9.復讐


「たのもーーーう!!!」



立て付けの悪くなっていた扉が豪快に開けられた。

「わ、ゆっくり開けてよ。今度壊れたら先生に怒られるんだから。」

中にはひょろっとした金髪が一人。髪なんか染めて、ヤンキーか?

「君、誰?」

金髪が注意深くこちらを見ている。
仲間にしたいに違いない。


俺は元気に挨拶をした。


「はい!俺は聖ロト学園1年生のもょもと!
 剣道部に入部希望の新進気鋭の1年生だ!!」


俺の挨拶を聞いた金髪は眼をきらきらさせている。

「ほんと!?入部希望!?大歓迎だよ!」





ここは名門私立の聖ロト学園の剣道部部室である。
財閥の御曹司やら社長令嬢やらが通う名門校だ。



このたび紆余曲折を経て、この俺もこの名門校の
仲間入りを果たした。

めでたくピカピカの一年生だ。

そしてこの剣道部の門を叩いたこの俺の目的は・・・

「アレフガルド高校の竜王君?」

「そう。」

「俺はそいつを全国大会で倒す!」

そう、この俺の入部の目的は、
中学時代に全国大会決勝戦で遅れを取った
にっくきライバルへのリベンジだ。
そうこれは復讐への第一歩なのだ。

俺は今そのスタート地点に立って
メラメラと闘志を燃やしている。

「ふーん。なるほど。」

向かいに座る金髪はのほほんとしたものだ。

「どっちが苗字でどっちが名前?
 まぁ竜が苗字で王が名前だよね。
 王君?世界の王貞治?
 おっもしろい名前ー」

何か金髪は一人でケラケラと受けている。
さっきから何なんだこいつは。
ええい、話にならん。

「あのー。そういうことなんで、この部のキャプテンはどちらに?」

「あ、はい。」

・・・・・・

「いやいや、はい じゃなくて、キャプテンはどこですか?」

「はいってば。」

「?」

怪訝な顔をした俺に、金髪はハムスターのように
ほっぺたを膨らませた。

「だからー、僕です。キャプテンは僕。」

「なにーー!?あんた剣道なんて出来んのか!?」

「ちょっと新入部員君、失礼じゃない?
 僕は2年生だし、先輩なんだけどー?」

「あ、すんません。」

ここで話をややこしくしてはいけない。
俺は大人の対応で頭を下げておいた。

「キャプテン強いすか?」

「こー見えても、キャプテンですから。」

えっへんと誇らしげな金髪。
いや、そろそろ金髪呼ばわりはまずいだろう。
仮にも先輩でキャプテンだ。

「名前なんて言うんすか?」

「すけって言います。すけさんって呼んでください。」

・・・・・ぶふっ。
失礼。俺が噴出した音である。

「変な名前すね。キャプテン。」

「君ほどじゃないと思いますー。もよもと君。」

「もよもとじゃないです。もょもとです。」

・・・・・・沈黙。首をかしげるすけさん。

「え、どう違うの?どう違うの???」

「もょです。」

「みょ?」

「もょ」

「も゛?」

「もょ」

「ぼ?・・・いた!舌かんだ!」

すけさんは舌を出して、ひーひー痛がっている。

「もょがなんで、ぼになるんすか。」

「もー、そんな名前初めてだよ。」

「まぁ誰もちゃんと呼んでくれないんで慣れてます。
 それより稽古しましょうよ。」

俺はもう身体を動かしたくて仕方が無い。

「そうだねー。他に誰も来てないんだけど。
 じゃあ用意しようか。胴着も使ってくれて良いよ。」

「他にも部員いるんすか?」

聞きつつ、俺は着替えを始めた。
学ランを脱ぎ捨てた。Yシャツも脱いだ。

「うん。いるんだよー。もうすぐ来るよ。時間に律儀な人なんだ。」

「そうなんすか。ところで先輩胴着はどこですか。」

下着一丁になった俺は聞いた。

「体験入部用に胴着があって、その右端のロッカーのー」

「右端のロッカーすね。」

俺はふと部室を見渡した。
ロッカーは壁際に整然と並び、右側は出入り口側である。
なるほど、一番入り口近くが新人用ということか。

すごすごとそちらへ歩む俺。

「あの、どうでも良いんだけどね。」

「なんすか。」

「その格好でうろうろしない方が・・・。」

「あん?」

男同士で何を恥ずかしがる必要がある。

と思ったとき、出入り口がバン!と開いた。

先輩部員か?
礼を欠いてはいけないと、大人の俺は頭を下げた。

「あーもう、扉をそんな豪快に開けないでってばー。
 立て付けが悪いんだからー。」

すけさんは入ってきた部員に文句を言っている。

「これもう寿命よ。それよりすけさん、噂で聞いたわ。
 入部希望の1年生がいるらしいって!」

ん?俺は頭を下げたまま、おや?と思った。
「聞いたわ」?

「それなら、そこにいる、そのパンツの人。」

すけさんはのんきそうに俺を指差す。

「え!?は!?パ!?」

「ふえ?」

俺はその先輩部員と目が合った。

「あ、どもっす。1年のもょもとって言います・・。」



「イーーーヤーーーーーーー!!!!」

「ぐあーー!!」



「ちょっと何!何なの!なんでパンツなの!!」

「いや、俺が聞きたい!何故ノックもなしに女が入ってくる!」

俺と女はいきりたってすけさんに文句を言った。

「えー。何が何故って、
 副キャプテンのあきなさんだから入ってくるよ。そりゃあ。
 だから僕もょもと君にここで着替えないほうが良いって言ったじゃないー。」

「ふ、副キャプテンが女ーー!?!」

俺はあきなと呼ばれる先輩部員を見た。

なるほど、細身の身体ではあるが、筋肉は薄く肉付いて
綺麗な体つき・・・

ん?何やらプルプル震えている。
何やら竹刀を手に取っている。

「だーかーらーー、その格好で私を見るなーー!!」

あきなの会心の一撃がこの俺の脳天を直撃した。

「ぐっはーーーー!!」

痛恨の一撃に倒れる俺。


倒れる俺にすけさんが声をかけた。

「あ、もょもと君。この部の最強はあきなさんなので気をつけてね。」

「・・・・・・・・・」

恐ろしい洗礼であった。










「・・・・という訳で、副キャプテンのあきなさんです。」

「・・・さっき聞きました。」

「で、こちらが新入部員のもょもと君。」

「・・・さっき聞きました。」

「・・・・・・。」



俺たちは今体育館に来て向かい合って正座している。
結局着替えは男女共同の部室のため、カーテンの中でしろと
言うことだ。それなら最初にそう言え。

「あーのーー今日から一緒に稽古するんだから
 仲良くしようよ〜。」

すけさんは必死に部を盛り立てようとするが
どうにも盛り上がらない。

「あのーすけさんキャプテン。
 部員はこんだけなんすか?」

「幽霊部員の僕の妹も一応在籍ってことで。」

「また女!」

大丈夫か、この部。


「まぁいいや。俺は早いとこ全国大会に出て
 竜王をぶっ倒すんだ!!」

俺は決意を新たに立ち上がった。

「ああ、王貞治君。」

「ちっが!」

もう、大丈夫か、この部。


「じゃあ目標も出来たことだし、稽古しましょう〜〜。」


竹刀を持つとすけさんの目の色は変わった。
意外や意外、それなりに強い。

あきなさんも素早い身のこなしで
蝶のように舞い、蜂のように刺す鋭い一撃を繰り広げてくる。

だが、この俺は子供の頃からこの道の天才と言われてきた
剣の申し子。

悪いが負ける気はしない。

「もょもと君、強いねー!」

「いや、先輩方も強いです。」

俺はこの部で強くなることを誓った。




毎日毎日愚直な稽古を繰り返し、
剣道以外のことはそっちのけで
剣の道一直線。

やはり学生たるは部活に生きるに限る。

これが青春ってやつだ。

俺自身も強くなり、
部の結束もどんどん強く強固なものになる。

これはいける。

いけるぞ、全国大会!!


そしていよいよ大会のオーダー表を
キャプテンすけさんが記入していたある日のこと。

「大将はもょ君が良いんじゃない?」

「そうだねー。もょもと君の成長は本当著しいよね。」

「マジっすか!俺やりますよ!!」

二人は俺の成長を認めてくれている。
それがこんなに嬉しいことだったとは・・。
俺は勝利を願い、決意を新たにする。


「じゃあ、大将もょもと君・・・と。えーっと生年月日が・・・。
 ん?あれ?」


すけさんは俺に質問してきた。


「ねぇ?もょもと君17歳なの?僕と同じ生年月日なの?」

「あ、そっす。でも同い年でも、別に俺は、先輩のこと、先輩としてそれなりに
 尊重してますから!」

相変わらず大人の対応で出来た俺である。

「わあ、どうも〜。
 ってそうじゃなくて。もょもと君、留年でもしてんの?」

「いやあ。恥ずかしながら。」

頭をかきつつ答える俺に、
顔を見合わせるすけさんとあきなさん。

「ねえ、もょ君はこの間の定期試験どうだったの?」

「え?試験?あー。綺麗に5教科全部まっかっか。」

何故なら!俺は今、剣道一直線だから!!
他の何よりも剣道が大事なのさ。

決まった、俺、かっこいい。


「もょ君、言いづらいんだけど・・・。」

「あ?」

「赤点一個につき、2ヶ月の禁止。」

「何が?」

「はー。残念だったね。」

「だから何が?」

「だから、聖ロト学園では赤点1つに付き、2ヶ月の体外試合の禁止。」

「えーーーーーーーーーー!???」

「じゃあ、10ヶ月間試合出れないね。オーダー表書き直しー。」

びりびりと破られていくオーダー表。



「もょもと君は向こう10ヶ月勉強頑張ってくださいーい。」

「なーーーにーーーーーーー・・・・・・。」




そして俺の青春は終わりを告げたのであった。



- 終 -

2010/11/06
▲

あっはっは。なんだコレなんだコレ。
パラレル書こうと思ったら、こんなん出来ましたよ。
剣道部もょもと。

ばっかばかしいー。うっひゃー。

あれ、面白がってるのは私だけ?

誰が何と言おうとお題、復讐です。

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