「四つの橋が見える沼・・・だっけ?」
「たしか、そう。」
「じゃあ・・・ここ・・・・か??」
二人は暗闇の中、ムーンブルク城を南に下ったとある場所に来ていた。
ムーンブルク城で王から姫が未だ存命であること、しかし姿を変えられていて、
どこかの場所に飛ばされてしまったことを聞いた。
問題点は三つ。
何に姿を変えられているのか、
どうやって人間の姿に戻すのか、
そしてどこにいるのか。
希望の光が見えたと思ったが、アレンとカインにはこの問題をどう解けば良いのか
今は分からないことばかりだった。
しかし、どうやら呪いを解くのに、「ラーの鏡」と言うものが必要らしい。
ラーの鏡・・・その言葉は二人とも知っている。
ロト伝説で真実の姿を暴くアイテムとして出てきているのだ。
すなわち、二人は御伽噺の中に出てくるアイテムのように聞いたことがある。
そう、御伽噺の物語のように・・・。
「ラーの鏡なんて本当にあったのか・・?」
一寸法師は実在するのか?とでも言ってるような気分である。
「そりゃあ、あるんでしょう。王様もあの兵士の人も言ってたから。」
ムーンブルク城を後にしようとした時、
一人の瀕死の兵士がいたのだ。
兵士も姫の生存を伝えた。そして呪いを解くラーの鏡は
4つの橋が見える沼にあるのだとも言った。
それだけを伝えると、兵士はカインのホイミも甲斐なく
息絶えてしまったのだった。
「この広い沼のどこかにきっとあるんだよ!」
しかし、沼からは異臭がして、ヘドロが満ち、沼底はまるで見えない。
もちろん今は夜なのもあって、真っ黒闇である。
「僕にトラマナが使えたら、毒の沼だろうと、バリアーだろうと
無効化ができるんだけど・・・」
「ないものねだりしててもしょうがないだろ。」
「うん。」
二人は沼地に足を踏み入れた。
とたんにグニャという嫌な音と共に足が沼地に吸い込まれていく。
毒の臭気が襲い掛かる。
「うわ、これは歩くのも大変だぞ。」
アレンはカインに声をかけた。
ふと見ると隣にいるはずのカインは後ろを向いて口をおさえていた。
吐き気がするらしい。
この臭気では無理もないことだと思った。
「お、おい、大丈夫かよ。」
「げほっ。う、うん。ごめん、大丈夫。」
大丈夫と言うが、息は荒く、疲労は隠せない。
ムーンペタからここまで強行軍でやってきた。
ここまでのカインの働きはマリアのためにと鬼気迫るものであったが、
魔法力も体力も限界に来ているであろう。
「さぁ、探そう。」
カインは口元をぬぐって、歩みを進めようとした。
が、その手をアレンがつかんで言った。
「探索は俺がするからお前はこの辺で待ってろ。」
「何を言ってるのさ。こんな広い沼地を一人で探すなんて無茶だよ。」
カインはその手を振り切って言った。
「まあ聞けよ。この沼地は足を取られる。そんなときにモンスターに襲われたら
まともに戦うことも出来ない。お前なら魔法で攻撃できるだろう。」
「そうだよ!空を飛ぶモンスターが来てもギラで迎撃できるよ。」
「でも、お前の魔法力はほとんどないじゃないか。」
「う・・。」
それはその通りだった。今はホイミかギラか一発分程度しか残っていないだろう。
「俺はさっきお前にホイミしてもらってるし、まだまだ元気だよ。
座って待ってろ。」
アレンはそう言うと一人で先へ言ってしまった。
カインは、仕方なく言われたとおりその場に座り込んだ。
回復を待つのもあるが、少し今までの謎を整理したい。
もし、ここに本当にラーの鏡があったとして、
次はどこへ向かうべきか。
姫はどこに飛ばされたのか。
アレンは先ほどムーンブルク王に対して、ロトの血にかけて王女を助けると答えていた。
『ロトの血』
第二のロト同盟国の直系の王子なのだから、
ロトの血は引いているんだろうと、周りも自分も思っているが、
そもそもロトの血を引くからといって、何か自分が他の人と違う点があるとは
思っていなかった。
アレンは違うのだろうか?
例えば姿を変えられたマリア王女とすれ違ったとして
アレンは気づくのだろうか。
自分は気づくのだろうか。
自分たちに流れるロトの血が騒いで気がつくんだろうか・・・。
想像してみるが、それはちょっと信じがたい。
大体、何に姿を変えられたのかも分からないのに、探すなんて無茶な話だ。
「はぁ・・・。」
どうしようか。
でも、逆に・・・考えてみると、姿を変えられた王女に意識があるとすれば
王女は自分たちを見つけられるのではないか。
自分たちに近づいて来てくれる生物がいたら、それが王女の可能性は
ないか?
近づいて来てくれる生物・・・・・
カインは記憶を辿った。
そういえば・・・
「いたじゃないか!ムーンペタに!!」
あの人懐っこい白い犬!
もしかすると、単に人懐っこくて誰にでも懐くのかもしれない。
勘違いなのかもしれない。
でも、確かあの白い犬は自分たちの会話に、「アレン」「カイン」という
名前に反応していたような気がする。
「そうだよ、きっとそうだ!」
カインは思わず叫んでいた。
「何が、そうなんだよ。」
独り言に返事があった。ふと上を向くと、真っ黒に汚れたアレンが立っていた。
「アレン!見つかったのかい!?」
カインは思わず見つかったものだと思い、喜んで迎えた。
「いや・・・・大分探索したけど、まだ見つかってない。
こう暗くちゃ沼底も見えなくてな・・・」
「そ、そう。」
「もうすぐ夜明けだ、少し休憩して、明るくなってからもう一度探すよ。」
アレンはその場に座り込んだ。
毒の沼は臭気だけではなく、その毒で手足の爛れが激しい。
カインは、ホイミでその爛れを癒した。
「おい、魔法使って大丈夫か?」
「うん、夜明けまで休むんだったら、魔法力も回復するよ。
そしたら僕も一緒に探すから。それよりアレン!」
カインは先ほどの自分の考えをアレンに話した。
アレンとて、どこを探すべきかはっきりとした信念があった訳でもない。
「あの犬かあ・・・。お前に懐いてたなあ。まぁ手がかりがあるなら行ってみよう。」
カインは希望が見えて晴れやかな気持ちだった。
きっと朝になったら、ラーの鏡が見つかる。そしてきっと王女を助けられる。
「なぁ、俺も少し考えたことがあるんだ。」
一人納得した様子のカインに、アレンも話があるようだった。
「俺もお前もムーンブルクの視察、王女の救済のために旅に出た。
王女が見つかったとする。その後はお前はどうする?」
その後のこと・・・そういえばカインはあまりそこまで考えていなかった。
「そうだね、王女をひとまずサマルトリアかローレシアで保護する必要が
あるだろう。」
ムーンブルク王国はないのだから。そして、同盟国の援助を受けつつ、
ムーンブルク王国を復興させていくか・・まぁこの辺りは王女が決めることだ。
「そして、俺やお前は国に戻り、国力の強化に備え、第二のムーンブルクの
悲劇が起きないように備えると言うことか?」
「・・・」
「俺は、必ずまたこの悲劇が繰り返される気がしてならない。
ムーンブルクが滅ぼされたその軍力で、サマルトリアを侵略されて
サマルトリアは撃退できると思うか?」
「う・・・・」
正直な話、サマルトリアの軍力はあまり高くない。
魔法力も、1000年王国の歴史深いムーンブルクにはかなわない。
「ローレシアにしたって同じさ。」
アレンはあっさりと言ってのけた。
「アレン・・・」
不安な顔でアレンを見上げると、アレンは言った。
「俺は決めた。このまま旅を続ける。ムーンブルクを滅ぼした悪の親玉のハーゴンって奴を
討つ。ムーンブルクの敵を討つんだ。
かつて勇者ロトや勇者アレフがそうしたように・・・・」
「・・・・!!」
『勇者ロトや勇者アレフがそうしたように・・・』
ロトの血を引く勇者が今決意したのだ。
正直カインはそこまで考えていなかった。いや、考えたとしてもそれを
実現可能なこととして、口に出すことは出来なかっただろう。
しかし・・・
「アレン!僕も連れて行ってくれ!」
次の瞬間カインは叫んでいた。
自分と同じ年の、同じ血を引くロトの勇者が今立つ。
アレンが勇者だから、同じ条件を引く自分も・・・などとは思わない。
だけど、きっと手助けは出来るはずだ。
「・・・生きて帰れるか分からないぞ。二度と両親や妹姫に会えないかも
しれないぞ。」
「・・っ」
今まで考えていなかったその未来。二度と会えないなんて絶対に嫌だった。
でも・・思った。
「アレンだって、そうじゃないか。」
「はは。そうだ。まぁ俺は死なないけどな。お前は弱いからなぁ。」
「ひどい・・なあ。」
弱いと言われても否定はできないが・・。散々足手まといになっているのだから。
今だって一人休んでいたくらいだ。
アレンが足手まといは連れて行けないというのならば仕方ない。
「でも、そういってもらえて、俺は嬉しく思う。
改めて、よろしくカイン。」
アレンはそういって拳を差し出した。
「・・・・!うん!・・・・アレン!!」
二人は拳をあわせて、協力を誓った。
【 挿絵を見る 】
夜明けまでの間、
二人は沼から少し離れた木陰で体を休めていた。
『ハーゴンを・・・討つ・・・・・!』
アレンは自分の決意に興奮して眠れないでいた。
自信などある訳はなかった。
ロトの血を引く、勇者の血を引く、といっても自分は偉大な勇者たちと
決定的に違う点がある。
魔法が全く使えないのだ。
勇者とは言えないかもしれない。
だが、このままにしてはいられなかったのだ。
しかしこの不安な決意に対して、
さらに不安そうな顔をして、でも一言もアレンを否定せずに、カインは同行を申し出てくれた。
「ふふ、大丈夫かよ、このパーティー」
思わず苦笑する。
同じ血を引くこの兄弟は単純に力という点では
自分に遠く及ばないのだ。体力だって、普通の一兵卒よりも
低いだろう。
だが、出会った最初はホイミしか出来ないといっていた魔法も
ここに来るまでに多くの魔法を覚えた。
ムーンブルク城などもカインがいなければ自分ひとりでは
王の無念の言葉を聴くことも出来なかったかもしれない。
自分では城に巣食う魔物を一体でも多く切り捨てることしか出来なかっただろう。
力がなければ悪を討つことはできないが、
それだけじゃない何かでカインはきっと自分を助けてくれるだろう。
一緒に行くと言ってくれて嬉しかったのだ。
もちろん死なせたくはない。
「頑張らないとな。。」
アレンはつぶやいた。
翌朝、二人は早速ラーの鏡の探索を再開した。
朝になるとモンスターも目覚めたのか、毒の沼地にもモンスターが出現した。
しかし、体力も回復した二人は、これらをなぎ払い、探索を続けた。
沼の底にはゴミのようなものも落ちていて探索は容易ではなかったが・・・
アレンは足元に丸い形の何かが落ちているのを見つけた。
「?」
拾い上げると、それは泥に汚れているものの、鏡であった。
「・・・!カイン!見つけた!」
二人はラーの鏡を見つけたのであった。
- 次章へ続く -
2010/09/28
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