36.約束


3人がハーゴンの神殿での決戦を間近に迎え、
極寒のロンダルキアでの修行の日々を1週間ほど過ごしてから、
ふとアレンが口を開いた。

「なあ、俺たち・・これで本当に強くなってるかなあ・・?」

アレンとの剣の稽古疲れで少々へばり気味カインは
怪訝そうに顔を上げた。

「多少は、強くなって・・るのかなあ?
 でも、ここの魔物って強いし。いつも命からがらで、
 あんまり実感はしないね。」

カインも疑問符をつけているような感じである。

「だよなあ。
 マリアなんかは、新しい魔法をいくつか覚えたみたいだけど、
 お前はどうなんだ?」

アレンが痛いところを衝いてくる。
マリアの成長は著しい。イオ系だけでなく、
バギ系やヒャド系の極大魔法も使えるようになった。
さらに他にも、何やら得体の知れない魔法を覚えたようだ。

「全然・・・何も新しい魔法なんて覚えれてないよ・・・。」

カインの魔法としては、毎度おなじみのベギラマ、
そしてイマイチ使い勝手の悪いザラキ辺りが鉄板だ。
相変わらず回復魔法もベホイミ止まりだし、
「新しい魔法は?」と聞かれると、何も増えていないので耳が痛い。

ずーん・・・と、凹んでいるカインを見て、アレンは笑った。

「いやいや、お前はザオリクがあるだろ。あれはすごいぜ。」

「それは、多分・・、というか二度と出番は無いんじゃない?
 と言うか、無いほうが良い。」

そう言って、少し嫌そうな顔をする。
まぁ、確かに出番は来て欲しくない魔法だ。
勿論名前も挙げはしないが、メガンテなど言うに及ばずだ。

それらを全て分かった上で、
カインは自分の持ってる力をよく理解していると、アレンは思っていた。
確かにカインは新しい魔法こそ増えていないが、
複数の魔法を使ったり、剣と組み合わせて使ったりと戦略はどんどん増えている。

比べてアレンは相変わらずの剣勝負。
複数武器が使えるのが、強みといえば強みだが、
一つの戦闘において、複数の武器を使い分けるなんて
そんな事は出来ない。
新しい魔法を覚えていく彼らと比べて、
正直自分が一番、自分の成長に手ごたえを感じていない。

本当に・・自分たちは強くなったのか?
それを確認したい。

「・・・・・・・・。」

しばらくの沈黙の後、アレンは声をあげた。

「・・・・・あっ!!
 そうだ、マリアを呼んで来いよ!」

「どうしたの?アレン?お腹でもすいた?
 でも、まだちょっとお昼には早−・・」

「違えよ!!良い事思いついたんだよ!」




****



「急に呼ばれて、急にルーラして、
 何事かと思ったじゃないの。」

やや憮然とした表情のマリアは
しぶしぶという様子でアレンたちに続いて、歩いていた。

カインは自分でルーラをしておきながら、
若干及び腰だった。

「アレン・・・・本気で・・・?」

「本気だよ、本気!
 ちょうど良いじゃねえか。俺たちの本当に強くなったのか。
 力試しだよ!」

アレンたちは今懐かしい場所に来ていた。

そこは、かつて100年前、勇者アレフが死闘を繰り広げた
『竜王の城』であった。

アレンたちも来た事がある。
その際は、竜王のひ孫に勝負にもならず完敗したのだった。
そのためいつか、強くなったらリベンジを誓っていたのだ。

「約束、してたじゃねえか。」

「約束って言うのかなあ・・・」

アレンが勝手に言ってただけじゃないか・・?とも思う。
だが、自分たちにとっての最終決戦を前に、
胸を借りるという意味では良いのかもしれない。

「俺は約束だと思ってたの!
 あれから、俺たち何度も死にそうな戦いを潜り抜けてきたんだ。
 だから、どれだけ俺たちが強くなったのか試したいじゃないか。」

強くなった事を確認するだけじゃ、当然おさまらない。
アレンは、もちろん勝利を誓った。

そんなアレンをよそに、カインが何やら呟いた。

「それにしても、ロンダルキアから戻ったら、
 あったかいねえ。」

それに対してマリアも頷く。

「あ、そういえばそうよね。
 私水の羽衣をずっと着ているからずっと涼しいのよね。」

「水の羽衣って、暑いとき涼しいだけじゃなくて
 どんな時でも一定の体温を守ってくれるんだねー。意外。」

アレンの熱い誓いもどこへやら、
仲間二人が何やらのんきにしゃべっている。

「おーまーえーらーー!!
 聞いているのか。宿敵がいるんだぞ!この奥に!」

「き、聞いてるよ。アレンの言いたい事は分かったよ。
 僕らも全力でやってみるから。」

相変わらずどうにもしまらない3人組だが、
アレンは仲間たちを率いて、竜王の間へと向かった。



****

ごごごご・・・・・。
竜王の間の直前になり、地響きのような音が聞こえてくる。

「・・・・・・?」

何の音かといぶかしんだが、
それは聞き覚えがあった。

あまりにも巨体がうごめくと、
古い城はその重さに耐えかねるように
その音が地面を伝え、ここまで届く。

そう、唐突に巨大な化け物が現れたときなどに聞く音だ。

どうやら、どこかでアレンたちがやってくるのを知ったのか
今しがた竜王は真の姿に変身したらしい。

「久しぶりだな!ロトの子孫・・・・!」

「・・・・・・・竜王!!」

アレンたちに緊張が走る。
だが、以前の戦いと違い、恐怖でパニックになるという事は無い。
竜王のその変身自体、既に経験済みだし、
他にもアレンたちは多くの化け物たちと戦ってきた。

当時はまるで勝負にならなかったが、
今ではロンダルキアの雪原の巨大な化け物と
互角に戦えるようにもなった。

ロンダルキアの魔物と、竜王がどちらが強いか、
そんな事はとても比べられないが、
それでも少しは自信と経験になっている・・はず。

「待たせたな!今度こそ、お前をぶちのめしに来た!」

「いつ来るかと待ちかねていたぞ。
 さぁ、お前たちの成長を見せてみよ!」

まずは挨拶とばかりに、竜王は炎を吐き出した。
それをアレンはかわしもせずに、真っ向から稲妻の剣で切り裂いた。

炎を切り裂いた剣戟はそのままその勢いで竜王の鼻筋を斬りつけた。

「ぐう・・っ!?」

「よしっ!」

アレンは前回は傷も付けられなかったけど、
今回は早速先制の一撃が決められた。
それだけで手ごたえを感じた。

前回との違いは武器の違いだろうか?
稲妻の剣の力は確かなようだ。
しかし、ここは・・・・アレンとしては是非使っておきたい武器があった。

「アレン、ぼうっとしないで。
 次が来るよ!!」

カインの声に前を向くと、
竜王の太い鋭い爪が迫っていた。

「うわっ・・・と!!」

思わず身をよじってアレンは直撃を避ける。
左肩を少々負傷したが、
戦闘不能になるほどではない。


「竜王!こっちだ!!」

背後から、竜王の気を引くようにカインが炎で攻撃をしかけていた。
続けざまに、隼の剣を使った二連撃。

「・・・・・・。」

大きなダメージを与えるにはいたらないが、
それでも十分足止めくらいは出来ている。

前回は巨大な竜と戦う蟻のようだったのに・・・と
カインもそれに手ごたえを感じていた。

そしてカインが戦っている間に、
マリアがアレンの傍へと駆け寄った。





炎をまとわせたカインの剣は、
今度は竜王の足を切り傷をつけることに成功した。

「ほう・・・・。」

前回はアレンたちが何度、どんな攻撃をしても、ほとんどダメージを与えられなかった。
多少なりの違いを竜王も感じ取っていた。

「ならば・・・これはどうだ・・・・!?」

竜王はギラ系極大魔法のベギラゴンを唱えようとした。

「・・・!!」

ベギラゴンはベギラマの威力を優に超える。
それをまともに返すだけの攻撃力も防御力もカインには無い。

ベギラマしか出来ない自分に出来る事といえば・・。
カインは剣を鞘に戻した。

「右手からベギラマ、左手からベギラマ・・・!
 いっけええーーー!!」

最近覚えたカインの最大火力の魔法だ。
二つのベギラマが竜王のベギラゴンに向かっていったが、
だが、どうやらベギラゴンはベギラマ二つ分以上の火力があったらしい。

激しくぶつかり合った炎はいくつかを大気上に散開させたが、
残った炎がカインを襲った。

「うっ・・!わああ・・・っ・・・!!」

「カイン!!」

炎のダメージにひざを突いたカインに思わずアレンが駆け寄ろうとしたが、
それをマリアがとめた。

「アレン、待って。あなたも怪我をしているわ。
 ここは、私に任せてみて・・・!!」

マリアの体に魔法力が収束していく。
イオナズンか・・・!?と思ったが、
どうやら違う魔法のようだ。

「・・・・お前、何をする気だ!?」

アレンが思わず尋ねると、
マリアは言葉少なく答えた。

「恐ろしい化け物が現れるか、
 巨大な彗星が打ち抜くか、
 どちらにせよ、とんでもない事が起きるわ。
 アレン、伏せていて!!」

「・・・・!???」

まるで脈絡の無い事を言っている。
マリアは何を言っているのかと思ったが、
別段混乱している風も無い。

どうやら、魔法の天才マリアの言う事、
本当に彗星のような化け物(?)でも召還するのかもしれない。

「マリア・・・その魔法は・・・・まだ、やめた方が・・!」

ひざをついたまま、こちらの状況を把握したカインが
何故だか魔法の発動を恐れている。
それだけの魔法だという事か・・・。

アレンは反対も何もできず、
成り行きを見守るしか出来なかった。

「行くわよ!
 混沌をも越えた力よ、我が手に集え!!
 ・・・パルプンテ・・・・・!!!」

やはり、アレンの知らない魔法だった。

どんな恐ろしい大爆発が起きるのか、
はたまた化け物が召還されるのか・・・と、ぐっと身を硬くしたが、
一瞬、ぽわっとアレンの体を赤い光が覆っただけで、それは静まった。

「へ・・・・?」

「あら?」

「あ・・・・?」

3人3様の声をあげたが、マリアは不思議がっている。
そしてアレンとカインは傷が治ったのを感じていた。

「あれ?なんだ、マリア、ベホマしたのか?
 あ、カインの傷も治ってるのか?」

・・・・?という事は、複数にベホマの効果がある魔法か?
それはすごいじゃないか。

と、思ったが、マリアは納得しない顔をしている。

「そう言うことじゃないのよ。
 もっと巨大な力が現れて、きっとこれはハーゴンにだって
 通用するくらいの巨大な力・・・。」

「回復魔法じゃねえの?」

「違うわ。もう一度やってみて良い?」

「え・・・ああ・・。」

そう言うとマリアはもう一度いかづちの杖を
天高くかざした。

「パルプンテ!!」

マリアの声が、城内に響き渡る。
そして、さらに木霊となって鳴り響いた。

「パルプンテ!!
   パルプンテ!
      パルプンテ
         パルプンテ ー ・・・・」

「・・・・・!???」

アレンはますます分からない。
今度のは何だ?一見ただの木霊に聞こえるが、
恐ろしい何かが隠れているのか?

「マリアーー、やっぱりパルプンテはリスクが大きすぎるよ。
 実戦で使うのはあんまり良くないんじゃない?」

冷静な様子でカインが、声を掛けてきた。
アレンがカインを捕まえて問いただした。

「おいお前、今のはなんだ?」

「今のは木霊でしょう?」

「木霊はわかったよ。それでどうなるんだ。」

「どうなるんだって、木霊は鳴り響くんだよ。」

「・・・・・・・・?」

何のこっちゃ。

いまだにマリアのパルプンテの声があちこち木霊して
跳ね返って聞こえる。

マリアはマリアで、また不思議そうな顔をしている。

「でもカイン。この間は、ものすごく強力な化け物が呼び出せたわ。
 あれならきっと竜王にも負けないと思うけど。」

「でも、その前は激しい彗星が無差別で攻撃してきたでしょ。
 やっぱり、リスクが大きすぎるよ。」

マリアとカインは何度かこの魔法を試したらしい。

「俺・・・時々、お前らが何を言ってるのか、さっぱり分からん時がある。」

ふと見ると、アレンが頭を抱えていた。
簡単に言うと、どうやらさまざまな効果がランダムで起きる魔法のようだ。

「俺としては、そのパル何とか魔法の効果で、
 たまたま竜王倒せても嬉しくねえなー。
 地力で行ってみたいんだが・・。」

その実力試しのために、せっかくこんな所まで来たのだ。

「そ、そうよね・・・。ごめんなさい。
 ちょっと試してみたくて。」

意外とマリアは、魔法に集中しすぎて
周りの状況を忘れてしまうことがあるらしい。

そんな様子は、マリアが魔法への執着が強いからこそ・・とも言えるだろう。

それ自体は悪い事ではないのだ。
アレンは苦笑気味に笑って首を振ると、
今度は2人に向いて指示を出した。

「マリア、イオナズンが十分通じると思う。
 イオナズンと、あとは俺たちのフォローを頼むぜ。」

「ええ。」

マリアがうなずいた。

「カイン、後は適当に竜王の気を散らす。
 俺が、でかいのを見舞ってやるぜ。」

「うん。あ、でもアレン。
 もう一回あいつのベギラゴンで試してみたいんだけど。」

「は?」

カインもうなずいたと思ったら、唐突な事を言い出した。
ベギラゴンにはさっき完敗してたじゃないか。

「一回だけ。ね、アレン。
 試してみたいことがあるんだ。」

何やら考えがあるらしい。
その考えを聞いて、アレンは驚いた。
相変わらず、こいつは変なことを考える。

でも、こうなるとカインは考えを変えないだろうし、
正直、その作戦は面白いと思った。

「よし、じゃあそれで行くぞ。」

「うん!マリア、よろしくね!」

「え。ええ・・・本当に?」

マリアも戸惑いつつも、それに従った。




「長い作戦会議は終わったのか?」

竜王は少し待ちくたびれたように、あくびをしながらそう言った。
何故か、ご丁寧に待っていてくれたようだ。

「待たせたなー。」

「待ちくたびれたわ。
 長い間待たせておいて、さらにまた待たせるとは、
 いかに辛抱強い我もこれ以上は待たぬ。
 一気に終わらせてもらおう!!」

そう言って、竜王は鋭い牙をむいて唸り、
唐突に駆け出した。

「安心しろよ。これ以上は待たせねえ。
 あと3発で終わりだ!!」

アレンがそう言うと、それを合図にマリアがいかづちの杖を構えた。

「イオナズンー!!!」

「うおおっ・・・!!」

イオナズンの衝撃が、竜王に直撃した。
激しい爆風を受け、竜王の足が止まる。
さらに竜王の眼前は爆風でアレンたちの居場所が掴めていない。

「もう一発・・・行くわよ・・・!」

マリアのその声に、
竜王はいきり立つように、反撃をしかけた。
眼前が見えずとも、この魔法ならば関係ない。

「こしゃくな・・・・!!!
 だが、この魔法の前には効果は無い・・・! 」

竜王はベギラゴンを再度唱えるつもりだろう。

「マリア、そこをどいて!
 行くよーー!!ベギラマ!!」

カインは再度両手からベギラマを唱えた。

「馬鹿な!!ベギラマでは何発加えても
 所詮ベギラゴンの前には届きはしない!!」

それはそうだろう。
さっきも実際にやってみて、実証済みである。

そうして、竜王はそう言ってベギラゴンを唱えた

「でも、足りないのは・・・あと少しだったよ!」

ベギラマが散らした、ベギラゴンの炎の中にカインは
なんとそのまま飛び込んでいった。

「・・・・!?」

何を無謀な事をするのかと思ったが、
ダメージを受けた風も無く、カインは隼の剣にその炎を纏わせた。

「やっぱり!!うまくいった!」

「な・・・・・に・・・・・!?」

竜王は眼前に現れたカインの姿に驚き、
そして納得した。

カインは、マリアから『水の羽衣』を借りて、それを羽織っていた。
水の羽衣は炎の効果に強い。
暑さ・寒さの環境の変化に強いのだ。

「いっけえーー!!」

そしてその隼の一撃が、竜王の左目を一閃した。

「ぐっ・・・・・ぬおおお!?」

竜王はその衝撃に、身を捩じらせて苦しんだ。

だが、自分の一撃ではこうやって目を引いて一撃を与えるので
精一杯だ。カインはそれが分かっていた。

「アレンーーー!!!」

「おお!」

アレンは、武器を変えていた。
稲妻の剣から、ドラゴンキラーへ。

「竜を倒すなら、こいつがおあつらえ向きだろ・・・!!」

何も怖いものなど無い。
超接近戦でしとめる!!

「こいつめーー!」

竜王は目に流れる血を払いながら、
太い腕と鋭い爪でアレンに攻撃をしかけた。

だが・・・

「ちょっとだけ、俺のほうが早いようだぜ!!」

竜王のその一撃を、ギリギリの所で潜り抜けると
アレンは地を蹴った。

そうして竜王の胸元へとドラゴンキラーを向けた。

「うおおおおお!!!」






****


「貴様ら、手を抜いておっただろ。」

「それは竜王、あんたもだろ。」

気がつけば、竜王は人間の姿に戻って
マリアの回復魔法を受けていた。

「もう大丈夫かしら?」

マリアの問いかけには答えず、
何やら文句を言ってきた。

「我の心臓の位置は人間と同じだ。
 何故ちゃんと一刺しにせん。甘いんだ、甘い。」

急所を一刺しにやられたと思ったが、
何故か生きているのを憤慨しているようだ。

「竜王の心臓の場所なんかしらねーよ。
 大体、あんただって俺らがしゃべってる間、
 丁寧に待ってたじゃねえか。」

アレンは、そう答えた。

「あんな所を一撃して勝ったとしても、
 嬉しくもなんとも無いわ!」

まだ憤慨しているらしい。
結構なフェア精神だ。
やっぱりこの竜王は悪い奴じゃないのだろう。

「大体、なんだ最後の武器は?」

「ドラゴンキラーだ。竜の皮膚でも切り裂けるのは
 ロンダルキアの洞窟で実証済みだぜ。」

アレンはもう一度ドラゴンキラーを取り出して笑った。

「違う!そんな事を言いたいのではない。
 先に使っていた武器のこともそうだ!
 我がお前らに渡したロトの剣はどうしたのだ!!」

「あ・・・・。」

アレンは思わず答えに詰まった。
そういえば、ロトの剣は竜王から託されたものだ。

竜王とロトの剣と言えば、浅からぬ因縁の関係であろう。
一度は勇者アレフによって、その剣で命を絶たれ、
そして何代に渡り、今度はその剣を受け継いでいたのだから。

「ロトの剣は折れちゃったんだよ。」

カインが横から、申し訳なさそうに口を挟んだ。
ロトの剣を折ったことは少なからず自分に責任があると思っている。

今となっては、以前の持ち主であった勇者ロトやアレフに謝罪することは出来ない。
だから、せめてずっとこの剣を守っていた竜王には謝っておいた方が良いだろう。

「ごめんなさい。だから、もう使っていないんだ。」

カインがそう言うと、竜王が怪訝そうな顔で
「見せてみろ」と言った。

アレンが道具袋からロトの剣を取り出して見せると、
紛れも無く、剣先が折れているその姿に少し驚いた顔をしていたが、
竜王はすぐにアレンにそれを返した。

「確かに・・・もうこれでは戦いには使えないかも知れぬが・・・。」

「だろう?俺も、残念なんだけどな。」

「だが、この剣に込められた魂は消えてはおらぬ。
 間もなく、お前たちハーゴンの所へ行くのだろう?
 ならば、持って行くことだな。」

「!」

思わぬ言葉だった。

「何の役にも立たないかもしれない。
 だが、最後の最後で、お前たちを守る最後の武器となるやもしれぬ。」

「どういう事だ?」

アレンは竜王に問いただした。

「どういう事か?そんな事、我が知るわけ無いだろう!
 お前らの先祖に聞け!!」

「は・・・はは・・。それが出来れば良いんだけどなー。」

「勇者アレフとの約束なのだ。
 この剣の行き先を見届けること。
 最後の最後まで、連れて行ってやってくれ。」

「・・・・・・・。」

アレンたちは、その言葉に顔を見合わせた。
この剣が、竜王の城にあった理由。
それはアレンたちは誰一人分からなかった。
だが、それは勇者アレフの意思だったのだろう。

「へへ。まぁ、俺は元からそのつもりだぜ。
 カインは船に置いていけって言ってたけどな。」

「だって・・・そんな・・・」

深い意味があるとか、カインはあんまり考えていなかった。

だけど、アレンは実際ロトの剣を手放そうとはしなかったし、
それは何か意味があったのかもしれない。
そして、それがさらに確信深いものに変わった。

「ま、良いや。
 とりあえずリベンジ戦!俺たちの勝ち!だな!」

アレンは立ち上がって、にやっと笑った。

「ふん。お前たちのやたら長い作戦会議を長々付き合ったりなど
 我も人が良すぎる。」

「はは、確かに。」

竜王の負け惜しみとも思える言葉であったが、
でも確かに一理あるだろう。

「ハーゴンはさらに得体の知れない奴だ。
 今回のようにぼやぼやしていたら全滅必至だろう。
 油断するなよ!!」

「ああ。」

「そして、また会おう。
 ロトの子孫よ・・・。」

少し寂しそうに言う竜王の姿に、アレンは手を差し伸ばした。

竜王はまたこれから何年も何百年もここで一人でいるのだろう。
本当はそれが辛いのかもしれない。
さっきもまるで死ぬことを望んでいたかのような口ぶりだった。

だから・・・。

「ああ、また会おうな。約束だ。」

アレンはそう約束した。




- 終 -

2013/08/14

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 2013年リクエスト祭りの小説です。竜王リベンジ戦!

 大体こんな感じの話が、長編軸上の「最後のほこら2」と「ハーゴンの神殿1」に入る予定が・・多少・・ありました。
 (実際には書いていませんでしたけど)

 今となっては、少し話のテンションがずれているし、
 書き手のテンションだけの問題じゃなくて、
 結構盛大なネタバレになるので(ロトの剣)、載せるに載せれない心情も理解してもらえます・・か?

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