11.街・町・村


「なんだか賑やかね。
 音楽が聞こえてくるわ。何の曲かしら?」

マリアがペルポイの宿の窓から外を覗き込んでいる。
ペルポイは地下にある街だが、
人の活気に溢れていた。

「昨日も何か聞こえてきたなあー。
 歌姫がどうのって・・・。」

「歌姫?だれのこと?」

一足先にペルポイに来ていたアレンは聞き覚えがあるらしい。
毎夜歌っているのだろうか?

「しらねえけど。俺、歌とかあんまり興味ねえし。」

「もう・・・。」

まぁ、一人で一足早くペルポイに来ていたアレンの心境的には
歌に聞き入ってる状況ではなかったのだろう。
二人が喋っていると、部屋にカインが入ってきた。

「ただいまー。
 やっぱり、この宿にも街にもお風呂がないってー・・・。」

うろうろとお風呂を探していたようだ。

「あら、カインお帰りなさい。
 お風呂がないのね。立派な宿なのに意外。」

「地下だから、お水が貴重なのかなあ?」

「街の真ん中にでっかい池があるから、
 マリア水浴びしてきたらどうだ?」

アレンがそう言いながら、ニヤニヤ窓の外を指差した。

「いやよ。街の中央の噴水の事でしょう?」

「ああそこ、なんか今、人がいっぱい集まってたよ。
 歌姫様が今夜も歌ってるんだとか何とか。」

夜毎に人が集まり、歌姫が素敵な歌を奏でる。
こんな街は初めてである。

「歌姫・・・。人々に慕われているのね。
 せっかくだから聞きに行ってみようかしら。」

「本当?じゃあ、すぐ行こうよ。
 もうすぐ終わっちゃいそうだったよ。
 ねえ、アレンも行こうよーーー。」

カインはアレンにも声を掛けたが、
何やらアレンは興味なさげである。

「後で行くよぉ〜。」

マリアとカインはどうしたものかと顔を見合わせたが、
歌姫がいなくなる前に、先に行く事にした。

「じゃあ、後で来てね。」

そして、パタンと扉が閉じられた。

「あいつら本当に行きやがったな。
 歌なんてこっからでも聞こえるじゃねえか。」

そうして、アレンは立ち上がって耳を澄ました。
綺麗な歌声が聞こえてくる。
昨日も聞いているし多分その時と全く同じ歌なのだが、
昨日はそんな音を聞いている心の余裕など無かった。

今日は久しぶりに仲間と再会できたからだろう。

「・・・・・、行くか。」

少し考えてアレンも後を追うことにした。
音楽など、どうでもいいのだ、自分はそんなもの興味ない。

ただ、あいつらを放っておくと、
またスリにでもあったり、変な詐欺師にたかられたり、
きっとろくでもないことになるだろうと、心配だからだ。

そう思って、部屋から出てみたが、
どうやらカインたちはよっぽど急いで向かったのか、見当たらなかった。

噴水池の方に行けば会えるだろうと思って、
歌声の聞こえる噴水広場の方へと向かった。

それでも見当たらなかった。

「あいつら、どこ行ったんだー?」

アレンがきょろきょろしていると、座るように警備員に促された。
どうやら歌姫の最後の曲らしい。

「え・・いや、俺は歌じゃなくて、人探しを。」

立ち上がろうとしたが、最後まで聞いて行けと
再度促された。

「あのなあ〜。俺は歌なんて興味ねえの!」

「あなたは、歌姫アンナをご存じないのですか?
 次はいよいよ『LOVESONG探して』ですよ!」

曲名など知るわけがない。
男はここの警備員かと思ったが、どうやら歌姫のファンらしい。
毎夜ここに通って歌を聞いているそうな。

軽快なメロディーが聞こえてくる。
明るい曲調だ。歌姫の伸びの良い声は、なるほど聞いていて心地よい。

人気があるのも頷ける・・・、と思ったら横の男が号泣していた。

「げっ。なんで泣いてるんだよ?
 この明るい曲のどこに泣ける要素があるんだよ?」

良い年した男が、こんな泣き顔を見せるなんてみっともないと思った。

「LOVESONG探して・・・・。私も、探しているのです。」

「探してる?ラブソングを?」

「ええ・・・。私の、私だけのラブソングを・・。」

鼻をすすりながら、泣きながらその男が頷いた。
アレンはぞくっとして、一瞬鳥肌が立った。今まで見たこと無い人種だ。
詩人とかポエマーとか、そういうやつか?こいつは・・。

アレンのそんな表情に気づいたのか、男は恥ずかしそうに笑った。

「あ・・・お見苦しい所をお見せしてスイマセン。」

「いやいや・・・勝手に続けてくれ・・・。」

俺のいない所でな・・そう付け加えそうになるアレンに、
男は申し訳なさそうに付け加えた。

「実は、私は恋人がいたんですよ。」

「は・・はぁ・・・。」

なんだなんだ、失恋談義など聞きたくも無いぞ。

「でも相手の名前も顔も覚えてない。」

「なんだそれ、幻なんじゃないのか?」

「あはは。皆そういいます。夢だ、幻だと。
 確かに私には自分の名前以外の記憶が無い。
 出身地も親の名前も分からない。」

「え・・・?」

記憶が無い・・・だと?

「だけど、誰が信じてくれなくても、確かにいたんです。
 将来の約束をした恋人がいたんです。
 どこにいるかもわからない、誰かも分からない、
 だけど魂の絆で結ばれた相手が、絶対いたんです・・・・!」

そう言いながら男はとめどなく涙を流し続けた。

「魂の絆で結ばれた相手・・・・。
 そんな奴がいたんだとしたら・・・・。」

アレンはふと思い耽った。
ついさっきまで自分も同じような思いをしていた。
魂の絆で結ばれた仲間を失いたくないと、
精一杯世界中を奔走していたのだ。

「会えなくなったら、悲しいよな。
 そりゃあ、会いたいよな・・・・。」

アレンのそんな言葉に、男はハッと顔を向けた。

「あ、ありがとうございます!!
 あなたが初めてだ。こんな荒唐無稽な話を信じてくれるなんて!
 勇気をもらった気がします。」

号泣する男に手を掴まれて感謝されてしまった。
信じるも何も、こんなに涙を流すなんて、嘘だなんて信じられなかった。
嘘だったら、相当の詐欺師だろう。

「お前名前は?名前は覚えてるんだろう?」

「はい。ルークと言います!
 もし恋人に会ったら、ルークはペルポイで待っているとお伝えください!」

世界のどこに、こんな記憶を失った男の恋人がいるというのだ?
大体相手の名前も分からないのに、探しようも無い・・・。

だけど、何だか引っかかる気もした。

「覚えておくよ、だけど期待しないでくれよ。」

そうこう喋ってるうちに、歌姫の曲は終わってしまったようだ。
人がぱらぱらと去り始めた。

気がつくと、アレンとこの号泣する男だけになってしまった。
さすがに気まずい。

「じゃあ、元気でな。」

アレンは礼を言う男と別れた。

さて、ルークの恋人ねえ。どこを探せばいいのやら。
まぁ、世界中を旅するんだから、どこかで会えたりすれば良いが、
正直難しいだろう。

ところで、それよりアレンと魂の絆を分け合った仲間たちは
一体どこへ行ったというのだ?

こんな狭い街で見失っていたら、ルークの恋人なんて見つかりゃしない。

噴水広場を離れて探していると、
前方からカインとマリアが歩いてくるのが見えた。

少しほっとした。

「やっぱり、これって詐欺だったのかなあ・・・。」

「値札も無かったものね・・・。」

「でも、思うんだけど、これってさ〜。」

2人はアレンに気づかないようだ。
と言うか、何やら話している内容が物騒だ。

やっぱり、こいつら2人で放っておいたら
詐欺に引っかかっていたのか・・!?

「おい、なんだよ詐欺って!
 何まんまとやられたんだよ!?」

「うわっ。アレン・・・!びっくりしたー。
 アレンどこに行ってたの?」

「お前らがどこに行ってたんだよ。
 ちゃんと歌姫の『LOVESONG探して』聞いたのかよ?」

アレンがそう言うとカインは驚いたように笑った。

「アレンってば、曲名まで覚えたんだ。
 歌なんて興味ないって言ってたのに〜。」

「は。ち、ちげーよ。
 曲名を隣にいた男に、泣きながら教えられたんだよ!」

「何それ。アレン見知らぬ人泣かせたの?」

「ちがーう!勝手に泣いたんだよ。
 こう・・・曲を聞いてたら、勝手にだーーーって。」

アレンはさっきの男の泣き真似をした。

「曲に感動したのね。良い曲だったものね。
 分かるわ。」

マリアは何やら納得してくれた。
ちょっとアレンには納得し難いが、まぁそれは流しておく事にする。

「で、なんの詐欺にあったって?
 本当にお前らしょうがないなあ。」

「これなんだけど。」

カインは手にする一つの鍵をアレンに見せた。

「鍵・・・?」

鍵と言えば、先ほどアレンはラゴスから水門の鍵と言うものを
もらった。では、この目の前の鍵は何の鍵だ?

「闇取引されてるとかで、
 値札も商品名も伏せられてたんだけど・・。」

「あやしいなあ・・・。」

「僕ら今、銀の鍵・金の鍵を持ってるでしょ。
 それからアレンが持っている水門の鍵と・・・。」

あと一つ欲していた鍵と言えば・・・。

「牢屋の鍵!?牢屋の鍵か・・!?」

「ねー。牢屋の鍵だと思うでしょ。
 だけど、商品名も書いてないし、わかんないんだけど。」

「店主に聞けばいいんじゃねえか?」

「聞いたけど、教えてくれなかったよ。」

しかし、牢屋の鍵を闇取引で市販しているとは、
何て街だろうか。犯罪の助長ではないか。

だが、ここはあえて目をつぶっておくとする。
今は。

「でも、本物かどうかは試したら良いんだよね。」

「ああ、そうだな。確か、どっかあったよな。
 牢屋の鍵を諦めた所。」

「そうね、ザハンの神殿!」

3人は次々に口を開いた。
当時閉ざされていた道が開けたのだから。

「まぁ偽物かもしれないけどね。
 明日行って見よう!ザハンへ!」



****



「トラマナ〜〜。」

カインがトラマナを唱えた。
ルーラでやってきたザハンの神殿にはバリアー床が張られている。

ここまでは以前も来たことがあるのだ。

「よーし。行くぞー。
 今度こそ伝説の武器とご対面だ。」

「伝説の武器だなんて、誰も言ってないけどね〜。」

何があるのかは知らないが、
とにかくきっと何かがあるのだろう。

3人は鍵のかかった扉の前までやってきた。

以前はここまでしか来れなかった。

おもむろに牢屋の鍵を取り出したアレンは、
その鍵穴に牢屋の鍵をすっと挿入した。
そして、鍵を回してみると、その鍵は簡単に開いた。

「・・・!回った!!」

「やったわね!」

やっぱり、これは牢屋の鍵で間違いなかったのだ。
そして・・・その奥にあるものは・・・・。


「な・・・なんだこれ・・・?」

人魚のモチーフが形どられた何らかの機械だった。

「・・・・・?武器には見えないな・・・。」

アレンは少し残念そうに呟いた。

「・・これはきっと織り機じゃない・・?」

「丁寧にこんな所に祭られてるなんて、
 由緒正しいものなんだろうね〜。」

良い物が見られたとカインは手を合わせている。
でも、武器でも防具でもないので、
アレンとカインは続いて反対側の扉へ向かおうとした。
そんな2人をマリアがあわてて呼び止めた。

「ちょ・・ちょっと・・!2人とも。
 武器じゃないからって興味なくさないでよ、
 これってきっと聖なる織り機よ・・!」

「聖なる織り機・・・。
 え、あの水の羽衣を作れるってやつだよね?」

「ああ!雨露の糸と一緒にもって行けばいいって奴か!」

「おおーーー!」

ひとしきり盛り上がってから、
少し3人は固まった。

大きいのだ。どうやって持ち運ぼうか?

しかも、こんなでかいのを持ち歩いてたら、
すぐばれるではないか。盗人ではないか。
今度は自分たちが牢屋に入れられるんじゃないか?
あ、でも牢屋の鍵があるから出られるか。

妄想が一足飛びにそこまで進んだ所で、
ふと扉の外を見ると、
巫女がこちらを見ていた。

「わ・・っ。アレン、巫女さんがこっち見てるよ。」

「おい!隠せ隠せ!」

「ちょっ・・・隠せって、ばればれだよーー!?」

アレンとカインが騒いでいるときに、
マリアは何か考えたように、巫女の方へ足を踏み出した。

「お騒がせして申し訳ありません。巫女様。
 こちらの素晴らしい織り機を、どうかお貸しいただけないでしょうか?
 雨露の糸ならすでにここに。
 こちらの織り機を使って、是非水の羽衣を作りたいと思っております。」

どうやら正攻法で、マリアは巫女に許可を取ろうとしているようだ。
確かにそうするしかないだろう。

「織り機と糸だけがあれば水の羽衣が出来るわけではありません。
 聖なる織り機を使いこなせるのは世界にただ一人しかいないと
 言われています。」

「では、世界中を巡ってでも、その伝説の織り師を訪ねます。
 私たちには必要なものなんです。」

マリアは一歩も引かなかった。

「良いでしょう。機織もきっとあなた方を待っていることでしょう。」

「・・・!
 ありがとうございます!!」

マリアは巫女に頭を下げた。
アレンとカインもそれに倣って頭を下げた。




神殿を出た3人の足取りは軽かった。
聖なる織り機は大きかったが、アレンが荷物をまとめて持つ事にした。

「俺、ペルポイで聞いたぜ。
 伝説の織り師はテパにいるらしいんだ!」

「アレンいつの間にそんな情報を?」

「お前らが来る前にひとしきり情報収集してたからな。
 やったなー。これで次の目的地も決まった。
 テパだ!」

確かまだ行ってない村が一つだけあるとミゲルが行っていた。
いよいよ最後の村だ。

「良いわね、行きましょう。」

アレンとマリアがそうやって次の行き先を確認している所に、
カインが何かを忘れていたように、
足を止めた。

「あーーー忘れてた!!」

そして慌てたように頬を掻いた。

「ん?カイン、どうしたんだ?」

「僕、今度ザハンに来るときは、沢山小麦粉を買ってくるって
 約束してたんだよ!」

「こむ・・・って・・・。ああ、お前の主婦仲間と約束してた奴か。」

確かこのザハンって村が野菜は安いが、小麦が高騰しているとか
どうのこうのと主婦たちと喋ってたのだ。

「主婦仲間って何さ。
 せっかく織り機もお貸ししてもらえたんだし、
 お礼した方が良いよね!?」

「小麦粉をか〜?」

「ちょっとルプガナまで行ってくるよ!!」

嫌とも応とも答える間もなく、
カインがルーラで飛んでいってしまった。

「律儀な奴だなあー・・・。
 ルプガナってちょっと行く距離じゃねえだろう。」

「まぁ、一応約束してたものね。
 カインって約束は律儀に守りたがる性質だから、
 良いじゃない。待ってましょう。」

アレンとマリアはそう言ってザハンの中心地へと向かった。

相変わらずこの村は女性ばかりの村だった。

以前来た時に、ここの男性は航海中に遭難して
帰らぬ人になったのだと伝えたことがあった。

まだ何かと不便にしているだろうかと思って
顔を出したのだ。

「あらあ、アレン様ではないですか!?
 それにマリア様も。」

すると、村人の女性に声を掛けられた。

アレンもマリアも村人に向かって軽く会釈した。
そういえば、珍しくこの村ではアレンは身分を明かしたのであった。

「久しぶりだな。
 生活に不便は無いか?」

「ローレシアの皆様とてもよくして下さっているんです。」

女性はアレンに深く礼をした。
どうやら、以前約束したローレシアの支援が行き届いているらしい。
村人たちもそれを喜んでいるらしく、
アレンは、ほっとした。

「そっか・・・。それは何よりだ。
 心なしか、活気も前よりある気がするよ。」

「ええ、ありがとうございます。
 せっかくいらっしゃったのです、どうぞごゆっくりなさって下さい。
 お茶やお菓子もご用意しておりますよー。」

本来は長居するつもりも無かったが、
カインが戻ってくるまでは、しばらくのんびりしていても良いだろう。

「ああ、頂く。ありがとう。」

アレンは差し出された菓子類を見て、
空腹を感じた。直後腹が小気味よく、グ〜〜となった。

「あれま、良い音。お腹が空いていらっしゃるんだったら
 お待ちください。お食事をお持ちいたしますので!」

そそくさと女性は奥へと戻っていった。
そんな様子にマリアがくすくすと笑った。

「おい・・笑うなよ。」

「せっかくアレン、王子様らしく格好良く決めてたのにねえ。
 良かったじゃない。ローレシアの支援がちゃんと働いてるようで。」

「そうだな・・・。」

アレンは少しずつ正常な世界を取り戻して行きたいと思った。
それはもちろんこんな小さい村も例外ではない。

しばらく待つと、先ほどの女性ではない
若い村娘がお盆に食事を乗せて運んできた。

「どうぞ、ザハンの自慢の煮魚定食です。」

大きな魚を贅沢に使った煮魚が
とても食欲をそそった。

「美味そうだ!ありがとう!」

「本当、とてもおいしそうね。」

「ふふ、召し上がって下さい。」

アレンとマリアは差し出された食事を頂く事にした。
こんな美味い料理を食べられないなんて
カインは勿体無い事をしたなーと思いつつ。

あっという間に平らげたアレンの食器を下げに、
もう一度先ほどの村娘がやってきた。

「ところで、旅のお方、つかぬ事をお尋ねしても宜しいでしょうか・・?」

「ん?」

娘がそう口を開くと、何故か慌てたように
最初に話をしていた年配の女性が飛んできた。

「やめなさい!あなたは奥で洗いものをしてなさい!」

そう女性に促されると、村娘は少し生気を失ったような顔で
奥へと消えていった。

「あの方、あの表情・・・きっとまだ遭難された恋人を探していらっしゃるのね。
 本当に無事だと良いんだけれど。」

マリアは何かを思い出したように、そう呟いた。

「ああ、マリア様にそう言ってもらえるなんて勿体無い事です。
 村の男たちは全員死んだと、何度も言い聞かせているのに、
 あの子はどうも信じられないようで・・・。
 旅人が来ると、いつも恋人の船は見なかったか?と訪ねるんです。
 本当哀れでね・・。若いんだから、元気を出してほしいのに。」

思い出した。
以前、ザハンに来たときにもあの女性は
アレンたちに恋人を乗せた船を見かけないかと訪ねてきたのだ。
勿論広い世界でそうそう都合よくそんな事はあるはずも無く・・・。

確か、名前は・・・・・。

「------!!!!!」

アレンは急に思い立ったように、立ち上がった。

「アレン様!?どうなさいました??」

「つかぬ事を聞く!!あの女性の恋人の名前は・・・・・」





***


「たっだいまー。」

持てるだけの小麦粉の麻袋を背負って帰ってきたカインに
アレンは待ってましたと突撃した。

「ぶっ・・・!!」

勢いあまって、カインは麻袋をぶちまけそうになった。

「ちょっとーー!アレン、やめてよ〜〜。
 小麦粉まみれになる所じゃないか。」

「カイン大変だ!!」

「え・・・?」

アレンの勢いが何やら普通じゃなかった。
何事かがあったのだろう。
緊張して待った次の言葉は、まさに予想外の言葉だった。

「見つけたんだよ!!
 魂の絆で結ばれた恋人を・・・・・・!!!!!」

「・・・・・・・・・・え・・・ええ・・!?」

カインはその勢いに唖然とした。

アレンの言葉が予想の斜め上を行ったからだ。
だが、どうやら真剣な表情をアレンはしているところをみると
別にからかっているつもりではなく本気なのだろう。

急にアレンは運命的出会いでもしたんだろう。
すごくアレンは嬉しそうだった。
こういうとき、なんていうのが良いのだ?
うん。おめでとうと言わなければ。

「そ・・・それは良かったね・・・おめでとう、アレン。
 お幸せに・・。」

真剣な表情で答えるカインに、アレンは「ん?」と固まり、
マリアはぷーっと噴出した。

「ち、違うのよ・・カイン・・・そうじゃなくって・・・。
 海を隔てて、運命の恋人が・・・無事に見つかって・・・。」

「・・・????」

マリアが説明してくれるが、笑いすぎて何やら涙目だ。
何だかよく分からない。

「ち、違うぞ!俺じゃないぜ!?」

誤解に気づいたアレンが慌ててぶんぶんと首を横に振った。
そして事の次第を説明した。

アレンがペルポイで出会った記憶を失った泣き虫の男性の名前がルーク。
そしてザハンで出会ったこの若い女性の恋人の名前もルーク。

そう、間違いなく二人は恋人同士だった、その2人だろう。

「ああ!!そう言うこと!!アレンが妙な詩人になったと思ったよ!
 わああ〜〜すごい!!すごいね!」

ようやく理解したカインは手を叩いて喜んだ。

「ほ・・・本当にルークが生きているのですか・・?」

女性が泣きそうな顔でアレンに再度尋ねてきた。

「ああ、間違いないぜ。俺が昨日喋った奴が言ってたんだ。
 名前も覚えていないけど、世界のどこかで
 魂の絆に結ばれた恋人がいるんだって。
 きっとあんただったんだ。」

女性がボロボロと涙を流した。

「あはは、あんたも泣き虫だな。
 きっとルークもあんたにあったらまた号泣するだろうな。」

今まで何人もの旅人にルークを、恋人を見かけなかったかと聞いてきた。
無駄だから辞めなさいと他の村人には何度もいさめられてきた。
精神が触れてしまったのだろうかとも、心配された事もある。
でも聞き続けて、本当に良かった。

「ありがとうございます・・ありがとうございます・・・・っ。」

そんな女性の様子を見て、アレンはカインに声を掛けた。

「だからさ、カイン。ルーラの繰り返しで悪いんだけどさ・・・。」

「うん、ペルポイだね?任せて!!
 さあ、皆つかまって〜!」

驚いていたカインだったが、
その思わぬ展開に笑顔で頷いた。







- 終 -

2013/09/09
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 リクエスト小説「『冒険中』で、ザハンで聖なる織り機を取りに行き、原作で会えないルークとその恋人が再会する話」です。
 確かに、ザハンに聖なる織り機を取りに行く話しは、ショートカットしちゃったんですよね〜。
 とりたてて、何も書くことはないかなあ〜とか思ってたので。
 

 今回改めてこうやってリクエストを頂いて、冒険中の小説もとても懐かしく楽しかったし、
 ルークとその恋人も救われたのかなと思うと、何と素晴らしいリクエストを頂いたのか!と感謝しております。

 
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