「おーーーい!!兄ちゃんたち!無事だったかい!!」
船上から懐かしい顔が見える。
アレンたちの船の航海士ミゲルだ。
久々にアレンたちは航海に出ることになった。
そこで港で待っている船の元へ向かったのだ。
そこにはアレンたちの船が停泊していた。
そしてザハンで別れたはずの航海士の姿もあった。
「うわ・・・本当にあった。なんであんだよ、船。
ここムーンペタだぞ。」
アレンは半信半疑であったが、カインが言ったとおり
ルーラで移動すると船ごと移動することになるらしい。
「ね、本当にあったでしょう。船。」
カインは何を今更という風に笑った。
「すげえな、便利だな。ルーラ。俺はまたザハンに戻らないと
いけねえと思ったぜ。」
「それは大変だよー。」
ミゲルはマイペースに会話を続けるアレンたちを見かねて
あわてて船から下りてきた。
アレンはその姿を見て、手をあげて応えた。
「あ、よう。元気だったか?お前も。」
「元気は元気だが・・・
何が何やら分からないんだ。ここはどこだ!?
俺ザハンにいたはずなんだが!?
船ごと吹っ飛ばされて、どうなるのかと思ったぜ!?」
どうやら遭難者はここにもいた。
「ああ、あの・・ザハンからローレシアへは旅の扉で移動したでしょう。
で、僕がその後ルーラでサマルトリアへ行って、
もいっかいルーラでムーンペタで行ったでしょう。
サマルトリアから、ムーンペタへは歩いてでも行けるけど、
やっぱりルーラで来てよかったよね?」
「???あ??何が何って?」
ミゲルはカインが何を言ってるのか、さっぱり分からないようであった。
「ほら、お前の説明は良く分かんないんだって。
俺たち先に船に乗ってるぜー。」
アレンはマリアを連れて久々に船に乗り込んだ。
久々の船は懐かしい感じがした。
あれからどれくらいの時間が経ったのか、
アレンは何度も死線を越えて少し強くなった気がしていた。
「ローレシアではロトの印、サマルトリアではロトの盾。
そんで、ムーンペタでも紋章が手に入ったしなあ。」
アレンは背後のマリアにそう話しかけた。
「ムーンペタに紋章があったというのが私は驚きだったけど・・。」
マリアはアレン達が水の紋章を手に入れたときは気を失っていたため
直接は見ていない。あとで話だけ聞いて、驚いていた。
「ムーンペタにも行ってよかったじゃん。な。」
そうアレンは笑った。
アレンは、マリアがムーンブルク城に行くことに気兼ねしていたことを
気遣ったのだろう。
マリアはアレンの様子に苦笑した。
「アレンは本当にいつも前向きよね。」
「だって、そうだろ。色々あったけど、俺達強くなってるし、
順調に武器も道具も手に入ってる感じがする。」
甲板に上がったアレンは、うーんと手を伸ばして、伸びをした。
「次はロトの兜だな!ロトの印はばっちりここにあるんだ。
今度こそあの頑固じじいを嫌とは言わせねえ。」
アレンは海上のはるか遠く、アレフガルドを指差した。
そんな威勢の良いアレンの背後からカインのうめき声が聞こえた。
「ちょっと〜・・・アレンひょいひょいと船に乗っちゃって・・
荷物あるので運ぶの手伝ってよ〜。」
カインは一人でずるずると大きな箱を運んでいた。
どうやら中には食料が入っているらしい。
「アレンが、小麦粉嫌だって言うから、色々買ってきたんだからー」
「ああ、手伝ってやるよ。」
「下にまだあと2箱。ミゲルもひとつ運んでくるけど、あとよろしくねー。」
カインはそのままずるずると船の調理場へと消えていった。
アレンはひょいっと船を下りて、荷物運びを手伝いにいった。
天気は快晴。良い船旅になりそうだ。
マリアは眩しそうに空を見上げた。
++++
船旅はいたって順調で、問題なく航路を進んでいた。
アレンは少しでも時間ができると暇を持て余し、
カインを甲板に連れてきて剣の稽古を始めた。
それも懐かしい船上の見慣れた光景だ。
ミゲルはまた船が壊されないかハラハラしながら二人を遠巻きに見守っていた。
「なぁ姉ちゃん。なんかさ・・・、兄ちゃんの動きの切れが前とちがくねえか?」
「それはアレンのこと?」
ミゲルはマリアに尋ねた。しばらく見ないうちに、動きが前とは違う気がするのだ。
「え・・そうだな。動きが早くなった、力強さも増してる気がする。」
「まぁ、そうでしょうね。戦いの連続だったし、強くもなるでしょう。
ミゲルは中々よく見てるのね。」
「やっぱりそうだよなあ!すげえな!緑の兄ちゃんの方を圧倒してる感じがするぜ。」
「・・・・・・・・。」
マリアは少し複雑な表情で二人の稽古を見守っていた。
「あ、ほらっ!やっぱり兄ちゃんの勝ちだぜ!」
ミゲルはアレンを指差した。
「い・・・・っ。」
鈍い音がしてカインは持ってる武器を吹っ飛ばれた。
カラカラと手にしていた鉄の槍が転がっていく。
あわてて武器を取りにいこうとするが、アレンはその隙を当然逃がさない。
自身の持つ剣の刃をカインの首に添えた。
「・・・・君の勝ちだよ。」
カインがそう言うと、アレンは持つ剣を鞘に戻した。
「なんだよ、お前本気でやってるのか?
武器を落とすなんて、命取りだぜ?こんなの実戦だったら殺されるぞ。」
アレンは不満げに言った。
「やってるけど・・アレンの怪力と勝負したら勝てるわけないじゃない。」
「そんなの、お前魔物との戦いでも言い訳に使うのかよ。
『化け物みたいな怪力と勝負したら勝てるわけがない』とか言うのかよ。」
「・・・・・・・言わないけど。」
「だろ?だからそんな言い訳するのやめろよな。」
「・・・・・・。」
カインは無言で武器を拾った。
マリアは稽古を終えた二人へと近づいていった。
ミゲルも戦ってる最中の二人にはとても近づけないが、
平和になったのを見ると、これ幸いと駆け寄っていった。
「そろそろお昼よ。アレンお腹すいてるんじゃない?」
「え?ああ、もうそんな時間だっけ。」
アレンは自分の腹の空き具合を確認した。
うん、確かに腹が減ってきている。
「なぁ、カイン今日の飯ってどうする?」
カインは顔を上げると、厨房を指差して答えた。
「ああ、ご飯ならね。今日の昼の分だけはお弁当買っておいたんだ。
さっきの食材と一緒に厨房に置いてあるよ。」
「そうなのか。珍しいな。じゃあ食おうぜ。」
「うん。ミゲルの分もあるからね。4人分取ってくる。」
「おお。緑の兄ちゃんすまねえな!」
「ううん。じゃあちょっと待ってて。」
そう言うとカインは厨房へと消えていった。
「しかし、船って暇なんだよな〜。徒歩だと、常に歩いてるわけじゃん。
船って何事もなければ何事もおきないからなあ。」
アレンは、甲板に置かれた椅子に腰掛けてぼやいた。
「そんなの当たり前でしょう。
そんなに暇暇言うなら、あなたがご飯作れば良いじゃない。」
「えー・・俺が作ったらぐちゃぐちゃになるぜ。
カインが作った方がうまいし、その方が良いじゃないか。」
「でも珍しいわね、カイン。自分で作らないで、お弁当を買っておくとかって。」
「確かにな〜。まぁ食えればどっちでも良いよ。」
ほどなくするとカインが弁当を四つもって帰ってきた。
「お待たせ〜。」
カインが持ってきた弁当は様々な食材を使われているようで、彩りも鮮やかであった。
「おおーー。すげえ!旨そう!肉も魚も入ってるじゃん!」
アレンは身を乗り出してひとつ手に取ると喜んだ。
「でしょう?これムーンペタの宿の女将さんに教えてもらったんだ。
ムーンペタ自慢のお弁当なんだって。美味しそう〜って思ってさぁ。」
「本当だ。こりゃ旨そうだ。ボリュームもあるしなあ。」
ミゲルも嬉しそうにカインから弁当をひとつ受け取った。
「はい、マリアもどうぞ。マリアはこっちの野菜たっぷりな方でどう?」
「ええ、ありがとう。カインがお弁当買うなんて珍しいと思ったけど、
これなら買ってみたくもなるわね。」
「美味しそうだもんねえ。」
マリアもひとつ受け取ると、カインはそう言って笑った。
4人は平和な海上で、その弁当を夢中で平らげた。
「うまかったー。」
あっという間に食べ終わるとアレンは箸をおいた。
「はやっ!もう少し味わって食べたらどうなの?」
「味わっても、腹に入れば同じだろう?」
「情緒のないことを言うなあ。」
カインそういってぼやいた。
「大体ゆっくり食べる暇は無さそうだぜ?」
「え?」
「モンスターさんのお出ました。」
アレンの一言に、カインとマリアははじかれるように顔をあげた。
空を飛ぶ魔物、ガーゴイルがこちらに気づいて飛んでくる様子が見えた。
「本当だ!」
カインとマリアは即座に立てかけておいた武器を手にとって立ち上がった。
ミゲルは逆にあわてて身を縮めた。
「うわわわ、モンスターか!兄ちゃん達あとは頼んだ!
船いきなり壊されないようにしっかり守ってくれよ」
「おう、任された。」
アレンはそう言うと、前方に進み出た。
「あ、緑の兄ちゃんも頑張ってくれよ。
食べさしの弁当は俺が守るから!」
「はは。任せたよ。」
カインもミゲルを下がらせると、槍を手にして前に出た。
マリアは二人からはやや後方に立っている。
「ほら、こいよーー!」
アレンの挑発を受けて、ガーゴイルが強襲してきた。
それをアレンはロトの盾で受け止めると、ロトの剣を振るった。
しかしガーゴイルはそれをひらりとかわすと、また空を飛んだ。
「こらーー!降りて来いーー!」
アレンが叫ぶが、さすがにそんな挑発には乗らない。
「くっそー。ひらひらと飛びやがって。
こういうのは魔法が良いんじゃないか?」
アレンの言葉にマリアがうなずいた。
「そうね、遠距離から攻撃するのが良いわね。
バギ!」
マリアの作った風の刃がガーゴイルの羽へと直撃する。
自在に空を飛べなくなったガーゴイル目掛けて
アレンは地を蹴ってジャンプして斬りかかった。
「おりゃあ!」
アレンに斬り捨てられた魔物は甲板にたたきつけられた。
そこをカインが止めを刺した。
だが、空中では自由が利かないアレンは
生き残ったガーゴイルの剣に狙い撃ちにされた。
「アレン!」
カインはそれを見てとっさに魔法を唱えようとして・・・・止めた。
後ろからそれを見ていたマリアはカインに話しかけた。
「カイン!どうしたの?」
「あ・・いや・・・。」
なんだか様子が変だ。
もしかして・・・
マリアに思い当たる節がないか考えた。
思えばカインはムーンブルクの城を出てからあの魔法を使っていない。
回復魔法やザラキを使っている姿は見たが・・・
そう、炎の魔法を使っていないのだ。
マリアはそこに思い至った。
「カイン、戦闘中よ!」
「わ、分かってるよ。分かってるけど・・・・。」
カインの脳裏には、
ムーンブルク城でカインが使ったベギラマが原因で
マリアが倒れてしまったことが残っているようだ。
「本気で戦って!カイン!」
「でも・・・・・・。」
「でもも何も無いわよ!
私は・・・もう炎を克服したんだから!!」
マリアはそう言うと、魔法の詠唱をして、いかづちの杖から炎を放った。
そしてガーゴイルは炎に包まれた。
「え!?・・・マリア!?」
「カイン、言ったじゃない。炎の暴発はあなたが抑えてくれるって。」
炎に包まれていたガーゴイルだが、羽をばさばさと動かして
大きなダメージを回避していた。
しかし敵のことより、カインは戦いでマリアが炎を使ったことに目を丸くしていた。
「・・・・でも、やっぱり私の炎じゃ大したダメージにはならないみたいね・・。」
「マリア・・・・。」
「炎なら、カインの方が強力ね。」
マリアの言葉に、カインは左の拳をぎゅっと握った。
やっぱりカインはベギラマを使うことを避けていたようだ。
それではこれから先戦っていくことはできないだろう。
それに・・・もうマリアは本当に心配要らないようだ。
「マリア、下がってて・・・。
アレン!行くよ!!ベギラマー!」
カインの左手から先ほどより大きな火の玉が生まれ、
そしてガーゴイルを飲み込んでいった。
今度は羽根を動かしても炎から逃れらない。
アレンは、炎に包まれ敵が身動きの出来なくなっているのを確認すると
再びジャンプして、ガーゴイルを一刀両断に斬り裂いた。
「よっし、終わりだ。」
無事に着地し、アレンたちは勝利を確認した。
「ほら、やっぱりカインの炎はすごいわ!!」
「・・・ありがとう。
って、マリアもう普通にギラが使えるんだね!?」
「ギラくらいなら、何とか使えるみたい。まぁ昔使えてたしね。」
少し肩をすくめてマリアは申し訳無さそうに笑った。
アレンは不思議そうに首を傾げた。
「え、最初の火ってマリアのギラなの?
いかづちの杖から炎って出るんじゃないのか?」
新しい武器の効力をアレンは知らなかった。
マリアはアレンの問いに首を振った。
「いかづちの杖からは炎は出ないわよ。」
「えーーー!ホントか!じゃあ、すげえじゃん!マリア!
炎は今までカインの専売特許だったのにな。」
「ぐ・・・。ますます僕の存在意義が無くなっていくね。」
「そんなこと無いわよ。カインのベギラマの方が断然強いから。」
「うー・・・励まし・・どうも、ありがとう・・。
でも、嬉しいよ。マリアが炎を使えて、良かった。」
複雑そうな顔をしつつも、マリアがどうやら完全に炎を克服したことが
やはりカインは嬉しかった。
「あなたのおかげよ。」
マリアもそれに笑って答えた。
「んー?何だー?」
アレンはますます首を傾げた。
一体この二人に何があったのやら・・・と思いつつ。
そしてミゲルは、離れたところから、またこの3人が強くなったことを実感したのであった。
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2011/08/15
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