久しぶりに船に揺られて、俺は懐かしい国へとやってきた。
「アレン様ようこそ!」
そんな風に迎え入れてもらうのも何回めだろうか。
今回は前回のようにカインとマリアと三人だけで来た訳ではない。
後ろにはローレシアの人間を何人も引き連れている。
気安い立場ではないのだ。
だが、懐かしさに俺は笑顔で答えた。
「ああ、世話になるぜ。」
そう言って、
俺達ローレシアの一行はラダトーム城へと入って行った。
ラダトーム城の気候は穏やかで温暖であった。
アレフガルドという土地柄なのかもしれないが、
季節も寒かった冬を越えて、少し暖かくなってきたのかもしれない。
そんな事をぼんやり思う。
ラダトーム城下を窓から見下ろすと
バタバタと慌しそうに人々が走り回っている。
そんな様子を見るのも何回目だろうか。
間もなく6年ぶりのロト祭が開かれる。
新年を迎えて最初の記念行事だ。
今年は今までと比べても一等盛り上げたいと
ラダトーム王が言っていた。
王は俺の顔をみるなり、
王らしからぬ様子で深々頭を下げた。
ラダトームは先の戦いで、ロトの流れを組む国なのに、
自らのした行動と、そして逆に俺達が成し得た事に
大きなギャップを感じたらしい。
まぁ・・・王は逃げてたくらいだしな。
やった事といえば武器の大判振る舞いくらい?
と言っても、さほど強力な武器と言うわけでもなく、
あの時もらった武器はなんだっけ?と
思い返すのも難しい。
ラダトーム王と別れてから、
俺は深くソファに座って、
ぼんやりと外を見ながら考えた。
ああ、そう言えばもらった武器は鉄のやりだ、と思い出す。
槍という武器を使うのは初めてだからと、
カインが最初のうちは苦戦していた。
そう言えば今日は久々にカインにも会えるわけだ。
あの野郎、最初のうちはちょくちょくローレシアにも
来てやがったくせに、最近は呼ばないと来ない。
呼ばなくても来いってんだ。
あ、でもこの間、せっかく来てた所を
忙しいからと会わずに、帰したこともあった・・確か。
あいつの事だから、
そんなもん気にせず翌日また来るだろうと思ったら・・・
来ないわけだ。
結局それっきりじゃなかったか?
ったく、薄情じゃないか?それって。
いや、薄情なのは俺か。
普通に来ると思ったので謝罪もしてない。
まぁ良いか、今日会えたら謝れば。
いや、そろそろ既に来ているだろう。
城下の準備も騒がしいが、
城内も俄かに賑やかになったようだ。
どうやらどこかの国の一団が到着したようだ。
俺は席を立った。
様子を見に行こう。
「アレン様どちらへ?」
傍に控えていたクレハが遠慮がちに聞いてきた。
こいつは、ロト祭に来るのは初めてだったか。
妙に緊張しているらしい。
「どっかの国が到着したっぽいぜ。
サマルトリアかムーンブルクだろ。」
「ああ、そうでしたか。」
「ちょっと俺様子見てくる、暇だし。」
懐かしい面々に会えるのは嬉しい。
「アレン様、お一人で行かれるのですか?
何仰ってるのですか、駄目ですよ。」
軽いお忍び気分でふらふらいく俺を
立場をわきまえろと、たしなめる様子でクレハが咎めた。
こいつは妙に遠慮がちだなと思うところがあれば
妙に無遠慮な所もある。
こんな風に俺に口を利くのは今はローレシアでは
こいつと父上くらいなもんだ。
「アレン様今のお立場を考えてください。」
「俺がカインやマリアに会いに行くのに
何の遠慮や作法がいるんだよ。」
「アレン様・・・。」
「止めても無駄だぞ。この窓から飛び降りたって
探しに行ってやる。」
俺は窓の縁に手をかけて悪戯そうに笑った。
クレハは諦めたようにため息をついている。
実際これくらい俺がやりかねない事を知っているからだ。
「分かりました。お気をつけてくださいね。」
白旗をあげたクレハに礼を言って
俺は来賓用に用意された部屋を出た。
城が賑やかになってきているのは本当だった。
バタバタとラダトーム兵やら、どっかの兵やらが走り回っている。
別に魔物が出たわけでもないのに、
何が嬉しくてそんなに走り回っているのやら。
まあ、この平和が嬉しくて走り回っているのだろう。
どうやら、今回のロト祭は、料理なんかも気合が入っていて、
俺達だけではなく、他の城下の民にも行き渡るほどの量だそうだ。
俺の腕も・・いや、腹もなるってもんだ。
俺は兵を捕まえて聞いてみた。
どうやらサマルトリアもムーンブルクも一行は到着しているらしい。
それにしても三人揃うのは本当にかなり久しぶりの事だ。
カインだけが会いに来るというケースは何度かあったし、
俺もムーンブルクの復興の見舞いに行ってマリアに会うこともあった。
が、三人揃うのは・・・いつぶりだ?
ムーンブルク城の浄化に行った時以来じゃないか?
自然と口元がにやけてくる気がする。
嬉しいのだ。
そんな緩い口元でふらふらとどこともなく歩いていると
背後から、わっと声を掛けられた。
「アレン様!」
振り返ると、そこにいたのはカインによく似た−
その妹のマイだった。
「あ、ああ・・・久しぶりだ。」
緩んでいた口元を隠すように、手の甲で拭って
俺は少し硬い表情を作った。
だが、相手はふふっと笑ったまま頭を下げた。
「ご無沙汰しております。アレン様にもお会いできて嬉しいです!」
そんなふわふわした笑顔は兄のカインとよく似ている。
「姫は、カインによく似てきたな・・。」
思わず、考えたことが素直に口をついて出た。
マイは少し心外だと言う風な顔をしたが、
それでも満更でもないらしい。少し誇らしげな表情だ。
「アレン様パーティーにはまだ少し早いですよ?」
笑いながらマイはこっそりそう言った。
「いや、分かってる。その前にカインたちの顔だけでも
見ておきたくって。カインは一緒にいるか?」
「え?お兄様は、一緒にはいませんよ。」
なんでそれを知らないんだろう?と言うような顔でマイが答えた。
なんだ。サマルトリアにいないのであれば
多分あいつの事だからムーンブルクのマリアに会いに行ってるんだろう。
俺はマイに別れを告げると、
ムーンブルクの一行が使っている別棟へと向かってみた。
ムーンブルクの一行は、人数こそは前回のロト祭から減ってしまっている。
だが、それでも復興の動きが本格化し始めたこの忙しい時期に
国を代表して、マリアを中心にはるばるこのラダトームへやってきたようだ。
ところでだ、普通に考えて・・。
今や一国の女王ともなったマリアの元をいきなり俺一人で訪れるのは
やや・・と言うか、少しと言うか、マナーに欠けるだろうか。
が、ムーンブルク兵は俺の顔を見ると
快くマリアに取り次いでくれた。
「アレン?よく訪ねてくれたわね。」
マリアは長いドレスを軽く払うと、立ち上がって
俺を歓迎してくれた。
元々彼女は毅然とした強さを秘めた女性であったが、
ここ最近の凛とした姿は
人の上に立つものとしての、オーラを感じる。
「?どうしたの?」
が、当のマリアはそうも感じていないようだ。
旅の最中に仲間達に見せていたような
気心のしれた笑みでアレンの様子を伺っているようだ。
「お前、最近なんかすごい迫力と言うか
凄みが増してきたな。」
「いやね、開口一番何を言うの?
それが女性に言う言葉?」
「あ?あ、そうだな、わりい。」
ははっと笑った。
確かに開口一番「迫力が増したな・・」などとしみじみ言われるのは
女性としてどうだろうか。
「あなたも同じよ。
一国を背負うものの意識と気高さが身についたんじゃない?」
「へっ、よくわかんねえ。」
俺は面倒くさそうに手を振った。
そんなもの、大体今は関係ない。
今は昔のような間柄に戻って語りたいのだ。
しかし、それには約一名足りない。
「マリア先客とかなかったか?」
「ないわよ。」
あれ?カインは自分などよりも我先にマリアの所に
来るんだと思った。だが、来ていないようだ。
「カイン、来ていないのか?」
「え?ええ。来てないわ。
私もてっきりあなたのところに会いに行ってるもんだと思ったわ。
会ってないの?」
「会ってない。」
俺とマリアは微妙な空気になった。
だって、サマルトリアのところにもいなかったぞ?
迷子か、あいつは迷子か。
今何歳なんだ。
俺と同い年だから、もうすぐ19歳だと言うのに
迷子ですか。
「いや、迷子って・・そう言うわけじゃないでしょ?きっと。
サマルトリアのところにいるんじゃない?」
「いなかった、いなかった。
今頃道に迷って泣いてんじゃね?
見つけたら指差して笑ってやろ。」
「ちょっと、アレン・・・。
あなた仮にもローレシアの代表なんだから
馬鹿な真似しないでよ。」
マリアが俺をたしなめた。
まぁ、指差して笑うなんてのは冗談だが、
なんだか相変わらずだな奴じゃないか、全く。
しばらく他愛ない話を二人でしていると
ドアを遠慮がちにコンコンとノックする音が聞こえた。
「そろそろお集まり頂けますか?
歓迎のパーティーの用意が整ったようです。」
「ええ、行くわ。」
どうやら宴が始まるらしい。
俺はとりあえずマリアと案内された広い会場へと向かった。
そこへ足を踏み入れると
ワッと会場の空気が湧いた。
そりゃあこの二人がやってきたら、
場内の空気も一変するだろう。
「お待ちしておりました、アレン様、そしてマリア様!」
ラダトーム王はどうやら本気で今回は
接待役らしい。低姿勢でアレン達を招いた。
各国の主要な来賓が既に集まっている。
俺は取り急ぎローレシアの面々がいるところに戻った。
「おお、アレン。
マリア殿と二人で登場するなどとは中々演出家だな。」
「バーカ。そんなんじゃね、たまたま一緒だったんだよ。」
父にちゃかされるのを適当にかわして置く。
そしてパッと会場を見てみると
本当に色取り取りの料理が並んでいる。
どうやらラダトーム料理だけではなく、集まった国々の
お国柄の料理も並んでいるようだ。
高級な食材もふんだんに使われている。
聞いてみると、これらの豪華な料理は城下にも振舞われると言うし
本当に今回のロト祭は気合が入っているらしい。
「ーー それでは、各国を代表しましてアレン様より
一言頂戴したいと思います!」
じーっと料理に魅入っていると、
急に、俺がなにやら名指しで指名されていた。
「何?え。何て・・?俺?」
「ほら、アレンお前呼ばれてるじゃないか。
勇んで前に出ろ。」
父に肩をつつかれた。が、ちょっと待て待て。
「え!?本気で俺?
なんでだ、ローレシアなら父上がいるじゃないか。」
ロト祭で父を差し置いて前に出たことなどない。
「馬鹿者。良いから前に出んか。
皆様を待たせるもんじゃない。」
父がぐいぐいと俺の背中を押してくる。
どうやら俺が前に出ないと
この料理は食べられないらしい。
ええい、ままよ!と俺は前に足を踏み出した。
すると、わあっと歓声が上がる。
そして次の瞬間俺が何を言い出すのか期待するように
広い会場が静寂に包まれた。
そして、ものすごい数の視線を感じる。
なんか針のむしろな気分だ。
いや、俺なんかそんな注目してくれなくて良いんだが。
それより皆料理を注目しようぜ、美味そうだぜ。
往生際悪くそんな事を考えていた俺に罰があたったのか
ぐ〜〜と腹がなった。
未だ空気を読んで静寂につつまれた会場の視線が辛い・・。
いっそ笑うなら笑えば良いじゃないか。
「え〜と・・ローレシアのアレンだ。
遠い所から集まった人も沢山いると思う。
俺もはるばるローレシアからやってきたが、
海は平和になっていて航海はきわめて順調だった。」
あー、やばい何を言っているのか分からん。
お前らそんなに俺を見るな、俺を見てても美味い料理は出てこんぞ。
「今回こんなに盛大なロト祭が開かれることになって
ラダトーム王家をはじめ、各国からのー
えー尽力があってのことだと思う。本当に感謝している。」
なんか、それらしい事を言ってみようとするが、
何を言えば良いのかさっぱり考えてなかった。
ええい、もうしゃらくさい。
「皆静かに聴いてくれてるところ悪いが、俺は難しい話は苦手だ。
俺が言いたいのは、また6年後、出来れば一人も欠けることなく、
またこうやって集まろう!ってことだ!
そんで皆で、こうやってまた集まって・・・
えー、、また美味い飯を食おうぜ!」
わあっ!と人々が沸いた。
あ、なんか喜んでいる。
これで良かったのかなと胸を撫で下ろして俺はもとの場所へ帰る。
「アレン、なんだ今のは!
腹はなるわ、飯を食おうだの。お前はそれしか考えておらんのか!
お前はどこの食いしん坊万歳じゃ!恥ずかしい!!」
父上が俺の頭を叩いた。
だが、クレハはとても良かったと言ってくれた。
「いや、私はとても良いスピーチだったと思いますよ!
見てください、観衆も大喜びです。」
なにやら、先ほどのスピーチを褒めてくれている。
・・・・必死に笑いをこらえながら。
それも大概失敬だと思うのだが。
いや、もう良い。フォローも言い訳もしない。
俺は腹が減ったのだ。
もう、料理を食いにいこう。
どうやら待っていれば、テーブルに料理を並べてくれるらしい。
が、待つのも嫌だ。
俺は自分で皿を持ってぶらぶらと並んでいる料理を見て回った。
「やっぱり、野菜より、肉だろう肉。
どこだよ肉。」
広い会場に人がごった返していて、どこに何があるのか分からない。
適当にうろついている所に、誰かが声をかけてきた。
「アレン、良いスピーチだったわね。」
ん?と思ってみてみるマリアだった。
「ぎゃー、何も言うな〜。聞きたくない〜。」
俺は耳を塞いで聞かない振りをした。
「アレンらしくて良かったと思うんだけど。
それよりアレン、お肉はこっちじゃなくて反対らしいわよ。
ローストビーフなんかあるらしいわ。マイさんがお勧めだって。」
「あ、そうなん?サンキュー。」
俺はマリアに教えてもらったとおりに反対側へ向かった。
おお・・・美味そうだ。
シェフの心づくしの料理が並んでいる。
「それ、よそってくれ。」
俺は皿を差し出した。
一人前じゃ足りないだろう、三皿分くらいもらおうか?
・・・・などとぼんやり考えていると、目の前のコックが尋ねてきた。
「アレンは三皿くらいかな?」
「ああ、そうだな!そうしてくれ。」
気の効くコックがいたもんだ。
と思ったが、うん?ちょっと待て。
「アレン〜さっきのスピーチ最高だったよ。
君らしくって。」
コックがローストビーフをすうっと薄く切りながら
くすくす笑いながら言った。
「ん・・・・?」
もちろん、やけに馴れ馴れしいコックが一人と言うわけではなく・・
「はい。どうぞ!」
満面の笑みでアレンに皿を差し出してきた。
その声は、さっきから探しているあいつに間違いなかった。
「カイン・・?」
「あれ、足りない?もう一皿いる?」
ふいに顔をあげるとその表情は
見慣れたカインの首を傾げた姿だった。
「いや・・そうじゃなくって、そうじゃなっくってーー!
カイン!!お前、こんなとこで何してんだ!?」
俺は思わず目の前のコック、もといカインを指差した。
白い調理服に身を包んでいるので、
一瞬誰だか分からなかったのだ。
「何って、料理のお手伝い。」
「しらねえーよ!お前何してんだよ。
マリアも探してたぞ!?」
「あれ?そうなの?マイには言っておいたんだけど。
今回いーっぱい料理作るそうだから、
僕手伝いを勝手出たんだ。」
なるほど、これだけ並んだ料理の数々は
あいつの手がけたものか・・・。
迷子じゃなかったのか。
「あ、ごめんね。
あとで落ち着いてから、ゆっくり3人で話そうよ。」
「あ、ああ・・。」
ふと見ると後ろが長蛇の列になっていた。
やばいやばい。肉を求める視線は何より怖いものだ。
「じゃっ!!あとでな!」
「うん。」
とりあえず俺はその場を離れた。
途中でまたマリアに会ったから、
カインを見つけたと言っておいた。
マリアもあいつが料理をしていたと聞いて驚いていた。
じゃあ、お前も肉に並べば良いじゃん?と言ってみたが、
一国の女王が肉に並んでカインに会いに行くと言うシチュエーションが
ちょっと微妙だったらしい。
「後にするわ。」
とマリアは戻っていった。
俺は取れる限りの料理を取って、
腹いっぱい平らげた。
どれも心づくしの料理はうまかった。
でもやっぱり一番うまいのはさっきのローストビーフだ。
・・・カインが言うとおり、もう一皿もらえば良かった。
だが、ちらっとさっきの場所を見てみたが、既に撤収していた。
どうやら売り切れのようだ。
俺は少し舌打ちをしながら、
仕方なく違う料理を食うことにした。
結局ゆっくり時間が取れて3人で集まれたのは
夜になってからだ。
どうやらカインは片付けも手伝ったようだ。
こいつがそこまでする必要はあるんだろうか?と、思いつつ、
喜んでもらえた〜とご満悦な様子のカインを
責める気はしなかった。
「マリアも取りに来てくれたら良かったのに〜!」
カインは開口一番それを残念がっていた。
「い・・行けないわよ・・・。」
マリアは結局最後まで行かなかったようだ。
「ちゃんとマリアの分も用意してたんだよー?」
そう言うとカインは小皿に乗せたローストビーフを取り出した。
しかし、マイに言っておいたのになあとぶつぶつ言っている。
「あ!!肉!」
「それは、アレンのじゃありませんー!」
思わず手を伸ばそうとする俺の手をカインはぴしゃりと叩いた。
「マリアに持ってきたんだから。」
そう言うカインに俺は唇を尖らせた。
む〜〜。
カインの言う事は一理あるが、目の前に肉があるのに食えないとは。
「あ、あの・・じゃあアレン食べる?」
遠慮がちにマリアがそう小皿を差し出してくる。
おお!と思わず手を差し出したくなるが、
さすがにいくらなんでも気が引けるではないか。少し。
マリアは一皿も食ってないと言うし・・。
その様子を見ていたカインはケラケラ笑い出した。
「ははっ。ほらあ、やっぱりアレン、だから言ったじゃない。
もう一皿持っていったほうが良いんじゃない?って。」
「む?」
「僕もまだ食べてないの。
残り物だけど持ってきてるよ。一緒に食べようよ。」
そう言うとカインはどうやら肉の切れ端などの残りを
持ってきていたらしい。
見栄えはイマイチだが、そんなのはどうでも良かった。
「食う。」
結局3人は久しぶりに集まってと言うのに、
何故か寡黙に肉を食べる事となった。
「あ、あとねーー。ワインもあるよ〜。」
「ワイン?」
「僕らももうオトナだもんね〜。
一本丸々もらってきちゃったよー。」
カインはふふふと笑ってそう言って、グラスにワインをついだ。
「色々あったけど、無事新年を迎えて、
それにこんな盛大にロト祭も開かれて良かったね。」
カインが嬉しそうにそう言った。
「ええ、ムーンブルクの復興は二人のおかげで
至極順調よ。感謝しているわ。」
マリアは笑顔で二人に感謝の意を表した。
旅が終わっても二人はマリアの事を支えてくれている。
「何よりだな。俺んとこは相変わらずだ。
あーでも最近勉強することが増えたな。」
「勉強!?アレンが!!?」
旅の最中カインとマリアがどれだけ本を開いていても
アレンだけは一人絶対に本など開こうともしなかったのだ。
「失礼な驚き方だな。
いやさ、国の上に立つにはどーのこーので。あーでこーで。
ややこしい話はさっぱりわかんね〜。」
アレンはパタパタと手を振った。
「それより剣が振るいたい。
ローレシアには俺の相手になるやついねえよ。
カイン、また遊びに来いよ。」
「遊びにって言って、君がいうのは剣の修行だもんね。
僕は命の覚悟をしていかないと駄目じゃないか。」
だが、さほど嫌でもなさそうにカインは笑った。
アレンはワインをぐいっと一気飲みしながら言った。
「ぷは〜。
でもこんな風に平和な時間がすごせるのって
どこか夢みたいだよな。」
昔は、どこに行っても魔物がいて、休まることなど無かった。
現在、魔物が完全にいなくなったと言うわけではないが、
最近は人とのすみわけが出来ているようで
襲われるケースなどは格段に減っている。
「ええ・・本当に・・。
涙が出るくらい・・・私は嬉しいわ。」
目を細めてマリアは幸せそうに笑った。
マリアは本懐を遂げられて本当に良かった。
その横顔を見ていると俺も嬉しくなる。
「お前ら早く子供でも、作れば?」
「ちょっ!!」
「ぶっ。」
思わず言った一言に、カインは盛大にワインを噴出した。
俺は思わず仰け反ってそれを避けた。
「きたねぇっ!」
「うーー。アレンにワインが良い感じで回っているようだね。
そんな事言う子にはこうだ!」
カインは急にそう言うと残ったローストビーフを燃やし始めた。
「ぎゃあ!お前何するんだ。」
「あははっ。焼肉になった。」
「違えよ!!ただの燃えカスになったぞ、どうしてくれんだ!」
俺はカインの頭をどついた。
ただでさえ薄切りだったローストビーフの残り物は
すっかり焼き炭のようになってしまった。
「マリア〜、残ってるのくれよ。」
「絶対いや。」
マリアにきっぱり断られてしまった。
くそう、こいつらにはまだ言うのが少し早かったのか。
微妙なやつらめ・・・・。
まぁ、未来に期待することにしよう。
それにはまず一年ずつだ。
「悪かったよ。
なあ、カイン。」
「なあに。」
頭を殴られて憮然としているカインは顔をあげた。
「マリアも。」
「どうしたの?」
もう取られないように小皿を大事に抱えるマリアもこっちを見た。
「あーー っと。今年も、よろしくな。」
そう言うと俺の大事な仲間達はやっと笑顔に戻ってくれた。
「こちらこそ。」
「よろしくね。」
- 終 -
2013/01/11
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