76−2.罠

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何匹かのモンスターがバタバタと倒れていった。
ベギラマが効いたんだろう。

一瞬、なんだ魔法は通常通り使えたのか、と俺は安堵した。
だけど、次の瞬間、それが違っていたのだと分かった。

魔法を使ったカインが急に色を失くして倒れたのだ。

「カイン・・?おい、どうしたんだ!?」

倒れたカインに声をかけるが返事が無い。
意識がないようだ。

そっちも気になるが、まずはモンスターを倒すのが先決だ。
何がなんだか分からないが、こいつがこんなに頑張ったんだ。

俺がやらなくてどうするんだ!

俺はベギラマを浴びて瀕死のモンスターどもを打ち倒していった。
反撃もしているが、痛いとか痒いとか考える暇も無かった。

次から次に切り倒して
そして、大方モンスターどもを片付けた。

モンスターどもの死を確認する。
確かに死んでいる。

だけど、またさっきみたいに起き上がってきたらやっかいだ。

俺は倒れているカインを抱き起こして
その場から去った。

奥に進むにつれて、
不思議なことが起きていた。

俺の怪我が治っていく。

まるでホイミでもされたかのようだ。
って、誰がそんな事するって言うんだ?

カインはまだ気を失っているというのに。

そう思い、ふとカインを見て俺は思わず声を出してしまった。

「おい!お前!!」

カインの体からふわふわとした緑色の光が飛んでいっている。
それに触れると、擦り傷が治った。
さっきから感じているホイミのような効果はこれだ。

おかげで俺は全回復だ。
背中の火傷もすっかり治った。

だけど、一向にその光は止むことがない。

これって、もしかしてカインのホイミじゃないのか?

「おいっ!!おいって!!変なこと起きてるぞ!
 起きろって!!!」

「う・・・・ん・・・・。」

俺はあわてて、
効果があるのかないのか分からないが薬草を使った。

使うと言っても顔にぺらりと置いただけだが。

「な・・に・・?これ・・。」

置かれた薬草の効果があったのかどうか、
カインは目を覚ました。

「アレン・・・モンスターは・・?怪我は無い?」

カインは目を覚ますなりモンスターと
俺の怪我を心配した。

「そんなん全部やっつけたし、
 お前から出てるそのポワポワしてる奴で
 全回復してるって!」

「は?」

その体から出てる緑の光のことを何と言えば言いか分からず
変な言い方をしてしまった。
案の定カインは変な顔をしている。

「いや、だから!お前の体から何かだだ漏れなんだって!」

「・・だから何が・・?」

カインは自分の手を何気なく見て、
そこからしゅわしゅわと出てくる光を見て、目を丸くした。

「なに、これ・・。」

「これのおかげで俺全回復したぜ。
 それ、お前のホイミじゃないの?無差別ホイミ?
 何してるんだお前?」

もしかして、魔法の暴走とか言うやつかと思った。
まぁホイミなら害もないが・・。

などと考えたがカインはぶんぶんと首を振った。

「え?いやいやいや、違うよ。ホイミなんか使ってないよ。
 あっ!消えた・・・・。」

緑の光は次第に細くなっていき、そして消えてしまった。

「ああ・・・やっぱりそうなんだ・・・。」

消えてしまった光を視線で追いながら、
カインがぼそっとそう言った。

「何がだよ。今の何だったんだよ。」

「僕の魔法力、吸い取られちゃったみたいだ。」

「吸い取られた?」

「魔法が使えないって言うのは、
 嘘なようで、嘘じゃなかったんだね。」

青白い顔でカインがそう言う。
そう言えば、確かに魔法は使えたようだ。
マホトーンがかかっている訳ではなかった。

じゃあ、何か。

魔法を使えば、その術士の魔法力を奪い取ってしまう・・
それがこの砦に仕掛けられた罠と言う事か。

何のために?

俺がそう考えをめぐらせたとき、
カインはゆっくり立ち上がって言った。

「大体読めてきたね。」

「どう言う事だよ。」

「魔法力をかき集めてるんだよ。
 きっと誘拐されてる人たちも同じだ。
 大なり小なり魔法を使える人の魔法力を奪うつもりだ。」

さらっと恐ろしいことを言う。
何人の魔法力を集めてるって言うんだ?

「まぁ、きっと・・・ろくでもないよね・・。」

カインがそう言って俺の袖を引いた。いや、腕にもたれたというべきか。
そして、はーっと深い息を吐いた。
なんでもない様を装っているが、
魔法力がなくなると、体力は残っていても結構辛いらしい。
しかも、こんな一気に抜き取られるとか、かなり堪えるんじゃないか?

と、同時に前方から何者かがやってきた。

「なんだ?モンスター?」

俺がそう言うと、上目遣いでカインもそれを確かめた。
前からやってきたモンスターとは別に、
背後からもモンスターがやってきた。

「最悪だな・・。」

それは先ほど俺が倒したはずのモンスターどもだ。

「きっとこうやって無限に蘇生させるんだ。
 この魔法力を使って。」

「カイン、走れるか!?
 こんなのいくら戦っていても無意味だ!逃げるぞ!」

「うん。」

俺はカインの手を引いて走り出した。
目的地がどこかなんて分からない。
とにかく奥へと走った。

時にはモンスターから一撃をくらい、反撃もしたが、
とどめを刺すより、先へ進むことを優先した。

一番奥まったところに部屋があった。

「なんだ、この部屋?」

「ア、アレン!後ろ、まだ着いて来てるよ!!」

ぜえぜえと肩で息をしているカインが言う方をみると
ゾンビのようなモンスターどもが追いかけてきている。

「くっそ、行くぞ、この奥!!」

俺はバッとその部屋の扉を開けた。
そしてその中に入ると、扉を閉めた。

大挙してモンスターが襲い掛かってくると思ったが、
扉を閉めるとモンスターたちは追っては来なかった。

「・・・あれ、散ったか?」

俺が部屋の外の気配をうかがっていると
部屋の中から、ぎしっと音がした。

何者かがいるらしい。

「ここまで来れる人間がいるとは・・・歓迎しよう。」

声がするほうを見ると
そこにはいつかも見たことのある魔物、
悪魔神官が立っていた。

「てめーの仕業か・・・。」

「貴様には用はない。」

俺がおもむろに近寄っていくと
悪魔神官は興味なさげに手をふるった。
その手から舞い起こった風が俺を吹き飛ばした。

「魔法の使えぬものに興味はない。消えるが良い。」

「てっめ。。。」

そして、俺を無視して、奴はカインのほうに歩いていった。

「お前の目的はなんだ!?」

カインは剣を構えて悪魔神官に対峙した。
だが、悪魔神官は再度手を振るってカインの手から
武器を吹き飛ばした。

「何をっ!」

思わず武器を追おうとするカインの胸倉を掴んでいった。
どんな追撃を受けるのかと、緊張したカインに
悪魔神官は言った。

「殺すつもりはない。
 身の安全を保障しよう。」

「な・・なに・・・?」

「貴様の魔法力は普通の人間より優れていた。
 明日になれば、また魔法力は回復する。
 ここで暮らせば良い。」

「・・・・・・・・。」

カインは唖然としている。
しかし、まぁそう言うことか。
優秀な魔法使いを集めて、その魔法力を貯蓄することで
さっきの蘇生魔法を使ったように
この砦内では永遠に戦えるモンスターが造れると言う事だ。

まぁ・・・・・・ふざけた話だ。
俺は立ち上がると、
カインを掴んでいる悪魔神官の腕を切り捨てた。

「アレン!!気をつけて!」

「おい、そこのクソやろう。
 カインとの逢引なら俺に話しつけてからにしてもらおうか。」

「って、アレン・・・何を言ってるの・・?」

若干言い回しがおかしかったか、
カインが変な顔をしている。
まぁ、小さいことはどうでもいい。

「貴様を倒せば良いんだな。簡単な話だ。」

あっという間に悪魔神官は切られた腕を治してしまった。
こいつの魔法力が無限って訳か。

だが、こいつさえ倒せば・・・。

俺は先手必勝とばかりに斬りかかった。

「くらえーー!!」

「馬鹿の一つ覚えのような攻撃は食らわんよ。」

悪魔神官は何度かバギを唱えた。
舞い起きたかまいたちに中々近づくこともままならない。

だが、そんなことに屈してはいられない。

「痛いとも痒くもねーーーよーー!!」

バギをかいくぐりながら、
一気に間を詰めると俺は大上段に斬りつけた。

が、何にも手ごたえがない。

どうやら、ルーラでこの室内を移動したらしい。
部屋の反対方向に逃げていた。

「ちっ!!ちまちまと逃げてるんじゃねーーぜ!!」

すぐさま俺は後を追った。
今度は追いつき、悪魔神官に傷をつけた。

しかしその傷はすぐに回復をする。

「またか!!」

くそっ、これではいたちごっこではないか。
体力に限界がある分こっちが不利だ。

そう思ったとき、悪魔神官の背後から
カインがその腕を掴みに飛び掛ってきた。

「おい、何してんだ!?カイン!!」

大胆なその攻撃に驚いた。
大体カインは武器も持っていなかった。

だが、どうやらなにやら考えがあるらしい。

「アレン!!攻撃するなら、この指輪だ!!」

「ゆび・・・わ・・・?」

カインが抑えている右腕には確かに指輪がしてあった。
なにやら禍々しいエンブレムが彫られている。

「何度も見させてもらった!
 お前、僕の魔法力を使ってるんだ。
 僕の魔力だから、どこから出ているかくらい分かるよ!」

「貴様・・!!」

悪魔神官の焦りようからすると
どうやらカインの話は当たりらしい。

俺は息を呑んだ。
あいつ・・・やるじゃねえか!

「アレンーーー!!!!」

「よっしゃ、まっかせろ!!!」

俺の攻撃は悪魔神官の右腕の右手の・・・
その指輪を破壊した。

パリィン!!

指輪が割れると
そこから様々な色の光が散っていった。
無限に使えたあいつらの魔法は、もうこれで使えない!

だが悪魔神官の怒りはこれで膨れ上がった。

「貴様!生かしてやろうと思っていたが、
 気が変わったぞ。」

悪魔神官は今度は自身の体から
炎を作り上げた。

「ベギラマ!」

「うわ、・・・・ああっ!!」

「カイン!」

至近距離からベギラマを受けたカインは部屋の扉に
叩きつけられて倒れた。

「そして、貴様もだ!」

悪魔神官は今度は俺のほうを向いた。
またベギラマを唱えるようだ。

「まとめて死ぬが良い!!ベギラマ!!」

ベギラマは今度は俺に襲い掛かってきた。
だけど・・・。

「ざけんな・・・誰が・・・死ぬかぁ!!!」

俺は剣を構えると、炎を真一文字に斬り捨てた。

「へっ。こんな攻撃じゃあ虫も殺せねえよ。」

カインがあれだけやったんだ。
一緒になってやられる訳には行かなかった。

炎とついでに悪魔神官の体にも傷がついたらしい。
ダメージを受けて、悪魔神官はよろついた。

「ならば、ならば・・・これならどうだ・・・。」

悪魔神官は今度は違う魔法を唱え始めた。
これはあれだ。
散々、俺達を苦しめたこともあるイオナズンだ。

俺は盾を前にして身構えた。
この攻撃を耐えて、その後に反撃!!

そう考えたとき、背後の方から風が舞い起きた。

バギか・・?!

と思ったが、そのバギは悪魔神官を外れて
上方にあった部屋の窓を叩き割った。

「・・・・?」

バギが来たので思わずマリアがやってきたのかと思ったが、
そうではなかった。

半身だけ起こして、
いかづちの杖を使ったカインの攻撃だった。

残念ながら、その攻撃は的を外したが、
悪魔神官の注意は逸れた。

「ナイスフォローだぜ!くらええーーー!!!」

その隙を俺は見逃さなかった。
悪魔神官の胴を思いっきり横一文字に斬り裂いた。

悪魔神官はイオナズンを唱えることも出来ずに
血を吐いて、倒れた。

そして、二度と起き上がることはなかった。

「・・・・・・死んだ・・・みたいだな・・・・。」

俺はその死を確かめてからカインの元に駆け寄った。

「よおっ!やったぜカイン!」

「アレン、やったね・・!すごかった!」

カインの手を引いて、立ち上がらせた。

「お前もな。よくやったぜ。」

俺達はそう言って拳をあわせた。
何とか、敵を倒すことが出来た。



さぁ、これで後は帰るだけだ。

捕らえられた村人はどこにいるだろうか・・?

「きっと無事でいるよ・・・。
 あいつの目的は魔法力みたいだったから、殺してはいないはず。」

「毎日毎日魔法力を搾取され続けてたのか?
 それってどうなんだ?」

「ほんと・・・考えたくもないよ・・・。」

そう言ってカインはげっそりと苦笑した。
やはりあまり気分のいいものではないのだろう。

「だけどさ、どうやって連れて帰る?
 このドアを開けたらモンスターがまだいるかも。」

「生き返ったモンスターはそのままかもね・・。」

扉の奥には何度も倒したモンスターがきっとまだいるだろう。
恐らく今度は一度倒せば二度と起き上がっては来ないだろうが・・。

「明日までここにいて、明日お前の魔法力が回復してからにするか?」

俺のその提案にカインは首を振った。

「きっと明日まで待たなくても大丈夫だよ。」

「え?」

「きっと、大丈夫だよ。」

カインがそう言うなり、先ほど割れた窓から見知った奴が落ちてきた。
いや、落ちてきたという表現は、当たっているんだが、ちょっと失礼か。

そう、舞い降りてきたんだ。

「あなた達、平気!?」

その人影は心配そうにそう言った。
マリアだった。

「マリア・・?マリアじゃねえか、お前なんで!?」

「なんでってそこの窓が割れたから、
 きっとここで戦ってるんだと思って・・・。」

「え・・・ああ・・・!」

アレンは先ほどいかづちの杖を使ってカインが破壊した窓を見上げた。
これはマリアへの合図だったらしい。

「お前、そんな事考えてたのか!!」

「悪魔神官の指輪破壊出来たからね。
 魔法力を吸い取ることが出来なくなったから、
 もうマリアが来ても大丈夫だったし。
 ちょっとは合図になるかなあとは思ったけど、
 気づいてくれて良かったよ、マリア。」

「あーーー・・・そう言うことか。
 まぁ、確かにお前の魔法力であんなに喜んでたから、
 マリアなんて差し出したら絶好の鴨だもんな?」

マリアの魔法力はカインよりも上だ。

「でしょ。絶対やだね。」

カインが、ははっと笑った。

「何?何?なにがあったのよ、私にも教えてよ。」

「悪魔神官が出たんだよ。で、倒したんだよ。
 俺が!!」

「何その説明。なんでそんなぶっきらぼうなのよ。」

ちぇ、俺への絶好のアシストだと思ってたあの攻撃が、
俺が倒された後の保険も兼ねてたんじゃないかと思って
俺は若干面白くなかった。

「マリア、リレミトできる?」

「ええ、任せて。」

マリアはこくりと嬉しそうに頷いた。

まぁそれくらいはやってもらおうか。
やっぱり、来てくれて嬉しかった。
それに皆、無事で・・・・良かった。

俺は胸を撫で下ろした。

「さぁ、あとは、村人見つけてとっとと帰ろうぜ!」



- 終 -

2012/08/27
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 2周年リクエスト小説でした。
 「アレンとカインの絆が感じられる何か」「アレンカインマリアでピンチっぽい小説」・・いけてますか?

 一度こういう本編と関係ないダンジョンやってみたかったので、楽しかったし、満足です!
 リクエストありがとうございました〜〜!!!

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