初めての三人旅



※注意※

こちらの小説は長編小説「ムーンペタ」と「風の塔1」の間の話です。
マリアが仲間になって初めて旅に出てみる話です。


魔導士の杖を持つ手が震えた。
じっくり見るのは初めてだが、これは戦闘用の武器。杖は木製で先端には宝玉が埋め込まれていて、片手で持つには案外重い。
これからは、マリアはずっとこれを持ち歩くのだ。

旅支度を整えたら、我々はこのムーンペタから世界へと旅立つ。今その準備をしているのだが、しかし旅支度といっても自分には特に何もない。

母国は滅んで、犬の姿でムーンペタにやって来たので、思い入れの愛用の私物は一つだってないのだ。

仲間がローブと靴、そして赤いスカーフを用意してくれて、それからこの魔導士の杖を渡された。
今はそれしかない。

コンコンと、扉を誰かがノックした。

「おい、用意はまだ時間がかかるのか?」
「あ、ごめんなさい!もう行くわ。」

「いいんだよ、慌てなくて!ゆっくりで大丈夫だよ!」

今の声はローレシアの王子のアレンで、少し遅れて聞こえてきたのはサマルトリアの王子のカインだ。

扉の向こうで、女性は準備に時間がかかるんだからとカインがアレンと何やら言いあっている。

旅路を前に、不安で不安で震えそうになるが、震えていても始まらない。
早速仲間を待たせてしまっている。急ごう。

扉をギィっと開けると、アレンとカインがこちらを振り返った。

「行きましょう。」

アレンはこちらを観察するように視線を向けている。

「もういいのか?用意は大丈夫か?」
「用意も何もないわ。ごめんなさい、待たせてしまって。」

じゃあ行くか、と3人は宿をでた。

「ねえマリア、何か必要なものがあったら道具屋にでも雑貨屋にでも寄って行こうと思うんだけど。」
「え、大丈夫よ。さっきお金がないって言ってたじゃない。」

アレンが福引で魔導士の杖を当てるために、随分散財してしまったと聞いていた。
そもそも宿代もどうしたんだろうか?

「少しなら大丈夫だよ?
 買いすぎた薬草と毒消し草を売ったから。必要ならもうちょっと売るからさ。」
「せっかく買ったのを、売っちゃったの?」
「アレンが福引するために、買いすぎた分だから大丈夫だよ。ホイミとキアリーなら僕も使えるし。」

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そっか、カインは魔法を使えるようになったのか。
キアリーは私は使ったことがない。というか、使おうと思ったことがないから、使えるかどうか分からない。

見ると、アレンもカインも剣を携えて、旅慣れた様子が感じられる。
同い年、同じ王族なのに、もう彼らは戦っているのだ。なら、自分もできるかどうか分からない、などと言わずに戦わなければ。

「特に無いみたいだな。じゃあ、外行って試してみるか。」
「これからどこへ向かうの?」

そう聞くとアレンは、首を振った。

「慌てんなって。いいから付いてこい。」
「……?」

アレンは行き先も教えてくれずにさっさと先へ進んでしまう。マリアは少し戸惑っていた。

「いきなり遠出はしないよ。僕ら3人でこれからどうやって魔物と戦えばいいか、一度確認してみたいみたいだよ。」
「え、あ、そういうこと…?わかったわ。」

戸惑っているとカインがまるでアレンの通訳かのように、その意図を説明してくれた。
確かに、戦闘未経験の自分を連れて行くのだから、今まで通りに戦えるのかどうか確認したいのだろう。

「マリア緊張してる?何かあったら遠慮なく言ってね。」
「………平気よ。」

カインは私の不安を悟ったように、笑顔で話しかけてくれた。ぶっきらぼうなアレンとは随分性格が違う人のようだ。

確かに、自分は一度もまともな戦闘をしていないのだ。
それでもムーンブルクの仇を討たねばならないのだし、今度こそ祖国を滅ぼした魔物たちを倒さなければならない。

憎き魔物たちを討つ。

「行きましょう…。」





+++


マリアは落ち込んでいた。


ムーンペタを出てすぐに出現したリザードフライという魔物の群れ。

アレンとカインが魔物に向かっていったから、マリアは当然自分も戦わなければと思った。

今まで魔物とは遭遇したら逃げねばならないものだと教えられていたのに、わざわざ魔物に向かって行くなんて、なんとも恐ろしい。

しかし、覚悟を決めて、魔導士の杖で相手を一撃殴ってみたものの、リザードフライは大して効いた様子もなく、反撃に炎を吐き出してきた。

そこで、マリアはアレンに突き飛ばされた。

「っ、きゃあ!!」

そして仲間のはずのアレンに大声で怒鳴られた。

「馬鹿野郎!!!!下がってろ!」

一瞬何が起きたのかが分からない。
きっと彼は自分に怒っている。王女として育ったマリアは、今まで誰かにこんな頭ごなしに怒鳴られたことなんてなかった。

アレンが怒っている理由は、きっと私が弱かったからだ。


一緒に戦うはずの仲間に拒絶されたように感じた。
杖を持つ手が震える。

「マリア、こちらへ。」
「え?」
「こっちだよ。」

固まってしまったマリアにカインが声をかけて、その手を引いて少し下がらせた。

「ここにいて。ね?」

ここにいろというのは、戦いに参加するなということだろうか。

マリアが何も出来ずにいるうちに、気がついたら、アレンがその剛腕でリザードフライを真っ二つに切り裂いていた。
アレンは凄腕の剣士のようだ。
彼がハーゴン討伐に立ち上がったロトの血を引く子孫、というのは本当のようだ。

マリアは結局この戦いで何もできなかった。



「ケガはない?」

戦いが終わってから、再びカインがマリアのそばにやってきた。
ケガは特にしていない。先程アレンに突き飛ばされて、尻餅をついてしまったくらいだ。情けなくて顔も上げられない。

「大丈夫?」
「………」

カインがマリアと視線を合わせるようにこちらを覗き込んでいた。

「ケガ…とか。」
「あ、大丈夫よ。」
「良かった。」

そう言うとカインはホッとした表情をした。ちゃんと返事をしなかったからかカインは心配そうにしていたようだ。

「マリア、お前なあー!」

アレンも剣の血糊を拭ってこちらへやってきた。
マリアは思わずビクッと後ずさった。仁王立ちでこちらを見下ろすアレンの姿は、戦闘直後の緊張感があり、返り血も浴びていて、何より迫力と凄みがあった。また怒られるのだろうか。

すると、突然カインがアレンの両頬を両手でつねった。

「うぇっ!?何すんだ、お前!」
「ちょっとアレンー。その顔やめてよ。」
「何がだよ?!俺は元々この顔だよ!」

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アレンはカインの手を振り払おうとしている。
なんだ?なんだなんだ、何をしているんだ?

マリアは二人の様子に戸惑っていた。

「怖い顔をやめてって言ってるの。マリアが怖がってるでしょ。」
「あん?……あ?…ああ。」

カインがそういうとアレンがチラチラとこちらを振り返って、先ほどのあの恐ろしい迫力は無くなった。

「マリア、アレンを怖がらなくていいよ。アレンはね、こう見えて全然怖くないよ。優しいんだ。ただ、ぶっきらぼうで乱暴で、あと責任感が強すぎるだけなんだよ。」

そう言われて、アレンは少し憮然とした表情で横を向いた。

「悪かったな。怖がらせるつもりはなかったんだが…。さっきの、痛かったか?」
「え、いえ…。」

素直に謝ってくれたアレンにマリアの方こそ恐縮してしまった。

「お前が無茶するから。」
「無茶って?」

自分が魔物に向かって攻撃しようとしたことについてだろうか。でも自分も彼らの仲間なのだから、攻撃をしなければと思ったのだ。

「いいか。マリアは俺のそばに来るんじゃねえ。」

戦いに来るなと言う。
やはり私の気持ちを分かっていないのだ。

「で、でも私も戦わなければ!私には戦うなっていうの?」
「んーー、戦うなって言ってんじゃねえよ。」

アレンはボリボリと頭を掻いて、どう言えばいいのかと考えているようだ。そしてカインに代わりに言えと目配せをした。

「マリア、落ち着いて。僕も、アレンと同じようにはできないんだよ。」
「カインは非力だからな。俺みたいにやるにゃあ100年早ええんだよ。」
「うう…、うん。まあ、そうなんだけど。」
「で、マリアもそんなに力はねえだろ?そんなやわな細腕で魔物に殴りかかるなんて自殺行為だ。びっくりしたぞ。」

言い方は厳しいが、確かにその通りだ。
魔物はマリアの打撃にダメージを受けた様子もなく、打撃攻撃なんて自殺行為と言われても仕方ない。

「マリア、さっきの戦い、僕が何をしているのか見ていた?」
「え?いいえ…。」

さっきは必死すぎて、アレンが魔物を斬ったところしか見ていなかった。

「そうだな、ちょっとカインの戦い方見てれば良い。非力には非力なりの戦い方がある。」
「だから、言い方ぁ…。」

またカインがアレンの頬を人差し指でぷにぷに突きながら、文句を言っている。

「大体、お前。俺らがどんなふうに戦うのか知らねえだろ。1回ちゃんと見てろ。」
「わ、わかりました。」

確かに、マリアは「自分もやらねば」と言う気持ちばかり逸って、アレンとカインがどんなふうに戦うのかも知らずに飛び出していた。

「せっかく俺が魔導士の杖をやったのによ。まさかそれで殴ると思わんじゃん。」
「魔導士の杖は魔法が使えるそうだよね。確か、ギラだったかな。」
「ギラってことは炎だな、カインが使ってるのと同じだ。」
「便利だよねー。」

この魔導士の杖は魔法使い用の武器だ。
使えば魔法の効果もあるという。

そう、魔法だ。
私は魔法使いではないか。

「それさ、店で市販されてねえってことは、結構貴重な武器なんだろ?
 俺も使ってみてーなー。」

ふと見ると、アレンが魔導師の杖を羨ましそうに見ている。そのキラキラした表情は年相応の少年のようだ。

「えっ、アレンが杖!?似合うかなあ。」
「舐めんな?俺くらいになると、どんな武器でも使いこなせるんだぜ?」

アレンはふふんと腕を組んで、自慢げにしている。
聞くと、冗談でも比喩でもなく、彼は本当にどんな武器も使いこなせるプロの戦士だという。
きっと戦闘の素人のマリアにとって頼もしい存在であろう。

「よく考えてよ。アレンが杖使って、後方支援したら、誰が前線に立つの。」
「あー。そんときゃ、お前か。あっはは。無理だな。やめたやめた。またいつか機会があんだろ。」

アレンはこの話の匙を投げたようだ。

それにしても、アレンはカインと肩肘張らない会話をしている。アレンだって、年相応の少年っぽい部分もあり、確かにただの怖い人ではないようだ。カインもそんなアレンと対等にやり取りをしている。

マリアはいずれ自分も同じようにその輪に入れるだろうかと思った。




ふいにガサガサと草原から魔物の気配がした。

「さて、お前ら。お次の魔物のお越しだぜ。
  マリア、さっき言ったことは分かったな?」
「ええ、分かったわ。」

アレンはマリアの言葉にうんと頷くと魔物に向かって剣を構えた。

魔物は巨大な猿のような姿だった。見るからに獰猛な魔物で、あの丸太のように太い手足は凶悪な攻撃力に違いなかった。

「マンドリルの群れだ。力が強いんだよ。気をつけて。」

見た目からそうだろうなと予想していたことをカインが教えてくれた。
あの見た目で力が弱かったら嘘だろう。

「いっくぞー!そりゃあ!!」

アレンは巨大なマンドリルに怯むことなく、先制の一撃を与えた。怒り心頭のマンドリルはその太い腕でアレンに殴りかかったが、アレンがそれを剣で受けている隙にカインがマンドリルの腕に斬りかかった。

なるほど、二人はちゃんと連携して戦っていたのだ。

それなのに戦い慣れないマリアが二人の至近距離までノコノコやってきて効かない打撃攻撃をしようとしたものだから、アレンもそれは下がれと言うだろう。

次にカインは、少し魔物から距離を取って、ギラを唱えた。
ギラの炎は渦を巻いて、マンドリルに直撃した。

「すごい…。」

カインがあえて距離をとって見せたのをみて、マリアはふと気づいたことがあった。

先程の戦いで、カインが「ここにいて」と示した場所。
ちょうどその場所と魔物との距離がこのくらいだった。

これくらい離れても、魔法ならちゃんと届くんだとカインは教えてくれていたんだ。

先程、アレンが一度ちゃんとみてろと言った意味がよく分かった。アレンの戦い方と、カインの戦い方を初めて知った。

そして、自分がなすべきことも分かった気がする。アレンとカインはマンドリルを一体倒したが、まだあと一体残っている。

ギラの炎なら、ここからでも届く。
マリアは杖を持つ手に力を込めた。

「私も…ギラを…!」

だが、炎の具現化を図ろうとした時に、急に目の前が真っ暗になった。ギラは何年も前から使えていた魔法なのに、唱えようとすると心がザワザワと波打つような感覚になった。これ以上の深追いがどうしてもできない。
マリアは炎の精霊の詠唱すらできなくなっていた。

「ど、どうして…??」

マリアは使えていた魔法が使えなくなった理由がわからなかった。

「うわっ…!!」
「アレン!!」

マリアが魔法を唱えられないでいると、アレンがマンドリルの一撃の直撃を受けて吹き飛ばされてしまった。当たりどころの悪い痛恨の一撃だったのかアレンが起き上がらない。
カイン一人ではあの凶悪な魔物とは戦えないだろう。
どうしよう、どうすればいいだろうか。

さっき彼らは何を言っていたか。彼らの会話を思い出す。
魔導士の杖は使えばギラの効果があると言っていた。

これだ。

「杖よ、お願い。力を貸して…!!」

先端の宝玉が赤く光って、そこから炎が飛び出した。

「あっ!」

杖から飛び出したのは彼らが言ったように、ギラの炎だった。
炎は、今まさにカインに殴りかかろうとしていたマンドリルに直撃した。それで倒せるほどの大きな炎ではなかったが、一瞬怯んだ隙にカインが追撃の一撃を加えた。

それでも、まだマンドリルは倒れない。鬱陶しそうに腕を横に薙ぎ払うと、カインの体ごと吹き飛ばした。ああ、なんて恐ろしい魔物だ。

そして、マンドリルは炎の出所がマリアであることを気付いたようで、こちらをギロリと睨みつけて、襲いかかってきた。

マリアは杖を持つ手が震えた。

「……ううっ…」

怖い。逃げなければと思うのに、恐怖で足が硬直して動かない。襲いかかってくるであろう衝撃に覚悟して、身を縮めるしかできない。

しかし、マンドリルは背後からの炎に襲われて、激しい音とともに勢いそのまま地面に倒れ込んだ。
今のは遠距離攻撃で、倒れていたカインのギラだった。

やった倒した!と思ったのに、マンドリルはなおも、わなわなと立ちあがろうとする。

「……マリア、逃げて!!この隙に逃げて!!」

逃げる?この隙に、彼らを捨てて??
そうしたら、二人はマリアがいなくなった後、殺されてしまうのではないか?

まだ自分にできることはできるはずだ。
マリアはもう一度杖を持つ手に力を込めた。

もう、私は誰も死なせたくない。

「ベホイミ…!!」

その魔法がちゃんと成功したのかを見届けることもできないまま、目の前には皮膚の焼けただれたマンドリルが襲いかかってきていた。

ああ……、今度こそ死ぬのかもしれない。

そう思った時、マンドリルが突然バタンと横倒れになった。だらりと倒れたマンドリルからは、先程までの凶悪な目の光が消えていた。

「はーー、あっぶねーー。大丈夫だったか?マリア。」

マンドリルを横なぎに斬り捨てたのはアレンであった。倒れていたアレンへのベホイミが効いたみたいだ。

「え、ええ……。」

危機一髪とはまさにこの事。九死に一生を得たようだ。

「あああ、マリアァ、大丈夫だったあ!?」

バタバタと四つん這いで這うようにして、カインもこちらへやってきた。

「カイン、お前こそ大丈夫かよ。」
「平気平気。マリアが無事でよかったー。」

自分でホイミを唱えて、カインは立ち上がった。

「私は大丈夫よ。アレン、ありがとう。助かったわ。」
「マリアこそ、助かったぜ。さっきはナイスフォローだった。あんな感じでいいんだよ。」

アレンが親指をグッとこちらに向けた。
先程の戦闘では厳しく怒られたが、今回は褒めてくれた。

「遠いところから、ギラで攻撃してくれたり、ホイミで回復してくれたり、
 あれ、助かるわ!なあ、カイン。」
「うん。本当そうだね。」
「これからも頼むな。」

信頼してもらえて嬉しい。本当に、アレンは怖いばかりの人ではなかったようだ。マリアを優しく励ましてくれた。
それに、最後のあの一撃はすごかった。本当に頼もしい。

だが……

アレンはマリアの魔法を褒めてくれたが、先程の炎はマリアの魔法ではなくて魔導士の杖の効力だ。
ベホイミが成功してるんだから、魔法自体が使えなくなった訳ではないだろう。ギラができないのは、一体何故なのか。

「マリア、大丈夫だよ。心配しないで。」
「え……?」
「マリアの魔力全然落ちてなかったからさ。すぐに強い魔法が使えると思うよ。」

不安になってるマリアにカインは大丈夫だと言ってくれた。彼には、さっきの炎が私の魔法ではないとバレているようだった。それでも、魔力が落ちてないという言葉は、安心できる一言だった。

「慌てず、ゆっくり行こうよ。」
「ゆっくり……」
「あん?少しは慌てろ、こののんびり屋が。そろそろ次の目的地に向かおうぜ。」

アレンはカインに絡みながらも、歩き出した。

「置いてかれるよ、僕らも行こうか。」

カインはマリアに向かって手を差し伸ばした。
まだ初めての戦闘で私は緊張が取れないでいた。少し躊躇しながらも、マリアはその手を取った。その手は少し温かかった。

「マリア手が冷えてるね。戦い…怖かったよね。」

初めての戦闘は、怖いか怖くないかで言うと、そりゃあものすごく怖かった。それでも彼らの戦い方は少しわかったような気がする。

「よく戦いを見ろって言われた理由がわかったわ。アレンすごかったし。」
「ね。本当、アレンはすごいよね。僕もいつも助けられてるんだ。」

確かに、アレンはすごかったが、それだけではない。

「カインもね、色々ありがとう。あなたは優しいのね。」

マリアはカインにもお礼を言わなければと思った。さっき、倒れながらもカインはギラで助けてくれた。それがなかったら死んでいたかもしれない。

それに、きっと自分がパーティに入ったから、カインはアレンと自分の間に入って、色々気を回してくれている。

「えっ…。そんなの……全然。」

だが、マリアが礼を言うと、カインは何故か顔を背けて顔を赤くしていた。

「おーい、カイン!ところで今日の飯はなんだ?金はねえけど、俺は腹減った。」

前方を歩いていたアレンが思い出したように振り返って、突然そんな事を言った。
その声にカインが顔をあげた。

「んもうー!お金がないのは誰のせいさ?」

そういえば、旅の間の食事などはどうするんだろう。町へ戻るのだろうか?と言っても、二人の言う通りお金はない。

「いつもどうしてるの?アレンったらあんなふうに言って……」

飯はなんだ?なんて、まるで召使いにでも言うような言い方だった。
聞いてみると、カインは苦笑しながら答えた。

「アレンは王子さまだからねえ。大体いつもあんなだよ。」

いや、その理屈はおかしくないか?王子さまはあなたもじゃないかと思いつつ。

「あはは、僕戦闘よりこっちが得意みたい。」

カインは旅の間の料理をしていたそうだ。

「さっき川があったから、アレンと魚でも捕まえてくるよ。」
「えっ、それで本当にあなたが調理するの?」
「そうだねー。魚だと塩焼きにすると美味しいよ。ムニエルなんかも美味しいけどね。あっ、マリア魚苦手だった?」

これは本気のようだ。

「い、いえ……そんなことないけれど。」
「良かった。ちょっと待っててね。美味しいご飯を作るからねー!」

なんだか、カインは気合十分な様子だ。野外料理ができるなんてすごいなあ。
彼らはれっきとした王族なのに意外と逞しい旅をしてきたようだ。取った魚を食べるなんて勿論初めてだ。マリアなんて、料理は屋外は愚か、お城でだってやったことがないのに。

もう、さっきから何もかもが未体験のことばかり。

でも歩き通しで、それなりにお腹がすいていたようだ。さっきまでの緊張感がほぐれたのか、カインが言う、その美味しい焼き魚の味も気になってきた。

川に向かおうとする二人の背中を見つめながら、これからの旅でどんな経験をしていくのかなと考えたけれど、今のマリアにはまだまだ想像もできなかった。





- 終わり -


2023/11/30

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【後書き】

いいさまるの日、ということで、三人旅の途中、あっちこっちを気にかけて頑張るカインを書いてみようと思ってやってみた話でした。特にマリアが仲間になった最初は、スムーズにマリアが入って来れるようにカインは結構気を使ってたんじゃないかな。
と、思ったんだけど、ふっつーの戦闘くらいしか書けず、カインまだ弱いし色々残念な感じにorz
でも、冒険中が書けたのはただただ楽しかったです(^^)。ほのかな矢印がカインからしか出ていない片思いの頃、懐かしいねえ。


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