ワンライSS

※注意※
こちらのページにあるのは、
DQ版深夜の真剣文字書 き60分一本勝負に参加させていただいた際のSSです。
詳しくは上記リンクより

◇お 題「盗賊男、サマルトリア王女、 ボストロール、デイン系、聖な る守り、わ がまま」 より  15/03/14

◇お 題「トルネコ、ムーンブルク王 女、シドー、ギラ系、バロンの角笛、みえっぱり」より  14/10/18









※激しく自所設定です。時系列クリア後。


「お兄さま、ねえ、お兄さま。
 私、王子様に会いたい。」

妹のマイが唐突な事を言い出した。

「は・・・?何って?誰って?」

「だから、王子様。」

カインは疲れた頭で、ぼーっと頭を整理しようとした。

長い長い旅を終えて、
アレンやマリアを見送って、無事にサマルトリアに帰城したのは
つい1時間ほど前の事だ。

父王への挨拶も終わり、
今日くらいはようやく羽を伸ばしてのんびり休めるかなと
ソファに座って、背もたれにもたれかかって、
心地よい疲労に身を任せようとした直後だった。

だから、マイの脈絡のない発言に
事情が飲み込めずにきょとんとした。

「あのね、良いでしょう。」

マイはカインの顔を覗き込みながら、
ソファの隣に座った。

「えーっと、何?
 王子・・・さま?」

「そうそう!王子様!」

この妹は急に何を言い出したんだろう。

「えーっと、僕じゃなくて?」

自分だって王子なんだけど?と
やや朦朧とした頭で自分を指差してそう言うと、
今度はマイがきょとんとした顔になって笑った。

「やーだ。そうじゃなくって!
 うーん、確かに言われて見ればお兄さまも
 王子様だけど、そうじゃなくって!」

「・・・・????」

駄目だ、疲れてて、この妹に何を言われているのか良く分からない。

「ねえ、待って。
 マイは急に何を言ってるの?」

「私ね、今度お兄さまが戻ってきたら、
 これをお願いしたいと思ってたの。
 ずっと。」

マイは真顔で訴えてきた。

「・・・・?そうなの?」

「そう、ずっと。」

そうか、ずっと思ってたのか。

ちょっとよく分からない願い事だが、
この妹には随分不自由な思いをさせたと思っている。
そのくらいなら叶えてやろうと思った。

「分かったよ。
 王子様ね。良いよ。」

「本当!?やったー!」

カインの言葉にマイはその手を取って喜んだ。

何だかよく分からないが、
とりあえずカインは『とある王子』を脳裏に浮かべて
瞬間移動魔法ルーラを唱えた。



+++


「おわっ!」

その人物は突然現れたカインとマイに驚いて仰け反った。

「うわ、びっくりしたー。
 急に現われてどうしたんだよ。
 カインとそれに姫まで。」

目の間にいるのはついこの間分かれたばかりの
旅の仲間で親友のアレンだった。

「あ、ここローレシア?」

マイはきょろきょろと周りを見渡している。

「ローレシアはローレシアだけど・・・。
 お前ら、ちょっとここはまずいぜ?」

「え?」

言われてカインも周りを見渡した。
神聖な空気が流れているここは・・・。

「ここってもしかして宝物庫??」

「そうだよ。
 俺がいるから良いけど、
 急に宝物庫に侵入者が来たとなったら、
 カイン盗賊男として捕まるぜ。」

「わー、それはまずい。」

アレンの言葉にマイが少し驚いて口を覆った。
確かに他国の人間が、アポイントも無く
侵入していい場所ではないだろう。

「ご、ごめん。
 アレンの顔を思い浮かべてたから、場所は考えてなかったよ。
 正門にでも行けば良かった。
 アレンごめん。」

「いや、別に・・・良いけどさ。
 それより俺に何か急用か?」

アレンは当然の質問をしてきた。
急用?
急用というより、この妹の急なわがままに付き合っただけだ。

「なんか、マイがね。
 王子様に会いたいんだとか急に言い出して。」

「王子?お前もじゃん。」

「うん、なんか僕じゃない王子様。
 だから、王子のアレンでいいかなあと。」

自分でもアレンと
相当訳の分からない会話をしているなと思いつつ、
隣のマイはニコニコとしている。

「ふーん。何だかよくわかんねえけど、
 俺、もう王子じゃないぜ。」

「え、あ!!」

そう言えばアレンは先日王に即位したのだった。
もう、王子様ではないのだった。すっかり忘れていた。

「ねえ、マイ。
 そしたら、アレンじゃ駄目?」

「そうですねえ。それじゃあ駄目ですねえ。」

と言いつつ、マイはアレンを祝福した。

「アレン様!おめでとうございます!
 お兄さまと同い年で王様だなんて、やっぱりアレン様は
 カッコいいです!」

「そうか?ありがとう。」

何と答えたら良いのか分からず、アレンもとりあえず礼を言った。

「アレンはここで何をしていたの?」

宝物庫に来ているなんて大事な用事があったのだろうかと思った。
であれば邪魔してはいけない。

「これをな、戻そうって思って。」

アレンがそう言って取り出したのは、
ロトの印だ。
旅の間、これを巡ってローレシアでは一悶着があり、
またこれのおかげでロトの兜が手に入ったのだ。

役割を終え、またもとのローレシアの宝物庫で
守って行きたいと思ったのだ。

「ロトの印。そっか。」

いつか、何代か先の子孫達が
またこれを手にすることがあるかもしれないと
カインも思いを馳せた。

すると、隣にいたマイがぴょこんと顔を出して
ロトの印を覗き込んだ。

「これが、ロト伝説に出てきていた
 聖なる守りですね!」

「え?」

「聖なる・・・守り?」

マイの言葉にアレンとカインが顔を見合した。

「そうですよ!
 ロト伝説で詠われている聖なる守り!
 ロトを救ったと言う聖なる守りは
 ロトの印として今に伝わっているんですよ。
 わああ、私この目で見られるなんて幸せです!!」

マイは眼福だと喜んでいる。
言われて見れば、ロト伝説ではその一節が確かにあった。

「そう言えば・・・そうだったな。」

これは、ロトの時代から脈々と伝わる重要アイテムなのだ。

「これからもロトの印をしっかり守り続けてね、よろしくねアレン。」

「ああ。分かってるさ。任せとけ。」

アレンは頷いて、頑丈な宝箱の中にロトの印を祭った。

そして、一仕事終えて、
部屋に戻ろうとするアレンは、
何気なくカインに聞いた。

「なあ、お前マリアとどうだったんだよ?
 うまくいったのか?」

アレンはニヤニヤと笑っている。
ローレシアからムーンブルクへは、カインとマリアの2人で戻った。
どんな顛末を迎えたのか、気にしていたのだ。

「え?うん。
 えへへ、そうだね。うまく・・・と言うか、うん。
 うまく行ったよ。」

「ほーーーー。そうなのか。
 へたれのお前がなあ、そうかよ。
 なあ、ちゃんと詳しく聞かせろよ。」

アレンがそう言ったところ、カインの前にマイが立ちはだかった。

「お兄さま、今日は私と付き合ってくださるんですよね?」

「え、付き合うって・・・。
 王子様探し?
 それって一体どういう意味なのさ。」

カインは今更ながらに首を傾げた。

「お兄さまばっかり、世界中を楽しく旅して、
 挙句の果てにはマリア様なんて素敵な王女様と
 仲良くなったりしてずるいわよ!」

「え、そんな意味だったの?」

少々呆れ気味のカインに、マイがなおもまくし立てた。

「ずるいのよ、お兄さまはずるいのよ!
 私はずーっとサマルトリアから一歩も出られなかったんだから。
 お兄さまが帰ってくるまで、一歩も!
 ずっと大事なお役目だからって、
 お兄さまの代わりに私サマルトリアを守ってきたんだから!
 私だってずっと頑張ってきたんだから!」

それを言われると、少々辛い。
特にマイにはサマルトリアで特に大変な目にあわせてしまったと思っている。

「何か一言くらい言ってみてよ!」

「それを言われると、お前ぐうの音もでないな。」

アレンもマイに同調するように、頷いている。

「ぐう?」

「いや、ぐうじゃなくて。」

何か言えと言うので、何か言ってみたが、
アレンが呆れたように笑った。

いや、分かった。
マイが言いたいことは分かった。
ずっと心に秘めていた思いだったんだろう。
やっとカインが帰ってきて、それが爆発したんだろう。

「分かったよ。
 今日はマイに付き合うよ。
 どこでも連れて行ってあげるよ。」

そう言うとマイはぱあっと顔を輝かせて
カインの腕に飛びついた。

「わあーーい!!
 お兄さま大好き!!」

全力で喜びを表現する妹は可愛いものだ。

「じゃあ、王子様ね。
 どこ行こうかな。」

「デルコンダル辺り行ってみれば?」

アレンがそう助言してくれた。
そう言えば、デルコンダルにもお世話になったし
行っておきたい気もする。

「でるこんだる?どこの国?」

「このローレシアのずっと南の島国さ。
 じゃあ、いこっか。
 マイ、捕まっててね。アレン、お邪魔したね。またね。」

「おお。またな。」

アレンに手を振って、
カインは再度ルーラを唱えた。


++

到着したデルコンダルは相変わらず活気のある国だった。

「わあ〜〜、何だか賑やかな国ね。
 闘技場まであるのね。すごいー。」

闘技場は、デルコンダルでの戦いの舞台となった場所だ。
あまりいい思い出はないが・・・
そもそも城もそちら方面だ。行くしかない。

「お城に行くの?
 わあ、私ドキドキするー。」

初めて来た国にマイはドキドキしているらしい。
そう言えば王様への挨拶はさておき、
ここって王子っていたっけ?・・・と思いつつ。

王への拝謁を申し出ると、
門兵はカインの事の思い出したようで、快く通してくれた。

「おお、カイン殿。
 よく来られた、聞いておるぞ。この度の勝利を。
 こんな天晴れなことはない!」

王は相変わらず快活な様子で
カインたちを迎えてくれた。
しかし、同行しているマイを見て、
見知らぬ顔だなと少々怪訝な顔をした。

「申し遅れました。
 わたくし、サマルトリアの王女マイと申します。
 お兄さまがお世話になったと聞いております。」

「おお。そうであったか。
 うむ。カイン殿だけではなく、アレン殿マリア殿の活躍によって
 この国は今こうしてあると言っても過言ではない。
 妹姫もよく はるばる来たのだ。ゆっくりして行くと良い。」

「ありがとうございます!王様!
 暖かい歓迎心よりお礼申し上げます。
 これからもサマルトリアとデルコンダルの両国の友好を
 お祈りしております。」

「うむ、そうだな。」

「是非、王様も我が国へ遊びにいらっしゃって下さいませ。
 その際は国を挙げて歓迎いたしますわ。」

「これは嬉しい言葉だ。」

それにしても、よくも自分の妹は初めての国で、
初対面の王を相手にこんなにぺらぺらと舌が回るものだと
感心した。
 
「して、カイン殿体はもうすっかり良いのか?」

そう言えばこの国に来た時は、
ちょうどハーゴンの呪いに蝕まれてた頃で、
自由に動く事もままならず、色んな人に迷惑を掛けた。
あまり思い出したくもない思い出だが・・・。

マイが少々心配そうな顔でこちらを見ていたので
カインは明るく答えた。

「はい。もうすっかり元気です。」

「そうか、良かった。あの時は大変だったな。
 またアレン殿やマリア殿にも顔を見せてくれるよう
 伝えてくれ。」

「はい。ありがとうございます。」

そしてカインとマイは王に深くお辞儀をして、
その場を退室した。

さて、王への挨拶は無事に終わったが、
結局この国に王子はいるのか?

城から出てしまう前に、
カインは見覚えのある兵を捕まえて聞いてしまおうと思った。

あのデルコンダルでの大決戦の際に、
見た覚えたがある兵に、王子について聞いてみた。

聞くところによると、
デルコンダルの王子は勤勉であまり表舞台には現われないらしい。
派手好きな王ともそりが合わないようだ。
だが、子どものころから約束された婚約者との結婚は間近で、
デルコンダルでは静かな人気者なのだそうだ。

「で、王子の在所はあちらの離れらしいけど・・・。
 ちょっとマイ!なんなの!すっかり気が逸れてるみたいだけど、
 行かないの!?」

マイはもう城よりも城下町の方が気になるようだ。

わざわざ王子に会いたいとか言うから、こんな所まで来たのに
すっかり興味がなくなっているようだ。

「マイってば!」

「ああ、お兄さま。」

マイは完全に気もそぞろ状態だ。

「『ああ、おにいさま』じゃないでしょ!
 何さ。マイは王子様に会いたいんじゃなかったの?」

そう言うとマイは、うーんと首を傾げながら笑った。

「もういいわ、それ。」

「え、何それ。
 だったら、ここまで何のための来たのさ!」

思わず語気が荒くなるカインに、マイはあっさり言った。

「だって、フィアンセがいるんだったら、
 大恋愛なんて出来ないじゃない。」

「え、恋愛・・・?
 恋愛って、何!?・・・マイそんなつもりで言ってたの!?
 他国と国際交流がしたいとかじゃなくて?」

「うん。国際交流?何か大きな話・・・。違うわよ〜。
 他に何だと思ったの?
 私もお兄さまみたいな大恋愛に憧れてたんだ〜。
 沢山の旅をして、白馬に乗った王子様に会いたかった。」

えへへとマイは笑った。
自分みたいな大恋愛って・・・。
憧れるって。

「でも、それは、この国の王子様じゃないみたいね。
 私にも、私だけの王子様がいつか現われるかなあ。」

「・・・・・・。」

こういうとき、兄として妹に何を言えば良いのか・・・
よく分からない。

妹に恋人が出来るなんてあんまり想像も出来ないし、
あんまりしたくもないけど・・・。
でも・・・。

「お兄さま、どう思う?
 私の王子様、どこにいると思う?」

マイは少し寂しそうにそう尋ねた。
少し考えてから、カインは答えた。

「どこにいるかは分からないけど、きっと見つかるよ。
 僕はマイには幸せになってほしいと思ってる。
 どこにいたって、離れてたって、いつも思ってるよ。
 マイはたった一人の僕の大事な妹なんだから。」

そう言うとマイは、ふぁあ〜〜と顔を真っ赤にした。

「えへへ。えへへへへ!
 お兄さま大好き!!
 やっぱり、マリア様に渡したくないなあ〜〜。」

「え、何それ。何を言ってるの今度は。」

「ふふ。ひみーつ。」

マイは何故だか嬉しそうに、悪戯っぽく笑った。

「じゃあ、用は終わったなら、帰ろうか。」
 
「お兄さま、まだ帰さないからね。
 今日一日は私のわがままに付き合ってもらうんだから。」

「え゛・・・。」

そう言うとマイはカインの腕に抱きついてきた。

「さっきね、城下町で可愛い雑貨屋さん見つけたんだ。
 一緒に、お土産買いに行こう!」

旅の疲れを癒す間もなくあちこち振り回されて、
ちょっとため息をつきつつ・・・
この嬉しそうな表情の妹を見ると、
反対なんて出来なかった。

それに、前にデルコンダルに来た時は
大変な事ばかり起きて、
とても国の雰囲気を楽しむ事もできなかった。

だから、せっかくなので、
カインも今日一日をマイと楽しもうと思った。

「分かったよ。
 今日は付き合うよ。
 さあ、行こうか。」



 


- 終 -

2015/03/14

▲


【後書き】
1時間15分くらいかな・・・。越えてる越えてるorz
文字数も5400くらい。多いわww
キーワードは結構色々使いましたね〜。サマルトリアの王女こと、マイちゃん主役。
クリア後直後(エピ3直後)なイメージです!



※激しく自所設定です。時系列冒険中。


最終決戦が間近な私達は
各自のレベルアップのため、戦いと修行に明け暮れる日々を送っていた。

「マリア、少し下がって見ててね。」

カインが新しい技を覚えたと言う事なので、
私に見せてくれるそうだ。

「行くよ〜、ベギラマ!」

その声に呼応するように、カインの左手には大きな炎が舞い上がる。
いつもながら、カインとギラ系魔法の相性は抜群だ。
まるで、炎の精霊はカインの声に従う付き人のようだ。

しかし、これだといつも通りのべギラマ。

再度カインは、すうっと息を吸った。
空いた右手に再度命令する。

「もう一回、右手からベギラマ・・・!」

「右手!?」

左手の炎をまだ手に宿したまま、
カインの声に応えるように、
再度新たな炎が右手にボッと生みだされる。

右手の炎は、少々扱いづらそうに暴れたが、
それを強引に収めるように右手をぎゅっと握ると、
暴れまわった炎はぎゅっと収縮して落ち着いた。

「いっけえーーー!!」

両手からのベギラマは、
そのまま勢いを失うことなく解き放たれた。
それは、はるか先の岩をも溶かす威力だ。

「出来た!どう?今の!?」

「え・・・?ええ・・・。」

カインは新しい技、
厳密にはいつも使っている魔法×2と言う
荒業を成功させて嬉しそうな顔をした。

「マリアが、どんどん新しい魔法を覚えるから、
 僕も何か新しいことができるようになりたいって思ってたんだ。
 と言っても、使ってる魔法はいつもの魔法なんだけど。」

いつもの魔法と言うが、
その威力はまさに二倍な訳で、新しい技として効果は十分だろう。

「す、すごいと思うわ。」

「本当?
 マリアみたいなすごい魔法は使えないけど、
 何とか工夫して2人に負けずに頑張るからね!」

カインは、私の魔法をすごいと言ってくれる。
勿論魔法は私にとって自信であり、自分を支えるものではあるが・・・。

だけど、実は、必ずしもそうとはいえない点もあるのだ。


「おーい、カイン。
 そろそろ俺と剣の稽古。
 お前らは、魔法休憩の時間だろー?」

「あ、うん。行くよー!」

私がカインと話をしていると、アレンがカインを呼びに来た。
カインは、私との魔法訓練だけでなく、
アレンとの剣の稽古もあるので忙しそうだ。


2人を見送りながら、
私は1人いかづちの杖を見つめた。

先ほど、カインがやったことのすごさは、私だからこそ良く分かる。

元々剣と魔法を両方使うカインは、
右手に剣を持って、左手で魔法を唱える事が多い。
それ自体がすごい事なのだ。

杖などの媒体を使わずに、
魔法を行使する事は、少なからず危険を伴う。
炎であれば、下手をすると手が燃えてしまう可能性も十分にある訳だ。
剣で戦いながらであっても、魔法にも相当集中が必要だろう。

だが、そんな失敗は一度もなく、
炎を自らの手で抑え込むと言うのは、
ある意味で相当魔法の自信がないと出来ない事だった。

さらに先ほどの技では、
それを片手だけでなくリスク倍増の両手で行うのだ。

ものすごく器用だと思った。

自分には出来ない事だ。
魔法力の暴発の大きな私は、
杖を使わずに巨大な魔法を使うのは苦手だった。
出来なくはないと思うが。

さらに言うと、先ほどのカインの使っていた魔法ベギラマ。
私は多種多様の魔法が使えるようになってきたが、
それでもベギラマは使えなかった。

何とかギラを使えるようになったので、
多分その上位のベギラマもやってやれない事はないと思うのだが・・・。

いや、考えていても仕方がない。
一度練習してみよう。

「炎の精霊よ。灼熱の炎を我が手に宿せ・・・!
 ベギラマ!!!」

私の声に応えて、
いかづちの杖からは激しい炎が舞い起こる。

「ふっ・・・!!」

その勢いに、杖が振り回されそうになる。
こんな事、極大爆発魔法のイオナズンを唱えた時にもならないのに。

チリッと髪が焦げる音がする。

「きゃあ!!」

駄目だ。扱えていない。
ベギラマの炎は私の意志とは無関係に踊り狂う。
このままでは言う事を聞かずに暴発してしまう。

「だ、駄目よ!!
 消えて・・・!消えなさい!!」

もはや、必死になって魔法を消すよう
指令を出すのが精一杯だった。

炎は不満げに渦を作ると、回転しながら次第に消えていった。

「は・・・、はぁっ・・はぁ・・・・!」

私は思わずその場に座り込んだ。
やっぱり、駄目だ。私はあの頃から全然成長していない。

ムーンブルク城が炎と共に消えたあの日から、
炎への恐怖は消えきっていなかった。

仲間達は、私の魔法をすごいと言ってくれるが、
私はこんなに弱虫なのだ。

炎以外なら、バギもイオも極大魔法を使えるようになった。
最近では、この寒い地域にいることで、
ロンダルキアの魔物が使う氷系魔法も極める事が出来た。

だけど、こんな苦手を残したままで、
残る強大な魔物たちに勝てるのだろうか。
ハーゴンやその他の恐ろしい敵を勝つことが出来るのだろうか。

いや、駄目だろう。
こんな弱点を抱えたままでは駄目だろう。

仲間達が、私の魔法をすごいと言ってくれているのだ。
せめて、その魔法という分野に関しては、
私は誰にも負けないくらいに、成長したかった。


++

そんな決意をしつつ、
私はアレンとカインの剣の稽古を見に行った。

炎の魔法の事ならカインに教わるのが一番いいと思ったのだ。
先ほどだって、右手で暴走しそうだった炎を抑えていた。
あの術を自分にも教えて欲しいと思った。


2人は剣を交えて実戦形式で戦っていた。

「ほら、打って来いよ!
 お前の新技見せてみろよ!!」

アレンはあえて、そんな風に言ってカインを挑発する。

「い、良いよ!
 アレン行くよ!!」

カインはこくりと頷いた。
恐らくあの新技の両手ベギラマを唱えるのだろう・・・と思ったのだ。

だが、その予想は違った。

「風の精霊よ、我に力を与えたまえ・・・!」

聞きなれないその魔法の詠唱は・・・。

「バギ!!」

カインがバギ!?

私は驚いて身を乗り出した。
いつの間にか新しい魔法をカインも身につけていたのだろうか。

しかし・・・。

「ひゃ〜〜〜!」

何故か、カインが素っ頓狂な声をあげた。

バギの魔法は、
本来風は鋭い真空の刃を作り敵を切り刻むものだが、
今の魔法はふぁっと、アレンの髪をかきあげるだけで
ふわっと消えていった。

「おいおい、なんだよ今の爽やかな一陣の風は。
 お前は相変わらず何がやりたいんだよ。」

アレンは呆れたようにカインの失策を指摘した。

「ううー。
 何がやりたいんだって、分かるでしょう?
 バギの魔法を唱えてみたかったんだよ〜。
 何度も練習したんだけどなあ。」

カインは座り込んで、ガッカリしたようにうなだれた。

「お前な、こんな程度の風じゃ、
 好きな女の子のスカートをめくるという
 お前の最終目的も達成できないぜ?」

「は!?
 アレン、何を言ってるのさ・・・!!?
 何が誰の最終目的って?
 って!マリアーーー!!!!?」

カインは、二人の戦いを見ていた私に気付いたようで
両手を挙げて、驚いた様子で立ち上がった。

「あれ、マリア来てたのか。」

アレンも私に気づいたようだ。
私は2人に近づいていった。

「カイン、少し話があるのよ。ちょっと良いかしら?」

私はとにかくカインにベギラマを教えてもらいたかったのだ。
だが、何かカインは詰め寄った私を見て勘違いをしたようで
大きく首を振った。

「ちちちちちがうよ!!
 あの、そんな目的でバギを覚えようと思ったとか!
 そんな事僕は一言も言ってないよ!?」

「俺、何もマリアだとか言ってないのに、
 お前の慌てようには笑えるな。」

「んもおおーーーー!
 アレンはちょっと黙っててよ!!」

「えーっと・・・2人とも、そうじゃなくてね。
 真面目な話で・・・。」

何やら大騒ぎしているカインと
それをからかうアレンの様子は、
まぁ、楽しげだった。

それはさておいて、
私は、気になる事を聞いた。

「カイン、バギを使えるようになったの?」

「え?僕が?さっきの見てた?
 全然使えないんだよー。
 風の精霊少しは応えてくれるようにはなったんだけど。」

カインは、情けなさそうに笑った。

「お前のバギはだたの爽やかな風だよ。
 完全に精霊になめられてんじゃね?」

アレンがカインにちゃちゃを入れた。

「そうかもね。
 良いんだ。人間向き不向きがあるんだよ。
 出来ない事があっても良いんだよ。」

「お前ねえ。無理やり、ヨサゲにまとめるなよ。」

「だって、そうでしょ。
 人間得意不得意があるじゃない。
 苦手なことの代わりに、得意な事を伸ばして行こうよ。」

カインはアレンにそう答えた。

アレンは再びちゃちゃを入れようとしたが、
自分も一切魔法を使えず、その分剣を伸ばしてきたのだから、
カインの言ってることは一理あると思った。
むしろ無かったら大変だ。

「ま、そうだな。
 そう言う考えもあるな。
 でも、お前の得意って何だ?
 剣は俺に劣るし、魔法はマリアに負けるもんなー。」

「わーかってるよ。僕はどっちつかずで駄目なんです!
 本当マリアみたいな、沢山の魔法に憧れるよ。
 あ・・・で、ごめん。
 マリア、僕に話って何の用事だった?」

私は2人の話を聞いていて、
少し先ほどの悩みが氷解するような気がした。

出来ない事があっても良い。
魔法は確かに自分を支える自分の強みではあるが、
それでも出来ない事は出来ないと言っても良いのではないか。

でも、先ほどのカインの言葉は嬉しかった。
『マリアみたいな、沢山の魔法に憧れる』とカインが言ってくれた。

で、あれば、私は少々みえっぱりな性格だ。
先ほどの悩みは押し込んで、
新しく覚えた魔法のほうを聞いてもらいたくなった。

「私、新しい魔法を覚えたのよ。
 この寒いロンダルキアにいたことがヒントになったわ。」

私は火炎魔法の事ではなく、
新しく使えるようになった氷系魔法を、仲間達に見てもらうことにした。

 


- 終 -

2014/10/18

▲


【後書き】
ワンライなのに1時間ちょっと越えたなorz 
なんかハーゴンの神殿直前辺りにあったんじゃねーか?なエピソード。
両手魔法やら、マリアの魔法に関しては完全なる自所設定です。スイマセン(今更ですが)。
あ、シドーなんてでてねえや(汗)

更新の活 力。楽しんで頂けましたら是非ポチを。→