アレンはラダトームの城から街へと供もつけずに、一人歩いていた。
ムーンブルクの船がついたらしい。
久々にあいつらに会えるようだ。
こっそり言って驚かせてやろうと思ったのだ。
が、その思惑は外れる事になった。
急にアレンの手が引っ張られた。
「アレンさま!!」
「ん・・?」
自分の腰よりも低い位置から、親しげに声を掛けられた。
小さい目がこちらを見上げていた。
金色の長い髪の毛と、明るい笑顔とくりくりした目で、
手には一丁前に小さな杖を持っている。
「アリス、久しぶりだな!!」
「おひさしぶりですっ。
わーい、アレンさま!アレンさまだぁ〜〜!」
アレンは、その子を抱き上げた。
その子も嬉しそうにアレンの首にぎゅーっと抱きついた。
大きくなった。前にあったときは、まだ言葉もおぼつかなかったというのに、
急にしっかりした気がする。
そう思っていると、その直後に心配そうな声が
聞こえてきた。
「アリスー!アリスー?どこに行ったの〜!?
もうっ、なんですぐにいなくなっちゃうのー??」
その声を聞いて、アレンの顔が一層嬉しそうに綻びる。
「おーい!ここだ!
カイン!」
アレンがアリスを抱っこしたまま、大きく手を振った。
カインは、アレンに気づくと
ほっと安心したように、こちらへやってきた。
「アレン、久しぶりだねえ。
アリス、勝手に走っていったら駄目だろう?」
アレンには懐かしそうな顔で、そしてアリスには少し厳しい顔で
カインが声を掛けた。
「だってね、アリス、
アレンさま見つけたの。アリス、アレンさまだーいすき!」
アリスはカインとマリアの間に生まれた長子だ。
最近アリスは、外の世界に興味があるようで、活発な年頃だ。
そして、もう一人。
カインはアリスより、もっと小さい子供を抱っこしていた。
その子はアリスと違って、アレンに抱きつくこともなく
カインの手から降りようともしない。
「マナちゃん、おいで。
アレンさまだよ。とっても強いんだよ。」
アリスが促しても、首をプルプル振って動こうともしない。
アリスがマナと呼んだその子は、
髪色は紫とも藍色とも付かない色で、非常に淡く、
ふわふわっとした綿菓子のような髪の毛で、
そして大人しい性格をしていた。
アレンがその子を見るのは、初めてだった。
二人目が生まれたとは聞いていたが、
あまり活発ではないその子は、
いつも部屋に閉じこもって人前に出ようとしないようだ。
だが、この子も、可愛らしい女の子ではないか。
「マナ、この人がローレシアのアレン様だよ。
一番偉い王様だよ。こんにちはってしなさい。」
カインがそう言うと、マナはしばらく考えて、
ぺこっと頭だけ下げた。
「違うでしょ。ちゃんと、『こんにちは』って言いなさい。」
もう一度、カインにそう言われて、
マナは聞こえるか聞こえないかの声で小さく
「こんにちは・・・。」と言った。
アレンはそんな様子に笑った。
「はい、こんにちは。
なんだ、全然アリスと性格が違うんだな。」
「そうなんだよー。
引っ込み思案だし、誰に似たんだろうね?」
その言葉に、「大方お前だろ。」と言いたいのを
アレンはぐっと堪えた。
「アレンのところは?
お城に皆いるの?」
「ああ、俺だけ城を抜けてきたんだ。」
既に落ち着いてもいい年頃であるが、
いくつになっても、そうやって奔放な所があるアレンだった。
「じゃあ、後で会いに行かないとね。
聞いたよ、魔法の特性・・あったんだってね?」
「・・・・・・ああ。」
アレンとクレハの元に生まれた一人息子には
アレンには無かった魔法の潜在能力があるようだった。
その報告を受けたときの、アレンの心境はいかばかりだろうかと思った。
「あ、でも待ってね。
まだ積荷の確認が終わってないって。
マリアがすぐ戻ってって。ちょっと船に戻ってくる。
アレン、2人の事見ててくれる?」
そう言って、カインは抱いていたマナを下に降ろした。
マナは最初アレンの顔を見ておびえたように、
カインの足にしがみ付こうとしていた。
「マナちゃん、一緒にアレンさまとお城に行こうよ。」
アリスがそう言うと、マナはしぶしぶアリスの手を取って
こくりとうなずいた。
どうやらアリスは頼りになるお姉ちゃんのようだった。
「じゃあ、先に城に行ってるな。」
アレンもそんな様子を見守りつつ、
城まで少しの距離だからと快諾した。
人の子供を預かっているときに行くのもどうかと思ったが、
アレンは道すがら、城下にいるはずの、
ロト伝説に詳しい老人の顔を覗いていこうと思った。
だが、何度か来た道のはずだが、
老人の姿は見えなかった。
「あれー・・・・・?」
店じまいだろうか?もうさすがに、あれから何年も経った。
健在かどうかも分からないのが少し気にかかった。
「アレンさま?どうしたんですか?
ここに何かあるんですか?」
アリスがアレンを見上げた。
「あ・・・いや、古い知り合いがいるかと思ったんだが、
いなかったようだ。勘違いだ、悪かったな。」
アリスとアレンがそう話していると、
少し離れた所にいたマナが、背後の方を振り返って、
手を振っていた。
「マナちゃんどうしたの?」
「姉さま、あのね、そこにね、おじいちゃんがいたよ。
おじいちゃんバイバイって。」
「そっか。バイバーイ。」
アリスもマナと一緒に手を降り始めた。
・・?こいつらには何か見えているのか?
「おい、マナ・・・って言ったな。
何かいるのか?そこに?」
アレンがそう聞いてみると、マナはこくりとうなずいた。
「おじいちゃん、何回も頭ぺこりしてるよ。」
その言葉に少し背中がぞくっとした。
アレンがいくら目をこらしても何も見えない。
「なんていってるのかなあ?」
アレンは悟る事になった。
この子は間違いなく何かを感じている。
そして、おそらく老人はもうこの世にはいないようだ・・・。
「もう良いよ。さぁ、城へ行こう。
2人とも。」
それにしても、この小さな子供たちは、
やはり不思議な力があるようだ。
カインとマリアの血を引くだけあって、
魔法の力も有能なようだ。
「き・・・・お。」
「どうした?」
アレンが声を掛けたが、マナが背後を見たまま、何かを呟いた。
「つ・・け・・・て・・・って。」
直後、空間が急激に歪むのを感じた。
「・・・!?」
やばい、こんな子供と一緒の時に何事だ?
だが、この感覚は覚えている。
移動する。ここではないどこかへ・・・・。
アレンは、慌てて、預かりものの子供たち2人を見失わないように、
ぎゅっと抱きしめた。
****
「・・・・・?」
どうやら、空間の歪みは落ち着いたらしい。
真っ暗だった。
ここはどこだろうか・・・?
室内のように感じたが、ラダトーム城ではない。
「ふっ・・・うええ・・・こわーい、こわーーい!!」
腕の中に抱きしめた小さい方が
急に泣き出した。
「マナちゃん、怖くないよ。
お姉ちゃんがいるでしょ。」
アリスが、泣いているマナを慰めていた。
でもアリスも不安そうだった。内心怖がっているのだろう。
ここは、どこだ・・・?
「2人とも、俺の傍を離れるなよ。」
「はい・・・。でも真っ暗で見えない・・・。」
はぐれるなと言っても、姿も見えないのでは追いようも無い。
「あ、思い出した!
ぽんぽんの魔法だよ。」
「ぽんぽん?」
アリスが何かひらめいたと言う風に、嬉しそうに言った。
「そーれーー!!」
アリスが大きく手を広げると、
その上空が明るく光った。
「ほら、マナちゃん。ぽんぽんって。」
アリスがそう言うと、マナが頷いた。
「ぽんッ!!」
マナがそう言うと、今度は小さく小さく線香花火のように
少しだけ明るくなった。
「・・・・・ぽんぽんの魔法・・・?
そんなのあったか・・・?」
アレンの少ない魔法知識を総動員させても、
ちょっと思い浮かばない。
暗い所を明るくする魔法なら、あったと思うが・・・。
「えっとね、本当はなんだっけ?レミー?エミー?
なんだか分かんないから、
花火みたいにポンって明るくなるから、ぽんぽんの魔法って呼んでるの。」
アリスがそう言った。
周辺が明るくなった事から、彼女が今笑顔になっているのが分かる。
少しほっとした。
「へー・・・・見事なもんだなあ。」
なんだか、魔法の名前も間違っているが、
感覚で魔法を唱えているようだ。
2人とも、天才的な魔法のセンスがあるのだろう。
「アレンさまも、一緒に一緒に。」
「ぽーんって。」
2人が一緒にアレンも魔法を使えと言ってくる。
まるで、「一緒に遊ぼう」とおねだりしている風だった。
だが、アレンは少し困ったように笑った。
「俺にはできねーの。」
そう言われ、子供たちは不思議そうにしていた。
しかし・・・、この明るさが魔法の力だとすると
子供たちの魔法では、時間的限界があるだろう。
長居はできない。
アレンはそう思い立つと、周辺の探索を急ぐ事にした。
子供たちを置いていくわけにもいかないので、
連れて行くことにする。
まぁ、いまどき、魔物の危険などは、ほとんどないから心配は無い・・・。
そう思ったが、
アレンの思惑は外れた。
急に何者かが、明確な意思を持って襲い掛かってきたのだ。
「2人とも、俺の後ろへ!!」
アレンはその気配を察すると、
襲い掛かる魔物を一刀の元に斬り捨てた。
「・・・・・・・・。」
魔物はミイラ男だった。
おかしいな・・・こういう魔物が動くと言う事は・・・?
アレンの考えが、突然けたたましい泣き声で遮断された。
「うわああああん。怖いよお!
帰る!もう、帰りたいよお!!」
どうやら魔物を見て恐怖心がまた増してしまったようだ。
マナが座り込んで泣き出してしまった。
アリスも今度ばかりは、ぶるぶると身を震わせていた。
泣き出したりはしないが、相当怖がっている。
仕方が無い。まだほんの子供なのだから。
「ほら、お前たち。泣くな〜。」
アレンは2人を泣き止ませようと思った。
そうは言っても、先には進まないといけないし、
止まってもいられない。
「うーん。」
自分だって一児の親だ。
自分の子が泣きじゃくるときは、
いつも決まってこうやるのだ。
「ほら、抱っこしてやる。来い。」
アレンはアリスにそう声を掛けた。
そして、こっちの小さい泣き虫はこれだ。
「乗れ。」
アレンはマナを肩車することにした。
「ふっ・・。うわあ。たかーいたかーい!!」
「うわあ、マナちゃん良いな!」
一人は肩車しながら、一人は抱き上げた。
うん、こんな姿、人に見られたら何事かと思うだろう。
だが、2人は機嫌が戻ったらしい。
「アレンさま重たくないの?」
「お前らくらい2人や3人、重くも何ともあるかよ。」
だが、あまりこういうことはされた事が無いらしいマナは
アレンの頭上で、わあわあ、興奮した声を上げていた。
「すごい!アレンさま力持ち!!つよーい!」
適当に襲い掛かってくる魔物を蹴散らしながら、
アレンは先に進んだ。
「なんだ、お前らのとーちゃん、かーちゃんは
やってくれないのか?」
「・・・・?とうしゃま、こけちゃうよお。
危ない危ない。」
・・・・おいおい。こんな幼児に何の心配をさせてるんだ、あいつは。
思わずアレンも笑ってしまった。
「アレンさまは怖くないの?」
アレンの腕に抱きかかえられたアリスは不安そうにそう言った。
「怖くねえよ。それに、ここがどこだか分かったからな。」
「え!?ここ、どこですか!?」
「俺や、お前らのとーちゃん、かーちゃんらの・・・・
そうだなあ、友達の城だなあ。」
アレンはそう言った。
暗がりのこの場所がどこか、アレンは先ほど理解した。
既に何度も来たことがある。
特にミイラ男と言ったアンデッド系魔物が動いていると言う事は、
それなりの魔力と統率力を持った大物がいる場所だ。
そして、ラダトームから程近い場所・・と言えば、あそこしかない。
何故、こんなに暗いのか、だけは良く分からなかったが・・・。
そこは本人に聞いてみれば良いだろう。
「なあ!竜王!!!」
アレンは、深層にあった玉座に向かってそう言った。
竜王と呼ばれて、その人物はこちらに顔を向けた。
その顔を見て、アレンは驚いた。
顔はしわだらけで、背中は丸く折れ曲がり、急激に老いたような姿だったからだ。
以前会ったときは、そんな事は無かったはずだ。
「なんだ・・ロトの血が久しぶりに3つ集まっているから、
お前たちが揃ったのかと思って、呼び寄せたが、
妙に小さいじゃないか。」
急に発生した空間の歪みは竜王の仕業だったようだ。
「お前の子供か?」
「俺の子じゃねえよ。それより、竜王・・・なんで・・・そんな・・。」
年老いて、今にも朽ち果てそうな姿なのか・・・・?
「一つの時代が終わろうとしている。
竜の一族は若い壮年時代が長い。
だが、その分、老いて消えるときは早いものだ。」
「え・・・・。」
「お前たちも同じようだな。
ロトの剣の消滅とともに、お前たちを守るロトの力も・・・
今や消え入るようなものだ。」
「・・・・・・・。」
自らの最期を悟った竜王は自分に最期の姿を
見せておきたかったのだろうか。
何とも返事が出来ずにいると、
背後から、風が吹き荒れた。
「!?」
アレンが背後を振り返ると、
そこには見知った仲間の姿があった。
「カイン!マリア・・・!
お前たち・・・・!!」
アレンも2人の名前を呼んだ。
「あ、とうしゃま!かあしゃま!」
マナが足をばたばたさせて、
そっちへ行こうとした。
2人の子供を降ろしてやると、
2人ははじけるように走り出した。
「アレン、どこに行ったのかと思って、
心配したじゃないの!?」
マリアが相当怒っている。
子供をつれて、どこへ行ってしまったのかと
思ったらしい。
あろう事か、行き先が竜王の城だからな。
心配をかけて、悪い事をした。
だが、傷一つ付けることなく、
子供たちを返す事が出来てほっとした。
そう思ったとき、何者かが
カインの手から飛び出して竜王に向かって走り出した。
「あっ!ちょ・・ちょっと・・・待ってよ!」
「あいつが、アリスちゃんをさらった悪い奴だなー!!」
どうやら、今度はカインたちがアレンの子供を
連れてきたらしい。
そして、悪者を退治しようと勢いよく駆け出した。
「てーーーーい!!!」
「てーい、じゃねえーー!」
アレンはその子供の首根っこを捕まえた。
やんちゃ盛りなアレンの子供だ。
「父上!あいつ悪い奴じゃないのか!?」
「今は、悪い奴じゃねえよ。」
足をばたばたさせてる子供を、これ以上行かせまいと
首根っこを押さえておくことにした。
「ふふ、にぎやかな事だ。
子を残すとは、良い事だな。」
竜王はそう言うと、目をつぶった。
「最期をお前たちに見届けられるのも良いものだ。
さぁ、もう帰れ。」
「最期って・・?アレン、竜王は何を・・・・。」
カインはアレンに慌てたように尋ねた。
だが、おそらく言葉の通りなのだ。
城内が真っ暗なのも、竜王の力がなくなっているからかもしれない。
「人間の一生は、竜よりも短い。
残された生を、悔いなく生きよ・・・。」
竜王はそう言うと、一度大きく目を開けた。
すると、ここに来たときと同様に
空間がゆがみ始めた。
***
気が付くと、アレンたちはラダトームの城下に帰ってきていた。
「最期に、俺たちを呼び寄せたかったのかなあ・・・。」
城下町にはやはり、あのロト伝説を口伝する老人はもういない。
『一つの伝説の終わり。』
それを感じずにはいられなかった。
少しアレンたち大人がしんみりしていると、
子供たちが騒ぎ始めた。
「アリスちゃん!!無事で良かったあ!!」
「カル!久しぶり〜。本当に、びっくりしたあ。
帰ってこれたみたい。良かったあ。」
「俺、すっごい探したんぞー!」
アリスとカルと呼ばれたアレンの一人息子がぎゅーっと
抱き合っている。
こいつらはこういう所が積極的だ。
「カルって・・・本当はカレルくんだよね?」
カインが、アレンをつついてそう言った。
アレンの子供はカレルと言うのが本名だ。
伝説の勇者の本名と伝えられる名前をいじって、アレンが名づけたのだが、
皆にはよくカルと呼ばれているのだ。
最初に聞いたのがそっちの名前だったためか、アリスもカルと呼んでいる。
「別に、どっちでも良いんだよ。」と本人は言う。
「お前たちは、どこから現れたんだ?」
アレンはカインにそう尋ねた。
「どこからって、船から下りて、
城に行っても城下町を探しても、
どこにも子供たちが見当たらないし、
って言うか、アレンごと見当たらないし、
カレルくんも心配してたよ。
もう、びっくりしたじゃないか〜。」
「悪かったな。急に呼び寄せられて。
で、ルーラで来てくれたのか。」
「うん、ルーラをしたのはマリアだけどね。」
カインは、ぼそっとそう言った。
実は、とある事情から、カインが魔法を使う事は
ほとんどなくなっている。
少し心配そうな視線を感じると、
カインは笑った。
「ホイミ。くらいなら。」
そう言うと、カインの手が緑色に光った。
戦闘の擦り傷や疲れが癒された気がする。
「そう心配する事はないよ。
アレン、2人の事を守ってくれてありがとう。」
カインはそう言って頭を下げた。
「いや・・・そんな事当たり前・・・。
ん?」
アレンの足元にとことことマナがしがみ付いてきた。
「マナ、おいでよ。
怖かったでしょう?」
カインが、声を掛けるとマナはぷるぷると首を振った。
「マナね。とうしゃま好き。
でもアレンさまはもーっとだいしゅき!!」
「え、ええ・・・!?」
しがみ付くマナがそんな事を言った。
カインの顔が若干引きつっている。
最初はアレンの顔を見るだけで怖がっていたというのに。
「やだ、マナが人になつくなんて珍しい。」
マリアも珍しそうに言っている。
「アレン、マナは泣き虫だったから大変だったでしょう?」
「そんな事・・あるけど、でもマナも頑張ったよな〜。
お前もすごい魔法の才能があるみたいだしな。」
「え?この子が?」
マリアが驚いている。
あれ?それも珍しい事だったのか?
わたあめのようなふわふわと笑顔で笑うマナは何とも
愛くるしい。弾けるような笑顔のアリスとも違う可愛らしさだ。
「おい。カル。
アリスとばっかり遊んでなく、マナも可愛いぞ。」
カレルはアリスの事がどうやら気に入っているようだが、
きっと慣れればマナの事も気に入るだろう。
どっちにしても子供たち同士が付き合いだしたりしたら、面白い。
マリアが、少し不審に思ったらしく、
アレンに釘を刺した。
「ちょっとアレン、あんまりマナに可愛い可愛いって言わないでよ。
もっと男らしく逞しく育って欲しいって思ってるんだから。」
「うん?男らしい?」
「マナね。アレンさまみたいにつよーい剣士さまになりたーい!」
マナがアレンを見て輝かしい目でそんな事を言っている。
「さすが、アレンね。すごい影響力。」
「え?男?こいつ男?」
アレンが目を点にしていた。
「誰が、女の子って言った?
誰がどう見ても男の子でしょう。」
カインがマナを抱き上げた。
確かにアリスと比べて、髪の毛も短いし、
ズボンをはいていた。
アリスが「ちゃん付け」しているので、すっかり勘違いしていたようだ。
「ま・・・紛らわしいな・・・。」
だが、そのマナはアレンのほうを羨望の眼差しで見ていた。
どうやら、肩車しながら、魔物と戦ったのがよっぽど印象的だった様だ。
今日、一つの時代が、終わった。
でも、時は止まる事が無く、
また新しい時代が始まる。
「じゃあ、今度マナもカルと一緒に剣の稽古しようぜー」
アレンは、小さい子供たちに笑顔でそう言い、手を差し伸ばした。
マナはそれを聞くと、飛び上がって喜んだ。
「わ〜!やったー!アレンさまと一緒!」
「え!?マナちゃんだけ!?
アリスもアリスも!」
「えーー父上の剣の修行は怖いし、痛いんだぞー。
アリスちゃんには無理だよー。」
口々に喜んだり嘆いたりする子供たちを
アレンはどこか懐かしそうに見つめていた。
- 終 -
2013/08/21
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