<注>
こちらのお題小説は、
全く同じシチュエーションを2回やってみるという、
テスト的にやってみた小説未満の散文です。
シチュエーション
『悪魔神官級の魔物に、仲間Aの悪口を言われたことで、罠にかかってしまった仲間BをAが助けに来た(クリア後設定)』
【ケース1.A=カイン、B=アレンの場合】
俺が目を開けたとき、おかしなことになっていた。
カインが何故か自分に覆いかぶさるように抱きついていた。
「・・・な・・なんだ・・?」
あまりのことに動揺して、
何故こんな状況になっているのか分からず、
一瞬何と言えば良いのか俺は分からなかった。
「・・・ああ!アレン、良かった!気が付いたんだね?」
が、俺が喋ったので、気づいたのだろう。
カインの方が、少し体を離して俺の顔を覗き込んできた。
「お・・・おお・・・・。」
ようやく俺は声を出して、自分が無事なのを理解した。
無事・・・?
無事と言うのも少し語弊があるか。
目は開いたが、骨でも折れてるのか体がピクリとも起こせない。
確か俺はイオナズン食らって吹っ飛ばされたんだった。
久々にあんな魔法の直撃を食らった。
自分でもなまったと思うが、ロトの鎧もロトの盾もない現状では、
あえなく吹っ飛ばされたようだ。
「アレンらしくないよ、びっくりしたじゃないか!
なんでこんなに大怪我してるのさ。」
カインが不満げにそう言った。
倒れている俺を見たときは、相当肝が冷えたのだろう。
何でこんな事に・・・・って。
終わってみれば、相当馬鹿馬鹿しいのだが、
俺は罠に掛かったらしい。
カインの耳には入っていないだろうが、
街中の酒場で聞いた噂話。
世界を救った勇者達の中には、
悪魔に近い力をもった奴がいると。
生死の魔法を自在に使えるようになったカインの事だった。
英雄面して生きているが、
野放しにしていると、人間達の安寧は無いとか何とか・・・。
カインがどんな気持ちで魔法を封じているのかも知らずに、
言いたい放題のやつらに腹が立って、
無防備に酒場に乗り込んでみると、
何と罠だったらしく、ろくな装備も無い俺はイオナズンの餌食になったという・・。
「ば・・・・か・・・じゃない!?
そんなのに腹を立てて何やってるのさ?」
「馬鹿とは何だ。
お前の事を知らずに好き放題言ってるらしいから
懲らしめてやろうと思ったんだよ。
そしたら、ちょっと罠だっただけだろうか。」
「ちょっと・・・じゃないよ、もうっ!!」
カインはぷりぷりと怒っている。
まぁ、こいつって本当自分の悪口にはアンテナが働かないらしい。
これがもしマリアの悪口だったら、
無防備で飛び込んでるのはカインに違いないだろう。
「まぁちゃんと首も繋がってるようだし、無事で良かったじゃねえか。」
俺がそう言うと、今度は少し怒ったようだった。
「どこが無事なんだよ!血みどろじゃないか!
今はマリアがいないから、ちゃんとは治せないんだよ!?
無茶をするのは止めてよ!!」
そう言えばカインの魔法はほとんど封じられてるんだったかで
ベホイミなんかは使えなくなったんだったか。
「でも多少は、治ってる気がするぜ。
ほら、指だって動くし。」
俺は指をグーパーさせてみた。が、肩はあがらない。
逆に、それしか出来ないのかよ・・って感じになってしまった。
「うん・・・目が覚めて良かった。死んじゃうかと思った。」
「何かやってくれたのか?
お前、俺に抱きついてたけど。」
「だきっ・・・!?」
そう言うとカインが顔を赤くして、首を振った。
「抱きついてたんじゃないよ。
触れる手に力を込めたら 少しはね・・・少しは効果があるんだよ。」
どこが違うのかは若干よく分からないが、
抱きついてたんじゃないらしい。
そう言ってカインが俺の肩にそっと手を触れた。
「知ってる?魔法が使えない人もね。
こうやって、患部に手を当てて、治りますようにって『手当て』して祈るんだ。
昔々の太古から人々はこうやって治療してたんだって。」
いや・・・それで治ってたら、
薬いらずじゃねえか、医者は廃業だよと思いつつ、
カインの祈りの気持ちが届いたのか、やっぱり多少はホイミの力なのか
肩が傷が軽くなった気がする。気がする・・・程度だが。
だけど、多分本当に効いたのだ。
ゆっくりとだが、体を起こすことが出来た。
「良かった、少しは効いたみたいだね!」
カインが嬉しそうだった。
「あ、ああ・・・・助かったよ・・・。
カイン、あの・・な・・・。」
俺が口を開こうとすると、
忙しなくカインが立ち上がった。
「あのね、アレン。
治った所いきなりで、悪いんだけど、
この建物壊れるみたいなんだ。
逃げないと・・・!」
「え・・ええっ・・!?」
そう言えば先ほどから不吉な音がして、
ぱらぱらと壁が朽ち落ちていっている。
「立てる?走らなきゃ!!」
残念ながら先ほどのがベホイミじゃなかったのが証明されたかのように
俺の体は鉛のように重たかった。
回復魔法って便利なものだったんだ・・・と
改めて思い知らされた。
ふと見ると、支えを失った建物は
ガラガラと崩れ落ちてくる。
なっさけない話だが、
こんな状態じゃ逃げ切れる気がしなかった。
せっかく助けてもらったのに、
申し訳ないが・・・・。
「お前だけ、逃げろよ。」
俺の言葉に、カインがきょとんとした顔でこちらを振り向いた。
「・・・何を言っているの・・・?」
「俺がいたら、足を引っ張る。
お前だけなら逃げ切れるだろう。」
「な、何を・・・!?僕だけ逃げろって言うの!?」
「無駄に2人も死ぬことはねえ。」
その言葉にカインは首を大きく振った。
「や・・やだよ、やだよ!馬鹿にしないでよ!
何のために僕が来たと思ってるの?
アレンを助けに来たんだよ。見捨てて行くわけないじゃない!」
そう言うとカインは、俺の腕を回してぐいっと肩に支えた。
急に動いたせいで、アバラがぎしっと変な痛みが走った。
「いっ・・・。」
「痛いかもしれないけど、ちょっと我慢してね。」
その言葉に俺は思わずカインの表情を見上げた。
カインはこっちを見ずに、今はただ前だけを見すえている。
いつもへたれで頼りない事ばっかり言ってる割に、
・・・・こいつ、こんな顔をするんだな・・・と思った。
そして、カインは俺を支えたまま
ふわーっと空を飛んだ。
「うおっ・・・!?」
そしてその直後、自分がいたはずの床が崩れ落ちていく。
わあ、割とマジで俺死ぬ5秒前だったんじゃねえか・・・。
「すげえ、すげえ・・・!飛んだじゃないか。
お前すげえなあー。」
「わあっ、アレン暴れないで。
アレンは重いんだから、落ちちゃうよ。」
「重いだとー?失敬な・・・。」
そう言って俺は怒りつつ、笑った。
真剣な表情で俺を助けてくれたそいつは・・、
昔は何も出来ずに何度も俺が助けてばかりだったはずのそいつは・・、
いつの間にか、こんなに成長していたらしい。
なんだか、それを俺は・・・・嬉しく感じた。
「カインお前、頼りになるようになったんだなあ・・・。」
なんか、本当に俺も助かる気がしてきた。
「へ・・・?僕なんか褒めても何も出ないよ・・!?
傷も治せないし、さっさと早くマリアのところへ行くよ!」
こいつの力は不思議だ。
何も出来ないかと思いきや、不思議な力で俺達を助けてくれる。
もしマリアに言ってこいつの魔法の封印を解いたら、
結構すごい事になるんじゃないかとも思ったが、
でもカインがそれを拒否しているうちは、俺が言う事ではないだろう。
それにしても、生きると思ったら、それならそれで、唐突に欲も出てきた。
「着いたら、まず飯な。」
食欲ってやつだな。
「ちょっと、何言ってるのさ。まずは治療でしょう!?」
体は正直らしく、腹がぐ〜〜となった。
俺の言葉に呆れたように、カインは怒っていたが、
その怒り声も、肌に感じる風も、今はすべてが心地よかった。
- 終 -
シチュエーション
『悪魔神官級の魔物に、仲間Aの悪口を言われたことで、罠にかかってしまった仲間BをAが助けに来た(クリア後設定)』
【ケース2.A=アレン、B=カインの場合】
「ン・・・カイン、カイン・・・・!!!」
先ほどから何度も自分を呼ぶ声が聞こえる。
意識を無理やり呼び起こされ、僕は重い瞼をゆっくりと開けた。
「カイン!!目を覚ましたか!!
俺だよ、分かるか!?」
アレンの必死な声に思わず、僕は笑ってしまった。
「何を笑ってるんだよ?本当に大丈夫か!?
頭でも打ったんじゃねえか!?」
「頭は・・・打ったかもしれないけど、
大丈夫だよ、アレン。」
ふふ・・と笑いながら言う僕に、ようやくアレンが少し安堵したようだった。
だが、今度は少し憮然とした表情で唇を尖らせた。
「なんで笑ってんだよ?」
「アレンが・・、妙に真剣な顔をしているから、
おかしくって・・・。」
「おかしいとは何だよ!
お前がぶっ倒れてるから、俺・・・心配したんじゃねえか・・!」
「ごめんごめん。
大丈夫だよ。ほら、この通り。」
といって体を起こそうとしたのだが、
どうもかっこ悪いことに、体を支える力さえ無いのか
その場にまたぐしゃっとつぶれてしまった。
「おま・・・、どっ・・・こが大丈夫なんだよ!?」
アレンが呆れたような声で僕を見下ろしている。
うん、それはそうだね。僕も情けないとそう思うよ。
「あれー・・・なんか変だね・・・。」
「なんか変だねとか言って、倒れられて堪るかよ。」
そう言ってアレンは僕を助け起こしてくれた。
「良いか!?
お前な、誰も知らないところで死なれたりしたら、
俺とか・・マリアがどんな思いするのか
分かってんだろ!?」
そう言って怒られた。
うん、そこは・・・冒険中にも散々怒られてるし、
十分気をつけてるつもりだったんだけど・・・。
「大体、イオナズンなんて、何でお前こんな罠に掛かってるんだよ・・!?」
今の状況では隠し事など出来ないだろう。
僕は重い口を開いて語り始めた。
立ち寄ったとある街の起こった黒い噂。
人である身で、
魔法の力も借りず、
あらゆる魔物、そして破壊神さえも破壊したと言う男。
その男が、英雄として崇められ、
とある国の王となっているが、
とんでもない話だと。
人々は騙されていると。
勇者なんかじゃない、
本当の化物とはアレンのことだという言葉。
許せない暴言だった。
確かにアレンの力は人並み外れていたかもしれないが、
それはアレンの日々の鍛錬により為し得た力じゃないか。
それも知らずに、
またアレンの人となりを知らずに、
そんな暴言・虚言がまことしやかに街中に広げようとするなんて
絶対許せなかった。
そしたら、それこそが罠だったらしく、
まんまとおびき寄せられた僕はイオナズンの餌食になったという事だ。
「バーカ。餌食になった・・・じゃねえよ。」
「だって。アレンの事を勇者じゃない・・・じゃなんて・・
間違ってるもん。」
実は、この話・・・アレンにしたくはなかった。
アレンが気にすると思ったからだ。
「別に、んなのどっちでもいいよ。」
「アレンほど勇気をもった人いないよ。
僕らなんどもアレンの勇気に助けられたし、
だから、世界を救う事が出来たんだよ。」
「話がでけーよ。」
アレンはそう言うと立ち上がって、顔をそむけた。
どんな表情をしているのか分からない。
「アレン・・・・?あの・・・」
「そんな話より、ちょっとまずい話なんだが・・。
喋ってる場合じゃないんだ。耳を澄ましてみろ」
「え?」
言われるとおり、耳を澄ましてみると、
ごごごご・・・と地響きのような音がする。
「何の・・・音・・・・?」
「この建物が崩れる音だ・・・!
逃げるぞ!」
見ると本当にぱらぱらと壁が崩れ落ちていっている。
建物が全壊するのも時間の問題だろう。
「ほら、カイン。逃げるぞってば・・・!」
アレンが僕に手を差し伸べている。
でも・・・・
イオナズンのダメージで、まだ僕は半身起こすので精一杯だった。
不運な事に、回復魔法も出来ないし、
今は薬草も持っていなかった。
「ごめん・・・・僕は・・・ちょっと無理みたいだ・・・。
僕に気にせず逃げてよ。」
その言葉にアレンが唖然としている。
せめて僕は笑顔で言ったつもりだったのに、
アレンは対照的にすごい表情だった。
「そんな怖い顔しないでよ。
早くしないと、アレンまで、逃げ遅れちゃうよ。」
そう言うとアレンは僕の前にしゃがみこんで
怖い顔のままで口を開いた。
「バッカやろう!!
どこの勇者が、仲間を捨てて一人で助かろうとするんだよ!
カイン、お前な・・・お前の知ってるアレンって勇者は
その程度の奴なのか・・・!?」
「ア・・・レン・・・・。」
僕はその言葉にハッとした。
アレンの事を励まそうと思って、さっき言った言葉だったのに、
これでは僕がアレンの事を信用なんてしていなかったみたいじゃないか。
「違うんだ!ただ、僕は君を巻き込みたくないだけだよ。」
「バーカ。それが馬鹿だって言うんだよ。
さっきお前が俺のことを化物じゃない、勇者だって言ってくれて、
俺嬉しかったんだよ。
だったら、ちゃんとお前を助けさせてくれよ。」
「ごめん、ごめんアレン・・・・。でも、でも・・・。」
アレンが優しいのは知っている。
でもその優しさは僕なんかに向いているべきじゃない。
世界に向くべきなんだ。
だから、アレンが僕のせいで巻き込まれて事故にあうなんて、嫌だった。
「でもじゃねーよ、俺を馬鹿にするなよ。
崩れる建物から飛び降りる術くらいあるんだよー。」
アレンはそう言うなり、何かを取り出した。
何度かアレンがそれを使って空を飛んだのだ。
「あ、風のマント!アレンずっと持っていたの?」
アレンは風のマントを装着した。
「へへ、勇者たるもの、空くらい飛べないとなー。」
そう言えば、そう言うアイテムもあるのだった。
懐かしかった。
などと考えていると、アレンが僕を軽々と抱きあげた。
「わわっ・・・アレン・・・!?」
「背負っていったら、マントが使えないからな。
抱きかかえていくわ。
お前も、俺にしがみついておけよ。出来るか?」
「え・・・!?う・・・うん!!」
僕は言われるままにアレンにしがみついた。
そして、次第に床がガラガラと崩れ落ちていく。
立っているその場所が崩れ落ちる直前
駆け出したアレンは思い切り地を蹴って空中へと飛び出した。
「よっしゃあ!何とか飛べたな!」
飛べたというか、落ちていくというか・・・
風のマントの飛翔力自体は、少々頼りないものだ。
しかも自由が利かないので、崩れ落ちてくる壁の破片などが
アレンに降り注いでいる。
「アレン・・!大丈夫!?」
僕はアレンにしがみ付いているしか出来ず、
しかも守られるように抱きかかえられているので、
それらの破片は全てアレンに直撃するのだ。
「アレンってば!!」
「こんくらいなんともねーよ。」
アレンはそう言った。顔は笑みすら浮かべていた。
ああ・・・
ほら見ろ。
あの、僕を罠に掛けた奴らにこのアレンの姿を見せたい。
こんなにカッコいいアレンが勇者じゃない訳無いじゃないか。
「カッコいい・・・。アレンはカッコ良いんだよ。」
「おま、何を言ってんだよ。」
ぶつぶつと思わず口走っていた言葉が聞こえていたらしい。
アレンは少し照れた顔をした。
「それより、お前帰ったらマリアの元に直行だからな。」
「うん。そうだね。」
「もう一回みっちりお説教してもらえ。」
「うん、そうだね。」
脅すようなアレンの言葉も、今は嬉しかった。
「何笑ってんだ。」
笑顔な僕をいぶかしむように、変な奴・・とアレンは呟いた。
でも、僕は僕を怒ってくれる素敵な仲間と一緒にいられて、
本当に嬉しく思ったんだ。
「助けてくれて、ありがとう。アレン。」
僕はそう言ってもう一度アレンにしがみ付いた。
- 終 -
2014/01/17
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