戴冠 3



「お兄さま、話って何よ……。」

マイは目を伏せて、重苦しそうに口を開いた。

「何って。
 マイは僕をサマルトリアに呼んで、話をしたかったんでしょう?」

カインはマイを座らせた。
マイは膝を抱えて目を合わせようとしない。

「お父様と話をしてきたの?」

「うん。話して来たよ。」

そういうとマイは、はぁっとため息をついた。

「そうやって、外堀を埋めていくのずるい。」

そういって、マイは押し黙ってしまった。
確かに一緒に慌てふためいていた時と違って、
父の意思を自分やアレンにまで聞いているというのは、
マイにとっては逃げ場もないような感覚があっただろう。

「ずるいよ……。
 私は……私は……。」

そばで見ているマリアにもマイの苦悩と戸惑いが伝わってきた。
何と言って勇気づけたら良いのか。

「私には……無理よ、だから、逃げちゃったの。」

「マイ……。マイは逃げたんじゃないでしょう。
 ここで、待ってたんでしょう?」

「え?」

行った先が家族で過ごした思い出深い場所。
逃げるんだったら、誰も知らないところへ行けばよかった。
まるで追ってきてくれと言わんばかりだったじゃないか。

「だって……、お兄さま、私怖いんだよ。」

ずっと王族として生きてきたし、教育も受けてきた。
王としての父のふるまいもずっと見てきた。
アレンやマリアが即位して、新たな世代の新たな手腕での王政も見てきている。
手本にするべき見本はたくさんいる。

それなのに、自分には絶対無理だと思った。

「怖い……?ごめんね。
 怖い思いをさせてごめんね。」
 
ぽろぽろと涙を流す妹を見て、
カインは優しく妹の頬を撫でた。

「いいよ、もうそんなに怖がってるんだったら、
 もういいよ。」

「えっ、どういうこと?」

「父さまに言ってくるね。
 マイがどうしても無理って言ってるからって。」

片膝を立ててカインが立ち上がろうとした。

「えっ、お兄さま?」

「カイン……?」

マイとマリアが一様にカインの方を見た。

「一応、僕でも良いらしいよ。
 父さまはマイがふさわしいって言ってたけど、
 僕もそう思うけど、マイがどうしても嫌なら他に道はないもんね。」

立ち上がって、カインは笑った。
父はカインに王位継承権はあると言っていたし、
意見があるのなら聞くと言っていた。

父が退位して、妹が即位しないなら、
現状選択肢はないじゃないか。

「カイン……。」

マリアは、何も言えず立ち尽くしていた。
さっきもカインは言っていた。
マイがどうしても無理だっていうならと、それを懸念していた。

マイはそのマリアの顔も見上げた。

「あああうう゛う゛う゛う゛ーーー」

声にならない声をあげながら、
そしてぼろぼろと涙が次から次へと零れ落ちた。

カインに、兄に幸せになってくれと、ムーンブルクに行ってほしいと、
自分の意思でマイはそう言って送り出したのに。
サマルトリアは自分が守っていくと、確かにそう言ったのに。

「うわああーーー」

その時から、自分は覚悟をしてたはずなのに。
いつかその日が来るってわかってたはずなのに。

私ができないから、兄は自分がやるとか言い出した。

「おにいちゃあああんーーー!!
 うわあうわああ。
 待ってよ。待ってよー!」

マイが髪をかき乱して、小さい幼児のように泣き出してしまった。

「マイさん……。」

マリアもマイの様子に驚いた。
それほどに重荷に感じてしまっているのかと心配だった。

「マイ?」

カインはもう一度マイの前に座って目線を合わせた。

「お兄さまあ……!ヒック、違う……違うの……」

「違うって何が?」

「お兄さまは、ムーンブルクに行ってほしいの。
 私そう言った……でしょ。
 そうしたら、でもどうなるのかは、わかってるの。」

「マイ……。」

「嫌なんじゃ、ないの。
 マリア様、みたいな女王様、格好良くて、ひっく、
 ずっと、憧れてて……。」

「そうなんだ。マリアみたいに?」

マイは女王になるのが、嫌な訳じゃない。
憧れだったマリアのように、なってみたいし、なるんだと漠然に思う気持ちもあった。
マリアはその言葉に少し驚いていた。

「嫌じゃないの。
 嫌じゃないけど、でも無理なのー……っ。」

「無理?どうして、そう思うの?」

「誰もが知ってる、アレン様やマリア様とは違う。
 同じようにできないよ。
 私がどんな偉業をなしとげた?
 私が女王になって、サマルトリアが笑われたら、没落しちゃったらどうしよう。
 私みたいなやつが女王になったからだって言われちゃう。
 人々がなんて言うか分かんないよ。」

ああ、そのことはマイはずっと気にしているようだった。

「ねえ、マイはここの花々が好き?」

「え?は?何?」

大事な話の最中に、兄は何をふざけたことを言いだしたのかと
マイは目を点にした。

「ここから見える光景だよ。」

「好き、だよ。
 綺麗に花が咲き誇っているでしょう。
 サマルトリアの自慢なんだから。」

カインはマイの頭を撫でた。

「うん。僕は、偉業を成し遂げた人なんかより、
 サマルトリアを心から愛して自慢に思っている
 そんな人が上に立ったなら、
 それが一番良いと、思ってるよ。」

「そんな事……っ。」

「人からどう思われるとか、
 そんなの気にしないで良いことだよ。
 それはその人の問題だし、
 どうとでも思ってれば良いんだよ、勝手に。」

「え……。」

「マイはマイが思うようにやればいいんだ。
 マイならそれで大丈夫。
 変な事言ってくる奴がいたら、僕に言ってよ。
 マイがどれだけサマルトリアを大事に守ってきたか、
 こんこんと言い聞かせてやる。」

「……。」

マイは、そういえば兄は他人からの視線を全然気にしていないなと思った。
人がどう思おうが、それはその人の問題で、
自分はただ、思うままに強く生きればいい。
兄はそのままの生きざまだと思った。

「一人で責任感じたりしなくていい。
 たとえサマルトリアが没落しようが、
 それだって、マイの責任でもない。皆の責任だし、僕の責任だ。
 そもそも……しないと思うけど。」

「お兄さま。
 私で、良いのかなあ……。」

「背中を押してほしいなら、いくらでも押すよ。
 嫌だっていうなら、それでもいいよ。」

決して無理強いではない。
逃げ道も用意してくれた。
実際一度は逃げ出した。
でもマイは次も逃げたら、もう二度と立てない気がした。

「マイさん、私も力になれることがあれば、
 いくらでも協力するわよ。」

「マリアお姉さま。」

「そうだよ。アレンもそう言うと思うよ。
 サマルトリアの問題は、ローレシアとムーンブルクの問題でもあるから、
 力を貸してもらえるんだ。めっちゃ心強いと思う。」

秘密話をするように、そう教えてくれた。

「僕も……一番助けるけど。」

外堀を埋められて逃げ道がなくなったのではなかった。
これだけ大勢に支えられている。
一人じゃなかった。

「分かった。私も女よ、腹をくくったわ。」

「マイ?」

「立派になんてできない。
 ただ、私は私なりに、この国を愛していく。」

「マイ……。そう…、えらいなあ。」

泣きはらした目は決意を秘めていた。

「そんで、思いついた。
 お父さまに、戴冠の前に、一つだけ条件を言ってくるわ。」

そして何やら思いついたことがあるようだ。

「条件?」

「世界と対等にお付き合いしていくためには、
 私は世界を知らなさすぎるの。」

それも自信のなさの原因だった。

「お兄さま、実は私ねリックと世界旅行の約束をしてるの。」

「えっ……。あ……。」

そういえばいつだったか、妹と門番兵のリックが
泉の洞くつでそんなことを言っていた。

「ずっとお父様反対してたけど、
 私には見聞を広める必要があるわ。
 だから、リックとの世界旅行に許可してもらうの!
 お兄さま、これどう思う!?」

泣いた子がもう笑ったなと
これがマイの強さでもあるなと思った。
リックとの世界旅行。
マイがそれをどれだけ強く切望していたか、
カインは知っていた。

だから、頷いた。

「うん、いいんじゃないかな。」

「ね、ね!
 そうよね!」

マイは今度こそ吹っ切れたように立ち上がった。

「リックとお父様に直談判してこよう!」

「……あ。ちょっと、マイ……。」

そういって背中を見せたマイに、
カインは一度声をかけた。

「何?」

「髪の毛がぼっさぼさだよ。
 こんな格好で行ったら恥ずかしいよ。」

「え、本当?やだ。」

駆け回ったり、髪を振り乱して泣き叫んだせいであろうか。
カインはマイの髪紐をほどいた。

「あ、お兄さま結んでくれるの?ありがとう!」

昔はよくこうやってマイの髪を結いあげたりしてたなと
ふと懐かしく小さいころを思い出した。

「できたよ。」

「マリアお姉さま、お兄さま不器用じゃないですか?
 これ、変じゃないですか?」

「いいえ、そんな事ないわよ。
 とてもすてきよ。」

「本当ですか?
 ありがとうございます!
 よーし、お父様待ってろよーー!」

にこっと笑った笑顔は小さい時のままだ。

マイは城に向かって駆け出した。
あれだけ逃げまどっていたのに、
今は探し求めてた仇敵にでも会いに行くがごとしだ。

カインはそんな妹の後姿を見送った。

「カイン……。
 ねえ、マイさん、強い人ね。」

マリアがカインにそういった。

「どうだろうね。
 さっきなんて、ギャン泣きだったじゃない。
 僕はもう一度くらいマイは無理だというんじゃないかと思うんだけど。」

「冷静ね。」

カインは、妹の強さともろさの両方を感じていた。

「でも、それも含めて、いい方向に行くと良いなと思うよ。」

リックとの仲も行く末も気になった。
マイが決して不幸にならないように、苦しまないように、
ただ幸せを願っていた。





++





マイが行方不明になったと思って、
サマルトリアではリックが必死にマイを探し続けていたようだ。

戻ったマイを見ると、
感激してマイを抱きしめていた。

どうやら父もマイを探していたようで、
そんな2人を見かけて、一瞬不穏な空気になったが、
マイは意にも介さず、先ほど兄たちの前でも言ったように、
父に対してリックとの世界旅行を掛け合った。

「そんなものお前、駄目じゃと言っとるだろう!」

「だああーーー!この流れでなんで断るの!?
 遊びに行くんじゃないの!
 見聞を深めるの!」

けんもほろろに首を振る父にマイは嘆いた。
もうこのやり取り何十回目だ。
飽きた、とうに飽きた。

そんなやり取りを見守っていたカインが
横やりを入れてきた。

「父さま、良いんじゃない?」

カインは行かせてやりたいと思った。

「カイン、お前まで何を!!」

「父さまは、マイに何かあったらっていうのが心配なんでしょう?」

「当たり前だ……!」

「この人、相当修行積んできたって言うじゃない。
 マイのこと、何があっても助けてくれるよ。
 ねえ?」

カインはリックの方を向いてそういった。
リックは恐縮そうにしながら、頷いた。

「はい!命に代えましても!!」

なかなか威勢が良い。

「今度、マイが行方不明になったら、あなたが見つけるんでしょう?」

「え?は、はい……!そうです!」

「だってさ。
 だから良いじゃない。
 見聞を広めると自信にもなるだろうし?」

マイは助け舟を出してくれるカインに嬉しく思った。

「そうそう、リック頼りになるもんね!」

「え?は、はい。負けませんとも!
 この見聞旅行で修業を重ねて、
 カイン様にも負けない男になります!」

そういうリックにマイが少し変な顔をした。
何を無茶なという顔だ。
マイは何度もリックは兄には勝てないと言ってきたのだ。

「本気ですよ!
 戻ってきたら是非一度立ち合い模範試合の機会を……!」

「それは無理だろうけど、男としてその心意気や良し!
 ね、お兄さまリックもこう言ってることだし、リックと勝負どうかな。」

「は? まあ……いいけど。」

いつもだったら、そんな立ち合い試合はお断りなんだけど、
リックの言う事が本気なのかは、
一度自分の手で見たい気もした。

「くっ、貴様ら……。
 勝手に話を進めているようだが……。」

未だ反対している父であったが、
マイは毅然と言い放った。

「お父様、私行くわよ。
 これからは私がこの国の女王になるんだものね。」

覚悟を決めたマイの言葉に、
父はぐぬぬと声にならないうめき声をあげて、
息を吐いた。

「女王が、言う事なら、
 聞くしかない……か。」

「良いの!?
 やたー!やった!
 私やっと世界を見に行ける!」

マイが喜んでいる。
ずっと長い間世界を旅している兄たちを羨しく思っていた。
平和な世界になって、やっと大手を振って旅ができる。

「気をつけるんだぞ。
 夜は街を歩くんじゃないぞ。
 生水を飲むんじゃないぞ。
 肉は必ず火を通せ?
 宿の部屋では必ずカギを掛けろ。
 あ。言っておくが当たり前だが、同室なんて
 もってのほかだぞ!!?」

「わー、細かい!
 わかってるわよお〜」

くどくどと父から旅の間の注意事項が続いた。

そして続けて言った。
この世界旅行が終わったら、マイの戴冠式をするのだと。

「それまでは私がこの国を守っていよう。
 これが私の最後の役割だな。」

父は感慨深そうに言った。






+++






「それでさ、お前はあの門番兵に負けたの?」

アレンは興味深そうに、カインの袖を捕まえて聞いた。

「誰から聞いたの。そんな話。」

「いやあ、ローレシア―サマルトリア間のホットラインを馬鹿にすんな?
 大体なんでも噂話とか入ってくんだぜ。」

「そうなんだ、やなホットラインだね……。」

今回も父とアレンの父の話から漏れ聞いたようだった。

「それがね、勝っちゃったのよね。」

隣でマリアが口添えした。
世界旅行の最後に、立ち合い試合。

それは本当に実現した。
マイとリックはサマルトリアに帰る前に最後に
ムーンブルクに立ち寄ったのだ。

マリアももちろん立ち会っていた。

「え、負けなくて良いのか?
 お前に勝って、そんで安心して姫さんはお前から巣立つって話じゃねえの?」

「ははは、そんな話だったっけ?」

カインはもう笑ってごまかした。
確かに最初は、負けてもいいとも思ったし、そのつもりだった。

でも、実際にやってみると……。

「負けるのなんて嫌じゃない?
 こんなん程度じゃまだまだ修行が足りないよって言いたくない?」

意外と負けず嫌いなカインであった。

「ああ、なるほど。ははっ!
 そうだな、兄の壁は高いほうが、奴の修行の道は続くし良いな。
 でも、お前ずっと相手しなくちゃいけなくなるぜ。」

「……まぁ、別にそれは良いよ。」

マイを守るなら、強くなって欲しかったし、立ち合い試合くらいは構わなかった。

「良いなー。
 なぁ、俺もお前としょっちゅう戦いてーー!」

「アレン、あなたは出てこなくて良いから!」

マリアが嫌な顔をしてくぎを刺した。
アレンがその気になると、マリアにはどうも恐ろしいことになる気しかしなかった。

「ちぇー。なんだよ、マリアは。
 まぁ、そのうちな。
 お前体調どうだ?」

「体調はまぁまぁだよ。」

「そうか。じゃあ、とりあえず万全になるまで待ってるよ。」

「本気で言ってる?」

3人がそんな話をしていると、
扉を誰かがノックした。

今、3人はサマルトリアの元カインの部屋に来ていた。
クレハや子どもたちもサマルトリアへやって来ている。

城下で遊んでいると言っていたけど、戻ってきたかなと
ドアを開けてみると、
そこにはマイが立っていた。

「やあ、マイ。
 立派なドレス姿だよ。」

マイは好んで普段は軽装だった。
だが、戴冠の今日はさすがに正装をしていた。

「母さまに、よく似てきたねえ。」

めったにしない正装姿をマイがしてみると、
その姿は亡き母に瓜二つだなと思った。
立派な姿であった。

「お兄さま……。」

「何?」

「私、むりいいい…………!!」

「ええっ……!?うそでしょ!?
 今更何言ってるの、もうすぐ式でしょう。」

またマイが無理とか言い出した。
マリアは、そういえばカインが
もう一回くらいマイは無理と言い出すと予感していたなと
思い出した。的中ではないか。

「すっごい人いっぱい来てるううーーー!」

「来るよ、そりゃあ。」

「何あれ、私あんな大勢の前で何を言うの?」

「いや、僕に聞かれても。
 これからの抱負とか?」

「ほうふーーほうふって何ーーー!!」

マイがぼろぼろ涙を流すから化粧が落ちてしまう。

「マイ、泣いちゃだめだよ。
 せっかく綺麗にしてもらったのに、
 お化粧取れちゃうよ?」

「うええ??うそおおー」

マイはどーしよーーーという感じで、半泣き状態だ。

「マイさんいらっしゃい。
 お化粧直してあげるわ。」

「お、おねえさま……。」

マリアが優しくマイの手を引いて、
鏡の前に連れて行った。
崩れた化粧を直してくれるらしい。

「おお、姉っていいもんだな。」

「そうだねえ。」

カインもアレンも、そんな姉妹の麗しい姿をほっこりと見守っている。
化粧直しが終わると、アレンもマイに近づいた。

「アレン様?」

アレンはマイに手を差し伸ばした。

「姫さんよろしくな、サマルトリアで困ることあったら、
 俺に言ってきたらいいぜ。
 俺、隣のローレシアで王やってんだ。
 何とかしてやるから」

「あ、ありがとうございます!」

マイはアレンの手を握った。
アレンと握手してマイは心強く思った。

「アレン、もう”姫さん”じゃなくなるのよ。」

「あ、そうだよな!女王になるんだもんな。
 じゃあ、マイで良いか。
 カインの妹だもんな。良いか。良いんだっけ?」

呼び捨てで呼ぶことに、兄カインの視線を感じたが、
マイは何だか、アレンたちと対等の立場になったと認められた気がして嬉しく思った。

「はい!マイとお呼びください。
 私、サマルトリアの女王になります!
 アレン様、マリア様、ふつつかな私ですが、
 よろしくお願いします!」

マイがそう宣言した。
やっと気持ちが吹っ切れたようだ。カインは少し安堵した。

ちょうどその時、遊びに行っていた子どもたちが帰ってきた。

「お父様、お母様ただいまーー!!
 って、マイ様……!すごい素敵!」

「うわあ……」

アリスとマナはマイの正装姿を見て、感嘆の声をあげた。
マイは小さな子どもたちを見て目を細めた。

「ありがとう、アリスちゃん、マナちゃん。
 2人とも素敵よ。決まってるわ。」

戴冠式に合わせて、精いっぱいの正装でやってきた
子どもたちはとても愛らしかった。

「マイちゃん、すごくかわいいねえ。
 今日はおめでとう。」

ほくほくとした顔でそんなことをいう幼子を、
思わず抱き上げてほおずりもしたくなるほど愛らしく思った。

「マナちゃんありがとうーー!
 今度ゆっくりサマルトリアへ遊びに来てね。」

兄にそっくりで小さいなんて、なんともマナは可愛らしい。

「え、良いの!?
 ぼく、あそびにくるよーー!
 一人でもぼくだいじょうぶなんだよー。」

「マナちゃん、そういえばこのお兄さまの部屋空いてるのよ。
 来たときはこの部屋を使ったらいいね。」

「わかったー!」

「ふふ、元気ねー。なんでも教えてあげるからねえ。」

マナは以前よりマイを慕っていて、
結構本気でサマルトリアに遊びに来たがっているようだった。

無理強いするつもりは無いが、マナがサマルトリアが良いというのであれば、
それなら、しばらくここで過ごしてサマルトリアに親しんでも良いとカインは思っていた。

「そろそろ時間ね、お兄さま行きましょうか。」

「そだね。
 式典中は泣かないでね。」

「がんばるわーー!」






そうして、始まった戴冠式。

マイは父から王冠の譲渡を受けた。

そして、サマルトリアだけではなく、大勢の人が集まった中で、
新女王は将来の抱負を語った。

つつましくサマルトリアの平和を誓ったことは、
大勢を感動させた。


そののち、兄のような幸せな家庭を持ちたいと、
マイが全世界に向けてリックとの結婚を発表したことは、
隣に立つ父の慌てぶりと相まって、後々まで語り草となったという。









- 完 -


2020/09/19

▲


【後書き】
結構端折りましたが、何とか無事終わりました。

マイちゃんの戴冠式!
彼女だけの明るい空気で、これからも女王として明るくサマルトリアを支えてくれることでしょう(^^)

続き?→月の夜

   ★5P漫画化しました

 













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