SS集

※注意※
こちらのページにあるのは、小説未満短めSS(のつもり)です。
CPアレカイ、カイマリ、アレクレ、アレカイマリ・・・などで診断メーカーで検索して、何となく短文SSをやってみると言うもの です。クオリティは残念です。普段より短く終わらせる事を目標にしてましたが、全然駄目でしたorz

7日連続、7パターン書いてみました!
※お借りした診断メーカー様はこちら

◇アレカイマリ  冒険中 14/05/22
  『夕方+これは拷問?/ラブラブ/メイドさん』
◇カレルとアリス  クリア後未来(子供たち) 14/05/21
 『夏+兄弟(又は姉妹)/妄想/ヘソ見せ』
◇アレンとマリア  クリア後 14/05/20
 『春+常識外/Danger!!/ウェディングドレス』
◇カインとマイ  クリア後 14/05/19
 『昼+帰還の日/飛ぶ!/常識外』
 ◇アレクレ  過去 14/05/18  
 『梅雨時+Cuteな笑顔に負ける自分/潤んだ眼差し/遠い未来の話』 
◇ア レカイ  冒険中 14/05/17
 『夜 更け+太陽の匂いがする布団/緊縛 /Final answer?』 
◇カイマリ  
クリア後 14/05/16
 『夜 +温泉旅行/触れそうで触れない距離/放置プレイ』 




今、非常に、3人は非常に困窮していた。
そう・・・お金が無いのだ。

このままでは明日宿に泊まるお金すらない、と言うことで
3人は今日一日を、金策に奔走する事にした。

夕方になり、カインは泥だらけになって戻ってきた。

「あ、アレン先に帰ってたんだね。ただいま〜。」

「よう、カイン、帰ってきたな。
 お前泥だらけだな〜。」

アレンは寝台に座って、りんごをかじっていた。
今日働いた分のお金で買ったものだろうか?

「アレン、どうだった?お金いくらもらえた?
 一日、今日は何してきたの?」

「お前のほうこそ何してきたんだよ?
 やけに泥だらけだな。それに何だ、その紙袋。
 食料か?」

アレンは目ざとくカインに持っている紙袋に目をつけた。
そうなのだ、ここには野菜や果物が色々と入っていた。
両手で持てないくらいの量だったので、紙袋に入れてもらったのだ。

「うん、町の外れにある畑作業を手伝ってきたの。
 あんまり僕そういうのやった事なかったから、
 逆に色々ご迷惑を掛けちゃったんだけど、こんなに色々もらったんだよ。」

・・・・要は給金ではなくて、現物支給をされたと言う事か。
まぁ、食い物は無いと困るが、あって困るものでもない。

「良い仕事してきたじゃん。」

「うん、アレンはどうなの?」

「ああ、俺のほうは首になったよ。」

「クビって・・・・えええええ!?」

どうやら、話を聞くと、アレンは自分の得意な武器なら、何か役に立てるかと思ったらしい。

だが、勿論今まで商売も仕事もしたことがない。
ぶっきらぼうな接客や、間違った金額計算などがあいついで、
店を追い出されてしまったらしい。

「じゃ、じゃあ、そのりんごは何?お給料で買ったんじゃないの?」

「ああ、これはな。
 木になってたから、木登りして取ったんだ。」

「うわ〜〜〜!そ、そうなの!?」

なんか、さすがアレンと言うか、逞しいと言うか、サバイバルと言うか、何というか・・・・・。

しかし、何とも働くとは難しい。
王族の自分達はこういうのは一度もやった事がなかったのだ。
自分だって結局お給料を稼ぐことは出来なかったし。
結局これでは明日の宿代にはならない。

「やばいよねえ・・・。
 どうしようか、もう思い切ってこの隼の剣売っちゃおうかな。」

結構買値が高かった剣だ、売ったらそれなりにお金にはなるだろう。

「ばーか、そんなことしたら、今度は宿には泊まれても、
 旅に出れなくなるぜ?武器は手放すな。」

「う・・・うん・・・。でも、どうするのさ?」

「大丈夫だろ、もう1人の仲間が、きっと稼いでくるって。」

「・・・・!」

そうだ、まだ自分達にはマリアと言う仲間もいた。
常識人、知識人のマリアの事だ。きっと雇いたいと言う人は多いだろう。

「さっき街角でマリアにあったんだ。
 女性としての作法が学べる所で雇ってもらえそうだとか
 言ってたぜ。」

「あ、そうなんだ!?
 さすがマリア〜〜〜!!!
 でも、なにそれ、女性としての作法が学べるって?」

「さぁなあ。場所なら俺知ってるぜ。
 結構町の外れにあった。行ってみるか?」

マリアが1人で働いてるのに、宿でくつろいで待っていると言うのも申し訳ない。
カインは、アレンと一緒にその場所に行ってみることにした。

**

アレンが連れてきてくれた場所は、人影があんまりないような薄暗い店だった。
近くへ行くと求人広告が張り紙がしてあった。
見てみると、経験問わず、年若い女性を求むと書かれてあった。
どうやら接客業のようだったが、詳しい詳細はイマイチ分からない。

「なんだか、何をやってるのか分からないね。
 お店みたいだけど・・・。」

「食堂とかじゃねえの?」

確かになにやら飲食業っぽい感じである。
アレンとカインがお店を覗き込もうとすると、
背後から、怪しい人影が話しかけてきた。全身に布を被っていて何とも怪しい。

「お前達は求職希望者か。」

怪しい人影がそう聞いてきた。
あれ、求人条件に女性という条件は別に無いのだろうか?

「えっと、僕らでも働けます?」

「種族はなんだ?お前はスライムじゃないだろう。
 人だろう?」

何だ何だその質問は。

「は・・・はい。」

「じゃあ、大丈夫だ。入れ入れ。」

半ば強引に店の中に押し込まれてしまった。
入ってようやく店の内部が判明した。

やっぱり飲食店なのだ。
そして、仕事と言うのは、給仕らしい。

「私が支配人だ。さぁ、新人達よ。早速仕事だ。
 これに着替えろ!」

先ほどと同様布を被った人影から、衣類が投げつけられた。
どうやら、これが制服らしい。

「用意が出来たら、出てくるように!」

そう言って人影は去っていった。

「なんか、怪しくない!?仕事の説明もしないで!
 それにさっきの質問って何なんだろ。種族は何だって。」

カインは、不審に思って近くのアレンに声を掛けた。
アレンは店内を覗きながら、渡された衣服を手に取った。

「なんかここ変な店だな。
 メイドばっかりいるぜ?」

「メイドって・・・。お城でお手伝いしてくれる女の人みたいな?」

「ああ。」

王子である2人にとって、女性のお手伝いさんはそれほど遠い存在でもない。
女性としての作法と言うのは、
女性メイドとしての配膳のやり方とかそう言うことなのかも知れない。

が、じゃあ自分達が出来る仕事って何だ?荷物運びか何かか?と思ったが、
その予想は違っていた。

「で、ここにあるのもメイド服だ。
 俺らもこれに着替えろってか?」

「え・・・え・・・・えええええーーーーー!?
 それは無いでしょ!?僕ら男だよ!!」

「いや、そうなんだけどさ、ちょっとお前も中覗いてみろよ。
 結構カオスだから。」

言われるままに覗き穴から、カインは店内を覗いてみた。

確かにアレンの言うとおりメイド姿の女性が数多く働いている。
が、何故か大なり小なり、年頃の女性とは思えない、
むしろ人とは思えないものも働いている。

それらが、しかも残念ながら、全部同じメイド姿で。

「う・・・わ・・・。」

思わずカインは見て悲鳴を上げそうになった。
どうも普通の職場ではない。

「なんか変だよ。
 アレン、さっきの支配人の人に聞いてこよう。」

「むしろさ、人じゃねえかもな。」

アレンが言った言葉が妙に確信深かった。
顔と体を隠すような姿や、種族を確認されたと言う事。怪しいとしかいえなかった。

「もしかして、邪教が絡んでいるかも・・?」

カインがそう言ったとき、扉が開かれ支配人が入ってきた。

「何だ、まだ用意が出来ていないのか!?」

「よ、用意って・・・
 俺ら男だぜ。こんな服着れるかよ!」

「着られる着られる。
 服のサイズならギガンデスサイズまで揃っているんだ。
 あいにくスライム用は無いがな。」

「・・・・〜〜〜っ。」

怪しすぎる職場だ。こんな所、こちらから願い下げだ、とアレンは思ったのだが、
何故かカインがアレンを押しとどめた。

「すぐ、仕度・・・します!」

「そうか、なら良い。早く着替えて来いよ。」

カインの言葉に、支配人は納得して出て行った。
アレンは、カインが洗脳にでもやられたのかと思った。

「お前、何言ってるんだ!?さっきここが怪しいって言ったじゃねえか。
 しかもよりによって、お前メイド服って、着る気かよ!?」

「いや・・・怪しいけど、すっごい怪しいけど。
 それにすーーーーーーっごい嫌だけど。」

「じゃあ、逃げちまえば良いじゃん。こんな所。」

アレンが腕めくりしてそう言った。
だが、カインは首を振った。

「だって、ここにマリアはいるんでしょ!?
 しかも、この覗き穴にはマリアの姿が見えないんだ。
 もしかして、奥で変なことをさせられてるかも・・・!」

そうか、忘れていた。ここには既にマリアがいるのだ。

「マリアの様子を見に行くために、
 そのためにはメイド服だって着るって言うのか?」

しばらくの間のあと、カインは頷いた。

「すっごい・・・拷問だと思うけど。」

アレンはカインのその決断に驚いて、そして笑った。

「分かったよ。俺も付き合ってやるよ。
 お前にだけこんな格好させられねえ。」

「え・・・ええええーーー!?
 アレンも!?」

アレンの言葉に、カインは悲鳴をあげた。

「そ、それも拷問みたいなもんだね。」

「お前、俺がせっかく良い事言ったのに、なんだって?」

「いや、何も・・・。」

筋骨隆々のアレンのメイド姿なんて見たくもないが、
店内に見える巨人のメイド姿よりは幾分ましだろう。

いや、現実逃避している場合じゃない。
かっこよく決意したが、今から自分はメイド姿の衣装に着替えるのだ。

「死んでも、この姿を家族には見られたくないな。」

「ど。同感。」

2人はメイド服に着替えた。

「なんだ、カイン結構可愛いってお前。
 お前は妹もいるんだもんな、大丈夫だよ。」

「それの何が大丈夫なの。僕が妹な訳じゃないんだし。」

「ははは。そりゃそうだ。」

「アレンも・・・えー・・・・・可愛くは・・・ない、けど・・・えーっと・・・。」

「フォローできないんだったら、フォローすんなよ。
 むなしくなる。」

「・・・ごめん・・・。そうだね。」

用意が出来た二人は店内へと早速連れて行かれた。

支配人からは簡単に説明を受けた。
客に対しては、相手が誰であろうが、
「いらっしゃいませ、ご主人様」と言わねばならないらしい。
そして客には従順に。何でも言う事を聞かねばならないそうだ。

「い・・・いらっしゃいませ・・・ごしゅじん・・・さま。」

カインは完全に引きつった顔で、あてがわれた客に水を差し出した。

「おお、新顔のメイドさんだな。
 近くへ座れ。どれ、顔を見せてみろ。」

ごつい髭面の客人は、酔っ払っているのか、
カインが男だと気付かないのか、喜んでいた。

「え・・・は、はい・・・。」

「ふむ、可愛いやつだ。今日はわしが可愛がってやろう。」

こんな男に可愛がられても全然嬉しくないし、
触られて鳥肌が立つ。

思わず固まってしまったカインの手を、アレンが引いた。

「お客さんごめんなさい。
 俺、こいつとラブラブなんだ!
 悪いけど、手は出さないでくれないか!?」

「・・・・・!?」

アレンはそう言うと、無理やり客からカインを引き離して
その場を立ち去った。

「お前、あんな客の相手してる場合じゃねえだろ。
 俺達の目的はマリアを探す事。」

毅然とそう言うアレンは、メイド姿じゃなかったらどれだけカッコ良かっただろう。

「ア・・アレン・・・助けてくれて、こんな事言うの申し訳ないんだけど。
 さっきの何!?僕ら、今女同士なんだけど!
 どういう設定さ・・!?」

カインは思わず吹き出して、笑った。
確かに意味分からんけど、助けてやったのに、設定ってこいつな・・・。
しかしあんな目によもや自分も遭遇するかもしれないと考えると、
アレンは、やはり仕事なんてする気にはならない。

「あーーーー、それよりさ。
 俺気付いた!店内の様子を自然に調べる方法。」

「え、なにそれ?良いアイディアがあるの?」

「ここは店なんだから、客になれば良いんだよ。」

「あ、そっか!そうだよね!何も店員として頑張らなくても良いんだ。」

今更ながら、アレンは良い事に気付いたと思った。

「あそこに席が空いてるだろ。
 見つからない内に、順番に着替えちまおう。
 お前その空席のあたりにいろよ。」

「うん、分かった。」

カインはアレンに言われたとおり、空席に他の客がこないように、
机を拭く真似をして、うろうろとしながらアレンを待った。

アレンはどうやら支配人に見つかる前に、無理やり着替えに
成功したようだ。

「あーやっぱり、この格好はすっきりするな〜〜。
 このスカートとか言うのは、足元がスカスカして気色悪い。」

アレンはすっきりとしたようで、くつろいだ様子でソファに座った。
お客のアレンに水を出しつつ、カインは唇を尖らせた。

「良いな〜良いな〜。僕も着替えたいー!」

「まぁ、そう急くなよ。さっき支配人が戻ってきたら、
 少しタイミングを見計らって・・・・。」

「ちょっと、あなた達何をしてるの!?」

アレンがそう言っていると、、背後から聞きなれた声が聞こえてきた。
普段通りの格好をしているマリアが、信じられないようなものを見るような顔つきで
こちらを見ていたのだ。

「うわあっ!!」

「マ、マリア・・・!?お前、無事だったのか!?」

「無事って何が・・・・?
 私はさっき休憩を頂いてたけど、お仕事が終わったから、
 お給料をもらったのよ。
 今日は3人で仕事をしましょうっていってたじゃない!
 アレンなんでこんな店に遊びに来てるのよ!!」

「いや、決して遊びに来たわけでは・・・。」

アレンは小さくその疑いを否定した。
が、客席に座って、メイド姿のカインと戯れている先ほどの姿では
アレンの言葉はあまり説得力がない。

どうやら、マリアは無事に一日の仕事を終えていたらしい。
怪しい邪教の集い場と思ったのは勘違いだったのだろうか。

「だって、この店変だろ。
 変な巨人とかいるし。男だって怪しまれずに雇われたぜ!?」

「そ、そりゃあ・・・世の中には色んな人もいるわよ・・・。
 どうやらこのお店にはドワーフなどの異種族の人も来るそうよ。
 って、そんな事より、なんでカインはこんな仕事に手を出したの?
 そんなに職に困ってたの!?」

「い・・・いや・・・職には困っていたけど、そう言うわけじゃなくて・・・。
 僕は・・・マリアが無事かなあって・・・思った・・だけで・・・。」

最後のほうは声が小さくて聞こえなかった。

「わ、私を心配して、こんな所まで追ってきてくれたの・・?」

「うわーー!!
 色々早まって馬鹿やったと思ってるよ!
 マリア、こっち見ないでよ〜〜。」

そう叫びながら、カインはその場にしゃがみこんだ。
と言うか、こんな姿でマリアと顔を合わすことなんて出来なかった。

「大丈夫よ、妹さんみたいで可愛いから。」

「うわ〜〜〜、聞きたくない聞きたくない!!」

「あっ、ちょっとカイン!!」

カインは耳をふさいだまま、魔法でどこかへ消えてしまった。

「あのやろ、1人で、リレミトしやがったか。」

「まぁ・・・無理ないわよね。」

残されたアレンとマリアは顔を見合わせた。

「ところで、アレンあなた、お客のふりしてるけど、お金あるの?
 私、絶対今もらったお給料で払うなんて嫌よ!?
 しっかり働きなさいね。」

「ええっ!!?そう言うなよ!仲間じゃないか、俺を見捨てるなよ〜〜。」

1人残されそうになったアレンは、マリアに懇願して、
結局リレミトでその場を立ち去ったと言う。

- 終 -

2014/05/22

▲


【後書き】
なんやねん・・・これorz もう全然短くない。私どうやら短い話を書くには苦手だと分かりました。
それに、アレカイマリとか言いつつ、マリア全然出せんしorz
スイマセンでしたorz





船はもうすぐムーンブルクに到着する。
今日、俺は父上の代わりに、ローレシアの代表としてムーンブルクへ行くのだ。
公式のお役目なのだ。まだ15歳の俺にとって、こういう体験は初めてだ。

本当はこういうのは父上の出番なのだ。
父だって、いつもムーンブルクに行く時は、
お役目と言うより、親しい友人にでも会いに行くような気軽さで
むしろ喜んで行っているようなのだが、
今回は少し無理を言って代わってもらったのだ。

だって、俺はもう15歳なんだ。
父ほどとは行かなくても、一人前の男として、またローレシアの王子として、
少しは国の役に立ちたいのだ!

・・・・なんて言うのは、表向きの理由。
本当は、国内での窮屈な日々に少し飽き飽きして、
俺だって親しい友人に会いに行きたかったのだ。

ムーンブルクは何だかんだ言って、ローレシアから結構遠い。
こういう公的な機会でもないと会えないのだ。

誰とって?
ムーンブルクの王女のアリスだ。
もう結構長い事会っていない。

俺、結構背が伸びたと思うんだけど、気付いてもらえるかな。
・・・などと、無駄な心配もしつつ、俺はムーンブルクの大地を踏みしめた。

「ようこそ、いらっしゃいました。ローレシアの王子様。」

「あ、ああ・・・!」

門兵の歓迎に、少し緊張しつつ、俺は歩を進めた。
えっとまずは王宮へ行って、
女王様にご挨拶だな。それから、父から預かった手土産を渡して、
えっと、それから次は何するんだっけ。

俺は平常心を装いつつ、今日の予定を頭の中でフル回転させる。
自由時間は何時頃だろう。
夕方には、時間が出来るだろうか。

などと思っていると、全く予想もせず、
廊下の曲がり角で、俺は彼女に会った。

「あ、カル!!今日来るって聞いてたんだ!!
 いらっしゃ〜〜い!!」

「ア、アリスちゃん・・・・?」

気さくな様子でアリスは俺に声をかけてきた。

「どうしたの堅い顔をして。あ、ごめんね。今お役目の最中か。
 お母様はもう待ってると思うよ。」

「え、え・・・ああ。」

「じゃあ、後でね!」

そう言って、さっさとアリスは去ってしまった。
俺は、気の利いた返事の一つも出来ない自分を呪いたくなった。
せっかくアリスの方から話しかけてくれたのに。

いや、違うんだ。
俺は動揺してしまったんだ。

彼女のその・・・あまりに・・・何と言うか・・・ラフな姿に。
上半身は、薄い布切れを一枚羽織っただけで、
あれだ・・・お腹のおへそが丸見えだったのだ。

あ、暑いからだろうか。
今、夏だもんな。暑いからな。そりゃ服装も多少ラフになる。

思い出すと、俺は顔が真っ赤になってしまった。
ローレシアの王宮であんな格好をする女性なんて見たことない!

さらにはだ、アリスって今何歳になってるんだ!?
そっか、俺より2つ下だから、13歳か。

あんな薄い布切れ一枚では、隠しきれていないかすかな胸のふくらみまであったじゃないか!
あんなの前には無かったぞ?

・・・やばい!
思い出すと、何故か頭の中がアリスの先ほどの姿でいっぱいになってきた。
ちょっと、待て。
俺今公務中だ。あとで、ゆっくり会う時間はあるだろう。

むしろ、こうなったら、全速力で公務を終わらせるしかないな!

俺は、そんな事を考えつつ王宮へと向かった。
王宮には、女王のマリア様がいた。

「アレンの代わりに、はるばる遠い所へようこそ。
 船での旅路は大変だったでしょう。」

「いいえ、お気遣いありがとうございます!」

マリアはアリスに良く似ている。いや、逆か。
アリスがマリアによく似ているのだ。
だけど、マリアはこの暑い中でも、長めのローブ姿で清楚な雰囲気すらあった。

ふむ、親子でも結構違うものだ。

「私の衣服に何かついていますか?」

「あ!いえ、何にも!!
 申し訳ありません!!」

あんまりじろじろと見てしまって、不審がられてしまった。

俺は少し心を落ち着けた。
そして、父から言われた仕事を無事に終えた。

「今日は一日ゆっくりしておいきなさいね。
 もう、夜ね。あとで皆で一緒に夕食を囲みましょう。」

「お言葉、ありがとうございます。」

マリアの言葉に頷き、俺は王室を出た。

大役を終えて、少し足取りが早い。予定通り、時刻は夕方。
夕食までも少しは時間があるだろう。

アリスの居室は教えてもらった事がある。
・・・行っても良いだろうか?

いや、良いだろう。
さっきも終わったら、また会おうと言ってたし!
そうだ、暑いからな。
海に行くなんてどうだろうか。先ほどの服装はもしかして海帰りだったのかもしれない。

などと考えつつムーンブルク城の廊下を、歩いていると、
何故か進行方向を閉ざすように、
長い槍が急に通せんぼしてきた。

「・・・?!」

一瞬敵襲かと思ったが、違った。
道を間違って兵に足止めされたのかと思ったが、それも違った。
長い槍を持っているのは、子どもだった。

「カレルさま、お久しぶりです。」

「え・・・あ、お前・・・・。」

見覚えのあるその子どもは、アリスの弟のマナだ。
お久しぶりといいつつ、自分に槍をつきつけるその様子は
全然歓迎と言う様子ではない。

「ああ、久しぶりだな。マナと言ったな。
 なんだ、この槍は。」

「これですか?この槍はですね。
 僕、今日槍の鍛錬があったんですよ。
 槍なんて使い慣れて無くって、もう今日は一日散々怒られてやになりますよ。」

「・・・・。」

そんなことを聞いたのではない。
仮にも他国の王子に槍を突きつけるなんて、無礼ではないか。

「そうじゃない。なんだよ、久しぶりに会って、
 槍なんて向けやがって。失礼だろう?」

「ええ、そうですけど。
 こんな夕刻の時間に姉の部屋に行こうなんて、
 カレルさまこそ、礼を失していませんか?」

けろっとそんな事を言いやがる。

と言うか・・・・こいつは今何歳だ?10歳になるかならないかだと思うが、
そんな子どもなのに、かもし出す空気が冷え切っていて、正直・・・怖い。
が、ついこの間まで赤ん坊みたいだった奴に、負ける気なんてなかった。

「姉に何か御用ですか?
 なら、僕が承りますよ。」

「・・・・・・・」

ぐっ。正論である。
確かに夕刻、夜更けに、姫の部屋を1人で尋ねるなんて
礼を失していると言われたらその通りなのだ。

しかしこの自分よりよほど小さいマナにそうやって言われるのは
何だか悔しかった。

「それには及ばない。
 お、俺は、アリスに部屋に呼ばれてるんだ。」

「姉さまが?
 カレルさまを部屋に?」

「その俺に槍を向けたなんて、アリスに・・・
 いや、父君母君にお伝えしたら、お前の方が怒られるんじゃねえか?」 

そう言うと、しぶしぶマナは槍を下ろした。

・・・・・。
もちろん、今のは嘘だ。俺の妄想だ。

部屋に来てくれなんて、一度も言われていない。

「分かりました。」

マナが槍を下ろしたので、ほっとため息をつくと、
今度は驚く事を言いやがった。

「じゃあ、姉に聞いてきます。」

「〜〜〜っ!!」

けろりと踵を返してマナはアリスの部屋に向かっていった。
やっべええ!!!
嘘がばれたら、俺のほうこそ国の父上と母上に殺されかねねえ。
二度とムーンブルク行きの公使役なんて回ってこないだろう。

だが、もうごまかしようもない。
アリスに根回しも出来ないし・・・・。
俺の人生、終わった。。。

それもこれも、あのアリスのへそだしファッションが悪いんだよ。
くっそう。そうだよ、何故かと言われたら、それしかねえよ。

頭の中で訳の分からない言い訳をしていると、
しばらくして、アリスとマナが帰ってきた。

どんよりとした表情の俺にかけたアリスの言葉は
意外なものだった。

「カル、私待ってたのよ。思ったより遅いから心配したわ。」

「えっ・・・姉さま本当に?」

「アリスちゃん・・・・!」

アリスの言葉に、マナも俺も、一瞬言葉を失った。
マナは絶対俺の真実を見抜いていたはずだ。
だけど、アリスがこういうなら、仕方ないとばかりに諦めたようだ。

「マナ、あなた槍の修練終わってないんでしょう?
 またお父様に怒られるわよ。
 あなたこそ、夕食までに今日の分のノルマ、きちんとやらないと駄目じゃない。」

「・・・・はーい。」

アリスに言われて、しぶしぶマナは去っていった。

残された俺は、アリスに何と言うべきかと思った。
きっと、アリスが「約束なんてしてない」と言えば、俺はどうなっていただろうか。

「ア、アリスちゃん、ごめん・・・。ありがとう・・・。」

「え、何が?
 さっきまたねって言ったじゃない。」

そう言ってアリスは笑った。

「せっかく来てくれたんだもの。
 ゆっくりお話しましょ?」

よく見ると、アリスはもうドレスに着替えていて、
先ほどのへそだしファッションではなくなっていた。

さっきのは何だったんだ?

「ああ、俺も、聞きたいことがあるんだぜ。」

俺は部屋でこっそり聞いてみようと思った。

- 終 -

2014/05/21

▲


【後書き】
3000越えっす。やっぱ私ってどうしてもこれくらいになるんでしょうか・・・orz
って、今回は子供たちの少し成長した頃の話。
マナのくだりはこの前日記に書いた感じのをやれて嬉しかったですvv
いかにも思春期真っ只中、って感じのは、今までアレカイマリでは書けなかったので、
ちょっと楽しかったです。




なんだか、やたら会場周辺が花だらけになっている。
今が春で良い気候だから、だけじゃないだろう。

さっきカインの妹が、サプライズで花をプレゼントしていたが、どうも勢いあまったようで、
外の方まで、花だらけだ。

なんか一面が華やかで、賑やかで、俺は思わず笑ってしまった。

あーあ、あいつら、本当に結婚しちまったんだなあ。
嬉しそうなあいつらの表情も印象的だし、
これだけ大勢の人が集まったというのも印象的だった。

うーん、俺の時にはこんなに人が集まったっけ?
まぁ、準備期間がなかったってのもあるけど。

縁が切れるわけでも何でもないが、しかし、これで一段落と言うところだろうか。
これからはあいつらは、もう俺の手などからは離れて、二人で助け合って生きていくんだろう。
既に十分離れているんだが。

「・・・・・さて、俺も帰るか。」

だが、ローレシアに帰る前に、
最後にあいつらに挨拶でもしていこう。

ムーンブルク城の通路を歩いていると、
階下にマリアの姿を見つけた。

しかし、本日の主役マリアは大勢の来客の対応で忙しそうだった。
遠い各国から来てくれているから、無碍にも出来ないようで、来客が中々途絶えない。

とりあえず、一通り終わるまで、俺は通路にもたれかかって待つことにした。

・・・・

どれくらい時間が経っただろうか。
なんか俺は待ちくたびれて、軽くうたた寝していたらしい。
軽くその場であくびをすると、階下からまだマリアが喋っている声がする。

なっげえなあ。いつまで喋ってんだ。と思い、俺はふと耳を澄ました。

「美しいマリア様、このムーンブルクにも決して悪い話ではないと思いますよ!?」

「いえ、ですから、今はそのような事は考えていないのです。」

何だ?単なる挨拶かと思いきや、何かもめているようだ。

「ムーンブルクが魔法国家でしょうが、しかし、兵力は必要です!
 我が地域は武に覚えがありますよ。
 兵として雇っていただければ、御国の力になれましょう!」

「ですから、今は結構です!」

なにやら、男が自分の力を見せて、雇ってもらおうとしているらしい。
ふーん、まぁムーンブルクは兵の数も少ないし、無くはない話かもしれない。
しかし、マリアが嫌がっている。
別に他国の事に口を挟むつもりもないし、マリアが断ってるんだから、
これは引き下がるしかないだろう、と俺は思った。

「マリア様は魔法の力は優れているが、
 悲しきかな、力は女性の力しかない。」

「な、何が言いたいのです!?」

・・・・なんだか雲行きが悪くなった。
おい、なんなんだあの不躾な男は。
マリアは、男をにらみつけていた。

「こういう事ですよ!!」

すると、男はあろう事かマリアに手を出した。
信じられない。あいつ何しやがるんだ。

どうやら、力で抑え込もうと言うつもりらしい。
だが、馬鹿な話だ。
あの男はマリアが、世界を救った勇者の末裔だと知らないのか。

「離しなさい!!」

当然、マリアの怒りの一声とともに、魔法が一閃する。・・・・はずだった。
一瞬確かにバギらしい竜巻は舞い起きたのだが、
それは何故か、一瞬で消えてしまった。

なんだ?マリアのやつ、何をやってんだ?
あんな奴、ぶっ飛ばしちまえば良いのに!!
そう言えばマリアは、一般人に対して魔法は使えないんだったか?

くそう、カインの馬鹿はこんな時にどこに行きやがったんだ!?

「ふ・・・ふ。自慢の魔法は不発のようだな。
 そして、その腕力はやはり女性のものではないか!」

その言葉に、もう俺は我慢できず、
まんじりともせず、階下に飛び降りることにした。

「この野郎、マリアから手をはなせっ・・・!!!」

「な、なんだ!?」

突然天から降ってきた俺に驚いた男は、その場を仰け反って、マリアから手を離した。

「今日は結婚式の日、なんだぜ?
 その花嫁に手を出すなんて、こんな常識外れな事があるかよ!!」

「ア、アレン・・・どうしてここに?」

とりあえず、そのマリアの質問は無視する。
俺はもうこいつを許す気は無かった。

「く、貴様ムーンブルクの兵か?」

どうやらこの男、本当にあんまり俺らの事を知らないらしい。
そして、もう罪を避けられないと思ったのか、
ナイフを取り出して、今度は俺を押さえつけようと襲い掛かってきた。

が、こんな奴の太刀筋など、俺には物の数ではなかった。
相手のナイフを白羽取りの要領で抑え込んで、その刃を叩き割った。

「・・・兵じゃねえ。」

「な、何者だ!?」

何者?
マリアにとって、俺とは何だ?

その答えは、一つだろう。

「俺は、こいつの仲間だよ。」

「!?」

「あのさ、マリアに勝手に手を出されたりしたら、困るんだよ。
 今日は目出度い席なんだぜ。
 それに、俺に感謝しろよ、お前マリアに傷でもつけてみろ、今頃殺されるぜ。」

多分、今ここにいない奴にな。

そう言って、俺は男のみぞおちを一撃を喰らわせた。
男はあっさり気絶して倒れた。

「け・・・・他愛もねえ。」

本当なら、腕の一つもへし折ってやれば良かっただろうか?とも思うが、まぁ良いだろう。

「ア、アレン・・・ありがとう・・・。」

「ちぇー。こんな奴、いくらなんでも温情なんていらねえぜ?
 お前のバギでふっ飛ばしちまえば良いのに。」

マリアに、俺はそう言った。
バギを止めたのは相手を気遣ったからだと思ったのだ。

「そ、そう言うことじゃないの・・・・。」

不自然なマリアのか細い声に、不審に思って俺は振り返った。
すると何故か、マリアは後ろを向いていた。

「おい、マリア?」

「ご、ごめんなさい・・・・アレン、こっちを見ないで!!」

「?」

なんだ?何かあったのか?
もしかして、怪我しちまってたか?

「おい、どうしたんだ?怪我してたのか?
 見せてみろよ。」

「いやっ・・・!!」

俺が、無理やりマリアの肩をひくと、
マリアはらしくない悲鳴をあげた。
その声に驚いて、俺は思わず手を引いた。

「あっ、ごめんなさい!
 で、でも、アレン、あっちへ行ってて。お願い!」

「・・・・・・・。」

マリアはドレスの胸元を押さえて、
また後ろを向いてしまった。

俺は事情を把握した。
どうやら、ドレスの肩紐か何かが切れたのか、
胸元が、あられもない姿になっているようだ。

何とも危険な花嫁な姿だった。

もしかしてさっきのバギのせいだろうか?
それでバギを止めたのかもしれない。

俺はそう推察して、一瞬動揺したが、落ち着くよう軽く息を付いた。
そして、自分の上着をマリアの肩に着せてやった。

「・・・・・・ア、アレン・・・見た・・・の?」

「何が?なんも見てねえよ。」

「でも、これ・・・っ。」

「いーから、着とけ。」

マリアが上着を返そうとするので、俺はもう一度押し返した。
騒ぎを聞きつけたのか、ムーンブルクの兵が1人駆け寄ってきた。

「マリア様!?一体どうなさったのですか!?」

「あ・・・あの・・・これは・・・。」

マリアは一瞬答えに窮したようだ。
こいつは確かムーンブルク兵のクナ、とか言ったか。

マリアの信頼は厚い兵だと聞いているが、
でもマリアを守るのは、こいつでもないな。

「おい!クナとか言ったか。
 この不敬のゴミを牢にでもぶち込んどけ!」

「あ、は・・・はい!この者がマリア様に何かを!?」

「詳しくは後だ。とにかく、いーから、あとはカインを呼んで来い。
 急いでだ!」

「は、分かりました!」

俺のただならぬ雰囲気にクナは男を連れて、立ち去った。
多分すぐにカインはやってくるだろう。

だけど、マリアをこんな格好で放っておく訳にも行かない。
だから、その間だけ。

「・・・・・ア、アレン・・・・あの、ごめんなさい・・・。
 だけど、私。」

まだマリアは俺の方を見られないらしい。
だから、俺もマリアの方を向かずに答えた。

「マリア、お前が、本気で嫌だったら、俺はこっから離れるけど、
 カインが来るまでここにいてやろうか。どうする?」

「・・・・・・あ、ありがとう。」
 
俺は、その場で軽く頷いた

「ああ。任せとけ。」

ったく、今日で俺の手を離れたと思ったのに、途端にこれだ。
本当に、大丈夫か?こいつら。

「ま、しょうがねえか。俺はお前らのリーダーだからな。」

思わず、俺はそう言って笑った。

- 終 -

2014/05/20

▲


【後書き】
大体文字3000越え。ちーん。
カイマリ結婚式(52.花束)直後っぽい感じで。
アレンはいざとなったら、ちゃーんとマリアを守ってくれると思いますよ。
マリアはたまに変な奴に絡まれるね。で、本当にカインはどこにいってんだ(笑)




なんだか、妙にそわそわしてしまう。
今日はお兄さまが久しぶりに帰ってくるのだ。
毎日顔を会わせてたときには思わなかったが、中々会えなくなると会える機会がとても嬉しく思う。

せっかくだから何かお菓子でも作って待ってようかな。
どうせ、あののんびりやのお兄さまの事だし、
サマルトリアへの到着は夜とか、もしくは明日とか、下手したら数日後とかになったりして。

クッキーでも作ろうと思って部屋でこっそり作業を始めると、
俄かに表がざわつき始めた。

「マイ様!カイン様が戻られたそうですよ!」

「えっ、もう!?早!」

まだ昼ではないか。もっと遅いと思っていた。
まだ全然クッキー出来上がってないのに〜。

そう、兄は嫁ぎ先(?)のムーンブルクからの久しぶりに帰還なのだ。
結構行ったら行ったで、中々帰らない薄情な兄なので、
サマルトリアの皆も嬉しそうだった。

「マイ、部屋にいる?
 ただい・・・・わーーーー!?」

どうやら兄は最初に私を尋ねてくれたらしい。
嬉しい。嬉しいのだが、今は調理作業中。
秘密に作って驚いて欲しいので、入って欲しくなかった。

「お兄さま、私取り込み中よ!!!
 入らないで下さる!?」

そう言って、私は扉を閉じてしまった。
扉の向こうで、やや呆然としているであろう兄の姿が目に浮かぶ。

帰還そうそう拒否されて、何か気の毒だが、
ちょっとで良いから、どこかで時間をつぶして欲しかった。

しばらくすると扉の向こうの気配はどこかへ去ったようだ。
諦めたかな?そうそう、先にお父様にでも挨拶に行けば良い。

私は今の間に、クッキーを焼き上げてしまおうと思った。

しばらくして・・・・
クッキーはしっかり焼きあがった。美味しそうである。
さぁ、今度こそいつでも部屋に立ち寄ってもらいたい。そしてゆっくりお茶菓子を食べながら語らいたい。

と、思うといくら待っても兄は来なかった。

「んもう〜、本当にお兄さまって間が悪いなあ。」

私は部屋を出て、父に会いに行った。
多分そこに兄もいると思ったのだ。

だが、既に兄は父の王室からはいなくなっていた。

「え、もうお兄さまは出ちゃったんですか?」

「出たといっても、その辺におるだろう。
 なんだ、お前まだカインに会っておらんのか?」

「・・・・・・・。」

もしかして、お兄さま本気で怒っちゃっただろうか。
せっかく会いに来たのに、妹に拒絶されたりして。

「まぁ、お前に会わずに帰ると言う事は無いだろう。
 あいつが今回帰ってきた目的はとある報告があったからだ。」

「報告?なんですか?」

「ふふん、何も聞いておらんのだな。
 本人を捕まえて聞くが良い。」

父はいつになく上機嫌だ。
いつも通りの威厳をかもし出そうとしながらも、顔はしまりなく笑みを浮かべている。
めっずらしい!
きっとあの犬猿の仲の兄と会うんだから、また一つ喧嘩くらいするのかと思ったのに。

「なんだかよく分かりませんが・・・・分かりました。
 じゃあ迷子の兄を探してみます。」

一礼をして去ろうとすると、父が助言をしてくれた。

「恐らく、王妃の墓にでも行ってるんじゃないか。」

母のお墓か。なるほど。

私もそちらへ向かってみる事にした。
結構律儀な兄の事だ。ムーンブルクでの暮らしっぷりを母にも報告しているのだろう。

崖の上のサマルトリアの墓地へ向かうと、
確かにそこに兄がいた。

どうやら、母の墓に花を手向けてくれているようだ。

「お、お兄さま・・・・お帰りなさい。」

そう呼ぶと、兄はちらっとこっちを見た。

「ただいま。
 なんだマイ、もう取り込み中の作業は終わったの?」

持ってきた花に今度は水をやったりしながら、
兄は私に話しかけてきた。

・・・お、怒ってはないかな?普通かな?

恐る恐るその表情を伺うと、兄も少し嬉しそうな顔をしていた。

なんだ、怒ってないな、この顔は。

「さっきはごめんなさい。
 せっかく立ち寄ってくれたのに。」

「別に良いよ。
 久しぶりに会うのに、なんかいきなり追い出されて、
 非常識な妹だなあって思ったけど。」

怒ってる風でもないが、兄はそう言った。
まぁ、その通りだろう。
ちょっと常識外れな行動だったかもしれない。

「ご、ごめんなさい・・・!
 あのね、クッキーを作ってたの。
 まだ途中だったから、入って欲しくなかったの。
 あの、あの、お兄さま一緒に食べない?!」

しゃがんだまま、兄はこっちを見て、
少し驚いたような顔をして、そして笑った。

「わざわざ作ってくれたんだ、ありがとう。」

怒ってもおかしくない状況なのに、
喜んでくれる兄の変わらない優しさが嬉しかった。

「えへへ、ううん。
 それよりお兄さまどうしたの?
 なんか報告があるんだって、お父様言ってた。
 私も聞きたい。
 もしかしてマリアお姉さまに愛想付かされて、離縁を申し出られたとか!?」

「お前ねー。またなんでそんなひどい発想ばっかりするの?
 違うよ。」

「違うんだ。じゃあ何?」

私がそう尋ねると、今更兄が照れ出した。
なんだなんだ、マリアからもクッキーでももらったのか?と思ったが、
答えは驚きの内容だった。

「あのね、子どもが出来たみたいなんだ。」

「・・・・!!!
 え、え・・・!?ど、どこに!?」

「どこにって何さ。
 マリアに決まってるでしょう?」

兄の言葉を聞いて、
私も何故か顔を真っ赤にしてしまった。

うひゃーーーー!!
子ども!?赤ちゃんって事か!?

私より幼いところがあるような兄なのに!????

なんか信じられなかった。
でも、そっか、それで父もさすがに上機嫌だったのか。
厳格な父が孫を見てどんな対応をするのか想像すると面白い。

「お、おめでとうーーー!!
 お兄さま、おめでとうございます!!」

「え?あはは、ありがとう。
 今ね、母さまにも報告したんだ。」

「そっか、そっか!そりゃあ報告しなきゃだね!
 マリアお姉さまはお元気にされてる?大事はないかしら?」

「うん、元気だよ。」

「何か必要なものがあったら言ってね!
 何がいるのかしら!?えーっと赤ちゃんの服とか!
 哺乳瓶はいるかしら?赤ちゃんのベッドはいるわよね!?
 サマルトリアにもあるかしら。きっとあるわよね、私達のときのとか!」

「いや、ちょっと落ち着いて。
 まだ生まれるのは半年も先だし。」

既に私も何故孫でも生まれる祖母にでもなった気持ちで、
おろおろとしてしまったのだが、そっか、まだもう少し先なんだな。

「じゃあ、まだ少し先ね。
 ねえ、そしたらマリアお姉さまにも私クッキープレゼントしたい!」

せめての喜びの気持ちを表そうと思ったのだ。

「え・・・・でもマリアに食べてもらうものに、
 変なものを食べさせたくないんだけど・・・」

「ちょっとやだ。変なものって何よ。変なもの入れるわけないじゃない。
 お兄さまって心配性〜。」

「そ、そうだよね、ごめん。」

今の言葉からも、兄がどれだけマリアを、大事に、大事に思ってるのかが分かる。
そっかあ、もうすっかり兄はマリアのものなんだなあ。

飛び上がって喜びたい気持ちと、少しだけ寂しい思いと、
なんだか複雑だ。

いや、喜ばないと。家族のお祝い事なんだから。

無理やり頭を振って、駆け出そうとした私は、ここが崖の上で足場が不安な場所だというのを
忘れていた。そう、ここはサマルトリアを見回せるくらいの高台なのだ。

「きゃあっ!」

ずるっと、足を滑らせると、そのままずるずると滑り落ちそうになってしまった。
やだ、こんな所で怪我とかしたら、せっかくのお祝い事にケチをつけちゃう。
大丈夫、私の運動神経を持ってすれば、うまく着地できるはず!

目の前の木の枝に捕まろうとしたとき、
ふいに、目の前にあったはずの大木が視野から消えた。

「えっ。」

いや、よく見ると下に見える。
大木が落下してしまったのかと思ったが、違った。
私の方が上昇してるんだ。

枝に捕まるはずだった私の右手が誰かにつかまれてるのに気付いた。

「お、お兄さま??」

「もーーーー!!
 信じられない。こんな崖でわき目も振らずに急にダッシュするなんて、
 そんな事アレンでもしないよ?」

「・・・・ご、ごめんなさい・・・。って、これ・・・
 と、飛んでる・・・!!?」

なんと崖から滑り落ちそうになった私を兄が助けてくれたのだ。
空を飛んで!

「お、お兄さまがやってるの?これ、空・・・・。」

「そうだよ。
 このままサマルトリアの上空を飛んで、お城に連れて行ってあげようか?」

そんな事をけろりと兄が言う。
すごい、空を飛べるなんてすごいじゃないか。
それに、さっき私は兄はもうすっかりマリアのものになってしまったと思ったのに、
こうやって私を助けてくれた事が、とっても嬉しかったのだ。

「・・・・・う、うん!!」

私は思わず兄の首元に抱きついた。

この、つかの間の時間だけでも良い。
城に着いたらもう忘れる。兄はマリアに返す。

だから、私はサマルトリアのこの上空にいる間だけ、
今だけは、兄を独り占めしたかった。

- 終 -

2014/05/19

▲


【後書き】
全然短くない、今回も安定の3000文字。うーん・・・あかんなあ。
でもカインとマイでこんなんが出たら、どうしてもやりたくなったのだよ。
クリア後ですね。マイちゃんはお兄ちゃんが大好きです。

ちなみに大体書き時間は45分でした。



ここ最近ずっと天候が悪く雨ばかり続いていた。
梅雨だから仕方ないのだが、きっとアレンも退屈にしているだろう。
いつも外で遊ぶのを好む腕白盛りのアレンにはきっと不満な事だろう。

少しでも気が紛れるよう、
今日は色々な本でもお持ちしよう。
最近のアレンは外の世界に興味を持たれている。
だが、外には危険な魔物がいる。

あまり学業には熱心ではないアレンだが、
獰猛な魔物の勉強は比較的熱心に聞いていらっしゃる。興味がおありなのだろう。
だから、そう言った書物を持っていこうと思った。

「アレン様、いらっしゃいますか?」

アレンの部屋をコンコンとノックしてみたのだが、返事がない。

「アレン様・・・?失礼しますね?」

たまに部屋で寝ていることもあるので、恐る恐る私はアレンの部屋の扉を開けた。
が、アレンはそこにはいなかった。
午前の講義が長引いているのだろうかと思った。すぐ帰ってくるだろう。

私はアレンの部屋でしばらく待つことにした。
何気なく、持ってきた魔物読本を開いてみた。獰猛な魔物がいかにして人間を襲うかが書かれている。
恐ろしい話だ。出来れば、アレンにはこんな恐ろしい魔物と対峙してほしくはない。
勇者の血を引くアレンだが、先代王も平和な時代を生きている。
平和が続けば良いのだが・・・。

しかし・・・そんなことより、待てど暮らせどアレンが帰ってこない。
廊下の方に出てみると、俄かに城内がばたついている気がした。

「どうかしました?」

私が聞いてみると、あせったような様子の王妃が驚く事を言った。

「ああ、クレハ。アレンを見かけなかったかしら?
 アレンが見当たらないの!」

「え、いつからですか!?」

「朝の講義にも出なかったらしいの。
 だからもうかなりの時間になるわ!」

「そ、そんな!!私探してきます!!」

これは一大事だ。
一国の王子が行方不明になっただなんて。

さっきまで見ていた魔物読本の記事が頭をよぎった。
アレンに何かあったらどうしたら良いだろうか?
まだアレン様は小さな子供なのに、怖い目にあっていたらどうしようか!

どうしようかじゃない、お助けしなければ!

クレハは城中を探し回った。
どうやら、城の中にはいない。で、あれば城下町の方へ遊びに行ったのか?
町の子ども達に聞いてみても、アレンを見かけたという声はない。

私はどんどん気が焦ってきた。
もう後は人気の無いような場所しか残ってないではないか。
誘拐されてしまったのか、魔物に襲われたのか・・・
私が付いていながら、何ていうことだ!!

大雨が降る中、傘もささずに私は近隣を走り回ってアレンを探した。
夢中で走っていて、もうどこをどう走っているんだか分からない。

・・・今頃、何食わぬ顔で城に戻っているんじゃないか?

そんな気がした。私も一度城に戻ろうか?
そう思ったが、城に戻ったなら安全で良いが、もし戻ってまだ城にいなかったら
その時はより絶望が増すだろう。

そう思うと、城にも戻れない。

仕方なく歩き続けた。道はぬかるんでいて歩きづらい。
そこらじゅう水溜りだらけになっていた。

だが、しばらくすると、
なんと森の中の、大木の中に、雨宿りしてしゃがみこんでいるアレンを見つけたのだ。

「ア、アレン様!!アレン様!ご無事で!?」

「ん?クレハ、どうしたんだ。こんな所に来たりして。」

座っていたアレンは驚いて立ち上がった。
クレハが1人で森に行く事なんてないから驚いているのだろう。

その直後、私は信じられない行動をしてしまった。

パァン!と私の手のひらがアレンの頬を平手打ちしたのだ。

「い・・・ってぇ・・・。何だよ、急に何するんだよ!!」

アレンはビンタされた頬を痛そうに押さえて、不満そうにしていた。
一瞬とんでもない事をしてしまったと思ったが、
いや、私は仮にもアレン様の兄代わりなのだ、ここは引けない。

「急に城を出て行くとは何事ですか!!
 しかも王妃様にも誰にも行き先を告げず!!
 皆が、どれだけ心配したと思うんですか!!」

私の怒鳴り声にアレンは驚いたように顔をあげた。

「しかも朝の講義からいなかったと言うじゃないですか。
 許されませんよ。」

私のこの勢いに少し、しゅんとしたようにアレンが答えた。

「朝は雨が止んでいただろう。
 やっと、晴れたって思って、俺嬉しくって。
 ずっと出来なかった剣の稽古が出来るって思って。」

アレンは手に木刀を持っていた。晴れたから剣の稽古がしたかったなんて
アレンらしい理由ではあるが、だが駄目だと思った。

「剣の稽古なら城でもできます。
 誰にも言わず抜け出して良い理由にはなりませんね。
 何故なら・・・。」

何故なら、外には危険がいっぱいあるから、そういおうと思ったとき、
水溜りがシュッと跳ね上がった。

「何だ!?」

アレンは驚いたように、その場を後ずさった。
巨大ナメクジのような・・・・姿。それは先ほどの魔物読本で見た覚えがある。
紛れもなく、これは魔物!

「でっけえ、ナメクジだな。」

何の警戒もなく、アレンは木刀でそれを突こうとした。
すると大ナメクジはアレンの木刀をその気味の悪い舌で巻きつけて奪い取ってしまった。

そしてその体から不気味に触手を伸ばして、アレンに襲い掛かってきた。

「うわあっ・・・!!」

「危ない!アレン様!!」

思わずアレンを庇うように立ちはだかると、今度は大ナメクジが私に襲い掛かってきた。
ぬるぬるした触手が衣服を溶かしていく。

「アレン様!今のうちにお逃げ下さい!!」

「クレハ!クレハ!!」

アレンはその場から一歩後ずさった。が、逃げなかった。
先ほど奪われた木刀をがむしゃらに振りかぶって、大ナメクジに向かっていった。

「うわああーー!!
 こいつめ!こいつめ!!クレハから離れろ!」

アレンの勢いに驚いたのか、大ナメクジはその場を逃げ去った。

「はぁ・・・はぁ・・・・。クレハ無事か・・・!?」

「アレン様、あ・・・ありがとうございます。私なら大丈夫で・・・。」

そう答えようとして、クレハは驚いた。
アレンがボロボロと泣き出したのだ。

「け・・・怪我・・・。」

「ア、アレン様どうしたのですか!?お怪我を!?」

泣きながらそう言うアレンに驚いて声を掛けると、
アレンはぶんぶんと首を振った。

「クレハごめん!!!」

「え?」

「クレハが、怪我しちまった。俺のせいで。
 俺、ホイミが出来ないのに、俺には治せないのに・・・・。」

私は一瞬何と答えるべきかと思った。
アレンは、誰に怒られてもこんな風に泣く事はない。
そのアレンが自分の怪我を見て泣いてくれている。

その潤んだ瞳を見ると、私はアレンの優しさに胸が打たれた。

しかし、元はと言えばだ。

「だから、言ったではないですか。
 外はこんなに危険なのです。」

「ご・・・ごめん。」

これは良い教訓になっただろう。

「剣の稽古がしたければ、私に声を掛けて下さい。
 何かあれば、また私がお守り出来ます。」

その言葉にアレンは何故かぶんぶんと首を振った。

「アレン様?」

「今度は俺が、守るから!
 俺がクレハを守るから。今度だけじゃない、ずっとずっとだ。
 約束だ。」

その目の光に私は思わず息を呑んだ。
きっとアレンは強くなるだろう。勇者の血を引くものとして。
将来、遠い未来の、その立派なアレンの姿に、私は思いを馳せる。

「ええ、分かりました。
 そのためには、まずは午後の講義をしっかり受けて
 魔物についての知識を受けねばですね。」

「げーーー勉強かあ。それは苦手だ。」

思わず舌を出したその愛らしい姿に、今度は幼さを感じて笑ってしまった。

「あ、おい見ろよ!クレハ!!」

急にアレンが斜め上を指差した。
まさかまた魔物が現われたのかと思って、慌てて振り返った先に広がっていたのは・・・。

「綺麗だな!虹だ!
 いつの間にか雨が止んでる。やったー、やったー!
 なあ、クレハ城に戻って、お前の治療が終わって、
 午後の講義が終わったら、一緒に剣の稽古しねえか!?」

言葉の通り、空には虹がかかっていた。
アレンはぴょんぴょんと飛び上がって喜んでいる。

「ええ、良いですよ。」

私は、アレンのその可愛らしい笑顔にいつも負けてしまうのだ。

- 終 -

2014/05/18

▲


【後書き】
ふ・・・ふ・・・・長いorz
これで3000文字かぁ。今まで2000台やったのに、増えてるやないか。
なんかお題3つ入れて、下手にエピソードにしようとするのがいけないのか。
とりあえず幼少アレンとクレハです。子どもアレンのピュアっぷりは中々のものです。






時刻は夜。やっと夜が来た。

はぁ〜。今日も戦い尽くしで疲れた一日だった。
俺は、船室に戻って、部屋のベッドに思い切り飛び込んだ。

布団のやわらかさに思う存分体を投げ出した。

なんだか、今日はいつもより布団が良い感じだ。
うーん、どこが良い感じなんだろう?
いつもよりホクホクな感じで、そうだな、太陽のような匂いがする。
なかなか気持ちがよい。

「おかえり〜アレン。」

「よお、カイン。布団買い換えたのか?
 なんか、いつもより、気持ち良いな。」

既に部屋に戻っていたカインが少し嬉しそうな顔をした。

「買い替えなんてしてないよ。今日はずっと僕ら一緒にいたじゃない。
 でも違いが分かるなんてアレンもお目が高いね。
 今日は布団を干してみたんだよ。部屋もね、綺麗に掃除して。
 見てみて、窓もぴっかぴか。」

「おお・・・・。」

さすがの主婦レベル、と言おうとして口を噤んだ。
意外とあいつはそう言う言葉を嫌がるんだよな。
しかし、今日はカインは布団を干したり、掃除したりしてたらしい。
食事もこいつが作ってるんだからな。
まさに主婦だろ、と思いつつ。

「何アレン、どうしてニヤニヤしてるの?」

「いや・・・なんも。
 良いんじゃねえか。たまには。」

「たまじゃないよ、いつもやってるよ。
 もうアレンってば全然気づいてないんだから。」

ふむ、こいつの主婦仕事もたまに気付いて褒めてやらないと
へそを曲げるようだ。中々面倒くさい事だ。
しかし、今日は俺も良い仕事をしたって事だな。

「じゃあ、アレン僕は寝るね。
 明日も頑張ろうね、お休み〜〜。」

「ああ。俺はもう少し鍛錬してから寝るわ、先に寝てろ。」

「えっ。」

喋ってるうちに、俺の体力も戻ってきたようだ。
もう一頑張りベッドの上で筋トレでもしよう。
まずは腕立て伏せから。

黙々と腕立て伏せをとりあえず500回。

次に、腹筋だ。こっちもとりあえず500・・・

そう思いつつ、仰向けに転がると、
隣のベッドでなにやら悪戦苦闘しているカインの姿が目に入った。

「あれー、なんか変になってきたー。」

なにやら縄を片手に体に巻きつけてるらしい。
って、おい。あいつ何やってるんだ?

「カイン、お前何やってるんだ・・・・?」

「あ、アレン!ちょっとお願い手伝ってよ。」

そう言ってカインは、俺に縄の端っこを手渡してきた。

「あん?何だよ、これ。どうすんだよ。
 お前寝たんじゃなかったのか?」

「アレンが、あんなに頑張ってるんだから、
 僕も頑張ってやろうと思って!!!」

やろうと思って?
何を?なんだよ、緊縛プレイをか。

「俺、別にこんな事はやってなかったけど?」

「うん、アレンは別にいらないでしょ。
 でも僕いつもこれできつく縛ってるんだよ。
 ねえ、思いっきり縛ってよ。」

「はぁ・・・!?良いのかよ。」

いつもやってた?知らないぞ、そんなの。

「うん、お願いー。」

「え・・・・本当に良いのか?」

「良いってば。」

「Final answer?」

「・・・・ふぁい・・え? なにそれ。」

聞きなれない言葉にカインの目が丸くなっている。

「ほんっとうに良いのかって事だよ!」

「うん、だから良いってば。
 何、なんでそんなに確認するの。」

そこまで言うなら仕方がない。
やってやろうじゃねえか。

俺はカインの脚にまとわりついている縄を一旦引っ張って
そして、今度は腕に巻き始めた。
次に縄を返して反対の方へ・・・・。
そして十字になるように胴体にも巻きつける。

そう言えば、こいつきつく巻けとか言ってたな。
仕方ない、俺の本意ではないが、
こいつの願いならばやってやるか。

「え・・・・!?」

そこまでやってカインが戸惑いの声をあげた。
ちょっときつすぎたか?
でもお前の願いだからしょうがないだろ。

「ちょっ・・・ちょっと待ってよ!アレン何やってるの!?」

「何って緊縛プレイだろ。」

「はああああ!???
 違うって!何やってるの!!」

今更、こいつは何を言ってるんだ。
さっきFinal answerだったじゃねえか、もう無視無視。

「俺は一度決意した事は途中でやめたりしないのだ。」

「しないのだって・・・もう、アレンってば離してよ!」

「お前の望み通りきつーく縛ってあるから、
 お前には抜けられねえぜ。」

あ、やべ何か悦に入ってきたかも。
つーか、抜け出そうとするカインを見下ろす俺は
何かまるでどっかの悪の帝王かなんかみたいな気分だった。

「ふふふ、離さねえぜ。」

「んもおーーー!!」

「あ、お前っ!」

にやりと悪い笑みを浮かべた俺にカインは怒ったのか
全身を取り巻く縄を炎の魔法で燃やしてしまった。

「あちっ、あちっ・・・。」

魔法の勢いあまったのか、左手に残った炎を慌てて消して、
カインはベッドから下りた。

「ちぇー。何だよ終わりかよ。」

「ちぇーじゃないでしょ。
 アレン何するの!?びっくりした!」

「びっくりしたも何も、お前がやれって言ったんだろうが!」

「違うよーー!
 アレンと同じように腹筋したかったから、
 縄で足をベッドの端に結んでほしかっただけだよ。」

「・・・・・・・・。」

俺はその場で激しく脱力した。
いや、まぁそうだろうな、そうだろうとも。
何の因果で緊縛プレイをこいつが俺に求めるんだか。

まぁ・・・・少しは楽しかった・・・・気もする。

けど、なんだその理由は。
腹筋てお前。

「えーーーーい!!!
 貧弱もの!!!
 たるんでるんだよ!なーにが縄だ。
 お前は腹筋1000回だよ!終わるまで寝るんじゃねえ!
 俺が見張ってるからな!」

「げ・・・・・・。
 本当に?僕腹筋苦手なのに・・・!?」

貧弱ものは俺が鍛えてやるしかあるまい。
おかげで、まだまだ夜は終わりそうにない。

- 終 -

2014/05/17

▲


【後書き】
短くないね。結局昨日と同じくらいだ・・・。でも文字カウントするといつもの小説よりは大分短いから良いか。
しかし、お題3つ全部入れるとおかしな話にしかならない(笑)。
アレカイは書いてて楽しいです。多分冒険中序盤の船の中!






クレハさんもマイさんも、こんなにお酒を飲むとは思わなかった。
私達は今温泉宿に来ていて、部屋割りで男女別に別れることになった。すると、女子会だと盛り上がってマイさんが沢山お酒とお料理を頼んだのだ。

「こんなに飲んで、明日大丈夫かしら?」

赤い顔をしていてぐっすり上機嫌に眠ってしまった二人に薄い毛布を掛けて、私は少し酔いを冷まそうと部屋を出た。
部屋を出ると、廊下は薄暗がりで驚くほど静寂が広がっていた。隣の部屋にはアレンとカインがいると思うが、既に静まり返っている。もう休んでいるのだろ う。

月でも見ながら風にあたれば酔いもされるだろうと、廊下を歩いていると、前から見知った人が歩いてきた。
カインだった。まだ部屋で休んではいなかったのか。

「やあ、マリア。どうしたのこんな時間に。」

「それはこっちの台詞よ。どうしたの?」

と聞いておきながら、カインの少し赤い顔を見て、恐らく同じ目的なんだろうと思った。

「えへへ、飲みすぎちゃったよ。
 少し酔い冷ましに。もしかしてマリアも?」

「ええ、そうよ。良かったら一緒に少し歩かない?」

そう聞くと、カインは嬉しそうに頷いた。
私達は道々に歩きながら、少し会話を楽しむ事にした。

「飲みすぎるなんて珍しいわね。アレンはどうしているの?」

「飲みつぶれて眠ってるよ。料理もね、晩御飯食べてるのに、
 こーんなに頼んじゃって。」

「同じね。マイさんもクレハさんもすごく飲んじゃって、眠っちゃったわ。」

「飲んだ?マイは酒飲むと上機嫌になって、笑い出すでしょう。
 マリアに絡んでこなかった?迷惑かけなかった?」

「ふふ、面白かったわよ、マイさん。
 それにね、聞いて。クレハさんてば飲むと泣き上戸なのよ。
 そんな2人の会話を聞いてるのは面白かったわよ。」

「あはは、そうなんだ。良いなー、聞いてみたかった。
 アレンはね、妙に絡み酒だったよ。こわいこわい。」

などと廊下で歩きながら話していても、他に人の気配を感じなかった。
会話の声も少し響き渡るようで。歩いていても、手が触れるような距離である。

そんな事を思うと妙に、意識してしまう。

「マリア、どうかした?」

歩く速度が遅くなった私を不審に思ったのか、カインも足を止めた。

「何か変なものでもあったの?」

その問いに何と答えようかと思った。
まさか手を繋ぎたいなんて言えなかった。
私は何かないものかと、左右を見渡した。その様子は少し不自然だっただろう。

だけどカインは何も言わずに、一緒に左右を見渡している。

いや、別に・・・・変なものも怪しいものもないのだ。
ますます、どう答えようかと困ってしまった。

が、カインは何かに納得したように頷いた。

「ああ、この部屋空いているんだね。
 誰もいないー。」

「え・・ええっと・・・ええ・・・。」

なんか上ずった声で私は頷いた。
扉が開きっぱなしの部屋がある。誰も客が入っていない部屋のようだ。

いや、ちょっとそんな事を気付いてアピールしたかったんじゃない。
カインの顔が見れない。どんな顔をしているだろうか。
私はどんな顔をしているだろうか。

いいや、顔が赤くったってそれは酒の飲みすぎのせいなのだ。

「ちょっとだけ、こっそり入っちゃわない?」

「え・・・!?」

カインが驚く事を言った。

「廊下で喋ってるのもあれだし、ねえちょっとならきっとバレないよ。」

なんだかすごく心臓がバクバクしてきた。
夜に何をはしたない事をしているんだと、怒られるだろう。
怒られるって誰にだ。

あーー、もう頭が全然整理できない。

「ちょ・・・・ちょ・・・っと・・・なら・・・。」

過去最高に上ずりながらも私は頷いた。
カインの顔は相変わらず見られない。はしたない娘だとか思われてたらどうしよう。

色々な事が頭をめぐっていると、カインは同じ調子で、マリアに言った。

「じゃあ、ここにいてね。」

言うやいなや、カインはどこかへ去ってしまった。

「・・・・!?」

ようやく顔をあげた私であったが、既にカインはそこにはおらず、立ち去っていた。

「え・・・カイン・・・どこへ行ったの!?」

置いていかれた私は呆然とした。カインは何と元の部屋に帰っていったではないか。

2人で部屋に入ろうと言うのではないのか。
いや・・・そりゃ・・・そうだ。そんなはしたない事するはずがない。
話もひとしきり終わったから、私の休憩に部屋を使えばどうか?と言うことなのだろう。

そう言うことだろう・・・。

さっきの赤くなったり、青くなった時間は何だったのだろうか。
なんだか、どっと疲れた。

疲れたので、言われたとおり部屋に入って、少しだけでも休憩しようと思った。
間取りはどうやらどの部屋も同じらしいな〜・・・などと思っていると、扉を誰かがノックした。
宿の人かと思って思わず飛び上がりそうになった。

「マリア〜。あけてー。」

その声はカインだった。扉を開けるとそこには、お皿にいっぱいのフルーツが盛り付けられていた。

「ど、どうしたの?」

「お待たせー。酔い覚ましに、フルーツとか良いかな?って思って持ってきたんだ。
 ねえ、僕も部屋にいれてよ。
 マリアまだ顔が真っ赤だよ。まだ酔いが残ってるみたいだね。
 ほら、マリアの好きないちごもあるよ。」

これは、きっと・・・・酔いではないと思いつつ。
私は火照る顔を恥ずかしそうに隠した。

- 終 -

2014/05/16

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【後書き】
長いやん!!!
あかんて!!!目標短いSS!!
せっかく面白いお題が出たので、お題73「挑発」の続きって感じですかね^^
珍しくマリア一人称で〜。しかし勝手に部屋に入ってはいけないね(−−)

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