海の財宝 4


しばらくして船は無事ルプガナの港に帰着した。

「懐かしいぜー。ルプガナ。」

短い期間ではあるが、故郷のルプガナに戻ってこれて一番嬉しそうにしてるのは
ミゲルだ。いつもは船から下りないが、さすがにルプガナでは街に立ち寄りたいようだ。

アレンたちも船を下りる用意を整えた。
宝物を豪商の下へ返さなければならない。

豪商の家は幸いに港のすぐ近くにある。
こんな貴重品を持って街中に入るのも危険なので、
先に豪商の家に立ち寄ることとなった。

「近くて良かったねえ。」

カインはいつも通りの穏やかそうな顔をしている。

豪商に返す宝物は大きな宝箱と、細々した貴金属である。
宝箱はそれなりの大きさのため、二人で持ったほうが良いだろう。

「アレン、そっち持ってよ。一緒におろそう。」

普段どおりの様子のカインにアレンは少し胸をなでおろした。

「おお。落とすなよ。」

アレンとカインは二人で大きな宝箱を支えた。
マリアは残る貴金属をまとめて袋に入れて持ち運ぶことにした。




豪商の家の家政婦は最初見知らぬ訪問客に怪訝な様子であったが、
事情を伝えると大慌てで主を呼びに行った。

主は届けられた宝物を見ると、信じられないと言った様子で立ち尽くしていたが
アレンが海で見つけてきたと告げると驚嘆していた。

「こ・・・・こんな・・・・・・!!!どうやって見つけたのです!?
 1年前海の巨大な魔物に襲われて、
 海の藻屑と消えた我が家の家宝に間違いありません・・!」

「主人、大変だったな。大王イカに襲われたんだろう?」

豪商にとってもそれは忌まわしい記憶であった。苦々しい顔になった。
自分は無事であったが、中には命を落とした乗組員もいる。

「そ・・・そうです。あれは1年前の嵐の日・・・
 天候と戦うのも精一杯だった我々の前にやつが現れた・・!」

やつと言うのは大王イカのことだろう。

「そうか。嵐の日だったんだな。大変だったな。」

アレンは豪商をねぎらった。

「旅のお方と見受けますが、あなた方はどうやってこれらを見つけたのですか?」

「見つけたのは、この航海士だ。」

アレンはミゲルを指差した。
ミゲルは恥ずかしそうに照れていた。自分は本当に見つけただけだ。
海に潜ってもいない。

「おお、、お前は長老の所の船乗りじゃないか。そうかお前が見つけてくれたのか。」

「いやいや。俺は本当に見つけただけで・・・
 この兄ちゃん達が魔物もやっつけて、あんたの所にこの宝箱を返すべきだって言ってな。」

本当は、貴金属の一つもくすねたかったのだけどな・・・とは、あえて言わない。

「魔物!?あの、大王イカを倒したのか!?」

「ああ・・・まあな。」

アレンは頷いた。

「船が武装されているのか。大砲でも積み込んでいるのか!?」

「大砲もなにもねえや。この兄ちゃん達3人でやったんだよ。」

ミゲルが誇らしげに報告した。大砲なんてなくても、この3人は身一つで魔物を倒したのだ。

「大王イカを生身の人間が倒すなんて!聞いた事がない!!」

豪商はにわかに信じられない様子だ。まぁ仕方ない。
ミゲルだって直に見ても信じがたいと思うのだ。だがこれは事実なのだ。

「信じられないのも仕方ねえがしょうがねえ。
 ここにいる3人はロトの子孫なんだからな!!」

ミゲルは嬉しそうにそう言った。

「ちょ、ちょっと・・・ミゲル・・・」

カインはあわててその袖を引いた。そのような事は何も初対面の人に言うことじゃない。

「ロ・・・ロト・・・・って・・・?」

「ほら、ご主人びっくりしちゃってるよ・・。あの・・・用が終わったし、
 僕達はこれで失礼しますね。」

カインもマリアも頭を下げて、帰ろうとしている。アレンもそれに従った。

いくらなんでも礼の一つももらっていないのに出て行こうとするなんて
兄ちゃん達は淡白すぎる・・・とミゲルが愚痴を言おうとしたとき
呆然としていた豪商は叫んだ。

「お!お待ちください!!!
 あ・・・あなた方は・・・・本当に・・本当にロトの血を引く末裔の方々なのですか!?」

帰ろうとしていたアレンたちは顔を見合わせて、どうしようかと思いつつも
頷いた。だが、あまり事を大きくしたくはなかった。

「そうだが・・・あんまり気にしないでくれ。
 今回はたまたま通りすがっただけだと思ってくれ。」

出て行こうとするアレンたちを豪商はあわてて引きとめた。

「お待ちください。
 我が家にはロトの血を引く方々が来たら伝えるよう言われているものがあるのです。」

「へ?」

「そう、精霊ルビスから3つのことを・・あなた方に伝えるよう言われているのです。」

「 「 「 はぁ? 」 」 」

今度はアレンたち3人は目を丸くして唖然とした。
何だって?精霊ルビスと言ったか?

「せ、精霊ルビスが・・あなたに何か告げたのですか?」

そんな神がかりな話聞いた事がない。
だが、豪商はゆっくりとその時のことを思い出して語り始めた。



あの日、天候は優れず、荒れ模様であった。
優秀な船乗りじゃなくても、子供だってこんな荒波の海に船を出すなんて
自殺行為だと思うだろう。

だが、大きな商談の話があり、
期日を守るためにも豪商は船を出すことを強行してしまった。

船乗り達は優秀な乗組員を揃えた。
多少の波風に負けるような船でもなかった。

しかし嵐は次第にひどくなるばかりであった。

それだけでも転覆の危機があったのに、
恐るべき魔物・大王イカが自分達の船を見つけて襲い掛かってきたのだ。

結局成す術もなく船は穴を開けられて沈められた。

豪商も自分はこれまでだ・・・と覚悟を決めたとき
海の向こうからまばゆい光と共に現れたのだ。
精霊ルビスが。

ああ、いよいよ天国へのお迎えが来たのだな・・
この不思議な現象について、豪商はそう感じていた。

「それで?精霊ルビスはあなたに何と?」

「ええ・・」

ルビスは言った・・・

こんな悪天候の中船を出した自分の罪は重い。
私はこの罪を背負って生きていかねばならないのだ・・と。

だが、積荷はいずれ帰ってくるであろうと。
ロトの子孫達の手により戻ってくるであろうと。

その時彼らには私の言葉を伝えよと。


ひとつ、山彦の笛を子孫達に与えよ。
ひとつ、次にザハンを尋ねよ。そこに探し物があるのだと。
ひとつ、積荷の宝物を子孫達に与えよ。



静かに話を聞いていたアレンたちは驚いた。
うそか本当かも判断がつかないが、豪商の目は本気だ。

そう言うと豪商は家政婦にあるものを持ってこさせた。
丸っこい笛のような物だった。

「これは山彦の笛と呼ばれております。
 なんでも精霊ルビスの作ったものだとか・・・。」

ものすごいアイテムなのかもしれない。

「まぁ笛ですから、吹くときっと精霊ルビスの宝が見つかるとか・・?」

「・・はあ・・・。」

そんな都合のいいことがあるだろうか。

受け取ったアレンはひとまず吹いてみた。
ぴぃーーーと笛の音がなった。

「・・・・・?????普通の笛じゃないのか?」

普通に笛がぴーっとなっただけだ。

「私にもそう思うのですが、何せこの笛は遭難したとき
 精霊ルビスが私に与えてくれたのですよ。」

「は・・はあ。」

そう言う豪商の目が輝いている。偽物だろうとも言えない。

「それから、なんだっけ?ザハン?って所へ行けって?」

「ミゲルー。ザハンってどの辺り?」

「世界の南東の端にある小さな島国だな。あんな所辺鄙な田舎で
 伝説のアイテムなんて眠ってないと思うがなあ。」

「探しものって・・・?あ、紋章が眠ってるのかな?」

「あーもしかして、この笛は紋章が眠っている場所で吹くと
 効果があるんじゃない??居場所を教えてくれるとか。」

カインとマリアも話を総合して、この笛の効力を想像した。

「なるほどなあ。」

アレンもそうかもしれないと思った。

「私には何のことか分かりませんが・・・
 それから最後の一つです。どうぞ宝物をお持ちください。」

豪商は戻ってきた宝物を、アレン達に差し出した。

「いや!いいよ!!
 これは主人のだろう!?」

「いえ、私には積荷が無事に帰ってくれたことだけで
 あなた方には感謝でいっぱいです。
 中には思い入れのある品もあるのですから。」

アレンたちは困って顔を見合わせた。
思い入れのある宝物なんてもらえない。
ミゲルは、気にせずもらっておけばいいじゃないか・・と思うのだが・・。

「思い入れのある品なんてもらえない。
 遭難した乗組員の家族は今もきっと大変だろう?
 ならば宝物はその家族らが使うと良い。」

アレンたちはそう言って丁重に宝物の受け取りを辞退した・・
のだが、豪商は引き下がらない。

「ならば、全てとは言わずともどうか一つだけでもお持ちください。
 笛は精霊ルビスからの預かり品をお渡ししただけ。
 私からもお礼がしたいのです。」

「そ、そうだぜえ・・お礼を受けて悪いわけないぜえ、兄ちゃん。」

豪商はそう言って宝箱の口を開けた。
中には貴金属類が沢山入っている。
この場を沈めるために、一つでももらっておけば良いだろうか。

中には光り輝くダイヤやルビー、
そしてピアスやネックレスなどの装飾品も多い。

アレンとカインは宝物を見ながら、うーんとうなった。
正直貴重なものなんだろうが、どれも同じに見える・・・。

「こんな装飾品僕達には似合わないよー。
 マリア、何か選んだらどう??」

「お嬢様ならきっと何でも似合いますよ。」

ネックレスなんて、マリアが着けたらきっと似合うだろう。

言われてマリアも宝箱を覗き込んだ。
どれもまばゆく輝いて美しい。

だが、マリアが気になったのは一つの指輪だった。

「あれ?これって・・・。」

指輪につけられた宝玉は、他のもののようにきらびやかな
輝きはない。だが、不思議な力を感じる。

「マリア、それがいいのか?」

アレンから見ると、その指輪は他のものと比べると
金銭的価値は低そうだ。
だが、マリアが気に入ったのならそれでよいだろうと思った。

「さ、さすが・・ロトの子孫のお仲間だなあ。」

「?ご主人・・これは他の貴金属とか違いますよね?」

マリアは指輪を主人に見せて尋ねた。


「お目が高いですなあ。それは祈りの指輪です。
 どうぞつけてみて下さい。」

マリアは言われるままに指輪を身につけた。

「祈りの指輪・・・」


「あなた方が真に困ったとき、その指輪に祈りをこめれば
 助けを得られるであろうと言われております。
 きっとあなた方のお力になることでしょう。」



- 次章へ続く -

2010/12/12
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もう、終わり終わり。海の財宝編終わり!

なんで4話もかかってるんだ!?
(どうやってこれを1話で終わらせるつもりだったんだ!?私)

やっと4話目で財宝らしき話になりましたが、
少々論点がずれておりますが、
とりあえずこれにて終わりです。

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