「はろ・・・うぃん??」
アレンは、クレハから大量のお菓子を手渡された。
今日はハロウィンというお祭りの日だ。
「お菓子を食う祭りか?」
山ほどの菓子を渡されて、アレンは若干テンションがあがっていた。
お菓子食べ放題なんて、中々夢のある祭りではないか。
と、思ったが、クレハは首を振った。
「子供たちが化物やお化けに仮装をして参ります。
Trick or treat!と唱えましたら、そのお菓子を差し上げて下さい。」
「なんだって?トリ・・?トリー?
何の魔法だよ。」
「魔法では無いんですがー・・・。
うーん、でも魔法の合言葉のようなものです!」
さっぱり意味が分からない。
説明しているクレハも若干よく分かっていないようだ。
それもそのはず、
ローレシアでは今年初めてこのハロウィンとやらをやってみる事になった。
アレンが王となったことで、
節目のイベントと言うことで、さらに子供達の絶大の支持を得られるとか言われて
意味も分からず、やってみることにしたのだ。
どうやら、自分がお菓子を食べられる訳ではないと分かり、
若干残念だが、まぁ・・・・・良い。
「分かったよ。とりあえず、渡せばいいんだろ?」
「はい、アレン様。
では、子供達参りますので、よろしくお願いしますね〜。」
クレハのその言葉を合図に、
わあっと子供たちがなだれ込んできた。
なるほど、本当に子供たちは仮装をしている。
中には魔物の姿をしているものもいる。
手作りのスライムの被り物などをしている。
が、子供の仮装なので、本当に可愛らしいものだ。
「アレン様だああ!」
「トリックオア、トリィーート!!」
「あーー!俺が先だったのに〜〜!」
「ト・・トリック・・・なんだっけえ???」
「わあーーん、押さないでよ〜っ。
あ、飾りが取れちゃった〜〜。」
うむ。
想像以上に騒々しい。
誰が何を言っているのかさっぱり分からないが、
皆いっせいに口々に叫んでいる。
中には泣き出してる子までいる。
「おい、こら。慌てない、騒がない。
そこっ、人を押さないー!
ちゃんと、皆の分あるから、落ち着け〜〜!」
アレンは子供たちをなだめると、
一人ずつ、「それカッコいいなー!」とか
「強そうだなー」とか声を掛けながらお菓子を手渡していった。
泣いている子にも、頭を撫でてやり、
「せっかく強そうなのに、泣いてたら台無しだぞ」と励ましつつ、
お菓子を渡してやった。
そうすると泣き止んで笑顔になった。
「わああ、王様からお菓子もらった〜!
お母さんに自慢しよー」
「仲良く皆で食べろよ。」
「はーい!」
そうして、全て渡し終わる頃には、
子供達はどの子も顔を輝かせて喜んでいた。
「わ〜〜い、アレン様!ありがとうございます!!」
ちゃんとお辞儀をして、子供たちは去っていった。
「慌てて走ってまた転ぶなよー。」
わあわあ騒ぎながら去っていく子供たちに
アレンが後ろから、声を掛けた。
さて、これで一段落であろうか。
「アレン様、皆すごく喜んでいましたね。
とても、良かったです!」
「あんなんで良いのか?」
アレンはお菓子を手渡しだだけだ。
「子供たち皆アレン様の親しみ深さ、優しさに触れて
きっと今日の事は忘れませんよ。」
「・・・・お前、結構考えてるんだな。」
あえて、クレハは新王の好感度アップのためにも、こういうイベントを開いたのだ。
クレハは部屋を片付けながら、満足げに部屋を出て行った。
そういえば、サマルトリアや、ムーンブルクでも
今回初めてこのハロウィンのイベントをやるんだと言っていた。
どんな風になっただろうか。
今度また聞いてみよう・・・・と、思ったとき、
どこかから聞き覚えのある声が聞こえた。
「アレン〜〜。」
「ん?」
「trick or treat !」
子供たちより若干流暢な言葉遣いのその合言葉を唱えたのは・・・
アレンはきょろきょろと振り返ったが、
誰もいなかった。
気のせいか・・・?
「おーい。アレンー。」
気のせいかと思ったが、再び声が聞こえてきた。
この声はアレンが聞き間違えするはずも無い。カインの声だ。
「カイン・・・・?」
再度振り向いたが、やっぱり誰もいない。
なんだなんだ、何の嫌がらせだ?いねえじゃねえか。
「アレンー、下だよ〜。下!」
言われて素直に、真下を見下ろすと、
そこにカインがいた。
だが・・・・おかしい。おかしいのだ。
「お・・・!?お前・・・その姿・・・・!?」
「えへへ。ハロウィンだからね〜〜・・・。ちょっと仮装を・・。」
「仮装?仮装ってレベルじゃないだろ、お前なんだよそれ!!」
アレンは思わずしゃがみこむと、カインを指でつついた。
「わ、わっ・・・!やめてよー。」
カインはその場で走って、逃げ回っていた。
が、アレンが手を伸ばすとすぐに追いついたので、
思わず拾い上げてしまった。
「なんっだよ!?これ!!」
そう、カインは、手でつかめるほどの小さいサイズに縮んでいた。
アレンの手のひらの上に正座するカインは、
なんと言おうか少し考えてから口を開いた。
「うん、実は仮装とかじゃなくて。」
「だろうな!お前、何やらかしたんだよ!?」
「いや・・・僕にも実は、何が何だかさっぱりで・・・。
ここって、アレンがいるってことはローレシア?」
「ああ、ここはローレシアだ。
お前こんな体でローレシアまで一人で来たのか?」
そう聞くと、カインは盛大に首を傾けた。
「いやあ・・・。
ローレシアまで来たつもりもないし、
何故こんな事になったのかも分からないんだけど・・・。」
「俺は、お前が何を言っているのかが分からないんだが・・。」
「うん、僕もさっぱり分からない。」
おいおいおい、大丈夫かこいつ?
カインは何故自分が小さくなってるのかも、
ローレシアに来ているのかも分からないらしい。
「あのね、今日ってハロウィンでしょう?」
「ああ、そうだ。」
「だからね、ムーンブルクで、
マリアと一緒にハロウィンの準備をしようって言ってて
僕もいっぱいお菓子を作って、
マリアは、いっぱい装飾品を作ってたんだよ。
なんか魔法も使って。」
「ほう。」
なるほど、こいつらは2人セットでハロウィンの準備をしていたらしい。
「そしたら、この有様なんだ。」
「?」
ちょっと、待て。
今の説明の一体どこに、
カインが小さくなってローレシアにやってきている説明があっただろうか?
「説明になっていないんだが。」
「あれ?分からない?
だから、マリアが何か魔法を使ったんだよ。
そしたら、こうなったんだって。」
「あーーー・・・。そう言うことか。」
そう言うことか、と納得するにはひどい説明だが、
まぁ長旅を一緒にしただけあり、マリアの魔法がたまに
人知を超えた能力を発揮するのは・・・知っている。
「パルプンテってやつか?」
時にこだまが鳴り響いたり、時に世にも恐ろしい魔物を呼び出したり
さっぱりアレンには理解できない魔法がマリアには使えるのだ。
「パルプンテじゃないと思うんだけど・・・
最近のマリアの魔法は、何だか僕もよく分からない事が起きるんだよね。」
「それって良いのか?」
「とりあえず、僕は小さくなって困っているよ。」
「・・・・・だろな。」
冷静に話をすると何だか笑いがこみ上げてきた。
本当にこいつらは、2人で放っておくとあまりろくな事がない気がする。
「それにね、今日はハロウィンじゃないか。
だから、サマルトリアにも行くよって約束してるんだ。」
「行けば良いじゃねえか。」
「うん、行きたいんだ。
キメラの翼はローレシアで売ってたっけ?
って・・・あ、お金も小さい!!
アレン、これ使える!?」
カインが取り出したお金は、もちろんミニマムサイズだ。
使える訳が無い。
「いや、つかえねーし。
つーか、ローレシアはキメラの翼売ってないんだよ。」
そう言ってカインはショックを受けたような顔をしている。
「この体じゃあ、ローレシア城から出るだけで1日掛かっちゃうよーー!」
ルーラが使えないと何かと不便だ。
と言うか・・・こんな事で、こいつらは生きていけるのだろうか・・・。
仲間としてアレンは真剣に案じずにはいられなかった。
「しょうがねえなあー。
じゃあ俺がサマルトリアへ連れて行ってやるよ。」
「本当!?アレン、ありがとうーー!!!」
カインはそう言ってアレンの指にしがみついた。
おそらく『抱きついた』的なイメージなんだろう。
まるで小動物のようだ。
「お前なあ・・。食べてやろうか?」
「ええっ・・・!?やだやだ!!」
手を離して、カインはアレンの手のひらから
ぴょんっと飛び降りた。
「はは。冗談だよー。
とりあえず、じゃあちょっと出かけるってクレハに話してこないとな。
お前も付いて来いよ」
「わ、分かったよー。」
多分クレハは菓子類を片付けに行ったのだろう。
厨房のほうだろうか?
まぁ、その辺にいるだろう。
とりあえず部屋から出た。
廊下を歩いていると、カインが後ろから走って付いてきていた。
「・・・・・・。」
わざと大またで歩いて、一足先に角を曲がってみると、
慌てたように全速力で走ってきた。
「ま・・・待ー って・・・・待ってよ、アレンー!!」
こんな状態では城内で迷子になるかもしれないと
カインは大慌てで、それを見てアレンはぷぷっと笑った。
「アレン様、何を笑っていらっしゃるのです?」
「あ、クレハ。」
角を曲がった所でちょうど探していたクレハがいたらしい。
「いやあ、ちっこくなったカインが面白くってさー。」
「? 何をおっしゃっているのですか?」
そういいながら、アレンを倣って廊下を見下ろしてみて
クレハは目を見張った。
「カ、カイン様・・?!」
ようやく追いついたカインは、
再度アレンにひょいっと拾い上げられた。
「アレンー、ひどいじゃないか〜〜。
置いて行くなんてーー!」
ぜいぜいと息を切らしながらカインは文句を言っていた。
「俺は普通に歩いてただけなんだけどなあ。」
そう言うと、アレンはクレハにカインを見せた。
「カ、カイン様・・・!?また一体どうなさったんですか!?」
「あ。どうもこんにちは。
いつも、お騒がせしてスイマセン。
本当にどうなってるんだか、僕にもさっぱりです。」
そういいながらカインは深々と頭を下げたカイン。
「だ、大丈夫ですよ。とても可愛らしいですし。」
何が大丈夫なのだか分からないが、
クレハはさっぱりフォローにならないフォローを言ってみた。
「まぁ、クレハそう言う訳だから、
俺ちょっとサマルトリアとムーンブルクへ行ってくるわ。」
「わ、分かりました。そう言う訳なら・・・仕方ありません。」
こんなにもさっぱり事情が分からないのに、
若干こういう事態にも慣れて来たのか、皆頼りになるなあとカインは感謝した。
「カイン、お前は俺の胸ポケットにでも入ってろ。」
「えっ。」
スムーズな移動をするためのアレンのアイディアだった。
「勝手に動いて出てきたら、カリッと揚げて食べるからな。」
「やーーだーーーー!!」
盛大に首を振っているカインを連れて、
アレンはローレシアを出立した。
***
途中の一泊をリリザの宿へ行くかというアレンの提案は
少しでも最短で向かいたいと言うカインの希望で却下された。
「じゃ・・・野宿な。」
久々の野宿である。
魔物が襲ってくるわけでもないので、以前よりも気楽なものだ。
まぁ危険が0ではないのだが、所詮ローレシア近辺の魔物など
スライム程度だ。
ごろんと仰向けに転がると、
カインが胸ポケットから出てきた。
「おい、勝手に出てくるなって言っただろ。」
「わ、アレン。ごめん、ちょっとだけ。
アレンは寝てて良いよ。」
ぼーっと何をするのかと思って、寝転んでみていると
どうやらハロウィン用のお菓子を作るらしい。
相変わらず器用なやつである。
出来上がったら、一つくらいつまみ食いさせてもらおう・・と思いつつ
アレンは眠りについた。
翌朝、
アレンが目を覚ますと、カインはまだお菓子を作っていた。
「あ、アレンおはよ〜〜!」
「お前まだ起きてたのかよ。」
あくびしながら、目をこするとカインの前に山盛りのお菓子の山が出来ていた。
「うん、アレン。一つ食べてみない?」
「おー。」
渡されたのは小さな変な顔が書かれていたクッキーだった。
味は悪くない。美味い。
が・・・・。
「ちっちゃくねえか?」
そう、小さいのだ。悪いが、これではアレンの腹の足しにはならない。
「・・・・じゃあ、これはどう!?
大きいの作ったよ!?」
そう言って取り出したのは
カインが両手でようやく持ち上げられるサイズのクッキーだ。
といっても、それでもアレンの片手に乗る大きさだ。
「いや・・・小さいだろ・・・。」
アレンにそう言われて、カインはガーンとショックを受けていた。
「だ、だよねえ・・・。昨夜から一晩頑張って作ったんだけど、
作っても作っても小さいからこれじゃあ足りないよねえ・・。
せめてと思って数は沢山作ったんだ。」
なるほど、カインの体のサイズから言うと大量なのだろうが、
朝の空腹に飢えるアレンからすると、
一瞬で無くなりそうだった。
「あ、アレン・・・食べないでね!
これサマルトリアとムーンブルクの子供たちにあげるんだから!」
「・・・・たべねーよ・・。」
これくらい食べてしまうのは訳無い事だが、
さすがのアレンもローレシアでハロウィンをやっただけあり、
子供たちの笑顔を思い浮かべると、食べる気にはならなかった。
「じゃあ、とりあえず早くサマルトリア行くぞ。」
「う、うんっ。」
再びアレンの胸ポケットに乗り込んだカインを連れて、
足早にアレンはサマルトリアへと向かった。
***
サマルトリアでは、来るはずのカインが来ないと言う事で
マイが一人でハロウィンの応対をしていたらしい。
「もおおおお!!お兄様ってば、
ムーンブルクに行ったきり戻らないんだから!
確か今日って言ってたと思うんだけどなあ!」
マイ自身も可愛らしい仮装をしていた。
おそらく魔女の姿だろう。
「おい、怒ってるぞ。
どうする?」
アレンとカインは少し離れた所からその様子を見守っていた。
「でも、この姿で会いに行っても・・・。」
「菓子だけ置いていくか?」
「うん。そうだね。
半分置いていこう。」
カインがそう言うので、アレンは喧騒に紛れて、
マイの傍のお菓子の山のそばに、
カインの作ったお菓子を置いてやった。
「って、ちっちぇええ〜〜。良いのか、こんなんで。」
「うん。僕も改めてこう見比べると
改めてそう思うよ・・・・。」
子供たちの賑やかな声でマイの耳には届かないだろうと思ったが、
アレンとカインがそんな話をしていると、
不審に思ったらしくマイが振り返った。
「誰・・・!?
・・・・って、アレン様・・・・!?」
アレンは思わず、背中を向けたまま固まってしまった。
カインにどうするんだと視線を向けても、
カインはぶんぶん首を振った。
この小さい体で会う気はないらしい。
俺に無茶振りするなよーーーと思いつつ、
アレンは冷静を気取って背中を見せたまま答えた。
「あーー・・・・。カインがちょっと今来られないんでな。
その菓子は、あいつの手作りだ。
良かったら皆に分けてやってくれ。」
「お・・・お兄様から・・・ですか!?
って、何でこんな小さいんですか・・・!?
お豆みたい・・・!」
「・・・・・・・・。」
なんと答えるべきかと思っていると
マイは一人納得したように頷いた。
「分かった。お兄様の事だから
材料分量足りなかったんですねー。
でもこれ、小さいクッキーに一つずつ顔が描かれてて可愛いーー!」
「そ・・・そうだな・・・。」
勝手に納得してくれて、良かった。
子供たちもその小さいお菓子を覗き込んで、
豆サイズの菓子を喜んで受け取っていた。
***
「良かった〜良かった〜。
アレン、見た?皆喜んでくれたよー。」
サマルトリアの道具屋でキメラの翼を買うアレンに
城を出てようやくカインは嬉しそうに口を開いた。
「見たけど・・・。
ってか、お前このキメラの翼の代金は
あとでサマルトリアに請求するからな!」
「あ・・・はい。スイマセン、何から何まで。」
ためしにカインの持っていたお金を
道具屋の店主に見せてみたが、何の冗談か?と笑って断られてしまったのだ。
しょぼんとなったカインを尻目に、
アレンはキメラの翼を使った。
目的地はムーンブルクだ。
「ア、アレン様・・・・!?
ようこそムーンブルクへ!」
城門に立っていたのはクナだった。
見知った顔だったので、カインはまたアレンの胸ポケットの奥のほうに
身を隠す事にした。
「おお。突然悪いな。
マリアはいるか?」
「マ、マリア様・・・ですか・・・?
実は、マリア様は大変な事に・・・。」
「・・・な・・に・・!?」
それを聞いてアレンも、隠れているカインも思わず
眉を顰めた。
カインがこんな事になっているのだ。
マリアも何らかの現象に襲われている可能性は高い。
「マリアは・・いるには、いるんだな?ここに・・・。」
「え。ええ・・・ですが・・・。」
困惑気味のクナを振り切るように
アレンは城内へと入って行った。
大丈夫だ、もしマリアがどんな姿に変化してたとしても
カインのこの姿を見てるんだから、もはや驚きはしねえ・・。
そう思いつつ、アレンがその場所へ向かうと
そこにはマリアがいた。
「なんだ、いるじゃん。」
マリアは別に、小さくなることも無く、
変な化物に変身することもなく、いつもの姿だった。
が、何やらおろおろとして、
ハロウィンの飾り物のかぼちゃに話しかけていた。
「マリア・・・何やってんだ?お前?」
「え!?あ、アレン!??」
思わず怪しんでアレンは挨拶も忘れて声を掛けてしまった。
マリアは突然のアレンの登場に驚いていたが、
懐かしい旧友に泣きそうな顔で飛びついてきた。
「アレン!!アレン聞いて!大変なの!!!」
「な、何がだ・・・・?マリア、落ち着けよどうしたんだ?」
アレンはマリアを落ち着かせるように、なだめた。
「これが落ち着いていられないわ!!
カインが・・・・カインが・・・・かぼちゃになってしまったの!!」
「・・・・か・・・・かぼちゃ?」
マリアが大事そうに抱える大きなかぼちゃは
ハロウィンの飾り物で見かけたことがある。
「落ち着けよ、なんで・・・・かぼちゃ・・・?」
またマリアは何を言ってるんだろうか・・・?
「ごめんなさい・・・。
私、カインがお菓子を作ってるのを見て、
魔法で沢山増やせたら良いなって思ったの・・・。」
「お、おお・・・。そうしたらどうなったんだ?」
「そ、そうしたら・・・かぼちゃにーーー!!!」
そう言ってマリアは崩れ落ちた。
いや、待て待て、「そうしたら、かぼちゃにーー」ってどういう説明だよ。
「アレン様、そう言う訳なのです。
ですから、マリア様は昨夜から一晩中魔法を解こうと苦心していたのですが、
いくら魔法を唱えても、かぼちゃが増えるばかりで・・。」
見ると確かに部屋の中、かぼちゃの化物だらけだった。
どうやら、これはハロウィンの飾りつけと言うわけじゃなくて、
マリアの魔法で増殖したらしい。
中々の地獄絵図であった。
「マリア、すごい!って事は、増殖の魔法が完成したって事だね!?」
「え・・・?この・・・声・・・?」
マリアは左右を見渡した。
カインの声がするのだが、姿は見えない。
「こ・・・今度は透明人間の魔法・・・・?」
半泣きのマリアに呆れたようにアレンが笑った。
「マリア〜〜お前は確かに天才だけど、
お前の魔法はかーなり危険だな。」
「え・・・・。」
そう言って、胸ポケットに手をやると
その手に、よじよじとカインがよじ登ってきた。
「カイン!?」
小さな姿のカインにマリアは目を見張った。
そしてアレンの手のひらから、マリアの手に移った。
「よ・・・かった・・・!!無事だったのね!カイン!!」
「いや・・・あの・・無事って言うのかな?これって・・・。」
苦笑気味に笑うカインに、マリアは安堵の涙を零した。
「カイン、どうして小さくなってるの?」
「僕もそれを聞きたいよー。
増殖の魔法を使おうとして失敗したのかなって思うんだけど。」
「ああ!そういう・・・事・・・・?
それにどうしてアレンがここに?」
「何故だかローレシアに行ってたんだよ。
マリア、なんでだか分かる・・・?」
カインが尋ねると、マリアは疲れた顔でうーんと唸った。
「おそらく・・・お菓子が出来たら、
急いでサマルトリアへ行かないとって
思っていたから、多分そのせいよ。」
「で、なんでサマルトリアじゃなくて、ローレシアなんだよ。」
「マリアはルーラが苦手だからねえ。ちょっとした誤差ってことじゃない。」
ちょっとした誤差で済むのか?とアレンは少し頭を抱えた。
マリアほどの魔法の天才になると、ちょっとした誤差が大きな誤差になるのだろうか。
「僕、元に戻れるかなあ。
小さいと歩くのが遅くって不便なんだ。」
いやいや、小さいと歩くのが遅いって・・お前そういうレベルじゃないだろうと
アレンは再び頭を抱えた。
「大丈夫よ、私の魔法で起きたことだもの。
きっと元に戻して見せるわ。」
「ありがとうー。あ、マリア、今度は増殖の魔法じゃないからね。
小さい僕を増やさないでね!」
「小さいカインを増やす・・・・。」
疲労の極地らしいマリアは、疲れた顔でぼんやりとそんな事を口走った。
あ、こいつ満更でもないな・・・?と思ったアレンは
三度頭を抱えた。
「おい、お前らの会話を聞いてると
俺は心底心配になるんだが。
大丈夫か?マリア。カインを元の大きさに戻すんだぞ。
お前がやるのはそれだけだからな。」
「わ、分かってるわよ。」
そう言うとマリアはすっと杖を差し出して、
カインに向けた。
何やら魔法を唱えると無事にカインは
元の大きさに戻る事が出来た。
「良かっ・・・た・・・」
その姿を目視すると、マリアは力尽きたように
がくっとカインにもたれかかった。
「わっ、マリア・・・!大丈夫!?」
「カイン・・・・ごめんね・・・。」
「ううん。僕なら何とも無いよ。
マリア、疲れたんでしょう。安心してしばらく休んでね。」
カインの言葉に安堵したように
マリアは目を瞑った。すーっと寝息が聞こえる。
おそらく昨夜から一睡もしてないのだろう。
そう言えば、カインもお菓子作りで眠っていなかった。
しばらく2人で眠ろうかな等と思ったとき、
足元から、金切り声が聞こえてきた。
「おーーーまーーーえーーらーー!!!
2人の世界作ってんじゃねえよ!
これ、どうしてくれんだよ!?」
その悲痛な声に目を向けると、
カインは目を丸くした。
「アレン、何で今度はアレンが小さくなってるのー?」
「俺が知るかーーーー!!!!」
今度はアレンが手のひらサイズになっていた。
どうやら、疲れ果てていたマリアの魔法はまた少し失敗してしまったらしい。
「マリア、おい起きろよーーー!」
眠ったマリアをぺちぺち叩いてみるが
小さなアレンの力では全然起こすことも出来なかった。
「アレン、無理にマリアを起こしても、
また魔法失敗しちゃうよ。」
「じゃあ、俺はマリアが起きるまで、このままか!?」
「しばらく良いじゃない。そのままでも可愛いよ。」
「ふざっけんなーー!!!」
カインはどこまでものんきそうだった。
が、何やら思いついたようで手を打った。
「あ!良い事思いついたよ。」
「なんだ!?お前が俺を元に戻してくれるのか!?」
「いや、僕はそんな事できないけど、
僕の作ったお豆サイズのお菓子、今ならアレンちょうど良いんじゃない?」
「・・・・・・・・うがーーー!!」
ふてくされたアレンはマリアが起きるまで、
そのお菓子を食べ続けていたと言う・・・・。
- 終 -
2013/10/19
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