるはずだ。
きっと・・・・絶対・・・。」
「そうだね・・・。
もしかして、違う道を歩いていたら、
幸せになれたかもしれないね。」
違う道。
もしかして、あったかもしれない未来。
「そうだよ、お前は皆に祝福されて、マリアと結婚するんだよ。
俺だって、結婚して。 子供だって生まれるんだ。
やんちゃな息子に剣を教えたりするんだぜ。」
「ふふ・・・楽しそうだね。」
だけど、それはもう届かない未来。
「アレン、楽しかったね。
僕ら一緒に旅をして、マリアに出会って・・・。」
「・・・・・へへ、そうだな。お前は弱かったよなあ。」
「ひどいなあ。」
少しカインが膨れっ面になった。
その表情すら懐かしくて。
全てが懐かしく愛おしい思い出で。
「俺、また生まれ変わったらまたお前を探すよ。
お前はなかなか見つけられないんだぜ。
これが一番の難関かもなあ・・。」
俺は思い出して笑った。
古い古い思い出。
一番古い旅の思い出。
「・・・・アレン・・。」
俺はカインとリリザで出会うんだ。
全ての旅はそっから始まるんだ。
「そんで、マリアを助けて、
三人で強くなって、また俺たちは世界を救うんだ。
そんでそんで、次は絶対間違えない道を選ぶんだよ。」
「また・・・間違えたら・・・?」
カインが掠れた声で、アレンに聞いた。
「何度でもやり直すんだよ。正しい道を見つけるんだよ。
何度だって・・・!そして今度は皆で幸せになるんだよ。」
「・・・・・・。」
今は見えないその未来を遠くに、だけど確かに感じられて、
カインは笑みを浮かべた。
「あ、そしたらもしかして、俺とお前が国を抜け出して
どこかで暮らすなんていう未来もあるかもな。」
そうだ。
きっと、きっとたまたま今回は駄目だっただけだ。
「・・・・ふふ・・アレンと?」
消えてしまいそうな声のカインに、俺はずっと語り続けた。
「俺な、お前の作る飯がすっげえ好きでさ。
俺ばっか食いまくって、何度も困らせて悪かったけど、
本当に好きだったんだ。
旅が終わって、食えなくなったのが残念でさ。
だから、俺はお前の作る朝飯が食いたくって。
毎日だって良いんだぜ。」
「アレン・・・・。」
「今日だってさ朝から呼び出されて、ろくに食ってねえもんな。
ほら見ろよ。もうすぐ夕方だぜ。」
「そう・・だ・・ね・・」
俺が日に沈む太陽を指差しても、
カインはそちらを向こうともしない。
何の反応も示さない。
もしかして・・・もう目が見えないかもしれない。
だけど、ずっと俺の言葉に耳を傾けているようだ。
時折、うん、とか相槌を打ったりしている。
「俺が一番好きだった飯はさーー・・」
だから、俺はずっと語り続けたんだ。
カインが楽しそうにしていたから。
嬉しそうに俺の言葉に耳を傾けていたから。
話していた内容は他愛ない内容だった。
だけど、内容はどうだって良かった。
ただ、こいつと穏やかな時間を過ごしたかった。
いつまでそうやっていただろうか・・・。
日がすっかり暮れて辺りが夕闇に包まれた頃、
その穏やかな時間はやがて終わりを告げる事となる。
「・・・あ・・・・と・・・う・・・」
俺の話にカインが何かを返事した。
でも、声は小さくて小さくて何を言ったのか分からなかったんだ。
だから、思わず、聞き返そうと思った。
「カイン・・・なんだって?」
だけど・・・返事は返ること無く。
「カイン・・・?」
まるで子供のように純粋な瞳で俺を見上げていたカインは
優しく満足げな顔をして、ゆっくりと静かに瞼を瞑った。
もう、その瞳が、俺を見て笑う事は二度と無かった。
「・・・っ・・うっ、あああ・・・うわああーーーー!」
そして、『それ』を知った俺は、
その時初めて声をあげて、大粒の涙を流した。
それが俺がカインと過ごした最期の時間だった。
- 終 -
2014/01/20
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