今、非常に、3人は非常に困窮していた。
そう・・・お金が無いのだ。
このままでは明日宿に泊まるお金すらない、と言うことで
3人は今日一日を、金策に奔走する事にした。
夕方になり、カインは泥だらけになって戻ってきた。
「あ、アレン先に帰ってたんだね。ただいま〜。」
「よう、カイン、帰ってきたな。
お前泥だらけだな〜。」
アレンは寝台に座って、りんごをかじっていた。
今日働いた分のお金で買ったものだろうか?
「アレン、どうだった?お金いくらもらえた?
一日、今日は何してきたの?」
「お前のほうこそ何してきたんだよ?
やけに泥だらけだな。それに何だ、その紙袋。
食料か?」
アレンは目ざとくカインに持っている紙袋に目をつけた。
そうなのだ、ここには野菜や果物が色々と入っていた。
両手で持てないくらいの量だったので、紙袋に入れてもらったのだ。
「うん、町の外れにある畑作業を手伝ってきたの。
あんまり僕そういうのやった事なかったから、
逆に色々ご迷惑を掛けちゃったんだけど、こんなに色々もらったんだよ。」
・・・・要は給金ではなくて、現物支給をされたと言う事か。
まぁ、食い物は無いと困るが、あって困るものでもない。
「良い仕事してきたじゃん。」
「うん、アレンはどうなの?」
「ああ、俺のほうは首になったよ。」
「クビって・・・・えええええ!?」
どうやら、話を聞くと、アレンは自分の得意な武器なら、何か役に立てるかと思ったらしい。
だが、勿論今まで商売も仕事もしたことがない。
ぶっきらぼうな接客や、間違った金額計算などがあいついで、
店を追い出されてしまったらしい。
「じゃ、じゃあ、そのりんごは何?お給料で買ったんじゃないの?」
「ああ、これはな。
木になってたから、木登りして取ったんだ。」
「うわ〜〜〜!そ、そうなの!?」
なんか、さすがアレンと言うか、逞しいと言うか、サバイバルと言うか、何というか・・・・・。
しかし、何とも働くとは難しい。
王族の自分達はこういうのは一度もやった事がなかったのだ。
自分だって結局お給料を稼ぐことは出来なかったし。
結局これでは明日の宿代にはならない。
「やばいよねえ・・・。
どうしようか、もう思い切ってこの隼の剣売っちゃおうかな。」
結構買値が高かった剣だ、売ったらそれなりにお金にはなるだろう。
「ばーか、そんなことしたら、今度は宿には泊まれても、
旅に出れなくなるぜ?武器は手放すな。」
「う・・・うん・・・。でも、どうするのさ?」
「大丈夫だろ、もう1人の仲間が、きっと稼いでくるって。」
「・・・・!」
そうだ、まだ自分達にはマリアと言う仲間もいた。
常識人、知識人のマリアの事だ。きっと雇いたいと言う人は多いだろう。
「さっき街角でマリアにあったんだ。
女性としての作法が学べる所で雇ってもらえそうだとか
言ってたぜ。」
「あ、そうなんだ!?
さすがマリア〜〜〜!!!
でも、なにそれ、女性としての作法が学べるって?」
「さぁなあ。場所なら俺知ってるぜ。
結構町の外れにあった。行ってみるか?」
マリアが1人で働いてるのに、宿でくつろいで待っていると言うのも申し訳ない。
カインは、アレンと一緒にその場所に行ってみることにした。
**
アレンが連れてきてくれた場所は、人影があんまりないような薄暗い店だった。
近くへ行くと求人広告が張り紙がしてあった。
見てみると、経験問わず、年若い女性を求むと書かれてあった。
どうやら接客業のようだったが、詳しい詳細はイマイチ分からない。
「なんだか、何をやってるのか分からないね。
お店みたいだけど・・・。」
「食堂とかじゃねえの?」
確かになにやら飲食業っぽい感じである。
アレンとカインがお店を覗き込もうとすると、
背後から、怪しい人影が話しかけてきた。全身に布を被っていて何とも怪しい。
「お前達は求職希望者か。」
怪しい人影がそう聞いてきた。
あれ、求人条件に女性という条件は別に無いのだろうか?
「えっと、僕らでも働けます?」
「種族はなんだ?お前はスライムじゃないだろう。
人だろう?」
何だ何だその質問は。
「は・・・はい。」
「じゃあ、大丈夫だ。入れ入れ。」
半ば強引に店の中に押し込まれてしまった。
入ってようやく店の内部が判明した。
やっぱり飲食店なのだ。
そして、仕事と言うのは、給仕らしい。
「私が支配人だ。さぁ、新人達よ。早速仕事だ。
これに着替えろ!」
先ほどと同様布を被った人影から、衣類が投げつけられた。
どうやら、これが制服らしい。
「用意が出来たら、出てくるように!」
そう言って人影は去っていった。
「なんか、怪しくない!?仕事の説明もしないで!
それにさっきの質問って何なんだろ。種族は何だって。」
カインは、不審に思って近くのアレンに声を掛けた。
アレンは店内を覗きながら、渡された衣服を手に取った。
「なんかここ変な店だな。
メイドばっかりいるぜ?」
「メイドって・・・。お城でお手伝いしてくれる女の人みたいな?」
「ああ。」
王子である2人にとって、女性のお手伝いさんはそれほど遠い存在でもない。
女性としての作法と言うのは、
女性メイドとしての配膳のやり方とかそう言うことなのかも知れない。
が、じゃあ自分達が出来る仕事って何だ?荷物運びか何かか?と思ったが、
その予想は違っていた。
「で、ここにあるのもメイド服だ。
俺らもこれに着替えろってか?」
「え・・・え・・・・えええええーーーーー!?
それは無いでしょ!?僕ら男だよ!!」
「いや、そうなんだけどさ、ちょっとお前も中覗いてみろよ。
結構カオスだから。」
言われるままに覗き穴から、カインは店内を覗いてみた。
確かにアレンの言うとおりメイド姿の女性が数多く働いている。
が、何故か大なり小なり、年頃の女性とは思えない、
むしろ人とは思えないものも働いている。
それらが、しかも残念ながら、全部同じメイド姿で。
「う・・・わ・・・。」
思わずカインは見て悲鳴を上げそうになった。
どうも普通の職場ではない。
「なんか変だよ。
アレン、さっきの支配人の人に聞いてこよう。」
「むしろさ、人じゃねえかもな。」
アレンが言った言葉が妙に確信深かった。
顔と体を隠すような姿や、種族を確認されたと言う事。怪しいとしかいえなかった。
「もしかして、邪教が絡んでいるかも・・?」
カインがそう言ったとき、扉が開かれ支配人が入ってきた。
「何だ、まだ用意が出来ていないのか!?」
「よ、用意って・・・
俺ら男だぜ。こんな服着れるかよ!」
「着られる着られる。
服のサイズならギガンデスサイズまで揃っているんだ。
あいにくスライム用は無いがな。」
「・・・・〜〜〜っ。」
怪しすぎる職場だ。こんな所、こちらから願い下げだ、とアレンは思ったのだが、
何故かカインがアレンを押しとどめた。
「すぐ、仕度・・・します!」
「そうか、なら良い。早く着替えて来いよ。」
カインの言葉に、支配人は納得して出て行った。
アレンは、カインが洗脳にでもやられたのかと思った。
「お前、何言ってるんだ!?さっきここが怪しいって言ったじゃねえか。
しかもよりによって、お前メイド服って、着る気かよ!?」
「いや・・・怪しいけど、すっごい怪しいけど。
それにすーーーーーーっごい嫌だけど。」
「じゃあ、逃げちまえば良いじゃん。こんな所。」
アレンが腕めくりしてそう言った。
だが、カインは首を振った。
「だって、ここにマリアはいるんでしょ!?
しかも、この覗き穴にはマリアの姿が見えないんだ。
もしかして、奥で変なことをさせられてるかも・・・!」
そうか、忘れていた。ここには既にマリアがいるのだ。
「マリアの様子を見に行くために、
そのためにはメイド服だって着るって言うのか?」
しばらくの間のあと、カインは頷いた。
「すっごい・・・拷問だと思うけど。」
アレンはカインのその決断に驚いて、そして笑った。
「分かったよ。俺も付き合ってやるよ。
お前にだけこんな格好させられねえ。」
「え・・・ええええーーー!?
アレンも!?」
アレンの言葉に、カインは悲鳴をあげた。
「そ、それも拷問みたいなもんだね。」
「お前、俺がせっかく良い事言ったのに、なんだって?」
「いや、何も・・・。」
筋骨隆々のアレンのメイド姿なんて見たくもないが、
店内に見える巨人のメイド姿よりは幾分ましだろう。
いや、現実逃避している場合じゃない。
かっこよく決意したが、今から自分はメイド姿の衣装に着替えるのだ。
「死んでも、この姿を家族には見られたくないな。」
「ど。同感。」
2人はメイド服に着替えた。
「なんだ、カイン結構可愛いってお前。
お前は妹もいるんだもんな、大丈夫だよ。」
「それの何が大丈夫なの。僕が妹な訳じゃないんだし。」
「ははは。そりゃそうだ。」
「アレンも・・・えー・・・・・可愛くは・・・ない、けど・・・えーっと・・・。」
「フォローできないんだったら、フォローすんなよ。
むなしくなる。」
「・・・ごめん・・・。そうだね。」
用意が出来た二人は店内へと早速連れて行かれた。
支配人からは簡単に説明を受けた。
客に対しては、相手が誰であろうが、
「いらっしゃいませ、ご主人様」と言わねばならないらしい。
そして客には従順に。何でも言う事を聞かねばならないそうだ。
「い・・・いらっしゃいませ・・・ごしゅじん・・・さま。」
カインは完全に引きつった顔で、あてがわれた客に水を差し出した。
「おお、新顔のメイドさんだな。
近くへ座れ。どれ、顔を見せてみろ。」
ごつい髭面の客人は、酔っ払っているのか、
カインが男だと気付かないのか、喜んでいた。
「え・・・は、はい・・・。」
「ふむ、可愛いやつだ。今日はわしが可愛がってやろう。」
こんな男に可愛がられても全然嬉しくないし、
触られて鳥肌が立つ。
思わず固まってしまったカインの手を、アレンが引いた。
「お客さんごめんなさい。
俺、こいつとラブラブなんだ!
悪いけど、手は出さないでくれないか!?」
「・・・・・!?」
アレンはそう言うと、無理やり客からカインを引き離して
その場を立ち去った。
「お前、あんな客の相手してる場合じゃねえだろ。
俺達の目的はマリアを探す事。」
毅然とそう言うアレンは、メイド姿じゃなかったらどれだけカッコ良かっただろう。
「ア・・アレン・・・助けてくれて、こんな事言うの申し訳ないんだけど。
さっきの何!?僕ら、今女同士なんだけど!
どういう設定さ・・!?」
カインは思わず吹き出して、笑った。
確かに意味分からんけど、助けてやったのに、設定ってこいつな・・・。
しかしあんな目によもや自分も遭遇するかもしれないと考えると、
アレンは、やはり仕事なんてする気にはならない。
「あーーーー、それよりさ。
俺気付いた!店内の様子を自然に調べる方法。」
「え、なにそれ?良いアイディアがあるの?」
「ここは店なんだから、客になれば良いんだよ。」
「あ、そっか!そうだよね!何も店員として頑張らなくても良いんだ。」
今更ながら、アレンは良い事に気付いたと思った。
「あそこに席が空いてるだろ。
見つからない内に、順番に着替えちまおう。
お前その空席のあたりにいろよ。」
「うん、分かった。」
カインはアレンに言われたとおり、空席に他の客がこないように、
机を拭く真似をして、うろうろとしながらアレンを待った。
アレンはどうやら支配人に見つかる前に、無理やり着替えに
成功したようだ。
「あーやっぱり、この格好はすっきりするな〜〜。
このスカートとか言うのは、足元がスカスカして気色悪い。」
アレンはすっきりとしたようで、くつろいだ様子でソファに座った。
お客のアレンに水を出しつつ、カインは唇を尖らせた。
「良いな〜良いな〜。僕も着替えたいー!」
「まぁ、そう急くなよ。さっき支配人が戻ってきたら、
少しタイミングを見計らって・・・・。」
「ちょっと、あなた達何をしてるの!?」
アレンがそう言っていると、、背後から聞きなれた声が聞こえてきた。
普段通りの格好をしているマリアが、信じられないようなものを見るような顔つきで
こちらを見ていたのだ。
「うわあっ!!」
「マ、マリア・・・!?お前、無事だったのか!?」
「無事って何が・・・・?
私はさっき休憩を頂いてたけど、お仕事が終わったから、
お給料をもらったのよ。
今日は3人で仕事をしましょうっていってたじゃない!
アレンなんでこんな店に遊びに来てるのよ!!」
「いや、決して遊びに来たわけでは・・・。」
アレンは小さくその疑いを否定した。
が、客席に座って、メイド姿のカインと戯れている先ほどの姿では
アレンの言葉はあまり説得力がない。
どうやら、マリアは無事に一日の仕事を終えていたらしい。
怪しい邪教の集い場と思ったのは勘違いだったのだろうか。
「だって、この店変だろ。
変な巨人とかいるし。男だって怪しまれずに雇われたぜ!?」
「そ、そりゃあ・・・世の中には色んな人もいるわよ・・・。
どうやらこのお店にはドワーフなどの異種族の人も来るそうよ。
って、そんな事より、なんでカインはこんな仕事に手を出したの?
そんなに職に困ってたの!?」
「い・・・いや・・・職には困っていたけど、そう言うわけじゃなくて・・・。
僕は・・・マリアが無事かなあって・・・思った・・だけで・・・。」
最後のほうは声が小さくて聞こえなかった。
「わ、私を心配して、こんな所まで追ってきてくれたの・・?」
「うわーー!!
色々早まって馬鹿やったと思ってるよ!
マリア、こっち見ないでよ〜〜。」
そう叫びながら、カインはその場にしゃがみこんだ。
と言うか、こんな姿でマリアと顔を合わすことなんて出来なかった。
「大丈夫よ、妹さんみたいで可愛いから。」
「うわ〜〜〜、聞きたくない聞きたくない!!」
「あっ、ちょっとカイン!!」
カインは耳をふさいだまま、魔法でどこかへ消えてしまった。
「あのやろ、1人で、リレミトしやがったか。」
「まぁ・・・無理ないわよね。」
残されたアレンとマリアは顔を見合わせた。
「ところで、アレンあなた、お客のふりしてるけど、お金あるの?
私、絶対今もらったお給料で払うなんて嫌よ!?
しっかり働きなさいね。」
「ええっ!!?そう言うなよ!仲間じゃないか、俺を見捨てるなよ〜〜。」
1人残されそうになったアレンは、マリアに懇願して、
結局リレミトでその場を立ち去ったと言う。
- 終 -
2014/05/22
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【後書き】
なんやねん・・・これorz もう全然短くない。私どうやら短い話を書くには苦手だと分かりました。
それに、アレカイマリとか言いつつ、マリア全然出せんしorz
スイマセンでしたorz