「やぁ、さがしましたよ。アレン王子!」
・・・・・まさか、こいつが・・・・?
その優男は満面の笑みで立ち上がった。
***
ここは、ローレシアの城から西へ進んだリリザの街。俺はこの町に来た目的は・・・・・・正直ろくでもない。
最早途方にくれて、疲れ果てて、一夜の宿を求めてと言ったところか。
いや、本来なら今の時期はローラの門を渡り、ムーンブルク城への視察に入ってる時期であろう。
我がロト同盟国の中でムーンブルク城が落城したと言う報せが入ったのは既に一月ほど前になる。
ムーンブルクの若く聡明な姫、マリア王女の所在も一切不明である。
そこでローレシア王より、直々にムーンブルク視察を任された訳だ。
王子であるこの俺が。
本来、国の将来を担う王子が単身危険な旅に出るのは無茶な話であるが、
これは自慢でもなんでもないが、実際の話、ローレシアのどの兵よりこの俺が強いのだから仕方が無い。
そこらのモンスターなら既に一人で倒せる。
俺の欠点と言えば魔法が使えないことだが、まぁ生まれて一度も魔法を使ったことが無い俺としては、
魔法がどれほど便利なのか知らない。
怪我をしたなら、薬草を使えば良い。
毒に犯されたなら、毒消し草がある。
魔法には様々な攻撃呪文もあるようだが、これも自慢じゃないがどんな武器でも装備できる俺は
攻撃呪文と遜色ない威力の攻撃が出来ていると思っている。
(世の中には魔法のような効果のある武器もあるらしい。ちょっと使ってみたいと思う)
と言うわけで、欠点に気づきつつも、それをカバーすれば問題ないだろう。
ついでに言えば、、、
ロト同盟国の一つサマルトリアの王子カインは魔法が使えるらしい。
さらにそいつもムーンブルク落城の知らせを受けて旅立ったらしい。
サマルトリア王からも同行するように指示を受けたのだ。
隣国の王子といっても、面識はほとんどない。
(5年前に開催されたラダトームのロト祭で会ったことがある。
ひょろっとして、妹とずっと一緒にいて、会話はろくにしなかった。)
まぁ、その魔法王子を仲間にすれば、さらに欠点はなくなるだろう、と思って・・・・いたわけだ。
***
話が長くなったが、冒頭に話を戻そう。
目の前にいるのは、リリザの街の宿屋でのんきにシチューを食べている優男だ。
まさかこんな優男が探している魔法王子ではないだろうと思ったが、
ロトの印の法衣を着ている。
【 挿絵を見る 】
そして、優男はニコニコとこちらに手を差し伸べている。
「探しましたよってば。アレン王子ぃ」
語尾を伸ばすな!
「お、お前がサマルトリアの王子、カインか?」
「ええー、覚えてないのですか?5年前に会ったじゃないですか。アレン王子は立派になられましたね。」
ニコニコ優男はどうやら本当に俺が探していた魔法王子らしい。
ローレシア一の力を誇るこの俺の体格と比べると、どうも・・頼りない。魔法使いとはこういうものか。
だが、仮にもサマルトリア城からあの洞窟を経て、ローレシアを経由して、この街に一人でやってきたと
言うからには、こう見えてもデキるんだろう。
「よし、カイン王子。お前は魔法が使えると聞く。一緒にムーンブルク城の視察へ行こう。どうもあのローラの門ってのは
俺一人では通させてくれないのでな」
早速今後の話を始めるこの俺に、魔法王子はしーっと周りをはばかる様な仕草で言った。
「アレン王子は長旅でお疲れでしょう、良かったら僕の部屋に来てください。少し話をしませんか?」
「あ。おお」
残ったシチューを掻きこんで、足早に宿の部屋に向かった。
俺はここ数日ずっと野宿だったので、部屋に入って荷物を降ろした。
「は〜、俺は宿なんて久しぶりだよ。カイン王子はいつからリリザへ?」
「そうですね。そろそろ3日目です」
「3日も街にいたのかよ!俺なんかこの3日でどれだけモンスターと戦ってたことか。」
「だってアレン王子、じっとしてないんだもん。ここにいれば会えると思って。」
「じっとしてないのはカイン王子だよ!だったらローレシアでじっとしてろ!」
「えーー他国に、アポイントも取らないでいきなり他所の王子が現れたら、ローレシアの皆さんも困っちゃうでしょ」
「じゃあ、サマルトリアでじっとしてろよ。俺どっちも行ったんだからな!」
「えーー、、だってせっかく決死の覚悟で飛び出したのに、すごすご帰るのはかっこ悪いじゃない?」
「じゃあローレシアにすごすご帰った俺はなんだよ!」
なんかテンポの狂うやつだ。
「そ、それはごめんよ。でも会えて良かったよ。僕も一人でローラの門は通してもらえなかったし。」
「そう、そこだ。でもさ、俺知ってるぜ。お前って魔法が使えるんだろ?」
「え?う、うん。そんな使えると言うほどじゃないけど」
「謙遜するなよ。俺、お前の魔法に期待してるんだから。」
「そ、そう?」
照れてやがる。
「魔法の中には瞬間移動するやつがあるんだろ?」
「あ、ルーラね。」
「そんな名前だったか。それ使ってムーンブルクに行こうぜ。明日にでもさ。」
ローラの門は一人では門番が通してくれない。だから、サマルトリアの王子を探していたのだが、
そもそも魔法で飛べば、一瞬じゃないか。俺頭いい。
「だ、だめだよ。」
「なんで?」
「僕・・・ルーラできない」
なにぃぃ!?
「お前そういう魔法は専門じゃないのか。攻撃呪文が得意なのか?」
聞くと悲しそうな顔になるカイン王子・・。
「で、できない・・・」
「何だぁ?お前、僧侶か?回復呪文の方か?キアリーとか、ホイミとか」
どんどん悲しそうな顔になるカイン王子・・。
「あ・・・・うん。ホイミできるよ。ホイミ・・・だけ・・・・なんだ。」
「なんだとぉぉ!?」
そんなの魔法王子じゃねえ、ホイミ王子だ!と頭をよぎったが、それどころじゃない。
そんなんだったら薬草一つ買っとけば良い話じゃないか。
「あ、でももうすぐ攻撃呪文もできそうなんだ!ルーラもできるように頑張るよ・・!」
あんまり俺が『がっかり』って顔をしたから、あわてて釈明してきやがった。
でもなあ。そんなのいつだよって話だ。
「じゃあ、剣は?使えるんだろうな」
「そ、そうだね。今朝銅の剣を買ってきたんだ。これで稽古するよ。」
「これからかよ!!!今までどうやって旅してたんだ!?」
「せ、聖水を使って・・・・」
ぐあああーーー!信じられん。じゃあ、何かほとんど戦闘を経験してないってことか。
戦力として期待できるどころか、これは足手まとい確定じゃないか。
「王子・・、帰れば?」
「え・・・」
蒼白な顔をしている。ショックだっただろうか。俺の方がショックだ。
「悪いことはいわねえよ。カイン王子には危険が過ぎる。俺だって御身を守りながら戦うなんて
とても限界がある」
「だって、ローラの門は?」
カイン王子はすがりつくように言う。
「他にも手があるだろう。船を調達して大陸を渡るって手もあるだろうし。」
今現在、他の手がある訳じゃないが、とりあえず何かあるだろう。
「じゃあ、そういうことだ。王子が危険なようだったら、俺がサマルトリアまで送ってやる」
荷物を持ち上げて俺は立ち上がった。
そんな俺に、カイン王子がもう一度叫んだ。
「確かに今は足手まといかもしれない。で、でもこれからは戦うよ!剣だって買ったんだ。魔法だって覚える!」
「遠足じゃねえんだ。危険すぎるって分かるだろう。」
「そんなのアレン王子だって同じじゃないか!!」
「!!・・お、俺はこう見えても腕には自信がある。初めて剣を持つようなカイン王子とは違うぜ」
「は、、、初めてじゃないよ。僕だってずっと剣の修行をしてきてたんだ。」
「?今日剣を買ったって言ったじゃないか」
「城を出るときに持ってきた聖なるナイフが途中でモンスターに取られて無くなってしまったんだ。
だ、だから・・・聖水を使って・・・。
ギラだってもうすぐできるよ。炎の具現化ができるようになってきた。
ぼ、僕だってロトの勇者の血が流れてるんだ。マリアが大変なことになってるのに・・!アレン王子だって
旅に出てるのに、どうして僕だけ城に帰れなんて言うんだ・・・」
「カイン王子・・・」
ま、まるでいじめてるみたいじゃないか。
カイン王子は泣き出してしまった。
「ご、ごめんなさい。八つ当たりして。でも本当に、僕は・・・マリアは絶対に生きてると思う。だから、絶対に
助けたい!もしアレン王子が同行してもらえないなら、僕も一人だってムーンブルクへ向かう。」
「マリア王女が生きてる?」
今更ながら、食堂の中で話を続けてなくて良かったと思う。
「う、うん。王や王妃は亡くなったそうだけど、姫の死体は見つかってない。連れ去られてしまったか、
逃げたのか・・・それは分からないけど、絶対見つけるよ」
さっきから、自信があるんだか、ないんだか分からないやつだが、マリア王女への思いは、殊の外強いようだ。
「分かったよ。一緒に行こう。」
「ほんと!?」
こんなやつを一人野に放ったら、それこそ心配で仕方がない。
「ただし、だ。」
「う、うん。何?」
「お前の言う剣の修行がどんなもんだかしらねえが、死にたくないなら、毎日俺と稽古に付き合ってもらう。
いいな?」
俺は毎日稽古してるから、それに付き合ってもらうこととする。
「うん!!!ありがとう!!アレン王子!!!」
「それと、王子ってのはこれからお互いに抜きだ。城にいるんじゃないし、街中で不振がられるしな。」
「あ、うん。分かったよ。アレン。」
「よし、カイン、よろしくな。」
俺一人だった旅に仲間が増えた瞬間だった。
- 次章へ続く -
2010/09/23
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