75.真実

進めども進めども、人しか見えない。
今日はお祭りの日らしい。

皆飲んだり食べたり踊ったり歌ったり、とにかく楽しそうだ。

「すごい賑やかね。」

「賑やかなのは良いけど、宿はどこだよ?
 さっぱり見えね〜!」

物珍しそうにマリアが街並みを見ながら歩いていく。
アレンは人ごみを邪魔そうに掻き分けながらどんどん先へ進んでいく。

そんな中、ふと見るとカインが興味深そうに祭りを眺めていて、足が止まっていた。

「おい。カイン、遅れるぞー。」

「アレン、マリアちょっと待ってよ〜!!
 そんな早く歩いて行ったらはぐれちゃうよ!?」

「俺らが早く歩いてるんじゃなくて、
 お前の足が止まってるの。置いていくぞ。」

「わぁ、待ってよー。」

慌ててカインが小走りに駆け寄ってきた。

「何の祭りをやってるんだろうね〜?
 皆とても楽しそうだけど。」

「さぁなー。大方地元の神様を奉る祭りとかじゃねーの?」

アレンはあまり興味なさそうだった。
そんなアレンの袖をカインが引いた。

「ねえ、せっかくだからお祭り見ていこうよ。」

「なんで。」

「なんでって・・・。
 ほらほら、屋台の食事も美味しそうじゃない。」

見ると、確かに地元の調理とでも言うのだろうか
上手そうな料理が並んでいる。
宿に行って食事を取ろうと思って急いでいたが、
まぁここで食べるのも良いかも知れない・・と思った。

「まぁ・・たまには、こういうのも良いか。」

「マリアも、ねえ、良いでしょう?」

「え?ええ。構わないわよ。せっかくだし、楽しんでいきましょう。」

「わーい!」

そういうとカインは屋台へと向かっていった。

正直アレンたちは小さい頃から街のお祭りなどには出向くことはない。
風紀の悪いところへ行って何かあってはまずいと禁じられていた。
カインだってマリアだって基本的には同じだ。

例外があるとすれば、ラダトームのロト祭だけは、国を挙げての参加なので
アレンたちにも何かと思い出深い。

しかし、ここは一介の小さな街のイベントだ。
こんなところに王族の彼らが参加するのは、
本当はまずいだろう。

が、カインはそんな難しいことは考えていないようだ。

満面の笑顔で、帰ってきた。
なにやら買い求めてきたらしい。

見たことのない食べ物だ。
肉が薄い皮で巻かれている。手に持って食べるらしい。

「お、うまそーじゃん。」

アレンは受け取るなり一口かじった。
甘辛い味がして、非常に美味だった。

「でしょ〜。アレン肉好きだもんね。
 はい、マリアもどうぞ。」

若干戸惑いながらマリアもそれを受け取った。

「結構大きいので、口をあーって開けないと
 食べれないね。」

カインも豪快にかじりついた。
マリアはどうしたものかと思いつつ、手にある物体を見つめていた。

「うめー!」

「ね〜美味しいねー。」

二人の様子に、マリアは自分の空腹を思い出し
戸惑いつつ口に含んだ。

「マリア、美味しいでしょう?」

「ええ。美味しいわ。」

一口食べると、二口、三口と止まらなくなる味だった。
マリアの様子に、カインも嬉しそうだった。

アレンはと言うと一瞬で食べ終えて、味をしめたのか、
別の屋台を覗きに行った。

「お祭りって色々なことをやってるのね。」

「そうだねー。どういうお祭りなんだろうね?」

カインはふとその所以を聞いてみたくなった。
そばを歩いている街の人に何気なく聞いてみた。

そしたらその答えは驚くべきものだった。

「この祭りは、勇者ロトのお祭りだよ。」




*****



3人は宿の部屋に入ると、それぞれ荷物を下ろして、
休息を取ることにした。

外はまだ賑やかだ。
祭りはいつまで続くんだろうか。

窓から街並みを見下ろしながら、マリアは口を開いた。

「びっくりしたわね。
 勇者ロト様、この街では神様のような扱いなのね。」

この街では・・と言うのはラダトームやロト3国以外の国で、という意味だ。

「勇者ロトは世界を救ったんだろ?
 そりゃ、祭られもするだろうさ。」

「ここはアレフガルドでもないのに。」

この祭りの由来について知った3人はなんとも言えない気分だった。
何となくカインが二人に聞いてみた。

「勇者ロトってどんな人物だったんだろう?」

ロトの血を引くものとして、小さい頃から英才教育を受けてきたが
その人物像については不明なことが多かった。

アレンが答えた。

「今更だなー。魔法も剣も使えて一人で戦ってて
 それはそれは立派な人物なんだろ?」

「あれ?それってアレフ様じゃない?」

「ん?あれ?そうだっけ?あ、そっかー。」

アレンが頭をかいた。
何か混同してしまったようだ。

「どちらにせよ強い人には違いないでしょう?
 うーん・・・そしたらアレンみたいな人かなあ。」

マリアは女性だし、勇者ロトのイメージとは違う。
自分はと言えば、適度に色々出来るが器用貧乏なイメージだ。
勇者ロトは器用貧乏ではなくて、
まさに万能なんだろう。きっと。

カインはアレンを見た。
きっと勇者と言うからには、アレンのように逞しくて
見るからに強そうで、威厳があるんだろう。

「そんな強くて逞しくて頼もしい人物が
 魔法も使えて、剣も使えてって?そりゃ、完璧だな。」

確かにアレンのような強さに魔法が加われば、
自分なんて必要ないだろう・・とカインはふと考えた。
回復魔法も、補助魔法も何でも使えるとしたら無敵じゃないか。
旅の中で困ることもないだろう。

あ、まぁこれだけ大食漢だったら、食事には困るかもしれない。

などと考えて、ぷっとカインは吹き出した。

「おい、なに笑ってる。俺真面目に話してるんだぞ」

「あはは。今でもこんなに伝説に残ってるくらいだもん。 
 そりゃあー完璧な人じゃないの?」

「国まで作ったんだもんなー。すげーよな。」

アレンはうんうんと頷きながら言うが、
その発言はおかしい。

「・・・・・・?違うでしょ?
 だからそれアレフ様じゃない?なんで混じってるの?」

「あれーー???」

アレンが頭を抱えた。
二人のそんな会話を聞いていたマリアが
笑い出した。

「あなた方、勇者ロトの血を引くものとして育てられてきていて、
 まるでロトの事を分かってないのね。」

その言葉にアレンとカインが目を合わせて
ぶーっと唇を尖らせた。

「なんだよ〜。じゃあお前は良く知ってるのか?
 ムーンブルクには勇者ロトの伝説、いっぱい伝わってるのか?」

「ロトの時代はもう何百年も前の事よ。
 もう誰も彼が生きた時代を知ってる人はいない。」

「そんな事くらい分かってら。」

アレンは眉を顰めて、手を組んでむっつりとした表情だ。

「一説によると、多くの仲間を連れていたそうね。
 もしかして今の私たちと同じように、
 役割分担をしていたかもしれないわね。」

「勇者様は万能じゃなかったってこと?」

「そんな事ないだろー。
 こんなに伝説になって、今でも崇められてるだし。」

「さぁ、私に言われても分からないけど。
 でも少しだけ思うの。
 万能で強かった勇者ロトは、自分の時代を救っただけじゃなくて、
 後の時代にまで自分の武器や血を残そうとした。」

「ああ。」

自分が手にしているロトの剣や盾は
言うまでもなく、何百年も前のものだ。

勇者ロトの知り合いも仲間も皆生きてはいない。
誰もいなくなった未来に残してくれていた遺産だ。

「先々の・・・、何代も先の子孫たちの時代まで見据える・・
 そんな大きなお心の持ち主だからこそ、人々は慕い、伝説になったのかも。」

「それはそうだね。」

マリアの話に、カインも深く頷いた。

「結局、よくわかんねーけど。
 なんかすげー奴って事だ。」

アレンはどうも匙を投げたらしい。
ごろんとベッドに転がってしまった。

「アレン・・なんでそんな大雑把なんだよ君は。」

カインは呆れてため息をついた。

そうして話はまとまらないままに終わった。


その後

マリアが何気なく窓から街の様子を覗いたときだった。
一瞬激しい砂塵が巻き上がってるような様子に、窓がカタカタとなった。

「何!?」

その勢いに思わず目をつぶってから、再度街の様子を覗った。

最初、街の様子は相変わらず賑やなのだと思った。
だが、よく見ると騒々しい。

「なにか変ね・・・。」

マリアの様子に、カインも真似て隣の窓から街並みを見下ろした。

見ると人々が走り回っている。

「?どうかしたのかな・・・。」

何者からか逃げ回っているようだ。

「もしかして・・・・魔物が現れた・・?」

「なんだって?!」

その呟きにアレンも勢いよく起き上がった。
窓を覗くが、確かに何がなにやらよく分からない。

上から3人で高みの見物のように見ていても
埒があかなかった。

「ええい、しゃらくさい!
 下におりるぞ!!」

「うん!」

「ええ!」




**



宿から外に出ると
そこは先ほどとはまるで違う街並みになっていた。

「なんじゃこりゃ。」

「あれ?お祭りのお店どこに行っちゃったんだろ?」

賑わっていた祭りの飾り付けも、屋台も何もなかった。
まるで違う街に来てしまったのかと思った。

「何があったのかしら・・?」

状況が分からない3人であったが、
どうやら魔物が暴れたと言う予感は当たっていたらしい。
怪我人を治療する人たちが慌しそうに
右往左往していた。

魔物は相当強力な奴だったのだろうか。

建物が大きく崩れているところもあった。

「どんなでっかい化け物が暴れたんだよ・・。」

アレンの呟きにカインはうーんと首を傾げた。

「この破壊力は・・・魔法かもしれないね。
 それも・・イオナズン級の破壊力だよ。」

「マリア並みの?そんなの本物の化け物じゃねえか。」

「ちょっと、それどういう意味?」

マリアがアレンの言葉に釘をさす。

「それにしても怪我人が多いみたい・・。
 手伝いに行きましょう。」

「そうだね。」

マリアは小屋に集められている怪我人の治療を
手助けに行った。

アレンも瓦礫の撤去を手伝う。
しかし、どう考えてもおかしい。

こんな瓦礫の山が出来るほどの爆音もなっていなかったし
そんな時間も経っていないはずなんだが・・・?

まぁそう言っても仕方がない。

瓦礫の下から、泣いてる子供の手を引っ張る。

「大丈夫かあ?よく頑張ったなあ。」

「うわあーん!うわあーん!」

子供は泣き止まない。
見ると足から血が出ている。怪我をしているようだ。

「おーい、カイン。
 ホイミホイミ。」

「あ、うん。ホイミ!」

子供を抱っこしたまま、カインのところに連れて行って
回復魔法をかけてもらう。
痛みが消えた子供は驚いて目を丸くしている。

親らしき人がその様子を見てやってきた。

「どうも、ありがとうございます!
 勇者様方!!」

「ん?いや、別に・・・。」

アレンは子供を返して、「勇者様?」と首を傾げた。

「誰のことだ?」

「誰か、先に戦ってる人の
 仲間と思われたのかな??」

どうも状況を見ると、
街中の戦いは大体片がついている様子だ。
自分たちではない誰かが戦っているようなのだ。 


アレンたちがそんなやり取りをしている間、
マリアは次々に回復魔法をかけ続けていた。

「怪我人がキリがないわ・・・。」

そんな呟きをもらしたときだ。
エメラルドグリーンの長い髪をなびかせた
マリアと同年齢くらいの女性がそばに立っていた。

「あなたね。先ほどから、
 優れた魔法で人々を救っているのは?」

「え?」

見知らぬ人に話しかけられてマリアは戸惑った。

「何よ、回復にいけって言われたけど、
 ほとんど皆助けられてるじゃない。」

「あなたは、誰ですか?」

「名乗るほどのものじゃないわ。」

その女性はにっこり笑うと、
手にもつ杖をかかげて、とある魔法を唱えた。

「ベホマラー!!」

その魔法は小屋にいる怪我人全体に治癒の効果を発揮した。

「え?」

マリアは見たことのない魔法に
言葉を失った。

「さぁ、これで一安心だわ。
 あなたもゆっくり休んで。
 手伝ってくれてありがとう。」

「え?え・・??」

女性はマリアに軽く会釈すると
どこかへ帰っていこうとした。

マリアは、その後を追おうとした。

誰だかわからないけど、
あの人は自分よりもすごい魔法を使える人だ。

何か心がざわめくのを感じた。

「お、マリア。どこ行くんだ?」

外にいたアレンもマリアのその様子に気づいた。

「アレン!カイン!
 この辺に私くらいの年齢の、
 髪がエメラルドグリーンで、すごい魔法を使う
 女の人が通らなかった?!」

「は?」

「え?誰って?」

マリアがそんな事を言った時
今度はマリアよりも少し小柄な黒髪の女性が
目にも留まらない速さで走り抜けていった。

建物の死角になるところに魔物が潜んでいたようだ。

アレンとカインはあわててその後を追った。

そこにいた魔物は
大きな棍棒を持ち、巨大な体をしていた。
見たこともない魔物だった。

「なんだ、なんだ!?あれ?!」

先ほどの小柄な女性が素早い動きでその巨体に殴りかかった。

「はぁぁっ!!」

「あんな小さな体でなんて無茶な・・・!」

ダメージなんて与えられないと思った。
だが、女性の一撃は驚くべき破壊力で
巨体に尻餅をつけさせた。

「うわ!すげえ!」

アレンはその攻撃力に思わず目を見開いた。

「もう・・一撃っ!!」

女性はさらに飛び上がると回し蹴りを食らわせようとした。
どうやら彼女は武器を使わない武道家のようだ。

だが、その一撃が巨体に届く前に、
空から飛んできた別の魔物に遮られた。
これも見たことのない魔物だった。

女性は地面に叩きつけられてしまった。

「大丈夫ですか!?」

思わずカインが駆け寄って回復魔法をかけた。

「ありがとう・・・!って、あなたは誰?」

されるがままにされていた武道家の女性は
カインの姿を見ると、思っていた人と違うじゃないか、と言う顔をした。

「え?」

「誰だか知らないけど、危ないわよ。こんな所に出てきていたら。
 ここは私たちに任せて!」

「私・・たち?」

見るとアレンは巨体に攻撃しかかっていた。
武道家はそんなアレンを見ると感嘆の声をもらした。

「あら、あの子、いい動きするわね。
 戦士なの?うちの戦士よりよっぽど素早いわ。」

「うちの戦士・・・?」

どうやら彼らが自分たちより先に戦っていた戦士団の人たちなんだろう。
カインはそう納得すると立ち上がった。

「アレンなら、あんな化け物倒してくれます。
 あの飛んでる魔物も、僕とマリアの魔法で倒します。
 あなたは魔法を使えないでしょう?
 あなたこそ下がっていてください。」

カインはそう言うと、マリアに目で合図した。
マリアも意図を理解した。

「バギ!!」

マリアのバギで動きを止めた空飛ぶ魔物に、
カインが狙い済まして追撃した。

「ベギラマ!!」

ベギラマの炎は空飛ぶ魔物を包み込んだ。

「わお!あなたたち、良いチームワークじゃないの!!」

カインとマリアの戦いぶりを、武道家は素直に褒めた。

「でもベギラマじゃ、あいつは死なないわ。
 あとは任せて!私たちのチームワークを見せてあげる!」

確かに魔物はまだ空で羽ばたいているし、
魔物は他にもいっぱいいたらしい。どこからか騒ぎを聞きつけて
一匹二匹と増えてきていた。

武道家がそう言うと、
マリアが先ほど見かけたエメラルドグリーンの魔法使いも
そこに立っていた。

「ピオリム!」

そしてまた見知らぬ魔法を唱えると、
武道家は信じられないほどの速さで天高く飛び上がった。

「やあああああ!!」

空から、痛烈な一撃を食らわせた。
そして何かを見るとにやっと笑って叫んだ。

「遅いよ!戦士!」

どたどたっと巨漢の男がやってきた。
全身が筋肉と言う鎧に守られているような男だ。

「悪かったな!!ぬおおおおお!!」

男は一度雄たけびをあげて、アレンが戦っていた巨大な魔物を一瞬ひるませた。

「わ、なんだ!?」

アレンまで大きな声にびっくりしてしまったようだ。
そうやってひるませているうちに、手にもつ大きな剣を巨体の背中に突き刺した。

だが、アレンはその攻撃を見ても首を振った。

「そんな程度じゃ効かないんだ・・!」

アレンだって先ほどから何度も斬り付けている。
斬り跡はいくつもつけている。血も流れている。
だが、この魔物は感度が鈍いのだろうか。
痛みを痛みとも感じず、倒れもしない。
そのせいでアレンも攻めあぐねていた。

「小僧の戦いっぷりは見ていたぞ。
 こういうやつは一気にやっちまうのが早いんだ。」

「どうやってだ?」

アレンたちがやるより、良い方法をこの人たちは知っているらしい。
先ほどからずっとアレンたちの一歩先を行く戦略を見せている。

そして何か絶対的な自信を持っているようだ。

何故だろうか?

「あ、やっと来た遅いわよ!戦士より遅かったわよ?!」

武道家の女性が、何やらまた大声で叫んでいる。
彼女は声が大きいようだ。

エメラルドグリーンの魔法使い女性もその姿を見て安心している様子だ。

戦士の男性は、その姿を見て一気に鼓舞されたようだ。

「よし、やってやれ!!アレル!!」

「アレ・・・なんて?」

アレンは一瞬自分の名前を呼ばれたと思ったが、違うだろう。
そもそも名前なんて教えていなかった。

「遅くなって悪かったな。
 これでお仕舞いだ!」

アレルと言われる黒髪の男は回りに笑って見せると
右手を挙げた。

背中の剣は抜こうとしない。
剣も持たずに何をするんだろう。

「あ、危ないですよ?あの人。
 剣も持たずに・・・。止めなくて良いんですか?」

カインが魔法使いの女性に声をかけた。

「大丈夫よ。
 見て、トロルの背中にいなづまの剣が刺さっているでしょう?」

「え?それが・・何か?」

カインは言われてることが分からない。
だが、マリアは何をか悟ったらしい。

「カイン、見て!ちゃんと見なきゃ駄目よ!」

カインの手をひいて、前をみるよう促した。
そしてまた、アレンたちが誰も知らない魔法を、
目の当たりにすることになった。

黒髪の男の叫びと共に激しい稲妻が走った。

「ギガデイン!!!」

稲妻はトロルの背中にささった剣を目掛けて激しく落ちた。
そしてそれだけはなく、
空を飛んでた魔物の群れにも追撃した。

激しい稲妻が落ち着いた頃には、
魔物は全滅していた。

「・・・・・・・・な、何だ・・あれ。」

アレンはイオナズンを超える勢いの魔法に
言葉を失っていた。

カインとマリアはさらに衝撃を受けていた。

ギガデイン、勇者だけが使える魔法だ。

と言う事は、
彼は、勇者なのか?
つまり・・・彼は・・・・・・。

「遅いわよ、アレル!」

「よっ、社長出勤!」

「これで一段落ね。」

次々に仲間から迎えられる黒髪の男性はにこやかだ。

「お前たちがいるから、心配はしていなかったさ。」

そう言うと、アレルと言われた男はアレンたちに気づいて
手を差し伸べてきた。

「やぁ、君たちも共に戦ってくれたようだね。
 ありがとう!」

「いや・・・俺なんか。
 あなたたちの強さは本物だ。驚いたよ。」

アレンは本心からそう言った。
自分たちよりよっぽど強いのは間違いない。

だが、裏を返せば生身であれほど戦える人がいるってことは、
自分たちだってもっと強くなれるってことだ。

いつかきっと超えてやると思いつつ
アレンは差し伸べた手を握り返した。

力強くも暖かい手だった。

アレルは、アレンが手にもつロトの剣を見ると
再度何かを言おうとした。

「君は・・・・」

しかしその言葉は最後まで聞くことが出来なかった。
次の瞬間、回りが暗転したのだ。

「?!」

砂嵐が舞いだした。
先ほどマリアが見たような砂嵐が天高くまで舞い上がった。

「また・・!?」

思わず目を覆った3人だったが、
時間にしてそれは一瞬だっただろう。



次に目を開けたとき、
そこは魔物も残骸も何一つない平和な街並みそのものだった。

「え・・・なんだ?」

「あれ?さっきの人たちどこに行ったの?」

アレンとカインがきょろきょろとしている。
だが、砂嵐を二度見ているマリアは何となく事を察した。

街では祭りが開かれている。
何事もなかったかのようだ。そう、何事もなかったのだ。
今は。

「あれ、兄ちゃんたちどこから出てきたんだ?
 急に現れてびっくりしたー。」

祭りが賑わっててほとんどの人は気づいていないが、
この店の人はアレンたちの存在に気づいて驚いている。

どうやら、この店では特殊な「あるもの」を取り扱っているようだ。

「店員さん、先ほど舞い飛んでいた白い砂はなんでしょう?」

マリアはそれを確かめようとして尋ねた。

「ああ、『時の砂』って言うんだ。
 貴重な砂なのに、ほとんど飛び散ってしまったよ。」

「それは貴重なものを・・・・残念でしたね。」

残念と言いつつ、マリアの顔は残念そうではない。

「??」

「何、なに?どういうこと?」

一人合点をいってるマリアは満足そうに笑みを浮かべている。
なにやらとても嬉しそうだ。

そんなマリアに、アレンとカインが「?」をいっぱいにして尋ねてきた。

「分からない?
 時間を巻き戻せるっていう奇跡のアイテムのこと、
 ここで取り扱っていたって事が一つの奇跡ね。
 それから、もう一つの奇跡があったわ。」

「もう一つの奇跡?」

何が何やらアレンは分からない。

「多分、そうだと思うの。
 今日の祭りの由来を、聞いてみたらどうかしら?」

「由来って、確か勇者ロトの・・。」

そこまで言われたカインははっとした。

「え・・・待ってマリア、本当に?本当に・・?
 僕らは見たって言うの?」

カインは気づいたらしい。何を見たと言うのか。

「なんか、全然わかんねーんだけど。何を見たって?
 とりあえず由来を聞けばいいんだな?」

アレンは店の人に尋ねた。


「ああ、今日の祭りかい?
 何百年も前に、勇者ロトがこの街を救った日だと言われてるんだよ。
 それから年に一度街の平和を祈っているんだ。
 それが今日の祭りの由来さ。」


店の人の答えにアレンたちは全てを悟った。



- 終 -

2012/06/13
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 せっかくのロト月間なので、ロト記念作品(笑)。
 一度こういうのも書いてみたかったので、満足です。
 少し不思議なお話です。

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