「拍手 2」
 



ある平和な国の、夏の暑い日のこと。

「それまでぇ!!」

審判員は大きな声で試合の終了を宣言した。
勝者はこの国の王子。年は12・3歳というところ。

「よし、次は誰だ!」

王子は士気高く次の相手を求めた。 

「では、次は私が務めさせていただきましょう。」

立ち上がったのは、この国の兵隊長。
彼を倒せば、王子は名実ともにこの国一番の使い手であると言えよう。

「面白い。兵隊長が相手か。そういえば試合をしたことは
 なかったな。」

「恐れながら。」

目を伏せがちに兵隊長は応えた。
いつも無駄口を叩かないこの男の事は王子は嫌いではなかった。
それだけに、初めて立ち会えると言うことで、喜びを感じていた。

「じゃあ!やろうぜ!審判!」

王子は審判に試合開始を求めた。




「では、両者構えて・・・はじめぇ!!」

開始の宣言と同時に王子は駆け出した。
国の兵士はどいつもこいつも非力な奴ばかりだ。
自分の一撃を受けてこらえ切れる男は一人とていなかった。

この兵隊長も同じだろう。
まず自分の先制の一撃で体勢を崩させて、
体勢の崩れた相手の攻撃を流して、それからとどめの一撃!

これが今までの戦いのパターンである。

王子は自慢の剣腕で、兵隊長に迫って
剣を振りかぶった。

相手は動かない。

王子は勝利を確信し始めていた。

『なんだ、兵隊長も他の兵士と同じだ。』

そう思って振りかぶった剣は、相手を確実にとらえる・・・!
はずであった。

確かに相手に届いたはずの剣の先は何故か空を切っていた。

「あれ!?」

大振りしすぎて、かわされてしまったか?
敵は右側に移動していた。

では、今度は大降りを止めて、確実に相手の動きを止めよう。

そう思って、王子の繰り出した攻撃は再び相手を捕らえることなく
空を切った。

「なんで、あたらない!?」

王子は混乱していた。
自分の攻撃は確実に相手を見据えているのに、
攻撃が当たらないのだ。

「王子よ・・・失礼します。」

兵隊長はそういうと、峰を返した刀で王子を討った。

「それまでぇ!」

審判の試合終了の声が聞こえる。




「え・・・俺、負けたのか?」

王子は呆然としていた。今まで力では国の誰にも負けなかったのに、
何が何やら分からない内に負けてしまった。

「どうして、俺の攻撃は兵隊長に当たらなかったんだ?」

王子はどうしてもそこが気になった。
確実に捕らえた筈だったのだ。

「それが魔法というものです。」

「まほー?」

かつて勇者ロトの御伽噺なんかで出てくるあれか。
火とか氷とかが出てきて敵を攻撃するとか言う・・

でも自分は魔法が使えない。
魔法力が一切ないのだと、宣言されていた。

俺はないものねだりしない性格なので、
使えない魔法のことを考えるよりも
剣の腕をみがく日々を送っていた。

「でもさっきのは火も氷も出てなかったじゃないか。」

「ええ、今のはマヌーサと言って、幻惑の魔法です。」

「ま、まぬーさ・・?げんわく・・・?」

なんだ、それは。聞いたことないぞ。

「王子が一心に剣の腕を磨かれるのは非常にすばらしいこと。
 しかし、魔法のことも知らなければ、戦いで生き残ることは難しい。」

「・・・ずるいじゃないか!俺が魔法を使えないことを
 知っているのに!」

今までの兵士達とは皆剣と剣とで戦ってきていた。
魔法など使うものはいなかった。
まぁ使えるものが少ないと言うのもあるのだが。

「王子はそれを獰猛なモンスターにも求めるのですか。
 自分は魔法が使えない。だから、魔法を使うな・・などと。」

「・・・!・・・そ、それは。」

そうだ。先ほどの戦いが魔物との戦いなのだとしたら、
今頃自分の命はないのかもしれない。

「勘違いしてはいけませんよ。
 王子は本当に強い。その年齢でその剣の腕。
 普通に戦えば私とて王子には適わないでしょう。」

兵隊長はそこで一息ついた。

「それでも、もし今後王子が旅に出ることがあれば
 魔法のことを考えざるをえないでしょう。
 生き残るために。」

「考えろと言われても、俺は魔法を使えないって
 言ってるじゃないか。」

正直魔法力がないというのは自分の欠点の一つとも
言えるだろう。その欠点のことを、こうもずけずけと言われるのは
正直気持ちいいものでない。

「何も王子が魔法を使わなくても、
 ともに戦ってくれる仲間が使ってくれるかもしれない。」

「なかまぁ?」

何を言ってるんだ。俺とともに戦う仲間などとは
一体なんの話だ。兵隊長の話を聞いてたら、
なんだかいらいらしてきた。

「もう良いよ!今日は俺の負けだ!
 でも今度は負けないからな!!」

王子はそういって再戦を誓うと去っていってしまった。

しかしその後兵隊長はどこか別の国へと派遣されたとかで
再戦することはなかった。


ローレシアの王子アレンの13歳の頃の話である。





++あとがき++

アレン王子13歳です。
この人王子なんですか?(おい)
書いててどんどんおかしくなる王子・・

負けを知って強くなる剣士を
書きたくてこうなりました。



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