90.プレゼント

私達は船の調整のためにルプガナに やってきていた。
どうやら船の調整にはしばらく時間がかかるらしい。

そのため私達はルプガナで過ごすことを余儀なくされた。

久しぶりと言う事で、船の元々の持ち主、
ルプガナの長老の家に無償で泊めてもらえることになった。

「ありがたいわね。」

「だなー。」

私達はこの暖かい歓迎に感謝した。
アレンなどはソファに深く座って、
すっかりくつろいでいる。

「カインおせーなーー。」

カインは長老に挨拶に行くのだと、
部屋を出て行っていた。

そろそろ帰ってくるかな?と思ったが、
中々帰ってこない。

「よし、マリア。探検がてら
 探しに行こうぜ。」

どうやらアレンは少々暇になったらしい。
この広そうな屋敷の探検をしつつ、
カインを探そうと思ったらしい。

勝手にうろつくのもどうかと思ったが、
私はアレンについていくことにした。

本当にルプガナ一広い屋敷というのは
伊達ではなかったようで、かなり広い屋敷であった。

あてずっぽうで歩くと道に迷うかもしれない・・と
思いつつ、進んでいくと人影が見えてきた。

「いつかは、お世話になりました。
 良かったら、召し上がってください!」

「えっ・・。どうも、ありがとう。」

そんな会話をしているのは・・・
長老の孫娘と、カインだった。

「で、ではっ!!」

何かを手渡すと、娘は恥ずかしそうに去っていった。
カインはしばらく呆然と立ち尽くしていたが、
アレンがぐいぐいと遠慮なく声を掛けに言った。

「おい、カイン。何もらったんだよ?」

「わっ!!アレン、びっくりした!
 いつからいたの??」

「いまだよ。
 何それ、何だよ。」

綺麗な布地に丁寧に包まれた箱を
手渡されていた。
どう見ても、孫娘からのプレゼントだった。

「召し上がってって言ってたから、
 ご飯じゃない?」

カインはその場で、その包みを開けた。
中からとても良い匂いがする。
美味しそうなお弁当だった。
彩りも綺麗で、きっと今しがた作ったのだろう。

「ほらほら!ねえ、美味しそうだねえ〜〜。」

カインは嬉しそうにアレンにそれを見せた。
アレンはあまり嬉しくなさそうな顔だ。

「どうしたの?美味しそうだよ?」

「って、お前なんで俺に見せんだよ。」

「え??なんでって何が?」

「どう見ても一人用だろうが。
 あの子がお前に作ったんだろう?
 とっとと食えよ。おら!」

アレンはそう言ってカインの腰を軽く蹴った。

「えっ?あ、そう・・なの?
 わ〜〜嬉しいなあ・・・・。」

カインはアレンの言葉に嬉しそうにした。

「ちぇー嬉しがりやがって。」

「だって、僕いつも作ってばかりだからさ。
 作ってもらえたらやっぱり嬉しいじゃないか。」

アレンはふんと鼻息をならした。

「俺達3人組だって分かってるはずなのにさー。」

「だから、カインが一人のときを狙って渡したんじゃない?
 追ってきて悪いことをしたわ。」

私はそういいつつ、
カインの妙に嬉しそうな表情が忘れられなかった。



***


次の日の早朝、
私は珍しく、こっそり厨房を借りてみた。

確かに、いつもカインにはご飯を作ってもらってばかりだ。
たまには私のほうからプレゼントしてみたい。

びっくりするだろうか?
どんな顔をするだろうか?

私はカインほど万能に、どんな状況でも料理が出来る訳ではないが、
それでもきっと・・・そんなに下手では・・ない・・はず・・。

ああ・・・でもやっぱりあの子が作っていたようにも綺麗な彩りにもならない。

がっかりするだろうか・・?

そんなことを考えつつ、私は小さな箱に
出来るだけ、丁寧におかずを詰めて行った。

「出来た!」

あんまりたいした出来でもないかもしれないが、
心を込めて作ってみた。

私はそれを手に持って、部屋に戻った。

そこにはアレンだけがいた。

「あれ?アレンだけ?
 カインは???」

「んーー?しらねーけど
 すぐ戻るだろう〜。」

アレンはソファに寝転がっている。
どうも彼はくつろぎすぎているんじゃないかと思った。
まぁ、時間帯がまだ早いから眠いんだろうか・・。

しばらく待っていようと思って、
私も椅子に腰を掛けた。

早起きしたせいで少し眠い。
ぼんやりとまどろんでいると、
背後で、ごそごそと物音がした。

私は思わず振り向いた。

そこでは信じられないことに
アレンが私が作ってきたお弁当を食べていた。

「お、これ、うめーーぞ。」

「ちょっ、ちょっと!!!」

思わず私は立ち上がって、アレンを止めようとした。
しかし、時既に遅し。
あっという間に、お弁当は空っぽになってしまった。

「ごちそーさまーー!!うまかったーー!」

「ちょっと・・・・アレン・・・・・・・・・・・・。」

私の視線に気づいたらしいアレンは少しびくっとしていた。

「え、俺に作ってくれたんじゃないの!?
 昨日俺弁当もらえなかったから、
 作ってくれたんだと思ったんだ・・・けど・・・?れ・・?」

「・・・・・・・・・良いわよ。
 美味しかったと言ってもらえて良かったわ。」

「・・・・・・いや・・あの・・なんか・・
 マリアさん・・・怖いんですけど・・。」

びくびくするアレンを余所に
私は再度部屋を出た。

カインはまだ戻ってこない。

はぁ・・・・、まぁ良い。
美味しいといってもらえたのは、自信になった。

カインが戻ってくる前にもう一度作ろう!!



***


私は再度厨房に戻った。
何も悲観することも無い。もう一度作れば良いだけのこと。

さっきのは無かったことにすれば良い。

私は先ほどと同じように
お弁当を作り始めた。

少し慣れてきたのか、さっきより少し手早く
作ることが出来た。

今度こそ!と思って
私は再度部屋に戻った。

そこには・・・また、私の想像もしない光景が広がっていた。
いや、良く考えると当たり前の光景だった。

「あ、マリア、おかえり〜〜。
 ご飯作ったよー。
 一緒に食べよーー!!」

硬直している私にカインは笑顔で話しかけてくる。

カインの作った数々の料理が机に配膳されている。
とても美味しそうだ。
食欲をそそる食材の彩りと、美味しそうな香り。

私が作った小さく、彩りも無いようなお弁当とは全然違った。

それはそうだ。
いつもカインはこれくらい簡単に作ってくれるのだ。
それはそれは、もう毎日だ。

ああ、私って・・・本当馬鹿みたいだ。
こんなどうしようもものを2回も馬鹿みたいに作ったりして。

なんだか情けなくなって私は、
部屋から走り去ってしまった。

部屋では、びっくりしたカインが何事か叫んでいる。

でも、とにかく私はその場から去りたかったのだ。




長老の家も出て、
私はルプガナの噴水広場のようなところにやってきた。

走りまわったせいで、
お弁当はぐっしゃぐしゃになってしまっている。

ただでさえ彩りの無いお弁当が
もうぐちゃぐちゃだ。目も当てられない。

もう、こんなものは捨ててしまおう。

そして何食わぬ顔をして何事もなかったような顔で
いつものように、アレンたちの元に戻ろう。
急に逃げ出してびっくりしているだろう。
理由は・・・・・なんとごまかそうかな。

そんな事を考えつつ、ゴミ箱に私はお弁当を捨てた。
その瞬間、急に大きな声がした。

「あーーーっ!!」

驚いて振り返ると、そこには私を探したのか
息を切らせてカインがやってきていた。

「なんで!?なんで捨てちゃうのー!!?」

物惜しそうに、ゴミ箱を覗き込んでいる。

「・・カイン・・・?どうしてここに?」

「楽しみにしてたのになあ。」

「え・・・・・。」

「アレンがさ、マリアがお弁当作ってくれたって嬉しそうにしてたから・・
 で、もう一回作りに行ったらしいって言ってたから、
 今度は僕も食べたいって思ってたのにー。」

「えっ!?だって、あんなに料理作ってたじゃない。」

「そりゃ、今度はアレンに取られないようにって思って・・
 だからいっぱい作っておいた・・んだ。」

確かに・・・アレンの胃袋はブラックホールだ。
カインのお腹がぐーっと鳴った。

「知ってる?アレンってば結局昨日娘さんからもらった
 お弁当もほとんど奪って食べたんだよ。」

「え、本当!?・・・・アレン・・ってば、食べすぎ・・・。」

思わず私は噴出してしまった。

「でしょ!?だから、もう僕はお腹空いたね。
 どっかで何か買って帰ろうかな・・・・。」

仕方なさそうに、カインは
財布のお金を数え始めた。

私さえ、あのお弁当を捨てていなければ良かったのに・・・。

『作ってもらえたら嬉しい』

そう言っていたカインの嬉しそうな表情を思い出した。

それなのに、
私ときたらカインの目の前で、
作ってきたお弁当を投げ捨てたのだ。

いや、本当私って一体何をしてるんだろうか・・・。
それは落胆させてることだろう。

いや、、もし許されるなら・・・。

「カイン、ちょっと待ってて!!」

「何?」

「ちょっとだけ時間をくれたら・・
 もう一回お弁当作ってくるから!!」

「・・・・・・・・ほんとうに!?」

ああ、やっぱり私は馬鹿だ。
カインはすごく嬉しそうだった。



***

さて、三度目の正直だ。

カインが手持ち無沙汰だったらしく厨房まで着いてきた。

・・・いや、すごく緊張するので
着いてこないで欲しいと思いつつ、言えなかった。

しばらくすると、厨房にアレンまで入ってきた。

「あ。アレン。」

「おー、やってるのかー。」

私は別の意味で緊張した。
カインも若干戦慄していたようだ。

『またアレンに食べられてしまう。
 あのブラックホールアレンに・・・・!!』 と。

「マリア、頑張れよー。
 俺は食後の運動〜〜。」

だが、おかしな緊張感がアレンに伝わったのか、
アレンはそのままどっかに行ってしまった。

武器を持っていたので素振りにでも行くのだろう。

ほっと私は息をついた。

しかし、先ほどから変な緊張感からか
既に三度目なのに、慣れたはずなおに、手がかじかんでしまう。
盛り付けも綺麗に出来ない。

ああ、きっとカインならもっと上手くやるに違いないのに・・

しかも、食材もちょっと足りない。
こんなので良いんだろうか。

色々考えるとどんどんマイナス思考になっていく。
今日の私は本当どうかしている・・・。

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3回目なのに・・・一番下手な出来だった。

どうしよう、もう一回捨ててしまいたい・・・。

そんな風に思いつつとりあえず料理を詰め終わった。

「いっただきまーす!!」

詰め終わった直後、
待ちきれないとばかりカインが手をあわせた。

「え?」

「え?ってえ?食べちゃ駄目?」

カインが今度は遠慮がちに聞いて来た。

「こんなので、良いの?
 なんか・・量も足りないし、色も変・・。」

「ええーー?
 すっごく美味しそうだよ?」

もう待ちきれないとばかりにカインは
ぺろりと食べきってしまった。

「ごちそーさまーー!!」

本当に嬉しそうな顔でカインは笑っていた。

「すっごく美味しかったよ!
 また・・・作ってくれる?」

喜んでくれた、良かった。
ああ、良かった。

そんな良い場面だったのに・・・

何故だか私のお腹がなった。

もう・・・最悪だ・・信じられない・・・・。

私はもはや、赤い顔やら蒼い顔やら
どんな表情をすれば良いのか分からない。

カインがどんな表情で笑っているかなんて
とても見られなかった。

でも良く考えると私はカインが作った料理も食べそびれてたし、
朝から何も食べてない。お腹がなるのも可笑しくはない。
いや、だからといって、この場面はないだろう・・・。

カインがきょろきょろと何か作ろうとしてくれている。

いや・・・もういいからと泣きたい気持ちだった。
3回もお弁当を作ったりして、
馬鹿なことをしてるうちに食材を使い果たしてしまったのだ。

「おーい。」

そうこうすると、素振りを終えたアレンが帰ってきた。
もうこれ以上何を言おうとするのか・・・
穴があれば、そこに消えてしまい気持ちだった。

「これ、残ってるけど。」

差し出したのは、さっきカインが作って
アレンが食べつくしていたはずの料理だった。
でも食べ差しではなくこのお皿は、綺麗に残っていた。

「ア、アレン残してたの!?」

「だってお前全部食うなっつったじゃん。」

何事かを察したのかアレンは
お皿を持ってやってきたらしい。
動物的勘のよさである。

「あ、じゃあ、マリア食べてよ。
 遅くなって・・ごめんなさい。
 僕自分の事ばっかり・・・本当ごめん。」

「いや・・・私・・の方こそ・・もう、本当・・」

「おらーー!
 食べねーんだったら、俺が食うぞーー!」

どうやら他にも色々料理は残っていたらしい。
アレンは3人で食べたかったらしい。


私は二人に対して、何ともいえない気分になりながら、
とても恥ずかしく、そして少し幸せな朝ごはんを食べることができたのであった。




- 終 -

2012/08/31

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 何がひどいって、キャラ崩壊がひどいわww
 マリア一人称でこう言う事をやると大変なことになると分かりました。
 はい、えっと2周年リクエストで「カイン、マリアと、カインの好意をもった女性による、嫉妬するマリアの小説」というリクエストでした。
 ちょっと・・・全然・・・違うものが出来てしまった気がします・・・。アレン出張るしw
 スイマセンでしたー!

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