はじまりと終わりの話 6



砂漠の町の飯はどんなものかと思ったが、案外悪くない。
スパイスが効いているのか、小ぶりな肉だがしっかりした味付けだ。
またこのスープは何とも形容しがたい、今まで食べたことのない味がする。
好きか嫌いかで問われると、好きだな、うむ、と思いながら
一気にスープを飲みほした。

先ほどから、静かに冷静を装って食事をしながら、
静かな時間を過ごしているが、
せいぜいアレンは味の感想くらいしか出てこない。

目の前のカインは特に何も言わない。

フォークを持って食事はしているものの、
どこか気もそぞろな様子だ。
既におかわり3杯目の自分と違ってあまり食も進んでないようだ。

「意外とこの飯うまいよな。」

「そうだね。」

話しかけると返事はする。話を聞いてはいるようだ。
アレンは他愛ない会話を続ける。

「この味付けのスパイス、何使ってるんだろうな。
 あんまり食ったことない味だよな。お前は知ってるか?」

「そうだね。」

……今の返答は、そうだねじゃないだろう。
やっぱり、こいつどうも何かに気を取られている様子だ。
ふんとため息をつきながら、外を見て言った。

「青空が広がって、今日は良い天気だな。」

「そうだね。」

その返事にアレンはバンっと机をたたいた。
その音に驚いてカインは顔をあげて、何事かと言う表情をした。

「俺を見ろ!」

その剣幕に、カインはアレンを凝視した。
ついでに周りの客も一斉にこちらを見た。

「ど、どうしたのアレン。」

「こっちのセリフだよ。
 薄らぼんやりして。お前人の話聞いてないだろ。」

「そんなことない……。」

「じゃあ、どこが青空広がってんだよ。」

「……。」

そんなことないと言ったカインだが、言葉尻が小さくなる。

「まぁ、良いや。
 大体のことは俺にだって分かる。
 きょろきょろきょろきょろしてるけど、
 お前には何か見えてるんだろう?」

「……。」

カインは否定しなかった。

「アレンの考えてる通りだよ。
 ここは人が多いから、歩きながら話そうか。」

そう言われて、アレンは慌てて食事を掻き込んだ。
 






砂漠にあるから外交が閉ざされた町かと思いきや、そんなこともないようで
ドムドーラはそれなりに活気もある町だった。

小さい子供が走り回っているし、
お腹の大きい妊娠しているのであろう女性も見かけた。

この町が、将来滅びてしまうとは、
俄かには信じがたいことで、
時の流れと言うのは、信じられないほど残酷だと思った。

「賑やかな町だよな。案外。」

「そうだね。でもドムドーラの町はいずれ滅びるでしょう。」

「そう、だったな……。」

ドムドーラは勇者アレフの伝説にわずかに名前が残るのみで、
今となってはアレフガルドにはその町の影も形も残ってはいない。

「多分それは遥か遠い事で、はっきりと分かる訳じゃないんだけど、
 皆その時は必死に戦ったみたい。」

「こんな平和な町なのにな。
 子供たちが走り回って活気あるじゃないか。
 信じられねえな。」

「うん。そうなんだけどさ。
 僕には子供が遊びまわってるのか、人々が逃げまどって走り回ってるのか
 分からない。」

「えっ。」

「すごいいっぱい人が行きかってるみたい。」

魔物に襲われて、逃げまどう人々の最後の姿だろうか。
状況は分からないものの、ただ強い無念の思いがにじみ出て感じられる。

「だから、さっきアレンに自分を見ろって言われて、
 なんか目が覚めた感じ。
 いろんなものが見えたり聞こえたりで、ノイズみたいになってたんで。
 こんなの久しぶりでちょっと面食らってたんだ。」

アレンが見ているこの風景とは全然違うものを見ているようだ。
カインは死んでしまう人が分かる魔法の力がある。
今は、この町全体がいずれ滅び行く運命なので、色んなビジョンが
嫌も応もなく目や耳に届くようだ。

ただ煩わしい、と言うだけでなく、カインがどこかへ連れていかれるんじゃないかと
不安になった。

「やばい町だな。
 だけど、その魔物の襲撃はずっと先の頃だろ。
 今の自分たちに出来ることはない。」

見えている幻影の人々を助けることなんて出来ないのだ。

「もう宿で休んだら明日にはすぐ町を出ようぜ。」

「そうしようか。ラダトームに行かなきゃね。」

居心地の悪い町に長居は無用であろう。

「じゃ、宿に向かうか。」

方向性は決まった。
宿に一直線向かおうとするアレンであったが、ふと武器屋が目に入った。
滅ぼされたかつての町の武器屋なんて、もう二度と覗くことはできないだろう。
ちょっとした興味できょろっと武器屋の様子を覗こうとするアレンに
カインは苦笑したように背中を押した。

「アレン、武器屋気になってるんでしょう。
 入ってみようよ、せっかくだし。」

「え、や……お前良いのか?
 その、なんだ……ノイズがすごいんだろ?」

「今更何言ってんの。ちょっとくらい平気だよ。
 それにアレンさっき言ってくれたじゃん。
 『俺を見ろ』って。他に気を取られそうになったら、アレンを見るようにするよ。」

と言って、カインは本当にアレンの顔をじーっと見ている。
あんまりそう真正面から見つめられるとどうにも落ち着かない。

「お、おう。
 そうしろ。」

だが、それで落ち着くならそうしてれば良いとアレンも頷いた。

覗いた武器屋は特に変わった様子のない普通の店だった。
ただ置いてる武器が見たこともないような武器だった。
アレンたちは置かれている武器と値札を交互に見比べた。

「なんだこの剣、見るだけで凄みを感じるな。」

「どれ?これ?
 ふぶきのつるぎ、23000ゴールド。うわ、高いね〜。」

「23000!?そっかー。今そんなに金ないわ。くっそ、気になる。」

初見の武器に目をキラキラさせているアレンにカインはふふっと笑った。
興味深い武器で、特殊効果などもありそうだが、
2万越えのお金は今すぐには貯められそうにない。

「ちょっと無理だね。」

「そうだな……。」

残念だが、諦めるしかない。
そうして、店を出ようとしたときに
入れ違いに一人の剣士が店に入ってきた。

「おっと……。」

アレンと肩をぶつける勢いで入ってきた男は、
目もくれずに店主に何か尋ねている。
探し物があるようだ。

きっと重大な武器か何かなんだろう。
一体何を必死に求めているのかアレンは少し気になった。

「……オリハルコンがここにあると聞いてきたのだが……。」

『えっ?』

アレンは思わず聞き返そうかと思った。
オリハルコンはロトの剣の材料となる特殊な金属だ。
男の質問に店主が何と答えるのかとそっと盗み聞きしようとした。

「うーん……。」

「店主、何か知っているか?」

「さっきからずっと考えているんだが……。」

「何をだ、オリハルコンの在り処か!?」

その勢い込んだ質問であったが、店主は心ここにあらずの様子だった。

「今度うちに子供が生まれてくるんだ。
 それでどんな名前にしようかと思って……。」

「……。」

その見当はずれの返答に男は肩透かしを受けたようだ。
店主はどこか遠いところを見ながら幸せそうな表情で笑みを浮かべている。

ちっと舌打ちすると、男は店を出て行ってしまった。

「赤ん坊の名前、何が良いかな。
 ゆき…のふ……なんてどうだろうか!?
 ん、あれ?お客さーん。」

店主は目の前にいたはずの客がおらず、きょとんとしている。
残されたアレンと目が合って、アレンはあいまいに笑った。

「え……、ああ……。い、いいんじゃね?
 親の思いがこもった名前はきっとずっと長く愛される名前になるさ。」

それっぽく良さげに答えてみた。
店主は嬉しかったようで、ぱあっと顔を輝かせた。

「あんた良い事言うねえ。」

そう言ってアレンの手を握った。

「そうだ、あんたの言う通り。
 愛されて、ずっと代々伝えられる名前になると良いなあ。」

店主はその願いを込めてアレンの手をぎゅっと握った。
どうしたものかと思いつつ、アレンも応える。

「ああ……。そうだな。悩むよな。大事な名前だもんな。
 こんなに必死に父ちゃん名前を考えてくれてるなんて、
 赤ん坊も喜んでるだろうさ。」

「ふふ。あんたも子供がいるのかい?
 名づけには悩むよなあ。」

確かに自分も息子の誕生の際には、その名づけに一角ならぬ思いをこめた。
だから、店主の思いも分からないでもない……。
などと、今は昔の記憶を掘り起こしている場合ではない。

「ところで、主、さっきの男がオリハルコンがどうのって言ってたが、
 この店にはまさかオリハルコンがあるのか?」

「は?なんの話だい?」

にこにこ笑顔の店主は曇りのない表情で笑ったままだ。
どうもこの店にはないようだ。

ところで、ふと気が付くと、いつの間にかカインがいない。
あいつ、ひょっとしてさっきの男を追ってるのか?

アレンも急ぎ、挨拶もそこそこに武器屋を出ることにした。

男の姿は近くには見当たらなかった。
カインはどこへ行った?後を追って遠くまで行ってしまったかと
思ったが、案外すぐ近くにいた。

そして、ボーっと明後日の方向を眺めている。

「ちぇっ、ぼーっとしてるだけかよ。
 機敏に情報を追ってくれてるのかと思ったのに。」

アレンは貴重な情報を逃してしまった腹いせに
一発カインをこついてやろうかと思った。
だが、カインはこちらに気づかず、何かに魅入られたように
ふらふらとどこかへ向かって歩き出した。

「なんだ、あいつどこへ行く気だ?」

アレンはあえて声をかけずにカインの後をつけた。

カインは隣の店の軒先まで行くと、
店の手前の小さな植木の前で何故か佇んでいた。
こっちの店の品ぞろえが気になってやってきたのかと思いきや
店の中には興味がないようで、
ずっと植木の根元を見つめている。

かと思うと、少しため息をついて、
すっと後ろを振り返った。

「わっ!」

振り返った至近距離にアレンの顔があって
ぶつかりそうになって、カインはのけぞった。

「ア、アレン。
 びっくりした。どうしたの。」

「どうしたのはこっちのセリフだーー!
 お前はふらふらとどこかへ連れていかれるのかと思ったぞ。
 さっきも言っただろ。変なもの見て何も言わずに勝手にいなくなるなよ!」

「ご、ごめん。アレン武器に夢中みたいだったから。」

「ったく、だからお前は俺を見とけって言ったんだ。」

よそ見をすると、こいつはふらっとどこかへ消えてしまうんじゃないかと
アレンは不安に思ってしまう。
さっきのだって、まるで誰か知らないやつにかどわかされて
連れていかれているような雰囲気だった。

「……。」

また、何か見えたというのだろうか。

アレンの不満そうな表情に、カインがおずおずと口を開いた。

「アレン、この辺りに強い思いが溢れてるみたいでね。
 誰かがとってもとっても大事なものを、
 誰かに渡したくって、他の誰にも奪われたくないって、
 大事な宝物をここに埋めたみたいなんだ。」

その言葉にアレンは少し驚いた顔をしたが、
すぐに首を傾げた。

「誰が誰に何かを渡したいって、なんの話だ?」

「分からないよ。
 でもいつかその思いをその誰かが受け取ってくれて、多分その思いは成仏するみたい。」

「はあ、そりゃ良かった。なんまんだぶなんまんだぶ。」

良く分からないが、アレンは手をあわせてみた。
ピンとしてない様子のアレンに、カインが続けて口を開く。

「もう、アレン何も分かんないの?」

「何がだよ。お前のそのわけわかんない説明で何を分かれってんだよ。
 どちら様の宝が誰かさんに渡ったからって俺が知るかよ。」

「知るかよじゃないよ。関係大ありだ。」

カインは意味ありげに小さな植木を指さした。

「勇者アレフの伝説で聞いたことあるでしょう。
 アレフが廃墟ドムドーラでロトの鎧を手に入れたって。」

「あっ!」

そう言われればアレフの伝記の中で聞いたことがある。
ロトの鎧はドムドーラの町の武器屋の大木の根元に隠されていたと。

カインが見た光景は、おそらく魔王軍に滅ぼされた時の
ドムドーラの町での光景。

何がどうなってこの町でロトの鎧を所有されていたのかは分からない。
あるいはここが武器防具屋だから、何かの縁で手にした伝説の鎧を
命に代えても何としても守り、心ある勇者に託したいと思ったのかもしれない。

「確か、その人の名前がゆきのふ、さん。」

「うわっ!?さっきの……!!」

先ほどの武器屋の主がつぶやいていた名前じゃないか。

「ねえ、アレンさっき良い事言ってたね。
 きっとその名前本当に代々伝えられるんだよ。」

「おおーー……。マジか!
 俺、ちょっと良い事言った?!」

「まぁ、その人の名前がゆきのふでもつちのこでも
 そこは別に大勢に影響ないはないだろうけどね。」

興奮するアレンに、事も無げにカインは切り捨てた。

「んぐ。お前、つまんないこと言うなよ。
 せっかくロトと俺たちの旅が繋がって来たかと思ったのに。
 大体、なんだよつちのこて。お前のネーミングセンス大丈夫かよ。」

「わ、悪かったね。それは良いんだよ、どうでも。」

せっかく盛り上がってみたが、
別に今ここにロトの鎧が埋まっているわけではない。

「でも、この小さな植木が大木と言われるほど立派になるまで、
 アレフの時代までは遠いみたいだね。」

「はぁ、なるほど。
 ようやく自分たちがどれくらいの時代にいるのか、
 少しは分かってきた……て、ことか。」

どうやら、自分たちは相当の昔にいるようだ。

「なあ、さっきの男が、
 この町にオリハルコンがあるって言ってたんだが。
 もう少し情報を探ってみないか?
 なんか、今なら良い情報が見つかるかもしれない。
 っ……お前が、良ければなんだが。」

「もちろんだよ。
 もう少しで何かが繋がりそうだもんね。」

アレンの提案に、カインは強くうなづいた。
宿に行くのは後回しだ。

2人は町の中で情報収集を始めた。
先ほどの男にももう少し詳しく話を聞きたい。

やはり情報収集は大事なものなのだろう。
存外色んな話が聞けた。
この世界の闇を払うには大魔王を倒す必要があるのだと言う剣士もいた。

「……。」

その話を聞きながら、アレンは引き続き先ほどの男を探した。
オリハルコンを探している男はここ数日ドムドーラの町に滞在していたようで
その目撃情報は見つかるものの
今は、もう町を出てしまったのか見つからない。

ドムドーラの町は案外広かった。
町のはずれには牧場もあったし、

「へぇ、馬をこんなに飼ってるのか。
 馬がいれば、これからの旅がちょっと楽になるかもな。」

「馬に乗って旅をするってこと?」

「そうそう。
 ラダトームに行くのだって、徒歩で行くのとは段違いに効率アップだぜ。」

「確かに、ね。のんびり道中楽しむような時間もないしね。
 でもさあ……」

急ぐ旅だと言う割に、この提案にカインは浮かない表情だ。
ははーんとアレンは思った。

「ひょっとして、お前乗馬が苦手か?
 一国の王子だったのに?普通、馬で遠乗りして野営とかするだろ?」

「し、しないよ。馬に乗る機会くらいはあったけど、
 はるばる遠出して、まして野営とかするのはアレンくらいでしょう?」

「マジか。しょっちゅうだったけど、同じ王子でも結構違うもんだなあ。」

「アレンのそれはローレシア兵団の修練の一つとしてじゃないの?
 僕はそういうことしてなかったし。」

「あー。そういう事か。」

確かにローレシア兵団に子供のころからもまれていたアレンは特殊だったかもしれない。

「遠乗りで野営はさておき、乗馬くらい普通だろ。
 馬、借りようぜ。」

「え、でもやっぱりさ、世話とか結構大変だよ。
 餌も切らせないし。」

と、アレンが提案してもうんと言わない。
ひょっとしてこいつのどんくささから言うと、落馬とかする系のどんくささを持つ可能性が?

「ったくしょうがない奴だ。そーんなに心配だったら、仕方ねえ。
 俺の馬に乗せてやるからさ。
 俺、よくクレハを後ろに乗せて軽く走らせてたんだ。
 お前も乗せてやるよ。」

クレハにするように、自分もと言われると
何だか若干の抵抗感を覚えた。

「の、乗れない訳じゃないよ!
 僕だってマリアと馬に乗ったことあるし。」

「ほう。お前らの事だから、のどかに城を外周1周でもしたか。」

「……。」

ずばりそうなんだろう。
返答のないのはその証拠だ。
アレンは可愛い二人の仲間のその様子にふふっと笑った。

「ま、別になんだ。
 馬の世話とか餌代考えても、1頭の方が楽だしな。」

アレンたちが牧場前でごちゃごちゃと喋っていると、
一人の女性がおや、と言う表情でこちらに声をかけてきた。

「あら、貴方、戻っていらしたの?」

「え?なんだ?」

アレンたちは初対面の相手かと思ったが、
女性は自分たちを知ってるような口ぶりだ。

「俺たちを知ってるのか?」

「先ほどもいらしてたでしょう。旅のお方。
 お仲間は沢山いらっしゃるのね。」

どうやら、誰かと人間違いしているらしい。

「牧場のしげみの輝きが消えてしまったようなの。
 貴方がた何か知っていますか?」

「え……なんだ?しげみ?何のこと……ぶっ」

突然の話に、訳が分からないアレンは憮然な表情をして聞き返したが、
カインがアレンの口をふさいだ。

「実は先日こちらで馬をお借りした際に、
 大事な指輪を落としてしまいまして。
 ずっと探してたんですが、あなたのおかげで見つけられました。
 感謝しています。」

「まぁそうだったのですね。それは良かったわ。
 とても必死に探していらしたものね。
 探し物が見つかって良かったわ。」

「ありがとうございます。」

アレンはもごもごと口を閉ざされながら、
カインと女性のやり取りを見守っていた。
何か、カインには思う所があるようだ。

「ところで私、仲間たちとはぐれてしまって。
 いつ頃、この町を出たでしょう?」

「え……、分からないけれど、黒髪の貴方とお話したのは
 2日ほど前の事よ。
 はぐれてしまったのね。どうか出会えますように。」

「ありがとうございます!」

カインがそう会釈したので、アレンも習って会釈して
微妙にへらっと笑っておいた。

なんのこっちゃい、と思いつつ、カインとその場を離れた。

カインは何かが解決したような、
少し明るい表情をしている。

「なんだよお前、なくした指輪を見つけたって。
 いつなくしたんだよ、そんなもん。」

どんくさいから結婚指輪でも落としたかと思って、
カインの指を取って薬指を見たが、別に結婚指輪を落としてる訳でもない。
そもそもまだ牧場に入ってもいないのに、そんなところに落とし物などできない。

「お前の言うことはさっぱりだー。」

アレンは早々に匙を投げた。
でも何か解決したのなら、それを聞きたくて内心うずうずしていた。

「多分多分、だよ。
 さっきから僕色んなものを見てるから見間違いかもしれないけど、
 アレンを見る町の人の目が何となく初対面じゃないっポイ感じでさ。」

「そうだっけ?」

自分のような旅の人間は多いだろうから、
別に目新しくもないからだろうと思ったが。

「武器屋の店主だって、初体面って感じだったぞ。」

「あそこの店主はもうすぐ生まれる子供の事できっとそれどころじゃなかったんだよ。」

「はぁ。」

それで、何がなんだって?

「全部ね、予測なんだけど。聞いて。
 なんだかね、アレンによく似た旅人がこの町に来てたっぽいんだ。
 その旅人には、仲間が数人いたようだ。
 そして、どうもこの町にはオリハルコンがあったっぽいんだ。
 不思議な輝きを放つ何かが、この牧場のしげみにあり、
 それは旅人が消えると同時になくなったようだ。」

「ふ……む……。」

アレンの様子を確認して、カインは再度身振りをつけて興奮気味に話した。

「もうちょっと膨らませるね。
 ここは勇者アレフの時代から遥か昔。
 かつて大魔王によって闇に覆われていた時代だ。
 そんな時代に、アレンとそっくりな旅人が、
 オリハルコンを手に入れたって言う。
 それって誰か、分かるでしょう?」

カインの言葉に、アレンの中で色々なことが繋がっていく。
闇に覆われていた時代。
それもアレンはかつての伝記で聞いていた。
その闇を晴らした人間も知っている。
アレンが、良く知っている人物だ。

「勇者ロト……。勇者、アレル……!」

大魔王を倒した偉大なアレンたちの先祖。
勇者ロトの名を冠する、勇者アレル、その人しかいない。

「そうだ。僕らはきっと、勇者ロトと時同じくして
 オリハルコンを追っているみたいだよ。」

その言葉とその事実に、
アレンは何故か武者震いがした。




- 続く -


2018/04/29

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【後書き】
少しは話が進んできた感じでしょうか。ようやく気付いた感、遅し。




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