D級アンプ (GaN)
(市販モジュール利用)

SQ雑記帳
電子工作プロジェクト


画像
記事作成中 Under construction 画像

プロジェクトについて

はじめに

2026年6月、都内のオーディオイベントで技術デモが行われた 独インフィニオン社の GaN HEMT 半導体活用のD級アンプ「CoolGaN」について、 国内の複数ネットメディアに取り上げられ その音も評判がよかったようでした。
自分も以前に「GaNを使った静電型ヘッドホンアンプ」を試作・技術検証していて、その透明感がある独特の出音は大変気に入っておりましたが、 初代(技術検証版)はGaNを損傷させまくって安定動作させられず、 今設計している再設計の2代目は保護回路の抜本見直し設計が難航しており、 (静電型ヘッドホンアンプ技術を流用した)スピーカー用途アンプは相当先になりそうな状況でした。

Infineon GaN 製品群ではリファレンスボードが販売されており、それを使った自作クラスDアンプというのを数例ネットで見かけました。 この評価ボードは REFAUDIOGANB750WTOBO1 (REF_AUDIO_GANB_750W) という名称にて 大手マウザー社・デジキー社、 国内の共立電子 などで販売されているのですが、 円安や部品高騰などもあり2025年9月時点で6万円前後とちょっと遊ぶには手がなかなか伸びない高価なものでした。
   

評価ボードの作例をネットで探していると、アリエクなどにて 本リファレンスボードのクローンと思しきものが驚くほど安価で売ってありました?!。 まあリファレンスボードを真似して物作るのはある意味全く間違っていないのですが。
アリエクでも数店舗で販売されていてボッタクリ価格以外の店舗では結構数売れているようで、「UG105730 350W*2 Class D Power Amplifier Board GaN」的な名前が付いています。 この UG105730 というのはインフィニオン社のリファレンスボードのドキュメント番号なのでそのままとなります。

とはいえ比較すると細々違います。

本家 (Infineon版) 中華版 (クローン品)
利点
  • Infineon社の設計
  • 説明書あり (英語)
  • BTL対応 ※
  • 前段プリ部のゲイン調整可
  • 価格が本家の 1/3 (2026年9月時点)
  • 前段プリ部に可変抵抗がなく音質的に有利
  • 前段オペアンプがOPA1612 (本家はOPA1656)
  • 変調周波数は1MHz固定 (調整部無し)
欠点
  • 高価 (2026年9月時点)
  • あやしい
  • 説明書は無し、回路図も無し
  • 回路変更もあるが詳細不明
  • BTL未対応 ※

(※BTL対応・未対応については注意が必要です。 本家はCH1前段は非反転増幅、CH2前段が反転増幅となっており、同一信号(アンバランス信号)を入力するとBTL回路を構成でき、説明書にも使い方の記載があります。 対して中華版はCH1・CH2前段回路ともに同一の非反転増幅となっており、 恐らくバランス信号のHOTをCH1に、COLDをCH2に入力するとバランス出力(BTL)が構成できると想定しますが、基板が入っていた袋に「BTLサポート対象外」と記載があり、 この設計者はそもそも未検証あるいは本家との回路差異のため同一使用法は不可としているようです。)

ということで日本語事例など情報が一切無い状況でしたが、値段最優先で購入してみることにしました。
中国の通信販売あるある黄色テープぐるぐる巻きで届きました。
   

見た目も乗っている電子部品も想像以上にキッチリしていると思います。 なおアリエク販売店での本商品の説明文にもJLCPCBやICkey(雲漢芯城) などで部品調達等を行っていると記載がありました。設計者的に自信があるという意図ですかね。
とはいえ安いとは言っても2万円はするので(2026年9月時点)、個人的には価格に見合った実装部品だと感じました。 ちゃんと動くのであればコスパ良い商品という意味です。

D級アンプ(GaN) 音出しまで

全体

まずは音が出るようにします。必要となるものは大きくは2種類です。

  • 音量調整 (簡易案:上流DAC等での音量調整、単純案:2連ボリューム、こだわり案:プリアンプ など)
  • 電源(正負 ±32V ~ ±40V)

このあたりはこだわりまして、バラック状態の仮組ではありますが写真のようになりました。各ブロックの接続状況は図の通りです。
   

写真左がアンプ回路(プリ+パワー)、写真右が電源回路(スイッチング電源+電源フィルタ+定電圧電源)になります。
   

プリアンプについては手持ちのSATRI回路方式プリアンプ基板を使っています。 SATRI回路方式はゲイン調整方式であり、個人的には小音量時に音痩せを感じにくくて長年愛用しています。今回の用途にもピッタリです。
プリアンプ用の正負電源も手持ちのLM317/LM337の可変3端子レギュレータ基板を使っています。 なおプリアンプは16V耐圧の電解コンデンサを使っており、SMPS補助原電の出力は±17.5V位はそのままでは使えないので、LM317/337で±13Vに設定しましました(ドロップ電圧を3V確保)。

電源

D級アンプの電源回路については±35V前後を用意することになります。 ここで国内のネットメディアのInfineon GaN記事を見ると、 Rコアトランスとダイオード整流と平滑コンデンサを使った一般的な非安定化電源であることが分かります。パワー段だけですし、レギュレータ等を使った安定化電源ではないようです。 Rコアは個人的にも多用していて信頼はあるのですが、思うところがあり今回はスイッチング電源を採用してみることにしました。
(もし個人的にアナログ電源にするのであれば、AC 25V(23~28V)のトランス(センタタップ付き2出力、または1回路トランスを2個)、 整流用ダイオード(4個)、平滑コンデンサ(耐圧50V、複数個並列接続で合計10000uF以上)、 電源スイッチ・ヒューズ・IEC320インレット、といった部品構成にすると思います。 ただトランス調達は昨今は少し難しく、市販品なら東栄変成器・ゼネラルトランスなどにありますが出力1A程度で小中規模向け、 アリエクだと115V品となりますがRコアトランス50VA~100VAなどで適合電圧2出力を探すのはかなり大変、 となるとフェニックス社にRコア特注することも視野に入ります。)

具体的にはHYPEX社のスイッチング電源 SMPS400A100としました。 新しいパワーアンプに挑戦するのだから、電源も挑戦してみることにします。
Hypex社というと日本国内でD級アンプの自作が流行っており、Hypex社のモジュールを使い、初期 UcD、とても流行った ncore、直近フラグシップ Nilai などの名前は度々見かけていました。 それらのクラスDアンプ用に作られたHypex製の高効率スイッチング電源 SMPS はオーディオ用途の設計であり、高効率な正負電源・低EMI、 低域で電力を必要とするときの瞬間的な供給能力も高さも期待出来ます。
 

ここでHypex SMPS400A100のデータシートを見るとわかるのですが注意が要ります。出力電圧が規定された電圧値ではない?!ということです。
日本では100Vで利用しますが、設定は115Vで使います(ジャンパJ1をショート)。 本来115V(=230V)だとTypicalは±37Vと記載があり、でもMinimumは27V、Maximumは43Vとあります。 これだとGaNアンプ規定電圧(±32V ~ ±40)に収まるか不安になるのですが、 実際にはコンセント電圧が105V程度となり、メイン出力は±33V、補助出力(aux)が±17.5Vでした。問題無い範囲です。
(なお別型番SMPS400A180を日本で使うと恐らく±42Vとなり本基板の許容値を超えることになるのでNGです。 本家infineon版も電源電圧は±27V~±40Vとなっており、基板上の電解コンデンサは50V耐圧品とはいえ40Vを超えないようにすべきだと思います。)
   
HYPEX電源のVHRコネクタ(J1、J2、J3)は秋月電子で購入できます。ただ補助電源のEHRコネクタ(J5)は共立電子にありますが秋月電子には無く、 個人的には2.5mmピッチの別部品を加工してコネクタとして使っています。

自作オーディオ界隈では、いにしえから現代までノイズ源として嫌われているスイッチング電源ですが、市販製品ではごく一般になっています。 ただそれでもノイズは気がかりであり、 (SMPSコネクタJ3)パワー向けメイン出力にはLCフィルタ、 (SMPSコネクタJ5)プリ向け補助電源出力には3端子レギュレータによりノイズ低減をする方針としました。
メイン用のLCフィルタですが電源電圧±33Vあるので50V耐圧のアルミ電解コンデンサが必要です。 今回は特性と容量と値段を考えて導電性固体電解ハイブリット型(固体電解+液体電解)としました。 なお基板は手持ちのレギュレータ向け平滑基板を使い、整流用ダイオード部分にインダクタを付けています。
 
悩ましいのがインダクタ選定になります。 Hypex SMPSはスイッチング周波数は100KHzとあります。電源用なので数Aが流せるトロイダルコイル型を選定します。
キャパシタが計1000uFでありカットオフ周波数は、コイルが470uHなら232Hz、47uHなら734Hz、4.7uHなら2.3KHz、0.1uHなら16kHzになります。
ノイズは可能な限りカットした方が良いとも思いますが、 可聴域の下のほうまでカットすると折角のスイッチング電源の電力供給能力の高さへの足枷になると想像しています。 ここについては数種類インダクタを試して出音を評価してみようと考えています。 (想像:LCフィルタなしだと高域にノイズ影響、LCフィルタにてカットし過ぎると中低域の躍動感にマイナス影響)

動作確認

動作確認ですが、最初はセメント抵抗10Ωをダミーとしてオシロスコープで計測する予定です。 問題無かった場合の音出しについては、高価な欧州ユニットを使っているメインスピーカを繋ぐのは流石に躊躇します。
そこで当面は長年未使用だった自作スピーカ2号機をつかうことにしました。 SB Acoustics製のセラミック処理アルミ製ハード振動板(SB12CACS25-4 + SB26CDC-C000)ユニットを使った、小型2wayトランスミッションライン方式になります。
  画像

音は問題無く一発で出ましたが、運用上の困った問題が発覚しました。予想通りの問題ではあったのですが。

D級アンプ(GaN) 調整・改修

増幅率の課題

中華 UG105730 GaN クラスD パワーアンプ基板ですが、高効率であり大音量を出すには向いている基板です。 本家infineon社の設計では 2Ω375W、左右で合計750Wまで対応となっています。 この中華クローン基板も2Ω350Wで700W設計とシルク記載があります。電源電圧を高く設定すれば大出力が得られます。
実際にオシロスコープにてセメント抵抗のダミー負荷でも30Vを計測できますが、困ったことにプリアンプの音量調整抵抗を最大まで上げなくてこの状況です。

 

現状では音量調整の幅が極めて狭く、ボリュームが 9時の位置でも爆音になってしまいます。 これだとプリアンプに高音質ボリュームを使うことができません (自作のマイコン制御の抵抗切替式アッテネータ。欠点は調整段階が飛び飛びかつ荒い。)。 暫定的に2連Aカーブの可変抵抗を使っています(一般的なオーディオ用途のボリューム)。

小音量用途において、このD級パワーアンプのゲインが高すぎるという課題ですが、 UG105730 資料にある回路概略をみると、前段にはオペアンプ増幅回路があり中華クローン品はゲイン設定抵抗が音質優先で固定抵抗になっています。 なので小音量利用であれば定数見直しを検討する必要があります。
 

まずはプリント基板の入力部の回路を追いかけて回路図を書き起こすことにします。
中華クローン品は本家infineon回路から色々弄っているからぱっと見では分かりません。 参考になるのが本家infineonのドキュメントになります。おそらく概ね回路踏襲となっているハズです。 なお測定が難しいSMD MLCC容量などはこちらの値をそのまま流用してみます。 ちなみに本家はCH1とCH2ではプリアンプ回路構成が異なり、BTL対応というのが分かります。
 

次に中華クローン品の回路を追ったものです。なお周辺部は省略しています。
緑枠は実際の回路には無い説明用のものですが、緑枠で囲まれたPWM変調以降の回路 (OPA1655利用コンパレータ、IRS20957Sドライバ,1EDN7116ゲートドライバ、GaN IGB110S10S1)は追かけるのが難しく、 本家ドキュメントを信じて約14dB(約5倍)と仮定しますが、ちなみに出力端子からの帰還抵抗は実際は68kでした。 また中華クローン品のCH1とCH2は同一回路構成(非反転増幅+ボルテージフォロワ)でした。 (本家のCH2の2段目はBTL対応で反転増幅だったのですがここでも差異がありました。)
   

ということで本クラスDアンプのゲインは約29dB、約27.7倍(5.54倍 × 5倍)と想定しました。小音量で使うには辛い増幅率でした。
表面実装抵抗のゲイン変更箇所は入力端子の脇にあるOPA1612の隣です。サイズ1608Mの「222」が2.2kΩ(22×10^2)、 同「01C」が10kΩ(EIA-96コード、01番の100、Cはx100)です。
 
増幅率を下げるため、「01C」変更例としては無難なのは2.2kΩで2倍、次点で1kΩで1.45倍 あたりですかね、それより下げるかは再評価してからですかね。 なおボルテージフォロワ化(222撤去、01Cをジャンパ)は回路安定度下がりそうだし回避したほうがよさそうです。

続く

ケース設計

かなり先になりそう

↑